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ガラスの窓に映る決意

  • 山崎行政書士事務所
  • 2月9日
  • 読了時間: 4分

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1. 朝焼けのビル群

 都心の高層ビルが連なる街並みを、透き通るガラス窓が区切るように見せていた。朝日が淡くビルの壁面を照らし、遠くの高速道路を走る車の列がまるで小さな模型のように感じられる。 オフィスの最上階にある役員室には、一人の女性リーダー――**佐倉麻里(さくら まり)**が佇(たたず)んでいた。まだ社員も多く出社していない静かな空間。 彼女は窓際に立ち、コーヒーの湯気をそっと鼻先で感じながら、目の前の景色を見つめている。「この街を、一歩でもいいから、もっと良い方向に変えたい……」という思いが、朝の澄んだ空気の中で胸に広がっていた。

2. 苦境に立たされたプロジェクト

 佐倉がリーダーを務める新規事業プロジェクトは、顧客獲得が思うように伸びず、上層部からは**「もう撤退するのか?」**と暗に打診されていた。会社のリソースを大量につぎ込んだにもかかわらず、結果が伴っていないのが現実だ。 しかし彼女は撤退する気はさらさらない。商品のポテンシャルは確かにあるし、若いメンバーたちは前向きに改良案を出し合い、新しい可能性を広げようとしている。問題は、どうそれを具体的な成果に結びつけるか――。 「このまま尻すぼみで終わるのは、あまりに悔しい。」 佐倉は、これまでの戦略を総ざらいし、新たな道を模索しようと決意を固め始めていた。

3. チームに訪れる緊張と不安

 午前中、カンファレンスルームで急遽開いた会議には、プロジェクトメンバー十数名が集まっていた。表情には不安や焦りが混じりつつも、彼らの瞳の底には**「何かを変えたい」**という灯が宿っている。 「皆さん、厳しい状況です。」佐倉は落ち着いたトーンで口を開く。「でも……私は信じています。私たちにはまだ戦える力があるって。もう少しだけ知恵を集め、もう少しだけ粘りましょう。」 社員の一人が手を挙げて、「正直、数字が良くないのは事実ですけど、ユーザーの声をもっと拾う仕組みを導入すれば、改良の方向がハッキリするはずです!」と熱を帯びた提案をする。佐倉はそれにうなずき、ホワイトボードに大きく項目を書き留めた。

4. ガラスの窓に映る自分とチーム

 会議後、同僚の一人が「大丈夫ですか? 佐倉さん。プレッシャーがすごいでしょう?」と声をかけてくる。佐倉は笑顔を返しつつ、「みんなも同じだよ、私だけじゃない。ありがとう」と言葉少なに応じた。 オフィスの通路を歩きながら、ガラスの壁に映る自分とチームの姿が見える。時折、社員たちの明るい声が聞こえ、「もう一度頑張ろう」と前を向く雰囲気が生まれているのを感じた。彼女は内心ほっとし、「踏ん張るなら今だ」と再び決意を固める。

5. 小さな打開策と新たな希望

 翌週、佐倉は個人顧客向けの新しいプロモーションを打ち出し、細やかなチューニングを施した商品デザインをリリースする。SNSを活用した口コミキャンペーンもスタートし、新たなユーザーが増え始めたという報告が入ってくる。 まだ大きな数字には至っていないが、変化の兆しは確かに見える。メンバーたちも顔をほころばせ、疲れた表情の中に小さな達成感をにじませる。何より、彼らが再び意欲を取り戻している点が佐倉にとって何より嬉しかった。

6. 夕景の街並みとリーダーの決断

 その日の夕方、佐倉はオフィスの大窓から街を見下ろし、染まる夕焼けをぼんやりと眺めていた。巨大なビル群の間を車のライトが行き交い、遠くにはタワーのシルエットが小さく見える。 「もし成功したら、この景色も少し違って見えるのかな……」 彼女は思わず呟いた。成功が確約されているわけではないし、失敗のリスクは大きい。だが、あの日、チームが見せた輝きは本物だ。自分がリーダーとして受け止めるべきは、**失敗を恐れずに前へ進む“背中を押す存在”**になることではないのか――。

エピローグ

 夜が降りてビルの窓に明かりがともり始める中、佐倉はデスクに戻り、ノートに一行だけ言葉を書き綴った。「大丈夫。私たちにはまだ力がある。」 その短いフレーズに、自分でも不思議なほどの勇気と希望が沸き上がってきた。彼女はパソコンを開き、新たな提案書をまとめる作業に取りかかる。その瞳には、これまで以上に力強い光が宿っていた。 どんなに厳しい状況でも、人が集まってアイデアを出し合えば、道は開けるかもしれない――リーダーとしてそう信じることが、何より大切だ。これから先、困難は続くだろうけれど、彼女はもう決めていた。「この街を、一歩でもいいから、良い方向に変える」。 ビルの窓から見える街並みは夜の光に包まれ、佐倉の顔をかすかに照らし続けている。彼女は自分の心にもう一度誓う。「勇気を出して明日へ進もう。希望という名の光を、私たちのプロジェクトに注ぎ込むんだ。」

(了)

 
 
 

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