top of page

タイムスリップ夫の逆襲!?〜坂口あやめの悲喜こもごも8:初出産!? カオス分娩室にタイムパニック!〜

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月25日
  • 読了時間: 11分



ree

1.いよいよ出産間近…だけど平和?

 老舗出版社「米星社」の文芸編集者・坂口あやめ。 未来からやってくるトレンチコート族やスパンコールコート姑、そして意味不明なほどマルチに働く筋肉配達員・カリブ――過去に散々、時空を超えた騒ぎに巻き込まれてきた彼女だが、ここ数か月は実に穏やかだった。

 なにしろ、あやめのお腹の中には新しい命が宿っている。出産予定日はもうすぐ。 夫・裕作はライター業を頑張って稼ぎを安定させようとし、あやめ自身も産休に入り自宅でのんびり過ごすことに。 「ああ、やっと落ち着いて子育ての準備ができる……」 ベビー服を洗濯し、育児本を読み、ベビーベッドを組み立て……と、ごく普通の「出産前の夫婦」らしい日々を満喫。さらにここ数週間、未来からの連絡は一切ナシ!

「よかった……。毎度このタイミングで変な人が来るから正直ビクビクしてたけど、今回はほんとに静かだなぁ」 あやめは嬉しそうにお腹をさすりながら、ほほえむ。 しかし、過去の経験上「何も起こらないはずはない」という妙な勘が働くのも事実。――その勘は、予定日が近づくにつれ、見事に的中するのであった。

2.陣痛かと思いきや…まさかの時空アラート?

 出産予定日まであと1週間。 夕飯を食べ終わったあやめは、少しお腹が張るような痛みを感じて「お、もしかして陣痛の前兆かな!?」とドキドキ。 「裕作! 念のため入院の準備して!」 裕作も「あ、わ、わかった!」と慌てて病院に電話。いよいよ来たか――と一瞬ピリつくが、その痛みはすぐに消えてしまい、「なんだ、前駆陣痛かも?」と一安心。 ところが同じタイミングで、バリリッ! という異音とともに家の廊下に謎の亀裂のようなものが走った!?

「へ? い、今の音、何……? 壁が割れた?」 あやめと裕作が震える声で廊下をのぞき込むと、壁の一角がまるで“空間ごとヒビが入った”ように、うっすら青白く光っている。そこから、なんと人影がずるりと這い出してきたのだ!

「ひぃいいいっ!! な、なにが出るの!?」 戦慄する二人の前に現れたのは、ジャージ姿でリュックサックを背負った中年男性。トレンチコートでもなければスパンコールコートでもない、しかし明らかに普通じゃない登場方法。 その男は顔を上げ、恐縮したようにペコペコ頭を下げる。

「す、すみません、壁壊しちゃって! ぼく、“時空修理人”の**浜子(はまこ)**っていいます。えっと、坂口あやめさんのお宅で“未来からの亀裂”が見つかったって報告を受けまして……修理に来ました!」

 時空修理人……? なんでも、これまであやめ宅に未来人が何度も出入りしていた影響で、家の壁(というか、この“時代の壁”)が歪み始めているという。浜子はその修理とメンテナンスをするために派遣されたらしい。 あやめは陣痛よりも何よりも、もう笑うしかない。「そんなサービスあったの!? よく考えたら、こんなに時空の穴を乱用してたら、そりゃ家も時空もボロボロになるわよね……」

3.「時空修理人」の仕事とは?

 翌日、玄関先に脚立を立て、浜子(ジャージ姿の中年男性)は特殊な機器で壁をスキャンしている。 「うーん、これは酷い亀裂ですねぇ。あっちの窓際にも微弱な時空ゆがみがありますよ。あと、キッチンの床下にもトレンチコートが出入りした跡が……」 トレンチコートが出入りした跡って何だよ!? と突っ込みたいところだが、どうやら壁や床に残る“未来波動”を検知しているらしい。 「このまま放置すると、分娩室に行くタイミングでまたトラブルが起きるかもしれません。時空が安定しないと、うっかり産院が“別の時代”につながる可能性も……」 あやめも裕作も耳を疑う。「産院が別の時代!? そんな恐ろしいことあるの!?」

 しかし、これまでの経験を考えると、もはや「あり得るな」と思ってしまう自分が怖い。 浜子は「まずは修理部品を取りに、一旦未来工場へ戻りますので!」と、突如廊下の亀裂に飛び込むようにして消えていった。 「いやいや、また家に穴開けて行っちゃった……。」 あやめはお腹をなでながらため息。こんな状態で本当に出産して大丈夫なのか?

4.陣痛スタート! しかし時空破断のアクシデント

 しかし、出産のタイミングは待ったなし。 数日後の深夜、ついに本格的な陣痛があやめを襲う。「いたたたた! もうこれは本物だわ、裕作、病院行くよ!」 裕作は慌ててタクシーを呼び、あやめを支えながら玄関へ。ところが――運悪く(もはや当然?)玄関付近の壁がまた光り出し、亀裂が広がっているではないか!

「うわぁっ!? これは浜子さんの修理が間に合ってないのか!?」 バリバリバリ……と不気味な音を立てて空間が裂け、そこから見覚えのある筋肉配達員――そう、カリブが転がり出てきた。

「ふごっ! い、いってて……あ、やっぱりここか……あやめさん、大丈夫ですか!?」

 あやめはお腹を押さえてうめきながら「か、カリブさん、なんでまたこんな穴から……!?」と叫ぶ。 カリブは「あ、オレ、時空警察の要請で修理補助に来てたんすよ。そしたら急にズゴゴゴって亀裂が広がって、気づいたらこっちに……」とバツが悪そうに頭をかく。 「あの、そんなことより早く病院に行かないと……痛い痛い痛い!」とあやめは顔をしかめる。 しかし玄関のドアまで行こうにも、カリブの巨体と“亀裂”が塞ぐ形になってしまい、迂闊に近づくと巻き込まれそうだ。 「ちょ、ちょっと待ってください! 俺がドアをこじ開けて外に出られるようにしますんで!」 カリブが力任せに玄関脇の亀裂を押さえ込んだところ、バチバチッと火花(?)が散り、空間が大きく揺れる。

「いやぁぁあ!! また別の未来人が飛び出してきたりしないでよォォ!!」 あやめの悲鳴がこだまする。すると、案の定というべきか、亀裂の中からスパンコールコートをまとった姑……ではなく、そのコートを引きずるように抱えてきょとんとしている中年トレンチコート版・裕作(未来ver.)がひょっこり顔を出すではないか!

「お、おい、母さんのコートが勝手に動き出して……どこへ繋がったかと思えば、ここか!」 てんやわんやの修羅場が玄関で繰り広がる。そんな中、あやめの陣痛はどんどん強くなり――「も、もう我慢できない、やばいってば!」

5.突如姿を現す“時空修理コンビ”と緊急対策

 このままでは家を出られない!? そう思った刹那、廊下から浜子(時空修理人)が再び登場。さらにその横に、同じジャージを着た女性がいる。 「やべーな! これは緊急修理モードだよ、浜子!」 「任せろ、神田(かんだ)! 俺たちの修理スキルを見せてやろう!」

 どうやら浜子&神田の“時空修理コンビ”らしい。二人は慣れた手つきで腰に下げている“未来ドリル”を起動し、亀裂周辺をビリビリと溶接(?)し始める。すると、不気味に光る空間の穴が徐々に収縮していくではないか。 カリブも「オレが入り口を押さえておきますんで!」と筋肉をフル稼働。中年トレンチコート裕作(未来ver.)はスパンコールコートを抱えて右往左往。 もうカオスすぎてわけがわからないが、あやめと現代裕作はひたすら「早く……早く通れるようにして!」と叫びつつ、陣痛に耐える。

「そろそろですよ、坂口さん!」とカリブが慌てた様子。「これ以上長引くと、ここで産まれちゃうんじゃ……」 それは困る! 部屋中、時空亀裂と怪しいオーラが満ちるこの場所で産まれたら、子どもの将来に何の影響があるかわからない。 あやめは必死に祈る。「神様、仏様、時空修理人様、なんでもいいから早くしてえええ!!」

6.間に合わない!? ならば“宅配出産サービス”を…

 しかし、玄関周辺が封鎖状態でタクシーはまだ先だし、このまま家で出産するのはリスキーすぎる。 「ちょっと! どこかから助産師さん呼べないの!?」とあやめが狼狽えると、カリブが「実は俺、宅配サービスで“訪問助産師”の業者とも提携してるんすよ。呼んでみます?」と、いつものマルチワークを発動。 「え、そんなサービス本当にあるの? というか今から来るの間に合うの?」と半信半疑だが、もう頼るしかない。 カリブがスマホを取り出し、慣れた様子でチャットアプリに打ち込む。「えーと……『緊急出産対応、今すぐ自宅へ!』と……」 すると1分もしないうちに、「向かいます!」という返信が。

「は、早っ!」と驚くやいなや、ドンドンドン! と激しいノック音が玄関ドアの外から聞こえた。 「おお、来た来た!」とカリブが喜ぶが、問題はまだ玄関周辺が時空亀裂で封鎖されていること。 時空修理コンビの浜子&神田が急ピッチで溶接を進めると、ちょうどドアのあたりだけが少しずつ安全なスペースに。中年トレンチコート裕作(未来ver.)も「ここはおれがコートで風除けを……」と謎のサポートに徹する。

「よし、これなら開けられる!」と裕作がドアを開けると、そこにはがっしりした体格の女性助産師がタタッと入ってくる。「お待たせしました! ‘ウルトラ助産師・松浪(まつなみ)’です! さあ、産みましょう!」 勢いのある声が家中に響き渡り、あやめは「あ、あなたが来てくれたのね……た、頼む……!!」とすがりつく。

7.カオス分娩室と化すリビング

 結局、玄関の時空亀裂は修理コンビの活躍でどうにか封印されつつあるが、外に出るには時間がかかる。 助産師・松浪の判断で、「もう病院に行くには間に合わない。ここで産むしかないわ!」と即決。 あやめはリビングに運ばれ、臨時の分娩室モードへ。ソファを倒してビニールシートを敷き、毛布や枕を用意して……まさかの自宅出産がスタートしようとしているではないか。

 「わぁぁ! 本当にここで産むのね!?」 「が、がんばってあやめ! 俺、ちゃんと手を握って支えるから!」 裕作が必死に励ます中、あやめは陣痛の波に合わせて呼吸を繰り返す。 この修羅場をあろうことか“見届け”しているのは、筋肉カリブ&中年トレンチコート裕作(未来ver.)&スパンコールコート(中身は姑じゃないが…)&時空修理コンビ。 もはや何がなんだかわからないが、助産師・松浪は慣れた手つきでテキパキと指示する。

「パパ、タオルとお湯をお願い! あと、筋肉のあなた、外から変な未来人が入ってこないよう見張ってて!」「了解っす!」とカリブがビシッと敬礼。 中年トレンチコート裕作(未来ver.)は「俺は何すれば……? じゃあ、とりあえずコートで目隠しか? いや、いらん!?」と混乱気味。

8.新しい命の誕生と、奇跡の静寂

 とんでもないカオスの中、あやめは痛みに耐えながら必死にいきむ。 「も、もうだめ、力尽きそう……」と弱音が出かかるが、松浪の「大丈夫! ママは強いんだから!」という力強い声と、裕作の「愛してるよ、あやめ……!」という涙声に支えられる。 そして幾度かの激しい陣痛の波を乗り越え――ついに、産声が上がった。

 「おぎゃああああああ!」

 途端にリビングが静まり返り、誰もが息をのむ。 筋肉カリブも、中年トレンチコート裕作(未来ver.)も、時空修理コンビさえも、その瞬間をかたずを飲んで見つめている。 「出た……! かわいい女の子よ!」と松浪が伝えると、あやめはぐったりしながらも顔をほころばせる。「女の子……そう、嬉しい……!」 裕作は号泣してしまい、「ありがとう、あやめ……お疲れさま……」と何度も頭を下げる。

 かくして、まるで戦場か何かのような惨状の中ではあるが、新しい命は無事に生まれた。未来人やら筋肉やら謎の修理屋やら、いろいろ見守られての出産。ある意味、**唯一無二の“カオス分娩”**と言えるだろう。

9.すべてが落ち着いたあとに

 その後、修理コンビは完全に亀裂を封鎖し、カリブは後片付けと助産師・松浪のフォローに回る。 中年トレンチコート裕作(未来ver.)は、「生まれたばかりの子を見ると、なんだか感慨深いな……」と涙ぐみながら、「そろそろ俺も未来に戻るよ。あとは母さん(未来姑)とか、妙な連中が来ないよう見張っておくから!」と静かに去っていった。 何人もの未来人が乱入してきた結果、珍しく誰も夫婦ケンカどころか、皆が協力し合ったのは皮肉ともいえるし、奇跡ともいえる。

 しばらくして落ち着いた頃、あやめはソファの上で生まれたばかりのわが子を抱きしめる。裕作も横でそっと頬を寄せ、「本当に……よくがんばってくれたね……」と愛おしそうに頭を撫でる。 あやめは微笑みつつ、小さな小さな手を見つめる。「未来でいろいろあったけど……私たちがこの子をちゃんと育てていこう。きっと、この子の笑顔があれば、Wi-Fiパスワードの問題も、ネギ放置の問題も、なんとかなる……よね?」 裕作はうなずいて言う。

「うん。俺たちはこの子とともに成長するよ。たとえ未来から誰が来ても、どんなトラブルが起きても、この家族を守っていくから……」

 小さな産声がまた一つ響いて、辺りは静かであたたかい空気に包まれる。自宅のリビングとは思えない神聖な余韻――時空の亀裂すらも収まって、ほんの少し“新しい家族”の穏やかな時間が訪れた。

エピローグ:ようこそ、私たちの未来へ

 こうして、坂口あやめと裕作のもとに可愛い女の子が誕生した。 後日談によれば、あの“時空修理人”コンビが完全にトラブル箇所を封鎖したおかげで、家に新たな歪みは発生せず、そろそろ時空警察からも「しばらく平穏そうですね」と太鼓判が出たとか。 もちろん、またいつか遠い未来から何かしらの乱入があるかもしれない。しかし、そのときは夫婦とこの赤ちゃん、そして周囲のみんなで乗り越えればいい。大丈夫、すでに最強メンバー(?)だし。

 あやめは抱っこしながら小さな顔をのぞき込み、「あなたは、未来でいろいろ言われてた‘心音(ここね)’……なのかな? ううん、まだ名前は正式に決めてないけど……」と思いを馳せる。 いずれこの子が歩き、笑い、時には泣いて、そして未来に存在した“心音”に繋がるのかも……そう考えると、不思議で仕方ない。

 けれど今は、「家族になれた」という奇跡を噛みしめていたい。 たくさんの波乱を乗り越えた末に手に入れた、尊い命。あやめと裕作は、ふわふわの産着にくるまれた娘を見つめ合いながら、しみじみと幸せを感じていた。

 「ようこそ、私たちの未来へ——これからは、もう少し“普通”でもいいから、静かに、でも笑顔いっぱいで暮らしていこうね」

 窓の外には優しい朝日が差し込み、次なる一日が始まろうとしている。そこにトレンチコートやスパンコールの影は見えないし、筋肉配達員もいないし、時空の亀裂ももう消えた。 聞こえるのは、新生児のかすかな寝息と、幸せそうな夫婦の笑い声——それは、**とびきりドラマチックで、何より尊い“家族の始まり”**の音だった。

(了)

 
 
 

コメント


bottom of page