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「タイムスリップ夫の逆襲!?〜坂口あやめの悲喜こもごも5:結婚式にタイムパラドックス炸裂!?〜」

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月25日
  • 読了時間: 10分



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1.ついに訪れた「結婚式」の日

 老舗出版社「米星社」の文芸編集者・坂口あやめと、30歳のライター・楓井裕作。 未来から来た中年トレンチコート版・裕作や、スパンコールコートをまとった未来の姑・裕子、さらには筋肉配達員兼・離婚カウンセラー兼・時空警察パート勤務のカリブなど――相変わらず波乱万丈な日々を送っていた二人だが、ここ最近は不思議なくらい平和だった。

 そして、そんな静かな時期を経て、ついにこの日がやってきた。 「結婚式」。 もともと区役所にはとっくに婚姻届を出していた二人だが、式については先延ばしにしていた。なにせ次々に未来人が押し寄せ、落ち着いて式の準備どころではなかったからだ。 しかし、先日ようやく「もう誰も襲来してないし、時空警察にも誓約書を出したし、いまこそやるぞ!」と意を決して式場を予約。親族と少数の友人だけを呼ぶ、小さな挙式と披露宴を執り行うことにしたのだ。

「絶対に何事も起きないでほしい……今日くらいは、何もなく穏やかに終わってほしい……」

 あやめは純白のウェディングドレスに身を包みながら、内心ひやひや。なにしろこの数年、**“何も起きないはずの日”**に限って、毎度トラブルが炸裂してきたのだ。 ともあれ、式は始まる。あやめの両親や、裕作の(現代の)父母・親戚も着席し、神父(のような人)の前で厳かに誓いの言葉を交わす二人。 “指輪の交換”が終わったその時――なんと、式場の入り口のドアが勢いよく開いた。

「おめでとおおお〜〜〜〜〜!!」

 あやめと裕作の背筋が凍る。声の主は……なんと、未来の姑・裕子(またか!)。しかも、今回はなぜかウェディングベールらしき派手なレース布を頭からかぶり、手には電飾付きの花束を持っている。 あやめたちが「やばい、やばい、やばい!」と青ざめる中、裕子は満面の笑みでバージンロードを突っ走ってきた。

「いや〜、間に合ってよかったわ! 未来じゃもうあなたたちの結婚式の思い出DVDを100回くらい見てたんだけど、やっぱり生で見たいな〜と思ってさ、また時空を飛んで来ちゃった! あ、隠れて潜入してたら、ちょうど指輪交換のタイミングだったのね〜」

 最悪のタイミングすぎる。参列者も騒然。だれだ、この派手な女性は!? とざわつき始める。 さらに驚いたことに、後ろからは中年トレンチコート版・裕作(未来ver.)と、最近すっかりおなじみになった筋肉カリブまでセットで登場してくるではないか!

「やあ、あやめ。久しぶり。……ええと、びっくりさせちゃったかな?」「うっかり母さんに付き合ったら、なぜか俺まで来ちゃって……てへ☆」

 てへ☆じゃない! 大混乱の予感しかしない! あやめと現在の裕作は目を合わせてため息交じりに苦笑い。「……やっぱり、こうなるよね……。」

2.さらに続く衝撃の来訪者たち

 式場のスタッフたちは、突然乱入してきた3人をあわてて制止しようとする。が、筋肉カリブの巨体を見て「うおっ」と一瞬ビビり、中年トレンチコート・裕作のタフガイ感に押され、うまく対応できない。 とはいえ披露宴はまだこれから。ひとまず、式自体はあやめと裕作がなんとか締めくくり(神父風の司会者も苦笑しながら超速でフィニッシュ)、次は披露宴会場へと移動する段取り。 あやめはドレスの裾を押さえながら、未来トリオをにらみつける。「もう勝手なことしないでよ……せっかくの結婚式なんだから……!」 姑の裕子は「大丈夫、大丈夫! あなたたちの門出を祝福するだけよ!」と楽しそうに笑っている。

 しかし披露宴が始まるやいなや、さらなる**“予想外の来訪者”が現れてしまう。なんと、以前一瞬だけ現れた未来の娘・心音**(当時はまだ10歳くらいだった少女)が、今度は花嫁介添え人のふりをして紛れ込んできたのだ!

「パパ、ママ、結婚おめでとう! わたしもどうしても二人の晴れ姿を見たくって……。あ、もちろん時空警察に黙って来ちゃったから内緒ね!」

 内緒じゃ済まないよ! あやめは思わず頭を抱える。 「ちょっと、あなたはまだ生まれてすらいないのに、勝手に披露宴に参加して大丈夫なの!?」 すると心音は「うん、でもこの日は歴史上とても大切な日だから、一目見ないと気が済まなくて!」とキラキラした目で言う。まるでアイドルのコンサートに来たファンのような盛り上がりだ。

 ……もういい! とあやめは観念する。「来てしまったものは仕方ない……今日はとにかく荒れそうだけど、何とか乗り切ろう」。 そんな中年トレンチコート&スパンコール姑&筋肉カリブ&未来娘の珍客に、まわりの参列者たちはポカーン。特に現在の裕作の両親や親戚など、「あれ? あの人たち、親戚なの? 子どもさん? ?」と頭に疑問符を浮かべている。 あやめの同僚編集者たちも「坂口さんの交友関係、濃すぎない!?」と困惑しながらスマホでパシャパシャ記念撮影をし始める。SNSに上げる気満々だが、とても世間の理解を得られる気がしない。

3.乱入スピーチ合戦

 披露宴ではゲストによるスピーチが始まる。会社の上司や親族など、普通なら感動的なお祝いコメントが続く場面……のはずだった。 しかし、司会者が「それでは次に、新郎のご家族をご紹介します」と言った瞬間、未来姑・裕子がキラキラコートを翻してステージへ。マイクを奪い取るように握りしめる。

「皆さま〜! 本日は本当におめでとうございます! 私、実は新郎・裕作くんの未来の母でーす♪ 今日は特別に時空を超えてお祝いにやって参りました〜! 新婦・あやめさん、10年後にネギを腐らせてたこともあったけど、きっとステキな奥さんになれるわよ〜! いぇい!」

 いぇい! じゃない。会場中が「?????」。 「あ、あの、えっと……」と司会者も硬直した表情を見せるが、裕子は遠慮なく続ける。

「そうそう、未来じゃいろいろ大変だったけど、やっぱり二人は運命の相手なのよ。ちなみに将来は……あ、これ以上言うとネタバレになっちゃうわね。でも、家のWi-Fiパスワードと家事分担だけはちゃんと相談するのよ〜! みんな、二人を応援してあげてねぇえええ〜!」

 そのままマイクを放り投げて、中年トレンチコートの未来裕作にバトンタッチ!  未来裕作は「やあ、どうも。えーと、俺は新郎の“未来の姿”です。10年後くらいかな? まあ、今こうして同じ空間にいるのは不思議だけど……とにかく、おめでとう。離婚危機を乗り越えるかどうかは二人次第だけど、いい夫婦になってくれ。頼むよ、ホント……」

 もうカオスを通り越して、会場には微妙な笑いが漏れている。 そこへさらに筋肉カリブが登壇。「あ、オレは筋肉配達員兼・離婚カウンセラー兼・時空警察パート勤務のカリブっす! この夫婦とは長い付き合いでして、まあ、いろいろありましたけど……二人の愛は本物っす! 皆さん、拍手ぅ!」

 わあーっと拍手……というよりどよめき。 最後は未来娘・心音が登場し、「パパ、ママ、大好き! 将来もずっと仲良くしてね!」と可愛くポーズして、会場が「かわいい!」と一瞬和む。 ……が、直後に「でも、なんで娘さんがもう存在するの?」という疑問が渦を巻いて、誰もが頭を抱え始める。 あやめたちは苦笑するしかない。「もう、なんでもいいや……!」

4.時空警察まで来るとは聞いてない!

 そんな珍スピーチが終わった途端、何やら会場出口付近がざわつき始めた。 チラリと見れば、そこには黒いスーツ姿の集団——時空警察の尾根崎警視たちが、またしても登場しているではないか! 「あっ、やばい! 今度こそお縄かも……!」 実際、未来姑や未来裕作、心音などが無許可で過去へ来ているのだから、時空法違反は明白。こっそり潜り込むどころか、派手にスピーチまでかましてしまっている。 案の定、尾根崎警視は青筋を立てて怒鳴る。

「あなた方、また勝手に過去に来て! これは重大な違反ですよ! 即刻、逮捕させてもらいますからね!」

 叫びながら、SPたちがゾロゾロと入ってくる。そこに居合わせた一般ゲストたちは半ばパニック状態。 あやめは慌ててドレスの裾をたぐり寄せ、尾根崎警視のもとへ駆け寄った。「お、落ち着いてください! 今日は私たちの大事な結婚式なんです……!」 すると、意外にも尾根崎警視は強い口調をやわらげて言った。

「私だってこんな式場に踏み込むのは本意じゃありませんよ。ただ、上層部が『また彼らが過去を改変する恐れがあるから、すぐ出動しろ』と急かしてきたもので……。でも、一生に一度の晴れ舞台をメチャクチャにはしたくない。何とか“大人の落としどころ”を探りましょう」

 そう言って周囲を見回し、次のように提案する。

「では、披露宴が終わるまでは見逃します。せっかくの式ですからね。その後、あらためて我々がきちんと事情を聴き、しかるべき処分を考えます。いいですね?」

 あやめと裕作は顔を見合わせ、「ほ、本当ですか!?」と安堵の吐息。 一方、未来姑たちも「おお〜ラッキー! やるじゃない、尾根崎警視さん!」とほくそ笑む。

5.伝説の“時空コンビ”余興ショー開幕!?

 こうして、時空警察による逮捕は披露宴終了後まで延期となり、会場はなんとか落ち着きを取り戻した。 だが、あまりにも奇妙な客たちが混じっているせいで、もはや通常の披露宴進行はぶっ飛んでいる。司会者が「あ、あの、何か盛り上がる余興を……」と震える声で言うと、やたらノリノリの姑が「じゃあ私たちが踊りましょう!」と名乗りを上げる。

「え? 踊るの?」とあやめが目を丸くしているうちに、未来姑&筋肉カリブがなぜかペアを組んで踊り始めた! 姑はスパンコールコートを揺らし、カリブはムキムキの腕を振り回しながら、謎のラテン風ダンスを披露。さらに横では中年トレンチコート版の未来裕作と心音が拍手で盛り上げる。 「マラカスとかどこから持ってきたの!?」というくらいカラカラ鳴り物まであって、途中から会場は呆気にとられながらも大爆笑。 まさかの**“時空コンビ”余興ショー**が、結婚式のハイライトとなってしまった。

 気がつけば尾根崎警視たち時空警察員も、「まあ、せっかくだし……」と苦笑しながら手拍子を合わせている。これにはあやめと裕作も思わず吹き出した。 「なんなの、この式……」 後日SNSでは、「これぞ伝説のウェディング!」「こんなトンデモ結婚式見たことない!」と大バズりするが、まだそれは誰も知らない未来の話。

6.ついに迎えるクライマックス、そして……

 そんなこんなで強烈な余興まで終わり、ようやく披露宴もクライマックス。 あやめと裕作がゲストに感謝の言葉を述べ、皆が拍手喝采……のはずだが、そこには未来姑や未来裕作、心音、筋肉カリブ、そして時空警察の面々まで揃っている。もう誰がゲストで誰が取り締まる側なのか、よくわからない状態だ。 司会者が最後に「それでは、新郎新婦退場です!」とアナウンス。二人は晴れやかな笑みを浮かべ、腕を組んで歩き出す。

 拍手の中、ドアを出たところで――ズズズン! と不穏な振動音。 えっ、何かが起きるのか……? と戦慄するあやめだったが、どうやら式場外の道路を大型トラックが通りかかっただけのようでホッと胸をなで下ろす。 それでもこの数年の経験上、「いつ何が起きてもおかしくない」という不安は拭いきれない。でも、少なくとも今の瞬間は、大切な人に囲まれて幸せを感じられている。それで十分。

 「さ、披露宴も無事に終わったし……」 あやめが小声で呟くと、裕作は苦笑しながら言った。「無事……といえるのかは謎だけど、最高に面白かったよな、この式!」 そして二人は手をぎゅっと握り合う。これから先、どんなトラブルや未来人の襲来があっても、きっと一緒に乗り越えていける。そう思えた。

エピローグ:愛の形はいろいろだけど

 披露宴が終わり、バタバタと後片付けをする間に、時空警視・尾根崎がひそかに未来姑たちを呼び出す。「さて、これから“時空法違反”についてしっかり取り調べますよ!」 「あちゃ〜、やっぱりね」 と観念する未来姑や中年トレンチコート裕作。カリブは「すみません! オレ、また皆さんの弁護に回ります!」と忙しく動き回る。 心音は涙目で「ママ、パパ、ごめん、でも来てよかった……! 大好きだよ!」とあやめと裕作に抱きつく。 あやめは「ありがとう。あなたのおかげで、今日がもっと特別な一日になったよ。……気をつけて帰るのよ!」 心音は「うん!」と笑顔を見せ、時空警察の護送(?)にしぶしぶ従っていく。もちろん、未来に戻ってまたやんちゃをする可能性はあるが、それはもう“未来”の話。 こうして、式場から出ていく未来人たちの背中を見送りながら、あやめと裕作はほっと一息つく。 結局、ハチャメチャで賑やかすぎる結婚式になったけど、なぜか不思議な一体感があった。家族のカタチも愛のカタチも、それぞれ違っていいじゃないか。

 「これから先、どんな未来が待っているかわからないけれど、二人ならきっと大丈夫……いや、大丈夫……だよね? 次こそは静かに新婚生活を送りたいよね!?」

 その夜更け、あやめと裕作は式の荷物を片付けながら何度も笑い合う。 部屋の隅には、未来姑が置いていった電飾花束がまだピカピカ瞬いている。それを眺めつつ、二人はそっと寄り添い、今日一日の激動を噛みしめるのだった。

(了)

 
 
 

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