おひなさまケーキ大騒動 ~ぼんぼり灯る春の嵐~
- 山崎行政書士事務所
- 1月15日
- 読了時間: 7分

1. 新作ケーキのゆくえ
ここは小さな洋菓子店**「きものケーキや」。和の行事に合わせたスペシャルケーキを作ってはファンを喜ばせてきたが、今回はひな祭り**。店内では淡いピンクや緑など春らしい装飾がちらほらと……と言いたいところだが、実際はまだ準備が全然進んでいない。**店主・桜井 菜穂(さくらい なお)**が腕組みをしてケーキのサンプルと睨(にら)めっこしているのだ。
「うーん、ひな祭りのケーキなんだから上品にしたいの。人形は小さく、色合いは淡い感じでまとめる。だけど、なんか物足りないのかしら…」
ぽつりとつぶやく桜井。そこへ新人スタッフ・武田 まいが、まるでパーティ会場を飾る勢いの提案を持ってやって来る。
「店長! こんな可愛いぼんぼりをケーキに刺して、さらにお内裏様とお雛様を大きく据(す)えちゃいましょうよ! SNS映え間違いなし!」
すると桜井の眉(まゆ)がピクッと動き、「ぼ、ぼんぼり? そんな大きい飾りをケーキに刺したら、頭でっかちなだけじゃない……? しかもお内裏様を大きく乗せたら肝心の生クリームが埋(う)もれちゃうでしょ!」案の定、二人の意見は大きく食い違い、店は朝から軽い嵐(あらし)のような会話劇の嵐。
2. 巻き込まれる常連・江口
そんな中、そろりと入って来たのは常連客の江口 純一(えぐち じゅんいち)。仕事の合間に甘いものを食べてリフレッシュするのが習慣だが、いつも店に来ると店主やスタッフのドタバタに巻(ま)き込まれてしまう。今日も「ひな祭りケーキ」をお試しできると聞きつけてやって来たのだが、店内はすでに雰囲気がピリピリ。桜井と武田が「人形は小さい派 vs. 人形は大きい派」で真っ向から対立している真っ最中だ。
武田「こうなったら雛段(ひなだん)をケーキ上に再現すれば、ぜったい映えますって! 一番上にお内裏様、隣にお雛様、下の段に三人官女も…」桜井「そこまでやったらケーキ全体がオモチャ箱みたいになるわよ! 上品さが消えるの!!」
江口が口を挟もうとしても、二人は全く聞いてくれない。仕方なく後ろでコーヒーをすする江口。心中(しんちゅう)では「ぼく、ただ甘いものを食べて癒(いや)されたいだけなんだけど…」と涙目。
3. ライバル店の影と“式部”の噂
そこへ武田がスマホ片手に驚愕(きょうがく)の声をあげる。「店長、大変です! 近所のチェーン店『フェスティバルスイーツ』が“超豪華ひな祭りタワーケーキ”を出すって宣伝してます! すっごい豪華写真がSNSでバズってますよ!」桜井はぐっと唇を噛(か)む。「あの店、いつも派手なデコレーションで客を取り込むのよね。チョコソースにフルーツてんこ盛り…。でもうちは“上品で可憐(かれん)”が信条(しんじょう)だもの。変な派手さなんかいらないわ!」江口は小声で「でもお客さんはやっぱり華やかなものに惹(ひ)かれるんじゃ…」と提案するが、やっぱり誰にも相手にされない。
さらに武田が続けて情報を見つけた。「あと、あの**“式部”**さんが町に来てるみたいなんですよ。ひな祭りに合わせたスイーツを専門にレビューするとか…」式部は「和行事スイーツ」の辛口評論家。特に雛祭りケーキの“和テイスト”や“品の良さ”を重視すると噂されている。桜井は「だったらうちに来てくれれば、私のケーキを理解してくれるはず!」と一瞬喜ぶが、「もし評価が低かったらどうしよう…」と同時に不安も抱(いだ)え、心がざわついている。
4. やってきたライバルと、誤解のトラブル
ドアがチャリンと開き、入ってきたのは有名チェーン「フェスティバルスイーツ」の店長、北川。いつもにやにやと嫌味(いやみ)を言いに来るのが常(つね)で、今日も笑顔で挑発してくる。「おやおや、こちらはまだ“おひなさまケーキ”の飾りで揉(も)めてるんですか? うちはもう完成形で売り出して大人気ですよ~? まぁ、可愛けりゃ何でもいいんですよね、こういうのって!」桜井はカッと頭に血が上り、「何でもよくないわよ! 伝統をきちんと理解した上で上品に仕上げるのが大事なの!」と声を荒(あ)らげる。北川は「はは、ウチは売れればいいんで。派手でインスタ映えすれば若い子は喜ぶんですよー。」と再度ニヤリ。それを聞いて武田も燃え、「確かにインスタ映えは大事です!」と変な共闘姿勢を見せようとするので、桜井が「だからやりすぎダメだってば!」と止めに入り、また店の空気がカオスになる。見かねた江口が「え、えっと…」と声をあげるも、相変わらず誰にも聞かれず空回(からまわ)り。
5. 人形紛失!? さらに大混乱
昼下がり、桜井がひな祭りケーキの最終チェックをしようと、お内裏様とお雛様の砂糖菓子人形を探すが、どこにも見当たらない。「あれ? 武田さん、私が買っといた人形は?」「えっ、えっと…箱にしまってあったはずですよね? …あれ? あれれ?」慌(あわ)てて店内中を探す2人。そこへ買い物帰りの江口が入ってきて、結局彼も巻き込まれ「僕が探しますから…」と店の隅々を探す。そんな最中に通りすがりのお客が入店しては「ケーキありますか?」と尋(たず)ねるが、店主とスタッフは人形探しに必死で上の空。店内は大混乱に陥(おちい)る。北川まで外から覗(のぞ)いて「あらら、やっぱりバタバタしてるみたいね」と嘲笑(ちょうしょう)。桜井は怒りで耳まで真っ赤だが、人形が見つからない限りケーキを仕上げられず、イライラが募(つの)る。
6. クライマックス:正体不明の客は…式部?
そこへふらっと現れた地味な服装の女性。静かに店に入り、試作品の「ひな祭りケーキ」を注文したいと言う。「実は昔からひな祭りに興味があって…どんなケーキを作られてるのか気になりまして」と柔和(にゅうわ)な笑み。店主・桜井は人形が見つからず、仕方なく代わりに武田が買ってきた**“やけにリアルな和人形の顔だけ”**をケーキに載せて出そうとするが、どう見ても不気味…「こ、これしかないんです…すみません…」客はケーキを見て少し引き気味だが、一口食べると「ん? これは…?」と目を輝(かがや)かせる。どうやら味は申し分ないらしい。その瞬間、入店してきた北川がまた嫌味を言おうとするが、客の女性は一瞥(いちべつ)すらせず「とても上品な生クリームですね。甘さ控えめで、クチどけが良い。ひな祭りらしい優しさを感じます」と語り始める。武田と江口が「もしや…」と目配(めくば)せしたところ、店主・桜井はピンと来る。「あなた、もしかして…式部さんですか?」女性は驚(おどろ)いた表情をしながらも、やがて認める。「…はい。行事に合ったスイーツをレビューして回っている者です」と頷(うなず)くと、店内がシーンと静まり返る。
7. 大団円:ひな祭りケーキが認められ、笑顔の春
式部はケーキを完食(かんしょく)し、「人形があれでも(笑)、この生地とクリームの調和には感服しました。もう少し華やかさがあってもいいかもしれませんが、伝統行事の“和”が感じられるので、私は好印象です。」と柔らかな微笑(ほほえ)み。桜井が「派手さはないかもしれませんが、ひな祭り本来の優しい雰囲気を出したかったんです」と素直に打ち明けると、式部は「あなたのこだわり、私は好きですよ」と一言。ライバル店長・北川は「あ、あれ? うちの豪華タワーじゃなくて、こんな地味ケーキが評価されるわけ?」と焦るが、式部は「迫力もいいですが、本来の控えめな上品さもひな祭りには大切なんです」と微笑む。武田は「よかったー! でも店長、じゃあ少しだけデコレーションを増やしてみるのもアリですか? インスタ映えちょっと狙いましょ?」と提案すると、桜井は苦笑しながら「…まぁ、少しならいいわね」と小さく頷(うなず)く。常連・江口は「はぁ……これで落ち着きましたね」と胸を撫(な)で下ろし、「じゃあ改めて、できれば普通の人形が載ったケーキを食べたいんですけど…」と申し出るが、また誰にも聞いてもらえず店じまいの時間に突入。最後は桜井と武田が「これからは“上品+ちょっと華やか”でいきましょう!」と意気込(いきご)み、式部も「楽しみにしています」と応援。北川は「くぅ…!」と悔(くや)しがりながら店を去る。店内には春の暖かい日差しが差し込み、ふと見上げるとぼんぼりをかたどったランプがほんのり灯(とも)り、笑顔になったみんなで**「おひなさまケーキ大騒動」**はめでたく大団円を迎えるのだった。
(了)





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