タイムスリップ夫の逆襲!?〜坂口あやめの悲喜こもごも10:未来からおむつドローン襲来!?〜
- 山崎行政書士事務所
- 2025年1月25日
- 読了時間: 10分

1.平和な育児生活のはずが…?
老舗出版社「米星社」の文芸編集者・坂口あやめ。 彼女はこれまで、未来から来た中年トレンチコート夫やスパンコール姑、筋肉配達員兼・時空警察員など、数々の“時空トラブルメーカー”に振り回されてきた。 しかし今は、愛する夫・楓井裕作とともに生まれたばかりの娘(通称:ベビーあやめ、または仮名・心音)を育てる毎日。未来人の襲来もここしばらくは途絶え、**「ようやく安定した育児生活!」**を謳歌している。 ――はずだった。
それでも育児は大変。夜泣き、おむつ替え、ミルクの準備……寝不足でふらふらになることもしょっちゅうだが、先日来てくれた“未来人ベビーシッター”・橘アヤコの力もあって、何とか軌道に乗り始めた。 「やっと平和にゆっくり、家族三人で過ごせるわね……」 あやめは夕暮れのキッチンで、お湯を沸かしながらしみじみつぶやいた。ネギは冷蔵庫でちゃんと管理済み、Wi-Fiパスワードは夫婦で話し合ってこまめに更新。いまのところ離婚危機の気配は1ミリもない。
2.怪しい小包が届く
そんなある朝。玄関のチャイムが鳴り、あやめが出てみると、いつもの筋肉配達員・カリブの姿はない。代わりに見知らぬ若い配達員が大きめのダンボールを抱えていた。 「あの、楓井裕作さま宛てのお荷物です。差出人は……“未来在住・香椎(かしい)ドローン物流センター”……? え、なんだこりゃ?」 配達員さん自身も怪訝そうに首をかしげるが、ラベルには確かにそう書かれている。 「こ、これは……まさかまた未来関連グッズ!?」とあやめは顔を青ざめる。
とりあえず受け取ってリビングに運ぶと、夫の裕作が「俺、こんなの頼んだ覚えないよ……!」と怯えながら、恐る恐る箱を開ける。 中には、説明書らしき紙とともに、小型のドローンらしきメカが2機。どこかメルヘンなピンクとミントグリーンの色合いをしており、なぜか**“OMUTSU”**という文字がプリントされている。 付属のメモにはこう書かれていた。 > 「このたびは“未来式おむつドローン”サンプル品をご注文いただきありがとうございます! > 使用にあたっては簡単な初期設定が必要です。 > ※本機は試作段階のため、不具合が起こる場合があります。ご了承ください。 > 差出人:香椎ドローン物流センター(2125年)」
「ご注文いただき……って、俺たち頼んでないよ!?」と裕作は混乱。 あやめも口をへの字に曲げる。「またどこかの未来人が勝手に送ったのかしら……? どうせ怪しい“育児サポート商品”か何かでしょ……」
3.試しに動かしてみたら大変なことに
とはいえ、せっかく送られてきたし、使い方も気になる。 試しに説明書通りにアプリをダウンロードし、スマホでドローンを操作してみると、意外にも可愛らしい音楽とともにプロペラがぶわん! と回り始めた。 アヤメの赤ちゃんがちょうどおむつ替えタイムだったので、やんわり泣き出しているところへ、このドローンたちがスーッと近づく。すると、ドローンの下部からアームが伸びてきて、おむつ(新品)を自動で取り出して差し出してくるではないか!
「え、すごい……勝手におむつ用意してくれるの?」 さらにもう片方のドローンが、おしりふきをシュッと吐き出し、汚れたおむつを回収できるボックスまで展開。なんだこれは――まさに“未来式おむつ交換サポートシステム”! あやめと裕作はびっくりしながらも、「めっちゃ便利じゃん……!?」と思わず感動。 実際、赤ちゃんの世話をしながら必要な道具をひとつひとつ用意するのは大変だが、ドローンがあらかじめスキャンして最適なおむつサイズと枚数を用意する……最高じゃないか。
しかし――この“便利”は束の間。数時間後、ドローンは次第に挙動がおかしくなっていく。 ビジビジ……と端末がノイズ音を発し、急にリビングをくるくる旋回し始めてしまった。 「おいおい、何やってんだこいつら!?」 あやめと裕作が追いかけようとした矢先、ドローンが「勝手に近所に飛び出す」という最悪の暴走を開始する。 「だ、ダメェ! 外に出ちゃだめーー!」
4.ドローン大脱走! 近所が騒然
すっかり暴走モードに入った2機の“おむつドローン”は、窓からスルリと抜け出し、マンション廊下からエレベーターまでひたすら飛び回る。 管理人さんが驚いて「え、何これ、新手のテロ?」と青ざめている間に、ドローンはビルを出て公道に――。 「うわああ、捕まえなきゃ! おむつ配達ロボが近所中に恥をさらすなんて!」 あやめは産後間もない身体を押して走り出そうとするが、さすがに無理がある。そこへ現れたのが筋肉配達員・カリブだ。偶然にも“定期おむつ配送”に来てくれていたのだ。
「どうしたんすか、あやめさん!? 顔が真っ青だ……」 「あのドローンが勝手に飛んでいっちゃって……うちのマンション出ちゃったのよ!」 カリブは胸を張り、「任せてください! こういう時のための“配達員追跡術”がありますから!」と早口で言い、猛ダッシュでドローンを追いかけていく。 「そ、そんな術があるんだ……」とあやめと裕作は唖然。とにかくカリブに任せるしかない。
5.カリブVSドローン、追跡バトル勃発
街中では、ドローンが頭上をビュンビュン飛び回り、通行人たちが「え、何あれ!?」「おむつがぶら下がってるんだけど!?」と騒然となっている。 そこをカリブが「止まれーっ!」と叫びながらアスリート顔負けの速度で追い回すが、ドローンは意外にも素早く曲がり角を回避。 しかも、途中でドローンのAIが「次の目的地:オムツストックが不足している家庭をサーチ…」などと音声を発し、近くの子育て世帯の家を勝手に訪れようとするではないか。
「待てー! こらー!」 何とかドローンの真下に走り込み、カリブがジャンプして掴もうとするが、あと一歩届かない。すると、ドローンが非常用のシールドらしきものを発動し、カリブの手を弾き返す。 「うおっ……なんて強力なんだ、コイツ!」とカリブもたじろぐ。 街をさまようドローンには“おむつ回収ボックス”が開いた状態で、へんてこなメロディーが鳴りっぱなし。「♪おむつ〜おむつ〜交換しましょ〜」という何とも言えない間の抜けたBGMが流れ、近所の人はぎょっとして大混乱。
6.なぜこんな暴走? そこに現れる謎の「未来の配達員」
一方、あやめ宅では、泣き止まない赤ちゃんをあやめが必死にあやしている。裕作はスマホで必死に「このドローンのメーカーに問い合わせよう」としたが、もちろん未来の番号など分かるわけがない。 すると、突然インターホンが鳴る。「こちら、香椎ドローン物流センターの者でーす!」 あやめと裕作はビクッとなる。恐る恐る玄関を開けると、今度は小柄な女性が立っていた。未来風のロゴ入りつなぎを着て、背中には大きく「香椎(2125)」とプリントされている。 「はじめまして、私**“仁科リン”**と申します。未来から飛んできたんですけど……もしかしてうちの試作ドローンが届きました? あれ、サンプル配送リストを間違えちゃったみたいで……」
あやめは狼狽えながらも説教モード。「間違えちゃった、じゃないですよ! 勝手にこっちに送りつけないでください! おかげで大暴走して、今カリブさんが追いかけてくれてるんですけど!」 リンは深く頭を下げ、「すみません! 未来じゃ“ドローンで育児を超便利に”が当たり前になっていて、試作品を過去にモニターとして送り込む計画があったんです……が、どうやら配達先のデータに不備が。まさかあなた方のとこに紛れ込むとは……!」と平謝り。
7.カリブからの緊急連絡
ピリリリ…とあやめのスマホが鳴る。カリブからだ。 「もしもし!? あ、どう? ドローン捕まえられた?」 カリブは息を切らしながら、「今、近所の公園まで追い詰めたんすけど、一部がハッキングされたのか、制御不能な状態っす! ヘタに手を出すと爆発…じゃないけど、かなり危険そう。…ぎゃあああ!」 途中で何やら叫び声と共に途切れてしまう。 あやめと裕作は背筋が凍る。「まずい……このままじゃ大惨事になりかねない!」
すると横でリンが言った。「あ、たぶん“自己防衛モード”が作動したんだと思います。試作品は設計ミスで、一度バグると‘過激防衛’に走る仕様があって……」 「なんでそんな危険なものを送るのよ!」とあやめは青ざめる。 リンは頭を抱え、「もうこうなったら、プロトコル修復キーを使うしかないですね。私がそのキーを持ってますから、公園に行って直接ドローンを停止させましょう!」と意気込む。
8.公園でのドローン対決、そして“愛の一喝”
かくして、リンと裕作が急いで公園へ向かうことに。あやめは産後で外出しづらいので、赤ちゃんを抱え自宅待機。 公園に着くと、そこはもうカリブとドローンの追いかけっこで大混乱。筋肉カリブが腕まくりして「うおりゃあ!」と跳びかかっては弾き飛ばされている。 ドローンは謎のアラーム音を鳴らし、「ここは危険です…おむつ交換を開始…」とか意味不明な台詞を発して回転中。
「もう、あんたたち、いい加減にしなさい!」 リンが大声で叫ぶと、ドローンが一瞬ピタリと動きを止める。そこに素早く近づき、リンがポケットから出した“修復キー”をドローンの端末にカチッと差し込む。 すると一気にドローンのライトが消え、プロペラもシュルルと停止。数秒後、ふにゃり…と地面に降りて、完全に動かなくなった。 「や、やった!」とカリブが脱力してその場にヘタり込む。「やれやれ、何とか大事故にならなくて済んだっす……」
裕作も安堵して額の汗をぬぐう。「ふう…よかった、最悪の事態は回避できたみたいだね」 リンは申し訳なさそうにドローンを抱え、「ごめんなさい、こんな危険な試作品が紛れ込むなんて……私たちが管理を徹底しなかったせいです。あとで時空警察にも報告しなきゃ……」としょんぼり。 カリブは「ちゃんと報告して下さいね、俺も一緒に行くんで。今度は言い逃れできませんよ〜」と言いつつ、半ば呆れた表情だ。
9.そして、ちょっとだけ“おむつドローン”が恋しくなる
翌日、リンが再びあやめ宅を訪れ、きちんと謝罪。 「本当にすみませんでした。ご迷惑をおかけして…。念のため、もう1機のドローンも回収させていただきますね」 あやめは赤ちゃんを抱きながらため息まじりに頷く。「まぁ、あの暴走は困るけど、実際に使ってみたら便利だったのよね。短い時間だったけど、ミルクやおむつを自動で用意してくれるなんて、育児がラクになりそうだったのに……」 するとリンが微笑む。「わかります。未来では育児ドローンが普及していて、もう当たり前の光景なんです。でも、その分、親が赤ちゃんと接する時間が減ってしまうことも課題になっているんですよ」
あやめと裕作はハッとする。「そっか……確かに便利なだけじゃ、育児の醍醐味を味わえなくなるかもしれないね」 大変だからこそ、時には笑ったり泣いたり、夫婦で工夫したり、そんな時間が愛おしいのかもしれない。 リンは最後に深く頭を下げ、「再発防止のためにも、このプロトタイプは未来で責任をもって処分しますね」と言って、ドローンを抱えて帰っていった。
エピローグ:私たちの手で、おむつを替えよう
騒動は一段落し、おむつドローンは姿を消した。 その晩、あやめは眠そうな赤ちゃんをあやしながら、少しだけ物足りないような、ほっとしたような、不思議な気分に浸っていた。 「手間はかかるけど、この子のために頑張ってるって実感がうれしいんだよね……」と呟くと、裕作も「うん、俺も正直、便利なドローンに頼りたい気持ちはあったけど、やっぱり自分であやして、自分でおむつを替えてあげたいな」と笑う。
ドローンがいなくても、二人の育児はちゃんと回る。夜泣きに翻弄されても、あやめと裕作が力を合わせて乗り越える――それだけで“家族”の絆は深まっていくのだ。 この先、また未来の誰かが妙な育児グッズを勝手に送りつけてくることもあるかもしれない。だけどあやめはもう焦らないだろう。 「私たちの愛は、自分たちの手と気持ちで育むもの。たまに支えられるのはありがたいけど、本当に大切なところは、やっぱり自分たち自身が頑張るべきなんだと思う……」
そう決意しながら、あやめは今日も“泣き叫ぶ娘”を抱きしめる。大変だけど愛しい日常が、マンションの一室に満ちていた。 部屋の隅には、かすかに残されたドローンのローター跡があるけれど……まぁそれは、**いつか娘が大きくなった時に“秘密の思い出話”**として語られるのかもしれない。
——そして今夜も、どこかの時空を行き交う怪しい配達やらスパンコールコートやらが動いているのかもしれないが……それはまた、次のお話で。
(了)







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