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ベラルーシの歌姫

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月7日
  • 読了時間: 6分



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第一章:ベラルーシからの突然の依頼

 ある初夏の朝、**「榎本(えのもと)行政書士事務所」にはいつになく奇妙な空気が流れていた。所長の榎本康生(えのもと・やすお)**は、机の上に散乱した書類をひたすらに捌きながら「もう忙しすぎて“じゃがいも”にも八つ当たりしたい気分だよ!」と意味不明な比喩を口走っている。 そこに、ベラルーシ大使館の職員を名乗る男性が訪れ、「今すぐ通訳を連れてくるから、重要な依頼をしたい」と謎めいた言葉を残した。 榎本は「ベラルーシって、あの“ヨーロッパ最後の独裁”とか言われる国……だよね? あれ? それともジャガイモの国?(失礼)」などと脳内で必死に検索。とにかくとんでもなく遠い国から、何やら大きな仕事が舞い込んでくる予感がした。

第二章:ベラルーシの歌姫、登場

 数時間後、その“重要な依頼人”が事務所に現れた。燦然と輝く金髪に、まるで異国のお姫様のような衣装の女性。名前をエカテリーナ・ズボロドヒナ——通称「カティア」らしい。 さらに、流ちょうな日本語を喋る通訳・スタニスラフがカティアの隣について、「この方はベラルーシで超有名な歌姫。ジャガイモ畑の真ん中でも1オクターブ高い声を出せると評判なんです」と得意げに紹介。 榎本はその説明に「なんじゃそりゃ」とツッコミたい気持ちを抑えつつ、「は、はじめまして……ジャガイモ畑、すごいっすね……」と混乱しながら挨拶をする。

 カティアは柔らかな微笑みを浮かべ、通訳を介して用件を伝えた。 「私、日本でコンサート開きたいデス! 興行許可、先生にお願いしたいデス!」 カタコトだが迫力ある響きに、榎本は思わず背筋を伸ばす。

第三章:興行許可だけじゃない“裏目的”?

 カティアはベラルーシ国内で超人気の歌姫だと言う。ところが、話を聴くうちに、どうやらこのコンサート計画には何やら裏があるらしい。というのも、彼女は日本滞在を長期化させ、どうしても祖国に帰りたくない様子なのだ。 通訳のスタニスラフが困り顔で小声で囁く。 「彼女、祖国で政治的弾圧を受けそうなんです。自由に歌うことを許してもらえないかもしれない……だから……」 榎本は、「こ、これは要するに亡命だな……」と直感する。ナイトクラブの営業許可や風俗営業許可を扱ったことはあっても、国家規模の亡命援助なんて初めて。しかも相手は世界的に有名な“ベラルーシの歌姫”だときた。 正直、“面倒くさすぎるんですけど……?!” と心で絶叫しながらも、榎本は「まずは興行許可を取るしかないよね……」と気を取り直す。

第四章:許可申請の珍トラブル

 早速、コンサート会場やビザ関連の書類に奔走する榎本。ところがここで、カティアの“ベラルーシ感満載”の個性が爆発する。 「この書類、サインが必要デスカ? ベラルーシ語じゃダメ? それならキリル文字にしますデス!」 「先生、私の名義で口座作りたいデスが、預金は“ベラルーシ・ルーブル”でも大丈夫デスか?」 などなど、細かいところで日本の法律や金融システムと噛み合わず、ひっちゃかめっちゃか。

 さらには、母国の料理(ジャガイモパンケーキの“ドラニキ”など)を日本に大量に持ち込みたいという要望が飛び出し、税関で「こんな大量のジャガイモ料理は……」「いえ、彼女、いつも食べないと歌えないんです!」という珍バトルまで発生。 榎本が仲裁しつつ、「もう勘弁してください……」と心で泣き叫ぶ事態が頻発する。

第五幕:秘密の亡命計画

 一方、カティアの亡命をどう実現するか。興行許可だけでは“長期滞在”に限界がある。榎本は必死に国際法と在留資格の規定を読み耽り、“興行ビザ”を延長しつつ、状況が許せば難民申請か特別在留許可を狙う——という複雑なプランを立案する。 だが、在日ベラルーシ大使館は彼女が亡命を企んでいることを警戒している。ラフなのに目力の強い大使館職員たちが、やたら榎本の事務所を見張っているようなのだ。 ある日、事務所の窓から外を見下ろすと、スーツ姿のベラルーシ人らしき男性がジャガイモを齧りながらこちらを監視しているのを発見。榎本は思わず「ベラルーシならではの監視方法か!?」と吹き出しそうになったが、危険を感じるのも確かだ。

第六幕:コンサート直前の騒動

 コンサート前日、カティアはたまたまテレビに生出演し、“ベラルーシの母国語”で自由を象徴する歌を歌ってしまう。これが大反響を呼び、“ベラルーシ国内では放送禁止曲扱いの歌”だと騒がれ、亡命の噂が世界中に拡散。 慌てた大使館職員たちが「カティアを帰国させろ!」と大声で押しかける中、榎本とスタニスラフは必死に彼女を隠し、コンサート会場へ連れて行く。 バックステージでカティアは不安そうに呟く。 「先生、私、逃げるのやめて帰国した方がいいデスか? こんなに騒ぎになるなんて……」 しかし榎本は眉をキリリと上げて言う。 「カティアさんが歌いたい歌を歌うために始めたんですよね? だったらここは最後まで突っ走りましょう! 法は私が何とかする!」

第七幕:大使館との攻防と大合唱

 コンサート当日。会場には大勢のベラルーシ人留学生や、ジャガイモのコスプレをした日本人ファン(なんでやねん)、さらにはメディアが詰めかけている。入り口には大使館職員が集団で立ちはだかり、「彼女を返せ!」と叫ぶ。しかし榎本は、さも当然のように書類を突きつける。 「興行ビザと在留許可証、改めて有効性確認済みです。警察にも届け出済み。公序良俗にも反していません。これでも文句ありますか!?」 職員たちはまさかの反撃に口をつぐみ、仕方なく退散。カティアは無事ステージに立つ。 彼女が歌い出すと、その透き通る高音に観客は一斉に息を呑む。曲は、ベラルーシの伝統的なフォークソング……だが途中から“自由への讃歌”へと変わるという大胆なアレンジ。客席でジャガイモの扮装をした日本人が涙を流しながら手拍子を打つ姿は、シュールかつ感動的。

終章:笑いとともに

 コンサートは大成功を収め、カティアは一躍日本のメディアでも話題に。彼女の亡命申請は国際世論やジャガイモ愛(?)の後押しもあってか、特別措置で受け入れられることになった。 その後、カティアは日本に定住し、ジャガイモ料理専門レストランのプロデュースまで始めるとか始めないとか。榎本は「もう、ジャガイモ見るたびにベラルーシを思い出すよ……」と苦笑するが、無事に彼女の自由と歌声を守ることができたことを誇らしく感じている。 異国の地で笑顔を取り戻した歌姫が、今夜も舞台で高らかに歌っている――。そして客席では、ジャガイモ帽子を被った大使館職員らしき人がこっそり手拍子をしているかもしれない。 "ベラルーシでも笑いを届ける"——そんな奇妙で愉快な物語は、まだまだ続くのかもしれない。

 おしまい。

 
 
 

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