ベルギー東部の扉――リエージュのまち歩き
- 山崎行政書士事務所
- 2月3日
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ベルギーのワロン地域に位置する**リエージュ(Liège)**は、メヘレンやアントワープほど観光のメジャー地ではないかもしれない。しかし、ドイツやオランダとの国境にも近いこの街は、国際的な雰囲気と多彩な歴史が交錯する魅力的な都市である。昔は「高等司教領」として宗教的にも政治的にも独立した色彩を持っていたため、他の地域とは少し違う文化や空気が息づいている。
1. メーズ川と丘の風景
リエージュの街は、ベネルクス最長の川である**メーズ川(Meuse)**沿いに広がっている。川面に映る町並みと、石造りの橋が織りなす風景は、初めて訪れた者に優雅な印象をもたらしてくれる。 川辺の遊歩道ではジョギングやサイクリングを楽しむ人々が多く、カフェのテラスからはメーズ川を眺めながらのんびり過ごせるスポットも多い。少し先には丘があり、そこに登ればリエージュの街並みや教会の尖塔が一望できる。
2. リエージュ・ギユマン駅の近未来感
鉄道でリエージュに降り立つなら、まず目を奪われるのは、スペインの建築家サンティアゴ・カラトラヴァによって設計された近未来的なデザインの**リエージュ・ギユマン駅(Liège-Guillemins)**だ。曲線を活かした白い鉄骨とガラスの構造は、ベルギーの古都に突如として現れるモダンなアートのよう。 広大なコンコースには自然光が差し込み、訪れる人々はまるで空港ターミナルのような開放感と先進的な雰囲気を味わえる。かつて“産業都市”として知られたリエージュが、文化と現代建築を結びつけている象徴的スポットと言えるだろう。
3. 歴史的中心部――聖ランベルト広場と周辺
街の中心へ足を運ぶと、かつての司教領の名残が感じられる**聖ランベルト広場(Place Saint-Lambert)**が現れる。かつてこの場所には荘厳な聖ランベルト大聖堂が立っていたが、フランス革命期に破壊されてしまい、現在はその基礎部分が広場の下に眠っている。 広場の周辺には市庁舎やクール宮殿(Palais des Princes-Évêques)と呼ばれる司教公領の宮殿跡があり、その重厚な建築は中世から近世にかけてのリエージュの地位と力を物語る。アーチの回廊や石造りのファサードが、司教領時代の権勢を静かに伝えている。
4. 気分爽快なモンターニュ・ドゥ・ビュラン
リエージュで有名な観光名所の一つが、モンターニュ・ドゥ・ビュラン(Montagne de Bueren) という急勾配の階段だ。およそ374段(諸説あり)にも及ぶ階段を一気に上ると、市街地とメーズ川、そして遠くの丘陵が見渡せる絶景が待っている。 毎年秋には「Nuit des Coteaux(ヌイ・デ・コトー)」というイベントが開かれ、夜の階段がロウソクや灯りで華やかに装飾される。幻想的な光の中で階段を上り降りする体験は、リエージュならではの特別な思い出となるはずだ。
5. 地元グルメ――リエージュ・ワッフルとシロップ
ベルギー各地で食べられるワッフルだが、ここリエージュには**「リエージュ・ワッフル」という有名な地元名物がある。粒状のパールシュガーが生地に練り込まれ、焼くと外側がカリッとキャラメリゼされる。小ぶりで食べ歩きにもピッタリだ。 さらに、リエージュでは果物を長時間煮詰めて作る濃厚な「リエージュ・シロップ」**(Sirop de Liège)が地元の誇り。リンゴやナシ、プラムなどの果実を煮詰めてペースト状にしたもので、パンに塗ったり、チーズと合わせたりして味わう。甘酸っぱさと濃厚な香りがあり、料理のソースとしても使われる万能調味料だ。
6. アルデンヌへの玄関口
リエージュは、ベルギーの森と丘陵が広がるアルデンヌ地方への玄関口としても機能している。都市と自然がここで交差し、週末になると、多くの市民がハイキングやキャンプに出かける拠点として利用する。 メーズ川を遡れば、渓谷や岩場が連なる風光明媚な土地が広がっており、カヌーやカヤック、釣りを楽しむ人々も多い。街の喧騒から離れたいときは、列車やバスでアルデンヌの小村へ足を延ばし、大自然の中で過ごすのもおすすめだ。
エピローグ
リエージュ(Liège)――古き歴史的背景と、現代的な文化、そして多様な人々が行き交うベルギー東部の都市。高等司教領時代の名残、ブリリアントな近代建築、川辺の散歩道、そしてリエージュ・ワッフルの甘い香りまで、訪れる者を豊かな刺激で満たしてくれる。 もしベルギーを旅行する機会があれば、ブリュッセルやブルージュだけでなく、リエージュへも足を運んでみてはいかがだろう。街歩きと階段巡り、そしてワッフルでの一息が、旅の思い出に心地よい彩りを与えてくれるだろう。
(了)





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