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丸い空の真ん中で結び目を覚える――パリ、凱旋門の一日

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シャルル・ド・ゴール広場に出ると、空がぐるりと円形になっていた。十二本の大通りが星みたいに放射して、中央にどんと石のアーチ。白い雲がちぎれて流れ、タクシーのクラクションが遠くで短く鳴る。私は思わず車の切れ目を見計らって横断しようとして、すぐに**「やらかし」た。笛を鳴らした警官が指で地面を指す。「Sous‑sol!」――地下通路だ。言われてみれば、足もとに小さな階段の入口が口を開けている。パリは美術館みたいに、正しい入り口をさりげなく**用意してくれている。

地下から上がると、アーチの下はひんやりしていて、車の音が遠い海みたいに小さくなる。床に埋め込まれた無名戦士の墓の炎が、昼でも息をしているのがわかる。花束を抱えた少年が胸を張って前に進み、隣の老紳士が勲章の光を胸に小さくうなずいた。私は帽子を取り、静かに立ち止まる。ここでは誰の言葉も要らない。

ふと横で、風にあおられた私のストールがジャケットのファスナーに噛んでしまった。焦っていると、列に並んでいたマダムが「Attendez」と微笑み、バッグから安全ピンを一つ。端をひとねじりして八の字で留めてくれる。「Voilà, la paix avec le vent.(これで風と和解)」――さっきの地下通路を教わったのと同じトーンで、パリの日常の魔法が一つ増えた。

アーチの壁面には、勇士たちの浮き彫り。とりわけ翼を広げた女性と兵士が進む彫刻の前で、人々が小さく息をのむ。私はそっと口の中で「Aux armes, citoyens!」と唱えて、ふと笑ってしまった。武装するのは心ではなく、今日はピンと結び目だ。

屋上へは果てしない階段。踊り場で息を整えていると、スニーカーの靴ひもがほどけているのに気づく。前にいた青年が振り向き、「Double knot?」と両手で実演してくれた。私は指をまねて八の字の二重結び。たったそれだけで、足どりが少し頼もしくなる。途中の小さな展示で、アーチが1800年代に長い時間をかけて完成したことを知り、階段の長さが急に好きになった。

屋上に出ると、十二本の大通りが下にコンパスの目盛りみたいにのび、車の列がぐるぐると回っている。風が強く、帽子がふわりと浮いた瞬間、隣の旅行者がカメラストラップを貸してくれ、即席の顎ひもを作ってくれた。「Comme ça, ça tient.」私はお礼にキャラメルを半分に割って差し出す。彼は自分のボトルの炭酸水を少しナプキンに含ませ、私のコートについた小さなコーヒーのしみトントン。「C’est pas grave.」――ここでは、小さな直し方がいちばんよく効く。

しばらく眺めを堪能してから降りると、アーチの下では炎の儀礼の準備が始まっていた。ベテランの人たちが旗を持ち、子どもたちが真剣な顔で並ぶ。火は消えないけれど、毎日、誰かが引き継ぐのだという。知らない人たちと肩を並べて見守り、終わると控えめな拍手が起きた。石造りの天井が、その拍手をそっと返してくれる。

広場から外へ出ると、シャンゼリゼは午後の光で蜂蜜色。角のカフェでカフェ・クレームを頼み、パン・オ・ショコラを一つ。隣のテーブルの親子が、クロワッサンを半分こにしてかじっている。視線が合うと、お母さんが微笑み、私の方へビスケットを半分。「Un peu pour vous.」私はポケットののど飴を二つに割って返す。パリでは“半分”が合言葉だと思う瞬間が、意外に多い。

帰りがけ、地下通路の入口で、さっきのマダムに再会した。私がピンを返そうとすると、彼女は首を振り、「次の誰かへ」と手を振った。私はそのピンをバッグの内ポケットにそっと移し、指で結び目を確かめる。今日の出来事――地下への合図、ピンの八の字、二重結びの靴ひも、ストラップの顎ひも、炭酸水のトントン、そして半分この甘さ。どれも大事件ではないのに、石のアーチのリベットと同じくらい、心の中でしっかり効いている。

凱旋門は、勝利の記念碑である前に、毎日の手当ての学校なのかもしれない。正しい入口から入り、風と喧嘩しない結び方を知り、誰かと少し分け合う。次にまたここへ来たら、私はきっと迷わず地下へ降り、ピンを確かめ、Bonjourから始めるだろう。丸い空の真ん中で、今日覚えたやわらかな結び目を、もう一度つくるために。

 
 
 

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