top of page

八咫烏が笑う国へようこそ 〜神武と賑やかな仲間たちの建国ファンタジー〜

  • 山崎行政書士事務所
  • 2月11日
  • 読了時間: 97分


ree

Prologue「あれは日向の国の朝日よりも美しい」

 その時、まだ夜明け前の薄暗い空には、かすかに雲が垂れ込めていた。けれど、とある小さな里で産声をあげた赤子の姿に目をやると、雲間からほんの少しだけ光が差し込んで、その肌を照らし出したのだ。里の人々は口々にこう言った。「な、なんじゃあの光は……。まるで高天原の神々がこの子を覗き込んでるみたいだ!」

 神武イワレビコ——後に偉大な王として名を馳せる、神々の血統を受け継ぐ少年がこの世に生を受けた瞬間である。

神の血を宿す少年

 日向(ひむか)の国といえば、照り付ける太陽と青い海。そして威勢のいい人々が集まる、南国情緒にあふれた場所だ。神武はこの土地で、まるで太陽の子のように伸び伸びと育っていった。 幼い頃から腕白で、近所のおじいちゃんおばあちゃんの家を巡っては、貢物……もとい、おやつをたっぷりともらって帰る毎日。そんな彼を見る村の人々は、いつしか彼の“底抜けの明るさ”に引き寄せられていた。 もっとも、その明るさの裏には、父と母が神の血筋であるという厳粛な事実が隠されていた。村の長老たちは噂している。「いずれこの子は、大きな大きな運命を背負うことになるだろう。いや、神の血筋というのはそういうもんだ」 しかし当の神武本人は、「神々の血を受け継いだらしい」なんて話を特別意識しているふうでもなかった。ただ、いつも通り笑顔を振りまき、皆のために走り回る。むしろ猪(いのしし)が出たと言えば先頭に立って追っ払ってきて、山の幸を仲間と分かち合う“頼れるやんちゃ坊主”にすぎなかったのだ。

周囲を巻き込むリーダーぶり

 そんな彼が少し成長し、10を超える年頃になった頃だ。村の子どもや若者が集まる“高千穂(たかちほ)の集会所”では、何かイベントがあるたびに神武が仕切り役を任されるようになっていた。「みんな! 今日は獅子舞の練習をするって聞いたよ! 俺も一緒にやっていい? いや、むしろ俺が先頭で舞うよね?」 こう言われて、断る者は誰もいない。神武が輪に入れば、そこは大騒ぎの笑い声に包まれ、いつしか人が集まり、まとまっていく。「おいおいアイツ、さりげなく指示出してるけど、誰も反発しないんだよな」「妙に説得力あるのが不思議だ」と、周囲はこっそり感心していた。 天真爛漫な明るさと、強靭な身体能力、そしてなぜかみんなに好かれるカリスマ性。神の血筋のエリートなんて響きとは違う、どこか親しみやすい豪傑っぷり。まさに**“生まれ持ったリーダー”**の資質を、子どもの頃から存分に発揮していたわけである。

一筋の光、遠い地平線

 そんなある日のこと。神武がいつものように山で狩りをしていると、奇妙な出来事が起こった。 朝焼けが辺りを赤金色に染め上げる時間帯、彼はふと空を見上げた。すると、東の空に——まるで道しるべのような細い光の筋が、海を越えてどこまでも続いているように見えたのだ。「なんだ、あれ? まるで、こっちじゃない道を指しているみたいだ…」 神武は思わず呟く。猪狩りに必死な仲間たちは、「何? 飯の匂いでもするのか?」と冗談を飛ばすばかり。だが神武だけは、その光から妙な呼び声を感じ取っていた。

 その日から、彼の中に**“国をまとめる”**というビジョンが少しずつ芽生えはじめる。と言っても、当初の神武はそこまで大それたことは考えていない。「もっと大きな世界を見てみたい。こんな面白い連中と一緒に、俺たちの国を作れないかな」 ただその程度、少年が漠然と思い描く夢物語だったのだ。

 けれど周囲の大人たちは、知ってか知らずか、神武を見つめてはこう呟く。「やっぱりこの子は“神々の御心(みこころ)”を背負う男だ。国をまとめ上げる日が来るんじゃないか」 その予感は、少しずつ、日向の地に広がり始めていた。

国を一つにする“東征”への第一の予感

 そして、神武が15の春を迎える頃。集落の長たちがこぞって神武のもとを訪れた。「ここ最近、各地で騒乱が絶えないと聞く。西の方では大きな勢力争いが起きているし、北の方も怪しい噂が絶えない。もし、そなたの力で皆をまとめられれば、この国はもっと素晴らしいものになるかもしれん」 お偉方がそう言うと、神武はニカッと笑って、いつもの言葉を返すだけだった。「ま、やってみなきゃわかんないよ! とりあえず食料は豊富に持っていこう。皆で楽しみながら進めば、絶対うまくいくって!」

 なんだか深謀遠慮があるというよりは、「あれれ、ひょっとして面白いことになりそう?」くらいの気楽さ。だが、この“能天気な熱さ”こそが、後に多くの豪族や仲間を巻き込みながら、**“日本”**という国を統合へと向かわせる原動力になるのだ——今はまだ誰も知らない。

 気がつけば、朝日に照らされていた神武の背中は、一段と頼もしく見えるようになっていた。遠く東の方角を眺めながら微笑む彼の姿を見て、里の人々は口々に言う。「あれは日向の国の朝日よりも美しい…」

 こうして、神武イワレビコという少年が、国中を巻き込み、そして“日本”という偉大なる共同体を誕生させる物語が、ゆっくりと幕を開けようとしている。そして、その物語のどこかには、三本足の大きな烏、いわゆる“八咫烏”という神秘的な存在が、クックックッと含み笑いをして待ち受けている——そんな不思議な予感が漂う日向の朝だった。

国家主義的な視点を底流に、とはいえ神武少年が見せるのは朗らかで豪快なリーダー気質。これからどんな騒動が起こるのか、そしていかにして彼と賑やかな仲間たちは国をまとめていくのか。「建国ファンタジー」の大きなドラマが、今まさに始まる。


第一章 「大御神の孫ってマジ? 〜血統がもたらすプレッシャー〜」

 夜明けの空が薄紅色に染まり始める頃、神武イワレビコは家の床に座り込み、自作の木刀を手入れしながら溜息をついていた。「ふう…なんだか最近、やけに村のみんなの目がキラキラしてるんだよな。気のせいかなぁ?」

 ほんの数日前、神武は近所のおじいちゃんから「お前さんは高天原(たかまがはら)と深〜くつながってるらしいじゃないか。さすが神の子だな」なんて言われたばかり。しかも、その翌日には、別の隣人が「神武様、ぜひわが家の祭りにご来場を!」「俺の作った野菜、献上します!」とやたらと持ち上げてくる。 彼としては、そこまで大袈裟に扱われるとむしろ気まずい。少し前まではみんなフランクに「おい神武、今日は魚取ってこいよ」とか「あんたやっぱりリーダー気質だね」くらいの距離感だったのに……。

 そんな戸惑いを抱える神武の耳に、トントンと襖を叩く音が聞こえた。

「父と母ってどんな人だったの?」

 部屋に入ってきたのは、神武を育ての親として見守ってきた伯母(おば)のような存在、イチハナという陽気なおばちゃんだ。「神武、あんた悩んでるんじゃないの? みんなが ‘神の血筋だ’ とかなんとか言ってるからでしょ?」 イチハナはズバリと核心を突いてくる。神武は焦りながら木刀を置き、「べ、別に悩んでないよ……」と口ごもる。「まあ、そう言うと思った。だったらちょっと、あんたの両親のこと、聞きたいでしょ? 本当はどんな人だったのかって」「父ちゃんと母ちゃんのこと、俺あんまり知らないんだよね」 神武は正直、彼らが“神縁の深い人物”だとか“その血統がどうこう”くらいしか聞かされていなかった。子どもの頃はそれで気にしなかったけど、最近は周囲から期待を寄せられ始めているため、やはり両親のことが気になっていた。

 イチハナがゆるりと微笑む。「まずお前の父は、鸕鶿草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)。波間に漂う小さな社で生を受け、『神が海の底から拾ってきた子』だなんて言われてたくらい神秘的な存在さ。あんた、あの人の瞳に似てるよ」「へえ…やっぱり名前からして何だかすごいね。というか長くて覚えにくいけど……」「母は玉依毘売命(たまよりびめのみこと)。うっとりするほど美しいって評判だったわよ。しかも、神々からお告げをもらう巫女のような役割まで担ってたらしい」 父も母も、どうやら相当にスケールの大きい人だったらしい。耳にするたびに「おいおい、そんな超人カップルから俺が?」と神武はこそばゆい気持ちになる。「要するに、あんたは 天照大御神(あまてらすおおみかみ) の子孫につながる家系なのよ。そこらの‘名門’じゃ済まないレベルの‘神々の直系’ってやつね」 イチハナはさらりと告げるが、神武にはすでに頭に鳥が飛んでいるような感覚だった。

先祖から託された壮大な使命

 すると、イチハナは古めかしい巻物をゴソゴソと取り出し、神武の前に広げる。「これが、あんたの ‘家系図’ ってやつよ」 パラリ。

 ……いや、パラリどころではない。 広げても広げても延々続く名前の羅列。いつ途切れるんだと疑問に思うほど延長戦が続き、最後の方はもう折りたたんでも畳んでも収まりきらない。「な、長ぇな! これだけ長いと、正直どこに父ちゃんと母ちゃんがいて、祖父母がいてってのがわかんない!」 神武が悲鳴のような声を上げると、イチハナはクスクス笑って言った。「それにしても、すごい系図だよね。最初の方なんか、高天原から直接降臨した神様たちの名前がズラリでさ。ここまでさかのぼると、もう ‘家系’ というより ‘伝説全集’ みたいなものよ」

 しかも、巻物の途中には煌びやかな書き込みや、妙に強そうな肩書きを持つ祖先たちの武勇伝がうじゃうじゃ詰まっている。「……なにこれ、 ○○尊は宇宙の果てまで弓を引いた とか △△姫は嵐の海を歩いた とか、明らかにファンタジーだろ」「まあまあ、どれだけ脚色が入ってるかはさておき、神々の血を継ぐ者には ‘国を守り、国を栄えさせる’ という壮大な使命があるってのが、この家系図のメッセージなのよ」 イチハナが巻物の端っこをトントンと叩くと、そこには大きな文字でこんな言葉が書かれていた。「地上を清き国にするがよい。子孫の代まで、永遠に——」

 神武はゴクリと唾を飲む。今まで漠然と“神の子孫かもしれない”程度に思っていたが、ここまでハッキリとした文字で“使命”と書かれると、さすがに無視はできない。「俺なんかが、本当にそんな大役を担えるのかな……」 そう呟く神武の姿に、イチハナはまるで母親のように優しく肩を抱いて言う。「でも、あんたは既に村の中心になってるでしょ? みんなが自然とついてきて、いつも笑顔にさせてる。それが何よりの ‘証明’ だと思うわよ」

家系図が長すぎてクラクラする周囲

 それから数日後、神武は勇気を出して「自分の父母の話」を村の皆にも伝えてみることにした。というのも、「あんたが誰の子で、先祖がどんな神々なのか、ちゃんと語り継いでおいたほうがいい」というイチハナの助言があったからだ。 村の広場に、若者から年配者まで、暇な者がゾロゾロと集まってくる。神武が巻物を広げると、途端に周囲から悲鳴にも似た声が上がった。「な、なんじゃこりゃ! どこを見ればいいのかわからんぞ!」「うわぁ……これ全部読み上げられたら夜までかかりそう」 そりゃあそうだ。村人たちが予想していた「そこそこ長い系譜」どころではない。これはもう、神々の大図鑑に近いボリュームなのだから。

 結局、神武も「全部読むのは酷」ということで重要ポイントだけかいつまんで説明することに。「えーっと、オレの父ちゃんは、名前が長くて覚えにくいんだけど……なんかこう、海から出てきた神秘の人で……。んで母ちゃんは、美人で有名な巫女だったらしい。で、二人とも天照大御神の孫に連なる神様らしいんだわ」 村人たちがどよめく。「ほえー、本当にそんなすごい血筋だったとは。こりゃあ拝むしかないね!」「でも神武は、あの陽気な神武だろ? そんな神々しいって感じしないけどな」 口々に飛び交う賞賛や困惑。だが、そのどれもが、神武に対する親しみや尊敬を伴っていることに変わりはない。

神々の血を継ぐ者としての威厳が周囲を束ねはじめる

 それからというもの、神武の存在感は一段と増していった。彼自身は「別に何も変わってない」と思っているのだが、村の人々はどうも「これは相当な御方だぞ」と意識し始めているようだ。 例えば、ある朝。川で洗濯していたおばさんが、神武が通りかかっただけで「まぁ! 神武様のお通りじゃ、ひれ伏せ!」と周囲に声をかける始末。いや、そこまで大げさにしなくていいって……と神武はちょっと恥ずかしい。 しかし、国家主義的な視点で言えば、この**“神々の血を継ぐリーダー”**が誕生した意義はとてつもなく大きい。

  • 村人たちは自分たちが“偉大なる血統”に守られていると実感することで、安心と連帯感を抱く。

  • 加えて、神武が「みんなと一緒に、この国をもっと楽しくしたい!」と声を上げれば、「よっしゃ任せとけ! 俺たちも手伝うぜ!」と率先して協力したくなる。

 こうして、いざ騒乱があっても村全体で一致団結できる体制が整いつつある。深い敬意と、親しみやすさとが混ざり合い、神武中心の強固なコミュニティが形成されてきたのだ。

 そんな状況を見て、遠くから囁く者もいた。「いずれこの ‘日向の里’ だけじゃ物足りなくなるんじゃないか? 神武様はもっと広い世界へ行くような気がするよ……」 そして、その時こそが「神々の血を受け継ぐ者が国をまとめる」という運命の始まりなのだろう。

 神武本人も、少しずつ気づき始めている。自分が持つ“血統”と“立ち位置”が、仲間たちの心を深くつかむことに繋がっていることを。そして、それは決して「偉そうにするため」でも「自慢するため」でもない。**“一つの理想を掲げ、皆を導く力”**として作用しているのだ、と。

村を見下ろす高台で

 夕暮れ時。神武は村の裏手の小高い丘に立ち、里の家々を眺めていた。 先祖から託された使命、膨大な家系図……あれを目の当たりにしたときはプレッシャーを感じたが、今は不思議と心が落ち着いている。「たかが血統って思ってたけど、みんなの笑顔を見ると、こうして俺がしっかりしなきゃって思えるなぁ」

 まだ薄暗い夜の端に、彼が産声を上げたあの瞬間を、何かが思い出させる。高千穂の山々の向こうから差し込んでくる光。あの日、神武は確かに“国をまとめたい”という漠然とした夢を抱きはじめた。「血筋がどうとかより、やっぱり ‘みんなで楽しく過ごせる国を作りたい’ って気持ちが俺には大事なんだよな」

 神武の背後を、ヒュウッと風が撫でていく。まるで“東の空へ来い”と、どこかから彼を誘うささやき声が聞こえるような気がした。

 こうして、“神々の孫”としての誇りとプレッシャーを胸に抱きながら、神武イワレビコは少しずつ大きくなっていく。彼はまだ気付いていないが、この血統とリーダーシップは、のちに多くの仲間や豪族を束ね、ひとつの“強い国”を形作る要となるのだ。 村人からの敬意と信頼を受け取り、そして何より自分自身の意志で“国をまとめる”道を歩み出す。その第一章が、今、幕を開けたのである。

次章では、ついに東征へ向けた具体的な動きが加速していく…かもしれないし、まだ家臣たちとの珍騒動が続く…かもしれない。いずれにせよ、この“神の孫ボーイ”の次なる一手に、村人は期待とちょっぴりの不安を抱いている。でも、陽気な彼のことだ。豪快に突き進み、いつの間にかみんながついてきちゃうのは、もう当たり前の流れなのかもしれない。


第二章 「出発前から盛り上がる家臣会議 〜船と弁当は用意した?〜」

 朝陽がまぶしいある日、日向(ひむか)の里にある広い集会所に、神武イワレビコとその仲間がぞろぞろと集結した。木製の大きなテーブルを囲むように座り、なんだかんだですでにワイワイと盛り上がっている。 今日は“東征計画会議”という名目である。といっても、まだ船すらないし、どこまで東へ行くかも全然決まっていない。はたから見れば「本当に準備する気あるのか?」と思いたくなる状況だが、当の神武たちはやる気満々らしい。

会議室(という名の広間)にて

 神武が大きく咳ばらいをすると、周囲は一瞬静かになった。何しろ彼は“神々の血を継ぐ男”にして、村の皆が「この人に任せれば間違いない!」と期待している存在。最近はさらに威厳が増しつつある——と思いきや、その明るい笑顔と快活さは相変わらずだ。「えー、みんな今日は集まってくれてありがと! 俺たち、これから 東征 を始めたいと思うんだよね」 神武が開口一番そう言った瞬間、さっそく何人かが手を挙げる。

「ちょっと待ってくださいよ神武様、まず ‘東征’ って、具体的にはどこまで行く気なんですか? あと、弁当の手配とか、馬や船の準備とか、大変ですよ?」 質問攻めにあう神武だが、彼は顔をくしゃりと笑わせて答える。「国をまとめるには、やっぱ東へ向かわなきゃならないって、昔から言われてきただろ? オレは ‘東の地に大きな可能性があるんじゃないか’ って思うんだ。まあ、ぶっちゃけ確固たる情報はないけど、行けば何かが始まるって予感があってさ!」

 すると、「いやいや、それって超アバウトじゃないすか?」という冷静なツッコミが飛ぶ。しかし神武はまるで気にするふうもなく、続ける。「やっぱり ‘みんなでわいわい移動する’ ってだけでも楽しいじゃん? 国をまとめる第一歩として、まずはこの ‘一丸となって旅に出る’ スタイルが大事なんだよ!」

 その言葉に、不思議と反論する者はいなかった。最近すっかり培われた「集団行動こそ国の礎」という意識が、すでにメンバーたちの心に芽生えていたからだ。神武がそう言うのなら、きっとそこに意味があるに違いない——そんな信頼感が会議の空気を包んでいる。

個性豊かな面々

 さて、当の会議に参加している“神武一行”の面々を紹介しておこう。どいつもこいつもキャラが濃い。

  1. タケヒト(勇者系)

    • 背が高く筋骨隆々、常に大きな斧(おの)を携えている男。豪快な武力自慢だが、意外と世話焼きタイプ。

    • 「戦いがあれば任せろ!」と息巻くが、冷静さはやや欠ける。「細かいこと? 知らん!」が口癖。

  2. フミノリ(インテリ系)

    • ひょろりとした体型で、常に竹簡(ちくかん)や筆を携帯。地図や古い書物を読み漁り、知識を活かして作戦を練る。

    • 「データによると……」「歴史的背景から考察すると……」と、どこか学者じみた口ぶりで周囲を唸らせる。

  3. サエコ(姉御肌・まとめ役)

    • 村の女性たちのリーダー格。会議の進行がグダグダになりかけると「はいはい、そこストップ!」と仕切り直し。

    • 料理や裁縫から、いざという時の剣捌きまで器用にこなす。何より “笑い” に厳しく、「ちょっとそれウケると思ったけど滑ったよ?」なんて容赦ない一言を放つ。

  4. ウズメ(天然系)

    • なんだかいつも笑顔で、会話を3秒ほど遅れて理解する不思議少女。「えっ、今 ‘出発’ って言いました? …へぇ〜」とマイペース。

    • しかし、踊りや祭りのときには突如として神がかり的なパフォーマンスを披露。近所のお祭りでは一躍スターに。

  5. ケイタロウ(一行のムードメーカー)

    • 「それ、オモロいっすね!」が口癖の軽妙な男。テンションが高く、何かと冗談を飛ばしては場を和ませる。

    • いざというときには臆さず神武をフォローし、盛り上げ役に徹する。体術もそこそこ得意。

 これらの面々が、神武のもとに集まり、まるで寄せ鍋の具材のように個性をぶつけ合っている。まさに「愉快な大家族」状態だが、国家主義的視点からすると、様々な才能が一堂に集まり、目標に向かって団結することこそが重要なカギだと言える。

「船は? 弁当は? ついでにおやつは300文まで?」

 さて、肝心の“東征計画”はと言うと、まず問題になるのは移動手段だ。何しろ、この日向の里から東へ行くには海を渡らなければならないルートも想定される。

「船、どうしようか?」 タケヒトが腕組みをして尋ねると、すかさずフミノリが竹簡を取り出して応じる。「実はですね、こちらに ‘近隣の浜辺にある造船所の記録’ という資料がございまして……」 と、ゴソゴソ広げたと思ったら、昔の村役人が書いた走り書きのようなものを見せつける。そこには「造船所? 予定だけど、まだ材木不足で……」なんてハンパな記述が。どうやら完全には整備されていないらしい。

「じゃあ俺が木を切ってくるか? オノなら任せろ!」 タケヒトはめらめらと燃えているが、「全部一人でやる気?」とサエコがツッコむ。実際、船を作るには大勢の人手と時間が必要だ。そこで神武が口を開く。「よし、まずは村のみんなに声をかけて ‘船作り隊’ を募集しよう。東征には俺だけじゃなく、みんなの力が必要だからね!」 提案が通り、タケヒトや若者数名が造船プロジェクトを開始することに。こうして一歩ずつ、東への準備が進みはじめる。

 さらに話題は“食糧”へ。「やっぱり旅には弁当が大事でしょ!」 これはサエコの持論。慣れない道中で腹が減れば士気が下がるからね、と力説する。ケイタロウが「いいね、梅干しのおにぎりなんて最高っすよ!」と盛り上げると、ウズメが「えーと、じゃあ私は卵焼きを担当しますね〜」とニコニコ。 国家の一大事を決める会議で、やたらに弁当の話がヒートアップするのも、なんともこの一行らしい。

会議は続くよどこまでも

 造船だ、食料だ、と盛り上がっているうちに時間はあっという間に過ぎていく。最後にサエコがまとめの声を上げた。「ええと、結局 ‘みんなで船を作る’ ってのと ‘弁当部隊を編成する’ ってのと ‘いざというときに山越えルートも検討する’ ってことでいいのよね?」 するとフミノリが再び竹簡に目を落とす。「はい、最終的にはヤマトって呼ばれる土地を目指すんじゃないかと……。そこには長髄彦(ながすねひこ)とかいう強力な豪族がいるって噂もありますし、注意が必要ですね」「なるほど、今度の相手は手ごわそうだ。よーし、気合入ってきた!」とタケヒトが大きな斧を軽く振ってみせる。

 神武はそんな彼らを、満足げに見つめる。「いいね、みんなの意見がまとまってきた。やっぱり大勢で動けば、それぞれ得意分野を活かせるし、心強いよな!」

 国家主義的視点で言うなら、この時点ですでに理想的な姿だ。統率するリーダー(神武)がいて、勇者肌の戦士も、知恵袋も、まとめ役も、ムードメーカーも揃っている。しかも互いを尊重しあい、“目的”に向かって自発的に動き始めた。いわば、小さな共同体がしっかり機能しはじめている様子だ。 神武が東征の旗印を掲げるだけで、みんなが「そうだ、やるなら徹底的にやろう!」と動き出す。その結束こそが、新しい国づくりの第一歩になるのは間違いない——と、当の本人たちは深く考えているわけではないが。

村の広場にて、お祭りムード

 会議が終わって外に出ると、既に待ち構えていた村人たちが声をかけてくる。「神武様、船を作るんですって? 俺も手伝います!」「ねえねえ、東征行くってホント? 早くおにぎり作らなきゃ!」

 ここでも、まるでちょっとした“出発前夜祭”みたいなテンションだ。三味線ならぬ即興の太鼓や笛で音楽が鳴りはじめ、ウズメはふらりと舞い踊り出す。カラフルな着物を翻しながら、陽気な拍子に合わせてステップを踏む姿は、さすがの神懸かりパフォーマンスだ。 村中が「おお〜!」と声を合わせて盛り上がる。

 神武は、その光景を胸の奥に刻むように見つめる。やがて、ふっと笑みを浮かべて仲間たちに言った。「みんなで一緒にやれば、やっぱ楽しいよな。これならどんな苦労も乗り越えられる気がするよ」

 集団行動と団結が何より尊ばれ、しかもそこに笑いと活気がある。おまけに神武という“神の血統”を軸に据えながら、全員がやる気全開で突き進む。これぞ国づくりの基本! と言わんばかりのパワーが、この日向の村に満ちていた。

次なるステップへ

 東征計画会議は、最終的に

  • 造船担当グループ

  • 食糧・弁当担当グループ

  • 資金や装備調達担当グループ


    と役割分担が決まり、後日また報告会をやることにして幕を下ろした。

 会議というか大宴会というか、もはや区別がつかないほどの騒ぎになったが、その盛り上がり自体が彼らの“士気高揚”に大きく貢献しているのは確かだ。 国家主義的な視点で見れば、まさに**「リーダーを中心に、多様な才能が協力し合い、目的を実現する」**という理想像がここにある。みんなそれぞれ自分の役割を自覚し、得意分野を活かしながら“お国のため”に動き出す。そこにユーモアとお祭り気分が加われば、団結はますます強まるというもの。

 そして、彼らの行く手には未知の土地や強敵、また大きな出会いが待ち受けているだろう。それを思うとワクワクして仕方ない神武は、夜空に浮かぶ月を見ながら「早く行きたいなあ」と少年のような目を輝かせる。 その背後には、誰にも気づかれないうちに現れた三本足の不思議な烏が、またしてもクックックッと笑っているような気がする。まるで「面白くなってきたぞ」と言わんばかりに。

 こうして、**“国づくり”**への第一歩はまた一歩と進んでゆくのだった。次回、いよいよ船が完成したならば、本格的に東へ旅立つことになるのか。それともまた新たなトラブルが発生して、一行が右往左往するのか。何にせよ、笑いと熱気に包まれたこの集団行動は——まだまだ本番を迎えたばかりである。

次章は、さらに壮大でドタバタな展開が待っている(はず)。勇猛果敢なタケヒトの斧が唸り、フミノリの知恵が光り、サエコの食糧管理が炸裂し、そして天然少女ウズメの謎の踊りが混沌を極める……? 神武イワレビコの“東征”は、始まる前からすでに波乱と笑いに満ちているのだった。


第三章 「瀬戸内海は甘くない! 〜意外と手こずる海と敵軍団〜」

 東征計画会議から数か月後。日向(ひむか)の里で仕上げられた木造船が、ついに完成のときを迎えた。造船隊が総力をあげて作り上げた大船には、村人たちの期待がぎゅうぎゅうに詰め込まれている。船首には厳かに神武イワレビコの象徴である紋(もん)が彫られ、船体の脇にはたっぷりの食料と弁当箱が積まれていた。

「よし、みんな乗り込もうぜ!」 神武の掛け声に、仲間たちは「おお〜!」と気合いを入れて返事する。船にはメインメンバーであるタケヒト、フミノリ、サエコ、ウズメ、ケイタロウが乗り込み、さらに十数名の部下や弟子たち、そして神武のであるイツセも同船していた。

1. いよいよ船出! ところが…

 まずは日向から瀬戸内海を東へ抜け、できるだけ安全なルートで本州に近づく。これが神武一行の計画だった。 出港当日。砂浜には見送りの村人が大勢詰めかけ、「がんばれ〜!」「大漁祈願、じゃなくて東征祈願!」などと色々な声を上げている。ウズメが舳先(へさき)の上で踊りながら手を振ると、「行ってらっしゃーい!」という歓声があがり、船はゆっくりと海へと漕ぎ出した。

 しかし、出港してしばらくすると、早くも海の洗礼が待っていた。思った以上に潮の流れが速い。波がうねり、船が左右に揺さぶられる。ケイタロウがちょっと青ざめた顔で「う、うぇっ…揺れるっすねぇ…」と呟き、ウズメは「この揺れ、なんだかリズミカル…」と妙に楽しんでいる。 一方、タケヒトは「こんな波は大したことない! 斧があれば何とかなる!」となぜか筋肉論を展開し、サエコは「斧で波は切れないでしょ!」と手厳しくツッコむ。

 まさに前途多難の出発だが、それでも神武は船首に立ち、胸を張る。「ここを乗り越えたら、きっと新しい地が俺たちを待ってるはずだ! みんな、出力(ちから)全開で漕ぐぞー!」

2. 兄との確執 〜愛情? それとも嫉妬?〜

 船の後方で、神武の兄・イツセが腕を組んで黙り込んでいた。壮年の雰囲気を漂わせ、頬には古傷がある。その硬い表情は神武への複雑な思いを隠せないでいるようだ。「兄ちゃん、どうした? 具合でも悪いのか?」 神武が気づき、声をかける。イツセは一瞬うろたえるが、すぐに目をそらしながらぶっきらぼうに答えた。「別に。俺は ‘弟に連れられて東征に出る’ ってのが納得できてないだけだ」

 実はこのイツセ、神武よりも年上でありながら、なぜか人望という点では常に弟に水をあけられてきた。村の評判は「やっぱり神武様だよね〜!」でほぼ独占状態。人々の視線はいつも神武を中心に動いている。そこにわずかな嫉妬心と、自分のプライドを持て余す気持ちが交じっているのだ。「俺だって神の血を引いている。なのに、何故みんなお前ばかり……」 イツセが吐き捨てるようにつぶやく。神武は困ったように笑い、「兄ちゃんだってすごいんだぜ? 俺より武術が上だってみんな言ってるし」とフォローを入れるものの、それが逆にイツセの心を揺さぶる。

 国家主義的な視点で言えば、本来なら “皇統” の中で最も年上の兄が先導するのが自然かもしれない。しかし、皆が示す支持は弟・神武のほうに集中している。それがイツセの心に微妙なわだかまりを生じさせていた。

3. 瀬戸内海の恐怖 〜謎モンスターの襲撃〜

 航海を始めて数日が経った頃、一行はやっと潮流の激しい狭間を抜け、穏やかそうな海域に入りかけていた。ところが……。「お、おい! 何か ‘海面が盛り上がって’ きてるぞ!」 前方で見張りをしていたケイタロウが叫ぶ。彼の指す方向をみると、海面にドロドロと黒い渦が。そこからヌラリと何か巨大な体躯が浮かび上がろうとしているのだ。

 ご丁寧にも、そいつは長〜い尾ぬめり気のある背びれを見せびらかすようにうねらせている。さらに不気味な鳴き声まで聞こえる始末。「なんだあれ、魚か? いや、魚にしては化け物じみてるぞ!」 タケヒトが身構え、斧を構える。フミノリが古い書物のメモを取り出しながら慌てて読み上げる。「ええっと、『瀬戸内に棲む、巨大海ヘビのような魔物……』 そんな伝承があったような、ないような……」「どっちだよ! あるのかないのかハッキリせんかい!」 サエコが珍しく取り乱す。しかしどうやら本当に「謎のモンスター」は存在していて、しかも今まさに一行に牙をむいてきそうな勢いだ。

 ぬらりと舌のようなものを伸ばし、こちらの船めがけて迫る怪物。波が荒れ、船はグラグラ揺れ動く。これにはウズメも「これはちょっとリズミカルじゃないですね……」と顔色を変える。

 ここは神武一行が力を合わせて対抗するしかない! タケヒトは斧をかまえ、他の兵士たちも槍や弓を用意。サエコはすぐさま「落ち着いて! 船から落ちないように!」と指示を飛ばし、ウズメは祈るように舞いを始める。すると、不思議なことに小さく神の気配が漂いはじめ——いや、気のせいかもしれないが、空気がほんの少し清められるような感覚があった。

 やがて、化け物が大きく口を開き、船を一飲みにしようとする瞬間、タケヒトが吼えた。「おりゃあああああああ!!」 斧が閃き、うねる尾に一撃を入れる。ギシャアアァッという断末魔のような声が響き、怪物は船の横をかすめて深い海中へと沈んでいった。しばらくすると、海面にはただ黒い泡がブクブクと浮いているだけ。どうやら追撃はなさそうだ。

「や、やったのか……? タケヒト、お前すげえ!」 仲間たちが歓喜の声を上げる。タケヒトはほっと肩を落としながら「ふぅ、これで当分大丈夫かな?」と苦笑い。

4. 兄弟の衝突、悲劇の一打

 ところが、安心したのも束の間。今度は船の後方から「うおおおおッ!」という叫び声が聞こえた。 見てみると、イツセが海水の滴る体で倒れ込んでいる。どうやら怪物との戦いの混乱で、船の外へ体が投げ出されてしまい、必死に泳いで戻ったらしい。「兄ちゃん、大丈夫か!」 神武が駆け寄るが、イツセは苦しそうに息をしながら、血の混じった吐しゃ物を吐き出している。怪物の体液か毒が付着したのか、既に肌がただれているようにも見えた。

 医療担当の者やサエコが応急処置を行い、ケイタロウがタオルで拭きながら励ますが、イツセの苦しみは相当なものらしい。朦朧(もうろう)とする意識の中で、彼は神武の顔を見上げ、かすれた声で訴える。「弟よ……お前には……、何もかもかなわなかったな……。結局、俺は……」 そう言いかけて、白目をむく。神武は必死に「そんなこと言うなよ、兄ちゃんがいないと、俺……!」と声を上げるが、イツセの意識は限界近く。

 船の皆が、今まさに兄の命が尽きるかもしれないという場面に動揺する。自分のプライドや確執はあったが、だからといってイツセも一緒にこの東征を支えてきた仲間だ。失うにはあまりにも大きすぎる存在。

5. 救いの光が差し込むとき

 そんな絶望的な状況に、突然、眩い光が海上を照らした。 降り注ぐような光に、皆が顔を上げると、空の雲間から一筋の陽光が——まるで“神の手”のように、イツセの身体へ静かに射している。

「こ、これは……」 フミノリが驚き、書物から目を上げる。サエコはイツセの脈を確かめながら、「生きてる、まだ大丈夫よ!」と叫ぶ。タケヒトとケイタロウは思わず跪(ひざまず)きそうになる勢いで見つめている。ウズメはまるで神がかりの舞を継続するように両手を広げ、祈りを捧げていた。 神武は握りしめていたイツセの手を離さずに、唇を噛む。「神様……もし本当に俺たちに力を貸してくれるなら、兄ちゃんを助けてくれ……! 俺はこの国をまとめるために、この東征を成し遂げないといけないんだ。兄貴だって……一緒にいてくれないと困るんだ……!」

 涙混じりの神武の声が響いた刹那。イツセの荒かった呼吸が次第に落ち着いていき、頬のただれた部分が少しずつ和らいでいくかのように見えた。完全に意識を取り戻すわけではないが、最悪の危機はどうにか脱したようだ。 その様子を見て、みんなは胸をなでおろし、「よかった…」「間に合った…」と安堵の声を上げる。

 光はしばらく船上を照らした後、再び雲間へ消えていった。その瞬間、ウズメが小さくつぶやく。「もしかして、あれが ‘神々のご加護’ ってやつ、なのかなぁ…?」 誰もがその言葉を否定しなかった。まるで“神武イワレビコが率いるこの一行”を神々が見守っているかのように感じたからだ。

6. 試練を乗り越えて高まる仲間意識

 こうして命からがら瀬戸内海の中ほどを切り抜け、やっとの思いで小さな島影に船を寄せられる場所へとたどり着いた。一行は上陸し、急いでイツセの治療と休息に入る。 サエコの指示で陣を組み、タケヒトや他の兵士たちは周囲の見張りをしながら、なんとか野営地を設営する。ケイタロウとウズメは食料を準備して全員に振る舞い、フミノリは地図とにらめっこしながら最適なルートを再検討。神武は一刻も早くイツセに良くなってもらおうと、看病を続ける。

 国家主義的な観点で見れば、今回の試練はまさに “結束力を試されるイベント” だった。一行は怪物の襲撃を受け、兄が重傷を負うという苦しい状況に立たされながらも、見事に力を合わせて危機を乗り越えた。 ケイタロウがにこやかに言う。「いや〜、みんなよく頑張りましたね。こんなハードな海とは思いませんでしたけど、その分 ‘仲間’ ってやつの価値を再認識できた気がしますよ!」 タケヒトもうなずきながら、「あの怪物、もう二度と出てこないでほしいが、もしまた来たら今度も斧でぶった斬ってやる!」と大笑い。

 しばらくして、イツセが目を覚ました。熱はまだあるものの、なんとか命の危険は脱した様子。神武が微笑みかけると、イツセは小さく苦笑いしながら、「お前が ‘神の力’ を引き寄せたのか? ふん……すごい弟だな…」と呟いた。 それは嫉妬や対抗心ではなく、純粋に「弟の力を認めた」ような声音に聞こえる。少なくとも、この一件を機に、兄の心の中で何かが変化したのは明らかだ。

7. 次なる海路、そして国づくりへ

 翌朝。まだイツセは寝たきりだが、船を修理して再出発する算段が立ち始めている。神武や仲間たちは、しっかり力を合わせていけばどんな困難でも乗り越えられるという自信が芽生えていた。 敵軍団というか、豪族や謎モンスターの脅威がこの先も待ち構えているのは明らかだ。しかし今回の件を経て得た “チームワークの強化” は何ものにも代えがたい大きな財産。まさに国家を築く大義への確信が高まっていく。

 島の砂浜に咲く小さな野花を見ながら、神武は静かに決意を固める。「どんな苦難があっても、この仲間たちとなら絶対に道は切り開ける。兄ちゃんを助けられたように、国だって一つにまとめてみせる——俺は、そういう運命だと信じてる」

 北の空を見上げれば、そこに舞い降りる八咫烏(やたがらす)のような影が一瞬ちらついた……かもしれないが、すぐに消えた。まるで「よくやった、次も期待してるぞ」と言っているかのように、どこかからクックックッと笑い声が聞こえたような気がする。

 こうして、瀬戸内海での激闘と兄弟の危機を経験した神武イワレビコたちは、さらに強く結びつき、次なるステージに向かう。一度は挫けそうになったが、試練こそが国づくりの糧。この団結力を武器に、彼らはより壮大な運命の渦へと足を踏み入れるのだった。

次章では、いよいよ本州の地に足をつけるか。それともさらなる海の怪異や、豪族勢力との激しいぶつかり合いが待ち受けるのか。何はともあれ、神武イワレビコの“国づくりの旅”はますます波乱とユーモアに満ちた展開を見せていくに違いない。仲間との結束、そして兄とのわだかまりが解かれる日は、そう遠くないかもしれない。


第四章 「奇跡の烏と天神パワー 〜八咫烏、道案内は任せろ!〜」

 瀬戸内海を渡る際に遭遇したモンスターとの死闘や、神武イワレビコの兄・イツセの重傷。幾多の困難を乗り越え、仲間同士の結束が一層強まった神武一行は、今や小さな島の砂浜に野営陣を構えていた。そこは一晩だけの仮の宿。まだまだ先は長いが、船を修理し、また航海のルートを再検討するために一息ついている——まさにそんな状況である。

1. 進むべき道が分からない!

 翌朝。浜辺で全員が集まり、これからの進路について議論していた。「この島の北側に出るか、それとも南側を大きく迂回(うかい)するか……。どちらにも未知の危険があるのは確かですね」 地図を見ながらフミノリが首をかしげる。まだ分からないことだらけだ。

 サエコは回復中のイツセをちらりと見やりながら提案する。「イツセさんがまだ本調子じゃないから、少し緩やかなルートを使いたいところだけど……地図上じゃ、北側も南側もどうやら ‘要注意地帯’ よ。どっちみち大変そう」 ケイタロウは苦笑いしつつ、「どっかに ‘安全航路’ って書いてあると助かるのに!」とボケをかますが、タケヒトが「そんなもんあるかー!」とツッコミを入れる始末だ。

 神武は腕組みをしながら、空を見上げる。遠くの空に薄く霞がかかっていて、天気すら怪しい。ましてや「ここからどの方向が正解なのか」……さっぱり確信が持てなかった。「どの道にせよ、オレたちは国をまとめるって目的があるからな。ここで足踏みしてるわけにはいかない。少しでも進める方法を探すしかない!」

 国家主義的視点で言えば、“国のリーダー”たる神武が大所高所から道を示したいが、海も陸も未知の危険に満ちている。気軽に「あっちだ!」と言えるような状況ではない。仲間たちは信頼してくれているが、リーダーとしても迷うときは迷うのだ。

2. 「お主ら、そっちじゃないよ」——不思議な声の正体

 皆が「うーん」と頭を抱えているときだった。突然、怪しげな声が潮騒(しおさい)に混じって聞こえてきた……ような気がした。「……お主ら……そっちじゃないよ……」 一瞬、全員がゾワッとして顔を見合わせる。誰がしゃべった? いや、周囲には誰もいない。「な、なんすか今の声?」 ケイタロウが慌てて背後を振り返ると、そこには黒々とした羽毛を広げた巨大な鳥がちょこんと立っていた。しかも、よく見ると足が——三本!?

 「ぎゃっ! なんだこの鳥は! 三本足だぞ!」 タケヒトが斧を握りかけるが、ウズメが「きゃー、なんか可愛い……かもしれない?」と興味津々に近づいていく。この極端な反応の差が、いかにも神武一行らしい。 そして、その鳥はクックッと笑ったように口を開き、再びぼそっとつぶやいた。「お主ら…… ‘迷子’ かい? ふふふ、そっちじゃないよ、進む方向……」

 どうやら**八咫烏(やたがらす)**と呼ばれる伝承上の三本足の大烏らしいが、まさか人間の言葉を喋るとは誰も思っていなかった。思わずフミノリがメモを取りながらあたふたしている。「こ、これが噂の ‘神使’ というやつか……? 神の使いが人間に道を示すという伝説、確かに記録があるけど……!」

3. 神武たちのテンション急上昇

 その烏が何者かも分からないまま、なぜか神武たちは一気にテンションが上がっている。「お前、もしや神の遣い(つかい)ってやつか? 俺たち、正直どっちに進むべきか迷ってたんだ!」 神武が興奮気味に言葉をかけると、八咫烏は「カァ、カァッ」と喉を鳴らし、まるで偉そうに胸を張ってみせた。「そうとも。わしは ‘天神パワー’ を少し分け与えられた特別な烏。道に迷った者を正しい方向へ導くのが役目さ」

 まさかの自称“天神パワー保持者”。半信半疑なタケヒトが「お前、怪しくないか……?」と身構えるが、ウズメはクスクス笑いながらその黒い羽毛をそっと撫(な)でる。「いいじゃないですか、神様の使いかもしれないし。だいたい、私たちは ‘国を作る’ って壮大なことやろうとしてるんだもの。神々の助けが入っても別に不思議じゃないですよね」「うむ、その通り。お前らのリーダー、神武イワレビコとやらも ‘神の血統’ と聞いている。なら、わしのような烏が協力したって不思議はなかろう?」

 八咫烏はまたクックックッと不気味に笑う。サエコが興味津々にその三本足を見ながら、「でも、どうやって私たちを導いてくれるの?」と問うと、烏はパタパタと翼を広げて高く舞い上がった。「単純なことさ。わしが飛んで見える景色は広い。どこに崖があるか、どこに海の難所があるか、一目瞭然なのだよ。お主らはわしの後をついてくればいい。それが早道じゃ」

4. 神の意志と血統の正当性がさらに強まる

 神武はその光景を眩しそうに見上げる。以前から「神々が見守ってくれている」という実感はあったが、まさか実際に“烏の形をした導き”が現れるとは——彼の心にも熱いものがこみ上げてくる。 国家主義的視点で捉えるなら、ここで“神の使い”が直接指示を与えてくれるというのは、リーダーの正当性を一気に高めるビッグチャンスだ。 フミノリが興奮気味に神武に耳打ちする。「これは大きいですよ、神武様。あなたの ‘神の血統’ と結びつけて語れば、われわれの東征にさらなる威厳が加わる。みんな ‘神に選ばれた人々の旅’ だと納得するでしょう」 神武は照れ笑いを浮かべつつもうなずく。「そこまで計算してるわけじゃないけど……まあ、仲間にとっても心強いだろうしな」

 周囲の兵士や村人出身の従者たちも、「おおおお、やっぱり神武様って ‘持ってる’ んだなぁ」と感嘆の声を漏らす。三本足の烏という存在に畏怖しながらも、同時に「神武のリーダーシップが本物だ」と再確認したようだ。

5. 「そっちじゃないよ」と指し示されたルート

 さて、八咫烏が案内するというルートは、フミノリの地図にはほとんど記載のない細い海峡を抜けるものだった。「え、こんなところに道が……?」 地図と現実を比べても微妙に齟齬があり、タケヒトは「ほんとに通れるのか?」と疑問を呈するが、八咫烏はあくまで自信たっぷりである。「舟が通るには十分じゃ。沖合いを回り込むと危険が多い。ここをスッと抜ける方が早いし安全じゃよ」

 みんなで船に乗り込み、怪我のイツセもまだ完全ではないが、なんとか移動できる状態になった。こうして出発する一行の前を、八咫烏がバサバサと舞いながら飛行していく。サエコが「船酔いの対策は皆大丈夫?」と気を回し、ケイタロウは「弁当はしっかり確保してます!」とアピール。タケヒトはノリノリで「よし、また怪物が出たら今度も斧でぶった斬ってやる!」と言うものの、フミノリは「出ないに越したことはないんですけどね……」とぼやく。

 すると、八咫烏が「お主ら、仲がいいなぁ」とクククッと笑い声をあげた。「こういう ‘楽しげな集団’ は ‘国づくり’ に最適じゃ。神に愛されるわけだわい」

6. 道中のちょっとした騒動と、八咫烏の妙技

 いざ海峡に入ると、確かに狭いものの波は比較的穏やかで、周囲に岩礁も少なく、船は順調に進むように見えた。 が、そこに絡んできたのが、どこかの海賊まがいの集団。「おいそこの船! 通行料を払ってもらうぜ!」 数名の小船がギャーギャーと騒ぎながら近づいてくる。タケヒトが斧を構え、「やるか!?」と気合十分になったところで、ウズメが「ちょ、ちょっと待ってください」と止めに入った。

 すると、突然八咫烏が低空飛行で彼らの頭上を旋回し始める。三本足の大烏が「グワァッ」という声で鳴きながら、ピンポイントで海賊の船に糞(ふん)を落としていくという、なかなかの芸当を披露したのだ。「わ、わぁ! なんだこの鳥、気持ちわりぃ!」「足が三本ある!? ひいい!」 海賊連中は恐怖と嫌悪感で完全に混乱に陥り、「こんな気味悪い奴らと関わりたくねぇ!」と尻尾を巻いて逃げていってしまう。

 そのあまりにもシュールな光景に、仲間たちは苦笑いやら失笑やらをこぼしつつ、「いや、これも ‘神の使い’ ならではか…?」と妙に納得した。タケヒトは拍子抜けした顔で斧をしまい、サエコは「ま、まあ、争いが避けられて良かったわ」と言って肩をすくめる。

7. パアッと開ける新天地、道は続く

 海賊まがいの連中を撃退(?)した後は特に大きなトラブルもなく、一行の船は海峡を抜け広い内海に出た。先ほどまで狭い海路を苦労して進んでいたのが嘘のように、穏やかな景色が目の前に広がる。「おお……これは見事な……!」 フミノリが地図を見比べ、思わず感嘆の息をもらす。確かにこれは “裏ルート” のような場所で、普通に回り道していたらきっと遭遇しないだろう風景だ。島々が美しく点在し、水面がキラキラと輝いている。

 さらに進むと、大きな島と本州がぐっと近づいているところに出た。八咫烏が先導していなければ絶対に行き着かなかったであろう航路だ。「やっぱり ‘神の使い’ は伊達じゃないな……」 神武がしみじみつぶやく。もはやこの三本足の大烏を疑う者は誰もいない。彼らをしっかりと導いてくれる、頼もしい仲間になりつつある。

8. 新たな決意と、神々の後押し

 船が無事に安全な湾に到着し、一行はしばし上陸して野営の準備を始めた。青々とした丘がそびえ、周囲には豊かな森が広がっている。ここが“一応”本州というやつらしいが、まだまだヤマトの地までは距離があり、これから陸路でも厳しい旅となるだろう。

 夜になり、星空の下で焚火を囲む。神武、タケヒト、フミノリ、サエコ、ウズメ、ケイタロウ、そして回復中のイツセまでもが輪になって座り、八咫烏は大きな羽をやすめながら彼らを見下ろしている。「もう一度言うが、わしはお前たちに ‘神々の後押し’ があると確信している。お前たちの船にも、やる気にも、それが宿っておるからな」 そう告げる八咫烏の声に、神武の目がキラリと光る。「俺も、そう信じてるよ。どうしてかわからないけど、ここまで来ると ‘神の力’ が常に俺たちを見守っているってはっきり感じるんだ」

 イツセがそれを聞いて小さく笑いながら、「オレも、お前が持つ ‘神の血統’ とやらを認めないわけにはいかなくなってきたな……。さすが弟だ」とつぶやく。兄弟の確執も、八咫烏が姿を現したことでさらに解けかけているようだ。

9. 国家主義的視点:これぞ“神々の御心”に導かれる団結

 こうした一連の出来事を、国家主義的視点でまとめれば、まさに“神が選んだリーダーと仲間たちが、正しい道を示されながら国をまとめに行く”という最高のシナリオである。

  • リーダーの血統:神武が “神の血を継ぐ” という事実が、ますます輝きを増す。

  • 神の使いの登場:神武の正統性を示す強力なエビデンス。

  • 集団行動の結束:危険が迫っても、ユーモアと協力で乗り切る強い団結力。

 この先さらに大きな困難が待ち受けていても、もはや迷いなく進めるという確信が、仲間全員の心に芽生えつつある。

10. 夜明け前の決意

 やがて深夜、海から吹く風が涼しくなった頃、神武は一人起き出して浜辺に向かった。 満天の星空の下で波の音を聞きながら、ふと空を見上げると、またしても八咫烏の姿がシルエットのように映る。「カァ……まだ寝ないのか。若いのぅ」 その声に、神武は笑みを浮かべて答える。「この先の戦いとか、いろいろ考えると眠れなくてな。何しろ ‘国’ を作るなんて、これまでの誰もやってこなかったことだろ? 俺たちが本当に成功できるのか……ふと考えちゃうんだよ」

 すると八咫烏はクククッと笑い声を響かせる。「心配は要らん。わしが見る限り、お前らには ‘笑い’ と ‘絆’ がある。神々はそういう集団を好むんじゃ。指示に従うだけの味気ない軍勢では、ヤマトの地はまとめられん」 神武はその言葉にハッとして、肩の力がスッと抜けるのを感じた。確かに、自分たちはいつでも笑いを絶やさない。“神の血統”という重責はあるが、それを背負い込みすぎず、仲間全員の力を合わせて進む。それが自分たちの強みなのだ。

 やがて、東の空がわずかに白み始めた。夜明けが近い。「俺は必ず ‘ヤマトの地’ に至り、そこで新しい国を作るよ。兄ちゃんや仲間たちみんなと一緒に、きっとやり遂げるんだ」 神武が小さく決意を声にすると、八咫烏は黙って翼を一度大きく広げ、ふわりとどこかへ消えていった。まるで「よし、わしは先に行って道を見てくるぞ」とでも言いたげに。

エピローグ:光射す水平線

 夜が明けて、陽の光が水平線からじわじわと登ってくる。すでに仲間たちは起き出して、また元気いっぱいに旅の準備を始めている。 タケヒトが斧を研ぎ、サエコは朝食を手際よく作り、ケイタロウが「おはようございまーす!」とテンション高く挨拶し、ウズメが朝日に向かってゆるりと舞う。フミノリは地図を眺めながらぶつぶつと作戦を練っており、イツセはまだ痛む体を引きずりながらも着実に回復へ向かっている。

 神武はみんなの姿を見渡し、心からの笑顔を浮かべる。そこには、“神の使い” たる八咫烏の加護という絶対的な後押しも加わった。誰もが彼を “神の血統を持つ正当なリーダー” として、さらに強い尊敬と信頼で支えている。 まさに国家主義的な価値観の究極形——「正当な血統、神の助力、仲間との団結」。この組み合わせがあればどんな試練も突破できるだろうと、全員が確信するに至ったのだ。

 こうして、八咫烏に道案内を任せながら、神武一行は再び船に乗り、やがてヤマトを目指して陸路にも挑むことになる。その旅の先には、さらに激しい戦いや、奇妙な出会い、そして驚くほど美しい光景が待ち受けているかもしれない。 だが今は、日の光を浴びてきらめく波と、仲間たちの笑い声がある。それさえあれば、神武たちは確信を持って言えるだろう——**「お主ら、そっちじゃないよ」**と導いてくれる八咫烏とともに、彼らはこの国に新たな秩序と繁栄をもたらすのだ、と。

 そんな思いを抱きつつ、神武イワレビコは船の舳先に立ち、昇りゆく朝日を全身で浴びる。三本足の大烏が空を舞う陰が、一瞬、神武の上を横切る。その瞬間、彼の体に再び不思議な熱が走った——それは“神の意志”を体現する者としての覚悟と、自分だけでなく、笑顔にあふれる仲間たちすべてを守り抜くという誓いの証のように。

 東の空へ、さらに前進! こうして、八咫烏を味方につけた神武一行は、名実ともに “神が導く旅団” となって、国づくりの道を突き進んでいくのだった。

次章はいよいよ、ヤマトに近づくための陸路攻略が待ち受ける(のかもしれない)。突然現れる強力な豪族? さらなる神秘体験? 何が起きても、この仲間たちと八咫烏の連携プレイで乗り越えられる——そう信じたくなるほど、彼らの絆は深まった。神武イワレビコの“神の血統”に込められた力が、いよいよ大きく花開く予感がするではないか。


第五章 「ヤマト平定への第一歩 〜ちょっと強そうな豪族との遭遇〜」

 八咫烏(やたがらす)の導きによって、海から陸路へと旅を進めていた神武イワレビコ一行。ようやく“ヤマト”と呼ばれる地域の入り口に差し掛かったころ、空気には緊張感が漂い始めていた。噂では、この地に手強い豪族勢力が数多く割拠しているらしい。 しかし一方で、彼らは**「これぞ国をまとめる最初のステップ!」**というワクワク感をも抱いている。何しろ今回の旅の最終目標は、「分立する豪族を束ねて、みんなが笑って暮らせる国をつくる」こと。ここで一仕事する価値は十分にあるはずだ。

1. ヤマトに近づくにつれ、手強い豪族勢がちらほら

 森を抜け、小高い丘を越えた先に広がる盆地には、ところどころに大きな砦(とりで)や城柵(じょうさく)が見えてくる。聞くところによると、それぞれが豪族と呼ばれる支配者層の拠点らしい。「うわぁ、あっちにも柵、こっちにも柵……めっちゃ警戒してるっぽいっすね」 ケイタロウが目を丸くし、サエコが「勝手に突っ込んでいったら大変よ。相手はいつ矢を放ってくるかわからないし」と慎重な構え。タケヒトは斧を軽く担ぎ、「それなら正面から突破すりゃいいじゃん!」と相変わらず豪快に意見するが、フミノリは首を振って「いやいや、ここはもっと巧妙にやらないと……」と困惑顔だ。

 神武が周囲を見回しながら言う。「やっぱり、ここにいる豪族たちとどう付き合うかが大事だな。全部バリバリ叩き潰すより、仲間を増やす方向を考えないと ‘国づくり’ に繋がらないだろ?」 この言葉に、仲間たちは「そうだね」とうなずく。国家主義的視点でいえば、分裂状態の豪族をまとめてこそ“国の連帯”が生まれる。強引な戦いばかりでは先に進めない。

2. 最初の“アプローチ”は、たまたま遭遇した豪族の砦

 そんなこんなで一行が進んでいると、立派な木柵に囲まれた集落を発見。門の前には、明らかに武装した男たちが睨みをきかせている。「ここは**草部(くさべ)**という豪族の領地らしいですよ。けっこう歴史が古いとか」 フミノリが地元情報をかき集めてきたらしい。タケヒトはやる気まんまんで「よし、門を叩いて『仲間に入れてくれ!』とでも言うか?」と勇むが、サエコは「いきなり怪しげな連中が門を叩いたら、逆に矢が飛んでくるわよ」と冷ややかだ。

 ケイタロウが「じゃあ俺が ‘営業トーク’ で交渉してみましょうか?」と名乗りを上げる。彼は弁が立つというより、“勢いとノリ”だけでなんとかしてしまうタイプ。それでもチームの中では比較的“外交向き”といえる。 一方、タケヒトは口下手でありながら、なぜか「いや、俺が話してやる!」と意固地になり始めた。明らかに交渉下手が前面に出そうな予感だが……すでに始まってしまう会話劇。

2-1. 交渉下手な武将 vs. 熱血営業トーク要員

 門の前。タケヒトが斧を持ったまま、門番に声をかける。「お、おい! 俺たちは怪しいもんじゃないぞ! 神武イワレビコ様の軍勢だ!」 門番は一気に警戒して構える。「斧を持ったまま ‘怪しくない’ って言われても説得力ないんだけど…?」という空気が伝わってくる。

 そこでケイタロウが横から割って入る。「ご安心を、わたくしどもは ‘この地と友好関係を結びたい’ だけです! そちらの大将に一度お目通り願えませんでしょうか?」 すると門番は「ちょっと待ってろ」と渋い顔をして、奥へ伝令に走る。

 待つこと数分。門がギギギ……と開かれ、かなり貫禄のある武者姿の男が勢いよく出てきた。甲(よろい)の胸には「草部」と大きく家紋が入っている。「名乗れ、そこの斧男! お前たち一体何者だ?」 タケヒトが口下手全開で焦る。「お、おれはタケヒト! …だがリーダーは神武イワレビコっていうやつで……えっと、国をまとめようとしていて……」 説明が飛び飛びで、つい門番も「要するに、何なんだ?」「もっとちゃんと説明しろよ!」と苛立っている様子。

 こりゃまずいと感じたケイタロウは、とびきりの笑顔を作りながら前に出る。「すみませーん、我々は “この地域を一丸にして、さらに豊かで平和な国を作りたい” と願っているんです! もし草部のご当主がご興味おありなら、ぜひお話を聞かせていただきたいな〜と思いまして!」 軽快なトークに、当主の男は「うむ…」と腕を組みながら眉間にシワを寄せる。怪しい連中かもしれないが、どうやら本気で“国づくり”を語っているらしい。ちょっとだけ興味を惹かれた様子だ。

3. “仲間を増やす交渉” と “ガチンコ勝負” を組み合わせる策略

 結局、当主の男(名を草部ノモリという)が一行を砦の中に案内してくれることになった。大勢の家臣たちが警戒の眼差しを向ける中、神武たちはテーブルを囲んで“交渉”をすることになった。「なるほど、お前さんたちは ‘ヤマト’ を目指して大きな国を作りたいってわけか」 草部ノモリは渋い声でそう言いながら、タケヒトの斧をチラチラ見ている。まだ斧を手放していないタケヒトに少々不信感があるようだ。

 そこへ神武イワレビコがすっと立ち上がり、深く頭を下げる。「草部ノモリ殿、俺たちはただ戦をしたいわけじゃありません。みんなが心を通わせ、助け合い、さらに強い ‘共同体’ を目指してるんです。もしあなたの力を貸してもらえたら、共にこの地を平定し、平和な国を築けると信じています」

 国家主義的視点で言えば、こうした“豪族との同盟”は非常に重要だ。分裂状態を終わらせるには、まず相手をどう説得するか。そして必要なら力の誇示も欠かせない——これこそが交渉と武力の両輪作戦だ。

 草部ノモリはしばし沈黙ののち、「ふん……たやすく信じろってのも難しい話だな。お前たちの実力、見せてもらおうか?」とニヤリと笑う。「ちょうど今、うちの副将が ‘力比べ’ をしたがっててな。誰か一人、闘ってみる度胸はあるか?」

3-1. 力による威厳の示し

 その提案を聞いた瞬間、タケヒトの目がキラリと輝く。「よーし、ここは俺が行くぜ!」と言わんばかりだ。神武も苦笑いしつつ「お前さんの腕を見せるチャンスだな」と背中を押す。 こうして準備された“ガチンコ勝負”は、草部ノモリの副将であるゴウザエモン(めちゃくちゃ頑健な男)との斧 vs. 大槌の激突となった。

 砦の中庭に集まる一行と草部の兵士たち。ゴウザエモンは大槌を肩に担ぎ、「ほれ、いつでも来い!」と余裕の表情。一方のタケヒトは斧を両手で握りしめ、鋭い眼光を放つ。「じゃあ…いっくぞおおおおおッ!!」 両者が火花を散らしながら突っ込み合い、バチィン! と武器が衝突。周囲の見物が「おお…!」と声を上げるほどの音が鳴り響いた。

 当のゴウザエモンは相当な怪力だが、タケヒトの斧さばきも負けていない。何度も打ち合いを繰り返し、土煙があがる。最後の衝突でタケヒトが思い切り斧を振り下ろすと、ゴウザエモンは大槌ごと押し返されて後ろへ転がった。「ぐ、ぐぅぅ…。まさかここまでとは……!」 ゴウザエモンは大汗をかきながら地面に倒れ込み、その隙にタケヒトは斧を突きつけて動きを制した。会場に一瞬の静寂が訪れる。

 そして草部ノモリが口を開く。「なるほどな……そっちの ‘力’ は大したもんだ。副将が負けるとは思わなんだ」 そう言いながらも、その口元には何やら満足げな笑みが浮かんでいる。

3-2. 熱血営業トークで取り込み成功?

 そこで今度はケイタロウがシャシャリ出る。「へいへい、そちらの副将が認めるほど強い俺たちですけど、決して ‘力’ に物を言わせたいわけじゃないんですよ! 共に手を携えれば、もっとすごいことができるはず。どうです? 同盟結ばせてもらえませんか?」

 生々しい汗を流すタケヒトを見ながら、草部ノモリは「ふむ……」と腕を組む。周囲の兵士たちもゴクリと唾を飲んでいる。 一方、フミノリは学者らしく「我々は海を渡り、神の導きを受けてこの地まで来ました。あなた方の力と合わせれば、ヤマトにいる他の豪族とも有利に交渉や平定ができるでしょう」と、具体的な利点を説く。サエコも「物資の融通やお祭りの協力だって、きっとお役に立てると思います」と丁寧な言葉を添える。

 たたみかけるような熱血営業トークに、草部ノモリはもう警戒心というより興味津々だ。「なるほどな、お前らは ‘国’ を作ろうとしてるってわけか。悪くない話だ。何より、お前らの ‘神武’ とかいう奴が ‘神の血を継ぐ’ ってウワサも本当なのか? あんまり怪しいことを言うようなら、ただじゃ済まんぞ」

 するとここで神武が、満を持して血統の証を示す。かつてイチハナ(伯母のような存在)が見せてくれた巻物の一部を持参しており、その抜粋を広げるのだ。そこにある「天孫降臨」にまつわる名前や由来などを見せつつ、「確かに自分は神々の末裔だ」というストーリーを披露。「俺たちは ‘武力’ だけじゃない。神々の血を継ぐ者として、平和で豊かな国をつくる使命があるんです。あなたが共に歩んでくれるなら、きっとより大きな力を発揮できるに違いない!」

4. コミカルなやりとりで芽生える“連帯”

 この説明を聞いた草部ノモリ、しばらく唸っていたが、最後には大笑いしてこう言った。「ははは、なんだかお前たち、本気っぽいな! 普通なら ‘神の末裔です’ なんて聞いたら胡散臭いが、ここまで言われちゃあ、乗ってやるしかないだろう!」

 部下たちは「え、そんな簡単に!?」と驚いているが、草部ノモリには不思議なカリスマがあった。自分の心が「コイツらと一緒に行けば、新しい世界が見える」と告げているらしい。「いいだろう、うちの軍勢の一部をお前たちと共に動かしてもいい。ただし、うちにはうちの流儀もあるからな。そこはちゃんとリスペクトしてもらわんとな!」 タケヒトやケイタロウが「もちろんです!」と即答し、サエコは「お互いに協力することで、きっと大きく発展できます」と笑顔で返す。

 こうして誕生したのが、「草部ノモリ一派と神武一行の同盟」。言ってみれば、ここがヤマト平定の第一歩であり、“国家”を形づくる最初の連帯ともいえる瞬間だ。

5. 宴会でさらに深まる絆

 交渉成立を祝して、砦では賑やかな宴が始まった。大きな鍋が用意され、地元名物の野菜と猪肉を煮込んだスープがぐつぐつ煮え立つ。ケイタロウが「うまいっすね〜!」と箸を止められず、ウズメは酔いも手伝ってか軽やかな舞を披露して大盛り上がり。タケヒトはゴウザエモンと肩を組み、「さっきの勝負、めちゃくちゃ熱かったな! またやろうぜ!」なんて笑っている。 フミノリは草部一派の知恵袋的な人々と地図や古文書を見ながら情報交換。サエコは料理の手伝いまでしながら、草部ノモリの妻や娘たちとおしゃべりに花を咲かせる。

 そんな喧騒の中、神武は部下たちから少し離れ、草部ノモリと差し向かいで盃を交わしていた。「しかし、お前たち ‘神武一行’ は面白いやつらばかりだな。戦もできる、交渉もできる、しかもやたら楽しそうにやりやがる」 草部ノモリは酒を飲み干し、にかっと笑う。「俺も昔は ‘力’ さえあればいいと思ってたが、それだけじゃ国なんてまとめられない。お前らと付き合ってみて、ちょっと自分の考えが変わりそうだよ」

 神武はその言葉に大きくうなずき、盃を掲げた。「俺だって、草部ノモリさんみたいな度量のある人が仲間になってくれるなら、百人力だと思ってる。ここから先も、手強い豪族はたくさん出てくるはずだ。でも、力を合わせればきっと乗り越えられる。国づくりは ‘一人’ じゃできないものだからな」

6. “分立する豪族” を束ねて、広がる国の連帯

 こうして“草部ノモリ一派”を加えた神武一行は、ヤマト平定の最初の成功例を勝ち取ったといえる。強力な助っ人が加わったことで、部隊の規模も拡大し、さらに情報網や物資の補給ルートが広がった。 国家主義的な視点で見れば、これは「分立する豪族の一つを取り込む」ことに成功した重要な布石だ。単なる腕力だけで征服するのではなく、交渉と武力のバランスを巧みに使うことで、“仲間としての連帯” を築き上げたのである。

 宴会がひと段落して夜空の星が瞬くころ、神武は砦の櫓(やぐら)の上に登り、遠くの山々を見つめた。「よし……ここからが本番だ。まだまだ手強い連中がいるかもしれないけど、この調子で ‘国’ に加わってくれる仲間を増やしていこう」

 三本足の大烏(八咫烏)の姿は、夜闇のどこかでちらりと影を見せる。まるで「その意気だ、神武よ。わしがちゃんと見守っているぞ」と言わんばかりに、クックックッと笑っているような気がする。

 今宵、焚火の光に照らされる砦の中庭では、草部ノモリの率いる豪族たちと神武イワレビコの一行が、杯を交わし、笑い声を上げながら語り合う姿があった。誰もが心の奥底で、“新しい国の夜明け” を確信し始めている。その結束が、やがて大いなる国家の誕生へと繋がる一歩なのだ——彼らはまだ知らないが、確かな足音は着実に前へ進んでいる。

 こうして、ヤマト平定への第一歩は無事に踏み出された。次なる豪族との出会い、あるいは強力な敵が立ちはだかるかもしれない。だが、彼らにはもう “共に力を合わせる” という確かな方針がある。さあ、ますます賑やかになりそうな神武イワレビコ一行の旅は、まだまだ続いていく——。


第六章 「長髄彦(ながすねひこ)、ここに降臨! 〜ヤマト最強の男を倒せ〜」

 草部ノモリの一派を仲間に引き入れ、ヤマト平定への道を一歩進めた神武イワレビコ一行。諸豪族との交渉や協力を重ねながらも、彼らの旅路には決定的な“ラスボス”が待ち受けていると噂されていた。 その名は長髄彦(ながすねひこ)。 かねてより「ヤマト最強の男」として畏れられ、その強力な兵と広大な領地を支配しているという。やがて神武一行は、どうしても避けられない衝突を迎えることになる——。

1. ヤマト最大の敵、その名は長髄彦

 丘の上から見下ろすと、遠くの平野にいくつもの砦が点在しているのが見えた。「ここが……長髄彦の領地と言われる場所っすね。うわー、めちゃくちゃ守りが硬そう……」 ケイタロウが双眼鏡代わりの木筒を覗き込みながら呟く。タケヒトが斧を担ぎつつ「でかい砦ほど燃えがいがあるってもんだ。ここは一発、正面突破してやろうか?」とやる気満々なのを、サエコがすかさず「はいストップ!」と止める。

「だいたい、あれだけでっかい勢力を相手に、いきなり特攻したらどれだけ被害が出るかわからないわよ。もう少し作戦を練ろう」 フミノリが地図や記録を広げながら、周辺の豪族や地形を確認している。「ええと、長髄彦は ‘武力による支配’ と ‘恐怖政治’ を組み合わせた手法を使っていると言われてます。交渉で解決できる相手じゃなさそうですねぇ……」

 その横では、仲間になった草部ノモリが腕を組み「長髄彦の噂は俺も聞いてるが、関わりたくねぇなぁ」と顔をしかめる。あの快活な男も、長髄彦の名にはちょっとビビッているようだ。 しかし、神武イワレビコはそれを見てニッと笑う。「ふっ、ここまで来たらもう逃げるわけにはいかないさ。俺たちが ‘国’ をまとめるには、やっぱりヤマト最大の壁を倒さなきゃ始まらない。やるしかない!」

2. 長髄彦、姿を現す

 調査を進めるうちに、神武一行はついに長髄彦が本拠地にしている大きな砦の近くに到達した。ところが、こちらが近づく前に敵のほうから偵察兵がやってくる。「貴様ら、神武だとかいう一団か? 長髄彦様が ‘今すぐ面を出せ’ と仰せだぞ!」 敵偵察兵が上から目線で告げる。タケヒトが「ああん?」と気色ばみ、サエコが「そういう物言いはないでしょ!」と呆れるが、ケイタロウが「まあまあ、とりあえず行ってみようじゃないですか」と場を収める。

 こうして神武らは、あえて砦の前まで進み出た。そこに現れたのが、噂の長髄彦。見るからに屈強そうな鎧をまとい、背丈はタケヒトと並んでも遜色がないほど大柄。長い髭をたくわえ、目つきは鋭い。「やはり来たか…… ‘神武イワレビコ’ とやら。お前がこの辺りで好き勝手してるってのは知ってたが、まさか俺の領土を脅かすつもりはないだろうな?」 低い声が響く。神武が負けじと前に出る。「脅かすつもりはない。ただ、俺たちが ‘新しい国’ を築くためには、あなたが力を貸してくれないと困るんだ。それとも、話し合いで協力してもらえますか?」

 長髄彦は、鼻で笑い飛ばすようにフッと息を吐く。「協力? 冗談を言うな。俺はこのヤマトを ‘支配’ している側だ。わざわざ ‘神の血を継ぐ’ とかいう若造に従う理由などないわ!」 その瞬間、周囲にいた長髄彦の兵たちが一斉に武器を構える。やはり交渉など望み薄か。

3. 手に汗握る大決戦——だけど会話はどこかコミカル?

 両陣営が一触即発の空気。サエコが「うわー…また戦争かぁ。心臓に悪いよ」と小声でこぼすと、ケイタロウが「大丈夫、僕たちならやれますって!」と根拠のない笑顔を見せる。タケヒトはすでに斧を研ぎ澄まし、草部ノモリも「俺も加勢するぜ、やるからには徹底的にな!」と気合が入っている。 フミノリは目を閉じ、「数字的には向こうのほうが多いが、策を練れば勝算あり」とぶつぶつ呟いている。

 そして、神武は鋭い声で号令をかける。「皆、構えろ! 長髄彦が従う気がないなら、力で道を拓くしかない。もうここで決着をつけよう!」

 一気に乱戦モード突入か——と思いきや、長髄彦がニヤリと笑う。「いいだろう。だが、ただの総力戦じゃ面白くない。お前とこの俺で、一騎打ちをしてみるのはどうだ? どちらが勝つかで、ここの運命を決めようじゃないか」

 まさかの一騎打ち提案に、タケヒトが「ちょ、俺の出番は?」と不満そうだが、サエコが「いいのよ、ここはリーダー同士で決着をつけるっていうのが筋なんだから」と止める。ケイタロウは「やっべー、神武様が負けたら終わりっすよね」と冷や汗をかくが、神武は堂々と胸を張って答える。「上等だ! お前の力、確かめさせてもらうぞ!」

4. 神武のリーダーシップによる士気高揚

 戦場の中心に、神武と長髄彦が向かい合って立った。双方がじりじりと間合いを詰める。周囲は緊迫の空気——しかし、よく見るとタケヒトが心配そうに「いけるか……? 神武……」と呟き、サエコが「大丈夫、きっと…ね?」と声にならない声で応援。ケイタロウは拝むように手を組んでいるし、フミノリは「勝率は……60%くらい? いや、もうちょいあるか…」と計算中だ。

 そこに、神武が一声、仲間たちへ向けて叫んだ。「心配するな! この戦いは俺たち全員でつかむ勝利だ。みんながいてくれるからこそ、俺は負けないんだ!」

 その言葉に、兵士たちや草部ノモリ一派、さらにはウズメも「がんばれ〜!」とダンスでエールを送る。魔法陣のごとく円を描きながら舞い踊る姿は妙にシュールだが、どこか神聖さも感じる。 国家主義的視点で見るならば、ここで“みんなの士気を高めるリーダーの存在”こそが、国の中心を明確にする。神武には“神の血統”という正統性があり、仲間の声援でいよいよ燃え上がるのだ。

5. いざ、一騎打ち!

 長髄彦は大槍(やり)を構え、神武は剣を抜く。お互いに睨み合い、次の瞬間——。「はあああああっ!」「ぬおおおおっ!」 ほぼ同時に地を蹴り合い、鋭い突きと斬撃が交錯する。バチンッという衝撃音に、周囲の兵士たちが息を呑む。タケヒトが思わず「すげえ……」と呟くほど、2人の動きは速い。

 長髄彦の槍さばきは豪快かつ正確。神武が紙一重で避けたと思ったら、すぐさま逆側から突きが飛んでくる。それを神武は辛うじて剣で受け止めるが、衝撃で体がぐらつく。「くっ、強い……やるじゃないか」 神武が歯を食いしばりながら態勢を立て直すと、長髄彦は口元を歪めて笑う。「ほう、ここまで耐えるとは。だが、まだまだ俺の方が上だろう!」

 さらに畳みかける猛攻。神武の腕はしびれ、剣が折れかけそうな振動が走る。見ている仲間たちのハラハラ度合いはマックスだ。サエコは思わず「わー!」と目を覆い、ケイタロウは「がんばってーーー!」と大声援。タケヒトはすでに「……くそっ、乱入してえ!」と落ち着かない。

6. 仲間の連携攻撃が光る!

 しかし、神武一人が戦っているわけではない。ウズメは軽く舞いながら、神に祈るように手をかざしている。それによってかどうかは分からないが、一瞬だけ神武の体が軽くなったような気がした。 フミノリは仲間に指示を出し、「周囲を取り囲むようにして、万一のときは一斉に援護射撃を!」と号令。ケイタロウが弓を構え、サエコが陣頭指揮を執る。タケヒトと草部ノモリはそれぞれ斧と槍を手に、いつでもカットインできるようにスタンバイ。

 神武が巧みに長髄彦の槍先を逸らした瞬間、ケイタロウの放った矢がヒュッと空を裂き、敵の肩アーマーをかすめた。バランスを崩した長髄彦がよろめくと、すかさずタケヒトが斧を振りかざして威嚇。長髄彦は槍で防御を試みるが、それを草部ノモリの横槍(文字通りの槍)がガキィン!と弾き飛ばした。「ぐおっ、なんだこの連携……!」

 長髄彦は驚愕の表情。どうやら一騎打ちとは言いつつも、“仲間たちの援護” はしっかりあるのが神武一行の強みだ。そこに対するクレームを出そうにも、もう攻撃を捌くのに必死で言葉が出ない。

7. 神武の必殺、そして決着

 まさに総攻撃のタイミングを見計らい、神武が渾身の力で飛び込む。剣を振りかざす姿は、仲間たちの声援を背に受けてまばゆいほど。「これで終わりだ、長髄彦!」 一瞬、周囲の空気が止まったかのように感じられる。長髄彦は槍を掲げるが、もう体勢が崩れきっている。神武の剣がスパッと槍の柄を叩き割り、そのまま長髄彦の足元を抉(えぐ)るように斬り込むと、ドサリと長髄彦が片膝をついた。

 長髄彦は苦しそうに肩で息をしながら、悔しげな声をしぼり出す。「俺が……負けるとは……。まだ、戦えるぞ……!」 だが、その目は闘志とは裏腹にもう白目がち。神武が剣先を彼の喉元に向けると、長髄彦は力なく槍の柄(折れた先)を地面に落とした。

「長髄彦、ここまでだ。これ以上無益な争いをしても誰の得にもならない。俺たちと一緒に ‘国’ を作るというなら命は取らない。どうだ?」 周囲の兵士たちは一部がまだ戦意を失っていないが、長髄彦が片手を挙げて止める。「……お前たちの ‘力’ と ‘連携’ は確かに見事だ。俺は……敗れた者として、その決断を認めねばならんか……」

 その答えを聞いた瞬間、タケヒトやサエコ、ケイタロウたちは「やったあ!」と大歓声。草部ノモリも「さすが神武だぜ!」と斧を掲げ、周囲の兵士や神武側の軍がわっと騒ぎ出す。いきなりコミカルな祝賀ムードになるあたりが、なんともこの一行らしい。

8. 力と正統性が結びつき、国の中心が明確化される

 長髄彦がゆっくりと立ち上がり、まだ荒い息をしつつ神武を見据える。「お前が言う ‘神の血を継ぐ者’ だというのは本当のようだな……。豪族どもをまとめ、国を作るとか、笑わせるじゃないかと思っていたが……」 苦笑いしながら、続ける。「だが、お前に ‘本物の力’ があることはわかった。ここまできたら、もう認めるしかないだろう。俺も負けを認める代わりに、このヤマトの地をお前と一緒にまとめてやるよ。どうだ、悪い話じゃないだろう?」

 神武はその言葉にしっかり目を合わせ、無言でうなずいてから手を差し出す。長髄彦もその手を握り返す。二人の間には、先ほどまでの殺気立った空気は嘘のように消え去り、新たな盟約の兆しが生まれた。 国家主義的視点で言うなら、これは “力のあるライバル” をも味方につけることで、一挙に国の中心が神武へ集約される証拠。正統性(神武の血統)に加え、実際の武力(仲間の連携)でも圧倒した——こうして、“揺るぎないリーダー” がここに誕生するのだ。

9. 宴会? やっぱり開きます

 そんな一幕の後、両陣営が完全に手打ちし、勢い余ってまたしても大宴会が始まった。ここが神武一行の大きな特徴だ。戦いが終われば皆仲良く、盛大に酒を酌み交わす。 長髄彦は傷がまだ痛むらしく多少の苦痛の表情を浮かべているが、「うまい酒じゃな……」と杯を手にしている。タケヒトは「これで俺の試合する機会がなくなったわけじゃないよな! 今度こそ俺がお前と……」と息巻き、サエコは「また戦いたいの? 懲りないわね」と呆れ顔。

 ウズメが踊り始めると、長髄彦の兵士たちも「なんだこれ、楽しいかも」と足拍子を合わせる。ケイタロウは相変わらずハイテンションで「ヤマト最大の敵まで味方にしちゃうとは、さすがっすよ神武様!」と太鼓をドンドコ鳴らし、フミノリは端っこでメモしながら「国づくりの歴史書を書く日も近いな……」とニヤリ。

 そして神武は、一際高い場所に立ち、仲間たちと長髄彦の兵士らを見渡して穏やかに笑う。「これでヤマト平定も、かなり大きく前進した。まだ残党や他の勢力もあるだろうが、ここまで来たらもう ‘国’ の姿が見えてきたな」

10. 国の中心が明確に——いざさらなる未来へ

 焚火の光に照らされるその姿は、既に名実ともに“ヤマトのリーダー”。周囲は神武を中心に、一つの大きな共同体へと変わりつつある。ここに草部ノモリ長髄彦などの一派が加わってくれたことで、各所に散っていた豪族のほとんどが、いよいよ集約される見込みだ。 国家主義的に言えば、強いカリスマ(神武)+“神の正統性”+“実際の武力・連携”によって、国の中心が定まった瞬間と言っていい。あとはこれをどのように組織化し、平和と秩序を築いていくか——だが、その大いなる道のりの始まりを、みんなが今夜の酒宴で祝福している。

 夜空には、いつものように三本足の大烏(八咫烏)が静かに舞い降りる。月光のシルエットをまといながら、クックックッと含み笑うように。まるで「よくやったな、神武。これからがさらに本番だぞ」と言っているかのようだ。 遠くから吹く風が、祭りの喧騒を優しく吹き抜ける。ここに神武イワレビコを中心とした“国”の骨組みが確立され始めたのは、もはや疑いようがない——。

 これにてヤマト最大の敵は倒され、ついに神武の正統性が決定的となった。だが国づくりは、まだまだ先が長い。新たな問題や調整、あるいは過去にこじれた反発勢力が潜んでいるかもしれない。しかし彼らの絆とリーダーシップがあれば、どんな難題だって笑い飛ばしながら前進するに違いない——。


第七章 「橿原の華やかな建国セレモニー 〜ここからはじまる“みんなの国”〜」

 長髄彦(ながすねひこ)を破り、ヤマト一帯を見事に平定した神武イワレビコ一行。戦と交渉を繰り返し、謎のモンスターに襲われ、豪族たちを巻き込みながらここまで突き進んできた。 しかしここから先が、ある意味“本番”だ。を築くというのは、ただ敵を倒せば終わり、というものではない。むしろ、これからが大変なのだ。各地の豪族や庶民の暮らしをどう安定させ、どうまとめあげるか。これを強力に支えていくのが、**“即位の儀式”**という強力なイベントである。

1. 場所は橿原! “建国” の舞台が整う

 ヤマトの中央付近に位置する橿原(かしはら)の地は、穏やかな気候と肥沃(ひよく)な土壌に恵まれ、田畑が広がる美しい場所だ。神武と仲間たちは、この地を新たな首都とすることを決め、「ここを国の中心にする!」と宣言。 その噂は一瞬でヤマト中に広まり、様々な豪族や庶民が「おお、首都ができるらしいぞ」「あの神武様が ‘王’ になるんだとさ!」と浮足立っている。ある意味、祭り好きの日本人(?)らしく、こういうおめでたい話を聞けば自然とワイワイし始めるのだ。

 タケヒトがどでかい斧をトントンと地面に叩きつつ、感慨深げに言う。「へぇ〜、首都ってのはデカイものを想像してたけど、ここは広々として落ち着いたいい場所だな。自然も豊かだ」 サエコがその肩をポンと叩く。「だからこそよ。あんまりゴテゴテした城壁や砦ばかりじゃなくて、人が暮らすのにちょうどいい ‘平和な地’ にこそ国の中心を作るべきでしょ?」

 賛成の声があちこちから上がる。しかもこれが自分たちで“選んだ”場所だと思うと、皆の気持ちも盛り上がるわけだ。国家主義的視点から見れば、「自らの意志で領土を定め、その中心地を選び出す」という行為そのものが、国民意識の形成に大きく作用する。

2. 即位の儀式を盛大に——みんなワクワク準備中

 さて、その“国の始まり”を宣言するのに欠かせないのが、神武イワレビコの即位の儀式だ。 フミノリが古い書物をめくりながら、「どうやら ‘天神’ や ‘地神’ を祀る祝詞(のりと)を捧げるのが一般的らしいですね。あ、こういう装束がいいとか、祭壇の飾りつけとか……うーん、やたらめったら豪華だなぁ」と感心している。 ケイタロウは「よーし、これはもうバシッとデコレーションして、すっごく派手なお祭りにしちゃいましょうよ!」とノリノリ。サエコは「いや、行き過ぎると下品にならない?」と一応ブレーキをかけるが、ワクワク感は否めない。

 当の神武は、少し照れくさそうに苦笑い。「こういうのは ‘王様っぽい人’ がやるもんだろ? 正直、オレに似合うのかな……」 しかしタケヒトや草部ノモリ、それに長髄彦までが「いやいや、ここは大々的にやるべきだ! 今までの功績をみんなに知らしめるチャンスじゃないか」と押しまくる。

 国家主義的視点で言えば、「王(あるいはリーダー)が誕生し、その正統性を ceremonially(儀式として)示す」ことが国民意識を固める上で極めて重要。形だけだとしても、こういう派手なイベントがあると、人々は「おお、私たちの王様だ!」と一体感を持てるのだ。

3. 庶民たちも大集合! のどかな大行列

 いよいよ当日。早朝から橿原の野に長い行列ができる。庶民や豪族、武人や芸人、さらには周辺の村の百姓(ひゃくしょう)たちまで集まってきた。近所で農作業をしていたおじさんが「ちょっと一休みして行列見物してくるわ〜」とやってくるくらいのお祭りムードだ。 サエコが「もう、人人人! すっごい人!」と驚きながらも、しっかり列の整備に奔走。ウズメはテンションが上がりっぱなしで、早くも舞踊の衣装を身につけて踊り出し、周囲の子どもたちを盛り上げている。 ケイタロウは持ち前の営業トークで「ほらほら、みなさん! あっちに行くとメイン会場ですよー!」と誘導。タケヒトやゴウザエモン(草部ノモリの副将)は警備役に回り、変なトラブルが起きないよう目を光らせている。

 こうやって、多彩な人々が織りなすカーニバル状態に、神武は嬉しいような、ちょっと緊張するような、不思議な気分だ。仲間たちは皆、生き生きと役割をこなし、笑いが絶えない。**“みんなの国”**という言葉が、もうすでに現実感を帯びはじめているのである。

4. 神武イワレビコ、ついに即位!

 儀式は橿原の中心に築かれた祭壇で行われる。そこには、神武の血統を示す数々の聖具(せいぐ)や、各地から献上された宝物がずらりと並ぶ。ウズメが優雅に舞いながら、天神や地神への感謝を捧げると、周囲の空気がピンと張りつめたようになる。 フミノリが祝詞を読み上げ、その由緒や歴史的背景を語り、「われらは今ここに、新しい国の始まりを宣言し……」と厳かに続ける。 その合間にも、ケイタロウの実況(?)が入り、「みんな注目〜! いまから神武様が登場ですよ〜!」なんて声が響き、観客たちがワクワク顔で前のめりになる。サエコは「もうちょっと静粛にしてよ!」と焦っているが、祭り好きの熱気はもう止まらない。

 そして、いよいよ神武イワレビコが姿を現す。 彼はいつもよりきらびやかな衣装をまとい、その背後にはタケヒトや長髄彦など、力ある武将たちが揃って立っている。さらに、草部ノモリやフミノリ、ウズメやケイタロウといった顔なじみも続く。「我、神武イワレビコ、このヤマトの地にて “国のはじまり” をここに宣言する!」 その声が響き渡った瞬間、広場からものすごい歓声が巻き起こる。拍手や太鼓の音、歓喜の掛け声が波のように押し寄せ、まるで大地が震えるかのようだ。

 国家主義的視点で言うなら、これは“リーダーの権力の正統性”を公式に示す超重要イベント。リーダー個人ではなく、全国の豪族や民衆が集い、「ああ、私たちはこの ‘国’ の一員だ」と強く認識する儀式と言える。

5. 盛り上がる祝宴ムード絶頂!

 即位宣言が終わると、そこからはもう一大パーティー! ずらりと並んだ屋台では、各地の特産品や珍しい食べ物が次々と振る舞われる。猪鍋はもちろん、タケヒトが大好物の焼き串や、サエコが腕を振るった甘味、ケイタロウがどこからか調達してきた派手な酒など、なんでもアリだ。 ウズメは神楽(かぐら)のような舞を披露し、それを見た長髄彦や草部ノモリたちも「これはすごいぞ!」と感嘆の声を上げる。普段は厳つい顔の武将たちまで、すっかりお祭り気分になっているのが微笑ましい。

 タケヒトとゴウザエモン(草部ノモリの副将)は腕相撲大会を始めて周囲を沸かせるし、フミノリは「ああ、歴史書に書き留めることが多すぎる……!」と頭を抱えつつも、嬉しそう。サエコはあちこちに顔を出しては、「困ってる人はいない?」と世話を焼き、“お祭り警察”のように駆け回っている。ケイタロウはもうテンションが爆発しているため、どこで何をしているのかわからない——気づけば「俺が司会でーす!」なんて叫んでいるかもしれない。

 庶民たちも負けていない。服装はさまざま、祭り用の飾りをつけた者や楽器を持ち寄った者など、自由に楽しんでいる。笑い声と太鼓のリズムが止まらない。

6. 国家主義的視点:権力を“視覚化”して国民意識を固める

 こうして“一斉に祝う”という行為が、国民意識を一層強固にする。今まで地方ごとにバラバラだった人々が、「同じイベントで笑い、同じリーダーを祝福する」という体験を共有することで、“私たちは一つの国に属しているんだ” という連帯感を得られるのだ。 特にここでは、“神の血統を継ぐ” 神武イワレビコが中心に立ち、多彩な仲間たちがそれを取り囲み、さらには強敵だった豪族も参加して盛り上がっている。武力で勝つだけじゃなく、この“儀式”で仕上げをすることが、権力の正統性を鮮やかに示すことになる。

 見るからに大盛況のこのセレモニー。横ではタケヒトが「国って、すげえな……こんなに人が集まるなんて想像以上だ!」と嬉しそうに呟けば、フミノリが「これで ‘建国’ と言っても差し支えないでしょうね。大義名分はバッチリ」と鼻を鳴らす。サエコは「でも、これからが本当の勝負。平和を続けるのは大変よ」と微笑む。 ケイタロウとウズメは、お互いにダンスを踊りながら子どもたちと遊び、草部ノモリは長髄彦と酒を酌み交わしている。なんとも平和な風景だ。

7. 式のクライマックス、神武の宣言

 宴が最高潮に達したところで、神武は再び壇上に上がる。輝くような装束をまとい、どこか神々しささえ漂うその姿。集まった人々が「しーん」と静まり返り、注目の視線を浴びせる。「皆、今日は橿原に集まってくれてありがとう。これまで苦しい戦いや交渉もあったが、俺たちはこうして ‘ひとつ’ にまとまることができた。力を合わせれば、不可能はない。これからも、この国を皆で支え、より良い社会を築いていこうじゃないか!」

 その言葉に、大歓声が返ってくる。「おおおおおーーー!!」 拍手や太鼓、笛の音、子どもたちの歓声が入り乱れ、それはもう災害級の熱狂ぶり。タケヒトが「おい、耳が痛いけど最高だぜ!」と笑い、サエコは思わず涙目になりながら拍手を送る。長髄彦までが「ふん、まあ悪くない」とニヤリとしている。

 八咫烏(やたがらす)の姿は、空高くからその喧騒を見下ろしながら、クックックッと笑っているかのように見える。まさに**“みんなの国”**がここに誕生する瞬間だと、神々も祝福しているのだろうか。

8. “みんなの国”のはじまり

 こうして、橿原の華やかな建国セレモニーは盛況のうちに幕を下ろす。人々の興奮はまだまだ収まらず、夜遅くまで音楽と踊りが絶えないとか。 しかし翌日からは、壮大な国づくりの実務が始まるだろう。治安の維持、田畑の整備、税や祭祀(さいし)のシステムをどうするか——課題は山積みだ。だが、“神の血統を継ぐリーダー” 神武が中心にいて、タケヒトやサエコ、フミノリやケイタロウ、ウズメ、草部ノモリ、長髄彦などなど、多彩な仲間が力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられそうに思える。

 国家主義的視点でまとめるなら、このセレモニーは「国の誕生をみんなで確認し、リーダーの正統性と権力を視覚化し、人々の結束力を最大限に高める儀式」と言える。その効果は抜群で、もはやヤマトは神武が率いる“大和の国”として、新たな歴史を刻み始めたに等しい。

エピローグ:新たな未来へ

 夜が更け、静まりゆく橿原の地。焚火の名残がゆらゆらと消えかけた頃、神武は一人、祭壇の前に立っていた。「こうして ‘国’ ができた。けど、ここがゴールじゃなくてスタートなんだよな」 ぼんやりと星空を見上げると、遠くで八咫烏が舞う影が見えた……かもしれない。クックックッと笑う声が風に乗って聞こえたような気もする。

 “みんなの国”——それは、支配と被支配ではなく、助け合いと連帯で成り立つ共同体。神武イワレビコの物語は、ここから先さらに広がり、やがて日本という国の長い歴史の始まりとして語り継がれていくことだろう。 人々の笑顔と、力強いリーダーシップ、そして神々の後押し。この三拍子が揃ったとき、何ものにも負けない国が生まれる。今日の橿原の祝宴は、その象徴的な一日となった。

 こうして大興奮の建国セレモニーを終えた神武と仲間たち。しかし彼らの“国づくり”は、まだまだ道半ば。法制度の整備や隣国との外交、天変地異など課題は山積みだ。だが、それでも笑いと希望を絶やさず進んでいく彼らの姿こそ、新たな時代の幕開けに相応しい——これからの大和の国に、ますます目が離せない。


第八章 「神の血が繋ぐ覇道 〜王位継承と未来へのレール〜」

 橿原(かしはら)の地にて盛大な“即位セレモニー”を終えた神武イワレビコ。 ヤマト中の豪族や庶民をまとめ上げ、自らが“王”となることで、新たな国の中心が明確化された。 今や祭りも落ち着き、日常へと戻りつつあるが、一方で国づくりの仕事は山のように積まれている。法整備や行政組織、近隣地域との外交……思った以上にやるべきことが多い。

 しかし当の神武はというと、日々の雑務に忙殺されながらも、ふと空を見上げては**「さらに先の未来」**を思い描いていた。そう、「俺の後継者はどうなるのか?」なんて問題を。ここには“神の血筋”という強力な軸がありつつも、一筋縄ではいかないドラマの予感が漂っている。

1. 「王様」になっても変わらぬ日常、でも責任は超巨大

 即位して数日後、神武がふらりと橿原の朝市を歩いていると、あちこちから「神武様だ!」「おはようございまーす!」と声がかかる。「お、おはよう……」 まだ慣れない呼び方に、神武は照れくさそうに手を振る。以前と同じように庶民と笑顔で触れ合う姿は、ちっとも「偉そうな王様」じゃない。

 それでも、周囲の人々は昔とは違う目で見ている。「あの人が ‘神の血統’ で、この国の頂点だ」という認識が広まったからだ。タケヒトが冗談半分に言うように、「もうちょっと ‘王の風格’ 出してもいいんじゃないか?」と冷やかされても、神武は「いやぁ、オレには似合わんさ!」と肩をすくめるばかり。 しかし大勢の民や家臣にとっては、その**“親しみやすい王”** こそが魅力のひとつ。国家主義的視点で見るなら、王の存在が国民の心を一つにまとめる強いシンボルになっているのは間違いない。

2. “神の血筋”をどこまで重視するのか? 後継者問題という火種

 そんなある日、フミノリが巻物を手にして神武のもとを訪れた。「神武様、ちょっと気になる記録を見つけまして……。先代の系譜とか、神々の血筋について書いてあるんですが、どうも ‘後継ぎをどう選ぶか’ って話題が昔から議論されてるらしくて」 フミノリは学者肌ゆえ、こうしたネタには目がない。神武が「へえ……」と興味を示すと、横にいたケイタロウが口を挟む。「そりゃあ ‘王様の後’ は気になるっすよね。今は神武様が若いからいいけど、いずれ ‘王位’ を継ぐのは誰かって話になりますし」

 その瞬間、サエコが少し困ったような表情で言う。「そうなのよね……。今はみんな神武様を認めてるけど、次の代がどうなるかは未知数だわ。『神の血統を純粋に継いでいるのは誰か』とか、いずれ派閥争いも出てきそうだし……」 タケヒトは「まぁ、オレたちはまだ先の話だろうけど……それでも気をつけないと ‘お家騒動’ になっちまう可能性はゼロじゃない」と腕を組む。

 国家主義的視点では、王権の正統性は“神の血筋”で裏打ちされるのが理想的だが、だからこそ「血筋をどう繋いでいくか」という問題が付きまとう。人間の悩みは尽きることがないのだ。

3. 賢者会議(?)で巻き起こる珍発言の数々

 このところ、ヤマト中の頭脳派や有力者が橿原に集まり、国政に関する会議が頻繁に開かれている。そこでは後継者問題や政策の方向性など、様々な議論が繰り広げられる。 神武やフミノリ、草部ノモリらも参加するが、どうしても**“血統”**の話題になるとすぐに色めき立つ連中がいるのだ。

「いやいや、王家の血は純粋でなければならない! それが神の御心!(みこころ)だ!」と声を荒げる者がいれば、「いやいや、国が大きくなれば外からの縁組(えんぐみ)も必要になるさ。血筋だけにこだわっても、人材不足になっちまう」と冷静に返す者もいる。 挙句の果てには、「我こそは神武様の遠い親戚である!」と主張する人物が出てきて場がざわつき、ケイタロウが「え、証拠はあるんですか?」とツッコむと「証拠はない!」と言い切って爆笑を誘ったり。

 見ている分にはコミカルだが、フミノリ曰く「この温度差こそ、将来の火種になりうる」そうだ。サエコは「まあ、今は国が落ち着いてるし、あまり神経質にならなくていいと思うけどね」と言いつつ、いつかはきちんと整理すべき話題だと感じている。

4. 国が一つにまとまり、安定していくヤマトの風景

 そんな“次代の王”論争の萌芽はあるにせよ、現在のヤマトは平和そのもの。あちこちの田畑では、作物が豊かに実り始め、庶民の暮らしぶりも少しずつ向上している。 戦が絶えなかった頃と比べると、今は豪族同士が手を携え、道を整備し、交易ルートを拡張するなど、国のために協力するムードが醸成されているのだ。

 タケヒトは「俺の出番が減って退屈だぜ」とぼやくが、サエコが「それこそ平和の証拠じゃない? もう ‘斧で敵を倒す’ だけが仕事じゃないんだし」と笑う。ケイタロウは相変わらず営業モード全開で「新しい市場を開拓しましょう!」と楽しそうに企画を立てている。フミノリは「記録が多すぎて大変だ」と言いながらも、ヤマトの豊かさに嬉しそうだ。 そして、あれほど険悪だった長髄彦草部ノモリまでもが、祭りや行事で主導的役割を担うようになり、庶民から感謝されたりしている。

 遠くの山から吹く風が涼しく、田畑を黄金色に揺らしている。神武はそんな風景を眺めながら、「これだ、俺が望んでいた ‘みんなの国’ は!」と心の中でしみじみ思う。

5. 国家主義的視点:長きにわたる王統を示唆

 そして、この平和と繁栄を永続的なものにするには、やはり**“王位の継承”** が不可欠だ。 国家主義的な考え方では、「国民が誇りとする ‘王家’ が長く続くほど、国の安定と連帯感が深まる」とされる。神武が皇位を開き、その血統を将来の子孫へ引き継ぐことで、“この国はずっと続いていくんだ” という希望を、民衆に与えられるのだ。

 タケヒトがある日、神武に冗談めかして言った。「もしこの国が100年、200年、下手したら1000年とか続いたらどうする? お前の子孫が ‘王’ を名乗り続けるって想像すると、ちょっとワクワクするよな!」 神武は目を丸くする。「1000年も? さすがにそこまで先は想像つかんけど……でも、それならすごいロマンがあるな」と微笑む。

 ケイタロウがすかさず手を叩いて、「ですよね〜! そんだけ続いたら ‘世界に誇る王統’ になっちゃいますよ! あー、我々の名前とか地味に歴史に残っちゃったりして〜」なんて無邪気に笑う。

6. 明るく穏やかな未来の描写

 現時点ではあくまで“もしも”の話に過ぎないが、ヤマトの地には確かに “将来への期待” が広がっている。農作物の収穫量は増え、商人たちは市場で活発に取引し、各地の祭りでは新たな文化が花開きつつある。 サエコが嬉しそうに「私、子どもたちの笑顔を見てると、もうそれだけで ‘この国、いいなあ’ って思うのよね」と語ると、フミノリは「『史書』に書き残すべき楽しいエピソードがありすぎて、ペンがいくつあっても足りません!」と嬉しい悲鳴。

 そして一方で、ウズメが神楽の舞を披露すると、周囲はすっかり和やかな雰囲気に包まれる。あの八咫烏(やたがらす)も、いつのまにか空を旋回しながら「クックックッ」と笑っているかのようだ。 この光景は、少し前まで誰も想像し得なかった——豪族が争い合い、怪物まで出没した不安定な時代があったからこそ、今の平和が際立つのである。

7. 神武の決意——「国を永遠に続けるために」

 夜、更け。神武はひとり、橿原の宮(みや)の庭で月を見上げていた。「王になるって、思ってた以上に重いものだな……」 以前は無邪気に「国をまとめたい!」と言ってただけだったが、いまは「自分がいなくなった後も、この国を守っていける仕組みが必要だ」と痛感している。

 足元にぬっと現れたのはタケヒト。そっと近づいて、「お前、めずらしく悩んでるようじゃないか?」と声をかける。「まあな。国を作るのは楽しかったが、守るってのはまた別次元だよ。俺が死んだ後、どうなるんだろう……って考えると、眠れなくてな」 するとタケヒトは、今にも笑いそうな顔で、「大丈夫だって。お前には仲間がいる。そんで、子どもが生まれたらみんなが全力で守る。心配すんな」と言い切る。

 神武はクスリと笑って、「そうだな。仲間がいる限り、どんな困難も乗り越えられる。子孫だって、きっと同じように ‘仲間’ を得て、この国を継いでいくはずだ」とうなずく。

8. 国家主義的視点:長きにわたる王統を示唆し、国の継続性を強調

 こうして見ると、“神の血筋” という基盤があるおかげで、国民や豪族たちは「この王の下なら安心できる」と思いやすい。そこに加えて神武の人柄や、タケヒトやサエコ、仲間たちの協力もあり、ヤマトは一枚岩になりつつある。 国家主義的にまとめれば、「正統性(血筋)+実際のリーダーシップ+仲間の団結=強い国家の継続性」という方程式が成り立つ。もしここで王家がバラバラになれば国は一気に混乱するが、逆に何世代にもわたって“同じ血統の王”が受け継がれていけば、人々の結束はますます高まり、外敵にも対抗できる強固な社会になっていく。

 ケイタロウが口癖のように言う。「いや〜、これ100年続いたらすごいですよね! いや千年でもいけるかも。そしたら ‘伝説の始祖・神武イワレビコ’ とか呼ばれるんだろうなあ!」とケラケラ笑う。周囲は「そんな大げさな」と呆れつつも、内心まんざらでもない。 誰もが内心、「この国はいずれ大きく、そして長く続くんだろう」と感じているからだ。

9. 未来へのレールは伸びていく

 翌朝。お日様が昇る頃、広場ではまた新しい作業が始まっていた。今日は役人たちが農具の改良を話し合い、さらに町の区画整理をどうするかといったテーマが議題に上がるらしい。 サエコはすでに走り回りながら、「みなさん、集まってくださーい! 今日の討議は時間厳守ですよ!」と声をかけ、フミノリは竹簡(ちっかん)や筆を手に書記として忙しなくメモを取っている。タケヒトは「斧だけじゃなく、鎌(かま)の使い方も極めてやるぜ!」なんて言い出し、周りを笑わせる。ケイタロウは「オレも ‘営業’ のノウハウで町づくりに貢献します!」と張り切っている。 長髄彦や草部ノモリたちも、「国づくりは戦よりも骨が折れるな」「まぁ、やりがいがあるから悪くないか」と苦笑いしながら段取りを確認していた。

 一方、神武も宮の門を出て、そっと仲間たちの姿を見守る。彼の胸には、昨夜考えた未来のイメージがぐるぐるとめぐっている。「後継者のこと、血統のこと、いろいろ心配はあるけど……この国がずっと続けば、それだけ多くの人が幸せを享受できるはずだ。ならば、俺は ‘国’ にとって最善を尽くすのみ!」

 そう呟いて、軽く伸びをする神武。朝の光が彼の顔を照らし、まるで“次なるステージ”へ駆け出そうとしているかのように見える。

エピローグ:さらに広がる覇道

 こうしてヤマトは、“神の血筋を中心とした王統” を確立しながら、次の時代へと進もうとしている。もし後継者が生まれれば、やがてはまた新たな物語が紡がれるだろう。 国家主義的視点で言えば、ここに「王位継承のレール」が敷かれることは、国の存続を保証する重大な要素だ。人々は“神”を背景に持つリーダーへ敬意を抱き、世代を超えて統合されていくのである。 もちろん、この先にはまだ多くの試練や問題が待ち受けているかもしれない。だが、神武イワレビコとその仲間たちの笑顔と意志があれば、どんな困難も乗り越えていける——誰もがそう確信し始めている。

 夜空を舞う八咫烏(やたがらす)は、再びクックックッと笑い声をあげる。まるで「お前ら、まだまだ面白いドラマが続くぞ」とでも言うように。神武や仲間たちの覇道は、これから先も“神の血筋”を糧に、悠久の時を刻んでいくのだ。

 こうして王位継承と未来への一歩が描かれ、ヤマトはさらに進化を遂げようとしている。次の章では、いよいよ国の体制や法律、さらには他地域との交流なども深まり、ますます騒がしくも賑やかな日々が待ち受けるに違いない。だが笑いと仲間がいる限り、彼らはきっと大丈夫——そんな温かな確信が、橿原の風に乗って広がっていく。


第九章 「伝説になる日々 〜記紀編纂への道〜」

 ヤマト国が誕生してからしばらく。即位の儀式や祭りの喧騒が落ち着き、日々の国づくりも一段落……というわけでもないのだが、そんなある日、神武イワレビコのもとにフミノリが興奮気味に駆け込んできた。

1. 「後世に残すなら、今のうちに記録を!」とブレーンが言い出す

「神武様、ちょっと! 歴史の記録、ちゃんと残していますかっ!」 フミノリの目は血走っている。いつもは穏やかな学者肌の彼が、ここまで焦るのは珍しい。「え、何があったんだよ……」 神武はびっくりして、巻物を抱えたフミノリを落ち着かせようとする。周りにはタケヒトやサエコ、ケイタロウ、ウズメらおなじみの仲間たちが揃っており、「何事だ?」と興味津々に耳を傾ける。

 するとフミノリが力説する。「この国の誕生は世界的快挙ですよ! なのに正式な記録が少なすぎる! もしこのまま放置したら、数百年後には誰も神武様が何をしたか覚えていない可能性だってあるんです!」「え、そりゃ困るな……」 神武は、どこか寂しげな表情を浮かべる。確かにこれだけドラマチックな国づくりをしてきたのに、後世に伝わらないとなると悔しいかもしれない。

 そこへケイタロウがひょいっと顔を出して言う。「記録するのはいいっすけど、地味〜な文献だけじゃ読む人少なくないですか? もっと ‘燃える感じ’ にしたほうがいいと思うんですよね!」 タケヒトも「オレたちの武勇伝が伝わらないのはイヤだな! どうせならド派手に書いてくれよ!」と早くもノリノリだ。

2. 「制作委員会」立ち上がる——名付けて「記紀編纂プロジェクト」!?

 フミノリははりきって巻物を取り出すと、仮のタイトル案を披露する。「『ヤマト建国伝記』とか、『神武一代記』とか……いや、やっぱりカッコいい名前がいいですよね。記紀……記録の“記”に、大いなる歴史を示す“紀”を組み合わせて……」 サエコが苦笑しながら「まあ、名前はどうにでもなるけど。とにかく公式の“おおげさな”物語が必要ってことでしょ?」とまとめる。

 こうして、一同は**“記紀編纂プロジェクト(仮)”**を立ち上げることに。目標は「神武イワレビコの誕生や東征、ヤマト統一などの一連の経緯を、一冊の書物(あるいは巻物群)にまとめ、後世まで伝える」こと。 国家主義的視点で見れば、これは非常に重要だ。国を支える思想として「王の正統性」と「歴史の継承」は欠かせない。しっかり文章にし、物語として語り継ぐことで、国民の誇りを高める戦略になるわけだ。

3. “事実”より“ちょっと盛り”が必要? ブレーンたちの会議

 早速、フミノリが中心となり、タケヒト、ケイタロウ、サエコ、ウズメ、さらには草部ノモリや長髄彦あたりも加わって「どんな内容にするか」の会議を始めた。 しかし、いざ作り始めると、意見がバラバラに飛び交う。

  1. タケヒト:「オレの斧さばきは ‘波を切り裂いた’ とか、そういう派手な表現にしてくれ! 実際、海でモンスター倒したこともあるし、盛ってもいいだろ?」

  2. ケイタロウ:「そっすねー、読者受け狙うなら ‘涙あり笑いありの冒険譚’ にするとかどうです? 途中でドラマチックな恋模様とか入れてみません?」

  3. フミノリ:「ああもう、事実を忠実に書きたいのに、みんな盛りたがる! そりゃあロマンがあったほうがいいけど、完全なフィクションになるのは困ります!」

  4. 草部ノモリ:「俺が神武に倒されたシーン、あれもうちょいカッコよく書いてくれよな。なんか ‘情けない敵役’ とか言われるのは嫌だから。」

  5. 長髄彦:「俺もだ! 負けたのは認めるが、‘あっさり倒された’ みたいに書かれちゃ困る。 ‘激闘の末に、神武の人間性に惚れ込んだ’ とか、そこはよろしく。」

  6. ウズメ:「私の踊りのシーンもいっぱい入れてくださーい。神様降臨みたいな感じでキラキラ表現してくれたら嬉しいなぁ〜。」

 そこに神武が苦笑いしながら乱入してくる。「おいおい、みんな盛りたい放題だな。俺は別に ‘神の血を継ぐ奇跡の子’ みたいに書かれるのは恥ずかしいんだけど……」

 ケイタロウがここぞとばかりに肩を叩く。「いや、それは必要っすよ、神武様! 国民が ‘うおお、神様の子孫がリーダーなんだぁ〜’ って燃えるわけですから、やっぱそこは強調しときましょ!」

 国家主義的視点で言えば、この“美化”や“脚色”は、国民の誇りを高めるための戦略として十分アリだ。多少オーバーに描かれても、未来の人々に「すげえ……!」と思わせられれば、それが国の一体感につながるわけだ。

4. 史実と神話の境界が曖昧に? フミノリの苦悩

 一方、フミノリは「今のうちにちゃんと真実を記録しておかないと、後世の歴史学者が困るかも……」と真剣に悩んでいる。「神話的な要素を全部リアルに書いちゃうと、将来 ‘いや、これはフィクションだろう’ って混乱するかもしれませんし。でも国民のモチベーションを上げるには、やっぱ神話って大事ですしね……ああ、ジレンマ!」

 サエコがなだめるように言う。「いいじゃない? 最終的には ‘神話的部分’ と ‘史実的部分’ を両方取り込んで、一つの大河ロマンにまとめるのよ。未来の学者さんがどう読むかは、そのとき考えてもらいましょ!」

 フミノリは頭をかきながら、「うーん……まあ、そこは割り切りが必要なんですね」と納得しかける。さらにタケヒトがニヤリと笑い、「それに ‘おい、こりゃあ伝説だよなあ!’ ってみんなが盛り上がるなら、それだけ国が強くなるんじゃないの?」と追い打ちをかける。 まさに**“事実よりもストーリー重視”** という風潮が誕生しつつある。国家主義的に見ると、これは “国の神話” を作り上げて人心を掌握し、アイデンティティを形成する伝統的手法でもある。

5. 制作会議はコメディタッチ——“脚本チーム”が白熱

 この記紀編纂プロジェクトには、一種の“脚本チーム”が存在する。フミノリがチーフを務め、ケイタロウはクリエイティブ担当、サエコが監修役、タケヒトはアクション指導、ウズメはダンス・演出サポート……という具合に、やたらと華やかだ。 会議では、次のようなやりとりが日常茶飯事になっている。

  • ケイタロウ:「ここさ、もうちょいドラマチックに ‘神武の兄弟が傷ついたあの場面、天から光が降り注いだ’ とか書いちゃいましょうよ! 実際はちょっと曇り空だったけど、まあ雲の切れ間から陽射しがあったことにしとけばOKでしょ?」

  • フミノリ:「え、いいんですかそれ……。事実は ‘雨が降ってたからイツセ(兄)が風邪ひいた説’ じゃ……」

  • タケヒト:「いいんだよ! 派手なほうが読んでて盛り上がるんだって! 俺の斧、光り輝いてたことにしてくれ。なんなら ‘海を二つに分けた’ くらい大げさでも……」

  • サエコ:「ほどほどに! 盛りすぎて嘘っぽくなったら元も子もないでしょうが! ただ……うん、神武様の ‘神の血統’ はしっかり押し出していきましょ。国民の心に響くはず。」

  • ウズメ:「私の踊りも ‘奇跡を起こした’ って書いていいですよ〜。本当のところは ‘ちょっと盛り上がっただけ’ だったけど、まあ奇跡ってことにしちゃえ!」

 こんな調子で、“美化” と “脚色” の相談がエンドレスに繰り広げられる。フミノリの胃がキリキリ痛まないか心配だが、当のフミノリは「うう……でもこれが ‘国民の誇り’ を作るんだ……」と自分に言い聞かせているようだ。

6. 神武本人はどう思ってる? 「まぁ、みんながハッピーなら」

 さて、当の神武イワレビコはというと、最初こそ「そんなに盛られちゃ困るよ……」と戸惑っていたが、次第に「国民が喜ぶならそれもいいか」と考え始めている。 ある晩、彼は焚火を囲む仲間たちに向かってこう言った。「現実と違うところはたくさんあるかもしれないけど、何より ‘この国を作るまでの苦労や熱意’ は本物だったろ? そこをしっかり伝えてくれるなら、俺はそれでいいよ」

 サエコが「神武様……意外と寛容なのね。じゃあ、例の ‘海を割った斧伝説’ もOKってこと?」と茶化すと、みんながドッと笑う。タケヒトは「マジでやっちゃうか?」と目を輝かせる。ケイタロウは「うわあ、なんだかワクワクするっすね! これは名作の予感だ!」と盛り上がる。 神武は苦笑いしながら、「まあ、多少の誇張はいいけど、あんまりSFみたいになるのは勘弁な」と一応釘を刺す。

 国家主義的視点で言えば、王自身が「国民がハッピーならOK」と受け止めるのは、民衆にとっても非常に好印象。“信頼される君主” としてのイメージがますます固まっていくわけだ。

7. 「これで国民の誇りが高まる!」——作られる“国の物語”

 こうして順調(?)に進む“記紀編纂プロジェクト”。最終的には、

  • 神武の誕生:神々の血を受け継ぐ尊い御子(みこ)として描く

  • 東征の大冒険:大怪物との激戦、海を分断する(?)タケヒトの斧、兄イツセの奇跡の復活など

  • 豪族たちとの熱いドラマ:長髄彦との死闘、草部ノモリとの感動的握手……

  • 建国セレモニー:神武が“中心”として国をまとめ、皆が感動の涙を流すシーン

 といった数々のエピソードがてんこ盛りになる予定だ。 フミノリ曰く、「これを国中に広めれば、人々は ‘ああ、こんなに神秘的で輝かしい歴史を持つ国なんだ’ と誇りを抱くだろう」とのこと。“国民意識” が高まり、外敵があれば結束して立ち向かう下地にもなるわけだ。

 タケヒトは「全国の読み聞かせ団が、これを語るのを想像すると胸が熱くなるな。子どもたちが ‘すげぇ! 俺もあんな冒険したい!’ って言うだろうし」、ケイタロウは「ロマンは正義!」と拳を握る。 サエコは冷静に「でも ‘あそこはフィクションだよね?’ ってツッコミが入りすぎないように、ちゃんと『ここから先は神話です』みたいに注記したほうがいいかもね」と提案する。

8. 国家主義的視点:物語を史実と結びつけ、国のアイデンティティを強化

 国家主義という観点からすれば、この編纂作業は**“国づくりの締めくくり”** とも言える。武力で統一し、儀式でリーダーの正統性を示し、今度は“物語”で人々の心を掴む。 多少大げさな描写があっても、事実と神話が入り混じった形で伝わる物語は、後の世まで国民を鼓舞し続けることだろう。まさにプロパガンダ……いや、“誇りの源” となる一冊が、ここに生まれようとしているのだ。

 神武は最後にこうまとめる。「オレたちの本当の目的は ‘国民が幸せに暮らすこと’ だ。もしこの記録が、人々の心を一つにして、 ‘オレたちの国ってすごいんだぞ’ って自信を持てるなら、最高じゃないか。たとえちょっと脚色があってもな!」

 するとフミノリが、「じゃあ、タイトルどうしましょうか?」と聞く。ケイタロウは「うーん、『やまとタケヒト冒険記』も悪くない!」と訳のわからない案を出し、サエコが「何でタケヒト主役!?」とツッコミを入れて場は爆笑に包まれる。

エピローグ:伝説になる、その日々

 こうして“記紀編纂プロジェクト”はコメディ満載の熱気に包まれながら進行していく。作られた物語は、きっと後世で語り継がれる大きな伝説になるだろう。 タケヒトの斧が海を割ろうと、ウズメの踊りが天変地異を起こそうと、あるいはケイタロウの煽りがどれだけ無茶でも、そこに込められた“国を愛する想い”と“神武の歩み”が真実ならば、きっと誰もが感動してくれるに違いない。

 国家主義的視点でまとめれば、「物語によって国民のアイデンティティを固め、誇りを養う」という黄金パターンがここに完成する。少々脚色や美化があったところで、これこそが後々まで国の力の源泉となるのだ。 夜更け、巻物に書き込み続けるフミノリの横には、いつものように八咫烏(やたがらす)が羽を休めている。クックックッと含み笑うような声は、「お前たち、いい感じに盛ってるなぁ……」と言っているのかもしれない。やがてこの記録は“伝説”として広まり、神武イワレビコの名は永遠に刻まれるのだ——たとえ、ちょっぴり脚色されていたとしても。

 こうして、国の記録づくりは続いていく。次に待ち受けるのは、さらに発展するヤマトの体制整備か、あるいは外交や文化の開花か。どんな未来が訪れようとも、彼らなら笑いながら乗り越え、そして脚色して伝説にしてしまうだろう。まさに“ファンタジー国家”の夜明けが、ここにある。


第十章 「建国の誇り、未来へ爆走! 〜おめでとう日本、そしてまだ続く物語〜」

 長い旅路の果てに国を打ち立て、多くの豪族をまとめ上げてきた神武イワレビコ。 ヤマトの地はすでに一つにまとまり始め、仲間たちの絆は揺るぎないものとなった。山も海も森も「私たちの国」の一部として、穏やかな風景を描いている。 しかし、物語はここで終わらない。国が成立したばかりでも、まだまだ未知の挑戦や新しい地への冒険が待っているのだ。

1. 神武と仲間たちの今後のビジョン

 即位セレモニーや大宴会もひと段落したある夜、神武は仲間たちを集めて小さな会議を開いた。「ここまで頑張って、国をまとめるところまでは来た。だけど、これからが本当の始まりだと思うんだよな」 そう切り出す神武に、サエコが「まったくその通り。法整備とか、地方との調整とか、やらなきゃいけないことは山積みよ」とうなずく。タケヒトは「斧で一発! とはいかないのが国づくりだもんなあ」と苦笑し、ケイタロウは「イベントがいっぱいできそうで、ワクワクするっす!」と浮かれ顔。

 フミノリは地図や文献を手に、これからのヤマトの拡大プランを示す。「実はまだ北方にも南方にも、我々がよく知らない土地があるんですよね。いつかそっちとも交流できたら、国はますます発展するはず。外交団を派遣してみるとか?」 草部ノモリや長髄彦も参加して「ああ、そういう野望も悪くない」「地形を生かして交易路を開拓すれば、結構イケるかもな」などと盛り上がる。

 八咫烏(やたがらす)は相変わらずクックックッと笑いながら、彼らの上空を旋回している。まるで「新しい冒険が目の前だぞ、さあ飛び込め!」と囁きかけるようだ。

2. “建国”を祝う継続的イベント? 提案に沸く一同

 さて、そんな話の流れの中で、ケイタロウがまた妙案をぶちかます。「国ができたときに、みんなで大騒ぎしたじゃないですか? あれ、毎年やったらどうっすかね? ほら、 ‘建国を思い出す日’ みたいな!」 タケヒトは目を丸くする。「毎年か? 毎年あの騒ぎやるの? めちゃくちゃ燃えそうで面白いけど、正直疲れそうだぞ……」 サエコは「でも、確かに恒例行事にすれば ‘私たちの国の誕生日’ をみんなが意識できるわね。それって、国民のモチベーションに繋がるかも」と感心する。

 さらにフミノリが書簡を繰りながら、「実は古い風習でも、 ‘国の成立を祝う祭り’ みたいな例はあったらしくて……。こういうのを公式に決めておけば、将来ずっと『記念日』として残っていくかもしれませんね」と声をかける。 国家主義的視点で言うならば、「建国を祝う行事」は国民の誇りと団結を高める大チャンス。年に一度、大勢が集まって「おめでとう、この国!」と盛大に祝うなら、新しい世代も「自分たちは歴史ある国の一部なんだ」と実感する。これこそ、**“紀元節”“建国記念の日”**の原型になりうるアイデアだろう。

3. 国が成立したばかりでも、未知の地が呼んでいる

 夜が深まり、次々と斬新な提案が飛び出す会議。そんな中、タケヒトは斧を磨きながらニヤリと笑う。「でもよ、どこか別の地には、まだまだ手ごわい連中がいるかもしれないだろ? そう思うと血が騒ぐぜ!」 ケイタロウが「敵ばかりじゃなくて、新しい友人もいるはずっすよ! そしたらまたあんな熱い交渉や宴会ができるじゃないですか?」と軽妙に返す。

 サエコはちょっと呆れた様子で「あなたたち、懲りないわねえ。でも、確かに国を広げたり、文化を持ち寄ったりすると、どんどん面白くなるかもね」と同意する。 そして神武は、まとめるように言った。「国を守るのも大事、国を育てるのも大事。だけど ‘外’ に出ていく勇気も捨てちゃいけないってことだな。人と人が交流すれば、もっと国は強くなるはずだからさ」

 この言葉に、一同は大きくうなずく。国を作っただけで満足している場合じゃないのだ。未知の地挑戦が、神武たちを待ち受けている——そしてそれは、今後の歴史を切り開く大事な要素にもなるだろう。

4. 国家主義的視点:誇りを維持し、未来へ向けて走り続ける

 会議が終わり、焚火を囲んで少し雑談モードに入ったころ、サエコがしみじみと話し始める。「国って、一度できたらずっと安泰なわけじゃないのよね。戦や自然災害、派閥争い……いくらでも問題は起こる。だからこそ、国民が ‘私たちには歴史と誇りがある’ って思える日をちゃんと持つべきなのかもしれないわ」 そこにフミノリが同調する。「そうそう、それが**“建国記念”** みたいな行事の大切さですよ。過去の苦労や栄光を振り返り、未来へ向かうエネルギーを得るためにもね」

 国家主義的視点でまとめるなら、こうした“定期的な祝祭”は国民の忠誠心や愛国心を育む絶好の機会である。と同時に、「自分がどんな国に属しているのか」を再確認する儀式でもある。仮に外からの脅威が襲ってきても、「我らが国は神武イワレビコからの歴史ある国だぞ!」と胸を張って団結するだろう。

5. 神武が見据える明るい展望

 夜も更ける頃、神武は静かに立ち上がり、みんなに告げる。「よし、改めて ‘日本’ の未来を祝おうじゃないか! ——と言っても、まだ正式に ‘日本’ って言うかは分からないけど、せっかく作ったこの国だ。みんなで誇りを持ち続けて、子孫にもこの誇りを伝えていくんだ」 タケヒトやケイタロウは「おおお!」と雄たけびを上げ、サエコは「ちょ、夜中だからあんまり大声出さないで!」と慌てる。フミノリやウズメはクスクス笑いながら、「まあ、でも最高の気分ね」と言い合う。

 そう、国の未来はここからだ。 すでにヤマトという大きな共同体は誕生したが、その先にはもっと広い世界があり、もっとたくさんの可能性が眠っている。新たな発明や文化、他国との交流が、この国をさらに発展させるだろう。

6. 「おめでとう日本、そしてまだ続く物語」——エンドロール風に

 すると、ケイタロウがいきなり音頭を取り出す。「じゃあ最後に、みんなで ‘おめでとう日本!’ って言いましょうよ! ……って、なんか変な響きですけど、ほら、未来の呼び名みたいな感じで!」 タケヒトは「しっくり来るかどうか分からんが、とりあえずやってみるか!」とノリノリ。サエコは「あはは、何それ! でもまあいっか、面白そうだし」と笑う。ウズメは「日本…ニホン…ニッポン? 口にすると楽しい音ですねぇ」と呟く。

 神武が苦笑しながら「じゃあ、いち、にーの、さん!」と掛け声をかけると、一同は声を合わせて叫ぶ。「おめでとう日本ーーー!!」 夜空に響き渡るその声は、どこか未来の世にも届きそうな勢いだ。三本足の大烏(やたがらす)も、高みでクックックッと笑っている気配がする。

 そして、その笑い声はまるでこう言っているようだ。「まだまだ物語は終わらないぞ。お前たち、次は何をしでかすんだ?」と。

7. まだ続く物語——未来へ爆走!

 こうして、“建国” を祝う雰囲気はますます高まり、その先の時代へと受け継がれていく。いつか本当に“紀元節”とか“建国記念の日”が正式に制定されて、毎年大騒ぎする時代が来るかもしれない。 国家主義的視点で見れば、それこそが「国民意識を持続させる秘密兵器」。人々が自分の国の歴史を敬い、誇りを抱く限り、この国は外敵にも負けない強さを持ち続けるだろう。

 しかし、その先には新天地や新たな出会いが待ち受けている。今のヤマトの外には、まだ見ぬ勢力や文化があふれているはずだ。 神武と仲間たちは、それぞれの得意分野を活かし、さらなる発展を求めて走り続ける。戦がなくなったわけではないし、天変地異や政治のごたごたもあるだろう。だが、彼らの胸にはいつでも“あの建国の時の熱気”が宿っている。

 「われらが国は、笑いと誇りで突き進む!」 そんな合言葉を胸に、神武イワレビコ一行の物語はまだまだ続く。それはまるで壮大なファンタジーのようであり、同時に彼ら一人ひとりの日常の物語でもあるのだ。

結び:明るい展望を胸に

 星々が瞬く夜空を見上げれば、そこに浮かぶ三本足の大烏の影。 降り注ぐ月光に照らされた神武は、仲間たちの存在を感じながら微笑む。彼らが作り上げた国は、今やかけがえのない“ふるさと”となり、これから先も多くの人を包み込むに違いない。 “建国”は一度きりのイベントじゃなく、これから何度も繰り返し思い起こされ、祝われていくもの。いつまでも誇りを絶やさずに前進する——その大きな夢は、きっと未来の世代へと受け継がれていくだろう。

 「おめでとう日本!」 その言葉を合図に、神武と仲間たちの笑い声は遠く遠くまで届いていく。荒波を乗り越え、豪族と渡り合い、神と戯れながら築き上げた国。それを誇りにしつつ、彼らはなお未知の明日へ“爆走”するのだった……。





Epilogue「神々とともに笑うこの国の物語は、まだ終わらない」

 悠久の時を経て、現代の私たちが何気なく暮らす日本。その土台には、かつて神武イワレビコと愉快な仲間たちが築いた壮大なる冒険譚が眠っている——そう言われたら、あなたは信じられるだろうか。 荒れ狂う海を渡り、謎のモンスターに遭遇し、豪族と交渉し、ついにはヤマトという国をまとめあげた神武とその一行。そこには“神話”とも“史実”ともつかない不思議な輝きがあった。

 しかし、彼らの国づくりが建国と呼ばれ、現在の“日本”にまで受け継がれている以上、この物語は終わりなどない。何せ、は絶えず変化し、成長し、未知の課題に挑み続けるものだからだ。あの頃の神武たちがワクワクしながら新天地を目指したように、私たちもまた、それぞれの場所で未来へ向けて走っている。

 後世から振り返る神武の偉業は、すでに伝説となっている。「神の血を継ぐリーダーが、大勢の仲間とともに国を作り上げた」というファンタジックな筋書きは、世界中を探してもなかなか類を見ないほどインパクトがあるだろう。 そして、その神武がどれほどユーモラスに、かつ豪胆に未知を切り拓いたか。その行動力と連帯意識こそが、“国づくりの秘訣”だったと私たちは学ぶ。

 けれど、神武一行の物語は今もなお続く。なぜなら、この国の歴史は彼らの航跡(こうせき)の上を行きつ戻りつしながら、絶えず生まれ変わっているからだ。 気がつけば、あなたも私も、彼らが築いた国のなかに生きている。一緒に祭りを楽しみ、一緒に困難を乗り越え、一緒に「ああ、私たちの国って、やっぱりすごいんだなあ」と思う瞬間がある。神々がふと微笑んでいるかもしれないその瞬間、私たちは同じ物語の一員なのだ。

 神話と現代を行き来する視点で、ここにファンタジックな幕をひとまず下ろそう。 ——もっとも、心のどこかで「いやいや、あれは脚色だろう」とツッコむ声が聞こえるかもしれない。だが、物語の良さは“事実”と“伝説”の曖昧さが織り成すロマンにこそあるのではないだろうか。

 さあ、一度ページを閉じてみよう。そして思い出してみるのだ。神々が笑い声をあげ、八咫烏が舞う空に、今もなお神武イワレビコの影がちらりと見え隠れしているかもしれない。物語が終わらないのは、私たち自身が次の一節を紡ぎ出すからだ。 あなたも、この国の一員として、どうか思いきり楽しんでほしい。国を作る楽しさも、守る苦労も、そして新たな挑戦にワクワクする気持ちも、すべては**“みんなの物語”**なのだから。

付録・参考資料

1. 登場人物相関図 〜漫才トークつき〜

  • 神武イワレビコ(主人公):神の血を継ぐといわれるリーダー。ただし本人はわりと庶民派。

    • 漫才コメント:「え、俺が神の子? あんまり偉そうにしないでよ……。でも国づくりは面白いよな!」

  • イツセ(神武の兄):神武への対抗意識やプライドが強かったが、危機を乗り越えて絆が深まる。

    • 漫才コメント:「弟が目立つなら、俺だって目立ちたいんだ。ちょっと不器用だけどな!」

  • タケヒト(豪腕の戦士):斧を携え、豪快な武勇伝を連発。交渉下手だが熱血ぶりはNO.1。

    • 漫才コメント:「オレが海を割ったって書いていいぞ! って、マジでいいのか?」

  • サエコ(姉御肌のまとめ役):複雑な状況でも冷静に対処し、仲間を仕切る。時に辛辣なツッコミ役。

    • 漫才コメント:「あんまり盛りすぎると白けるわよ。まあ、ほどほどにね」

  • ケイタロウ(ムードメーカー):営業トークが得意で、人々を巻き込む才能抜群。お祭り大好き。

    • 漫才コメント:「燃える展開サイコーッス! ビール片手に読みたいですよね!」

  • フミノリ(知恵袋・書記担当):歴史や文献の研究者で、記紀編纂の中心。真面目ゆえ苦労が絶えない。

    • 漫才コメント:「もうちょっと事実を大事に…って誰も聞いちゃいないのか!?」

  • ウズメ(天然系の舞姫):不思議な踊りでみんなを笑顔に。時々神懸かりなパフォーマンスを見せる。

    • 漫才コメント:「カワイイは正義ってことで! 神様降臨しちゃうかも〜」

  • 草部ノモリ(元・豪族の首領):神武に負けて仲間になった。酒好きで快活なオジサンキャラ。

    • 漫才コメント:「負けたほうが人生楽しいな! もっと盛ってくれよ、俺の武勇伝」

  • 長髄彦(ながすねひこ、ヤマト最強の男):もともとラスボス的存在だったが、神武の器に惚れ仲間に。

    • 漫才コメント:「最強の男を ‘あっさり’ 倒したって書かれるのは勘弁な! 頼むぜ」

  • 八咫烏(やたがらす):三本足の神秘的な烏。空から見守り、時折クックックッと笑う姿が印象的。

    • 漫才コメント:「カァ! あまり深く考えず楽しめばいいのじゃ……」

2. 神話 vs 史実 ミニコラム

  • ファンタジー要素


    海を割る斧、天からの神光、モンスターとの死闘……いかにも童話か伝説じみたエピソード満載。

  • 考古学的事実


    弥生時代後期ごろ、ヤマトの地では有力首長が台頭し、周辺豪族との統合が進んだ痕跡が見られる。宗教的儀礼や祭祀も行われ、王権が確立していった可能性が高い。

  • まとめ


    「どこまでが事実?」「盛りすぎじゃない?」は永遠のツッコミポイント。しかし、それこそが神話の醍醐味。実際の史料と重ね合わせて楽しむ姿勢がオツというものだ。

3. 国民統合の秘訣 小ネタ集

  • テクニック1:定期的なお祭り


    「毎年同じ時期に ‘建国記念の宴’ をやると、民は意識高まる!」という単純かつ最強の手法。

  • テクニック2:神の正統性アピール


    「王が神の血筋を持つ」設定は大衆をまとめるのに便利。ちょっと脚色しても大丈夫(たぶん)。

  • テクニック3:仲間の個性をフル活用


    交渉下手、営業得意、斧大好き……色々いてOK。強烈な個性がリーダーを引き立ててくれる。

  • テクニック4:失敗は笑いでカバー


    「あの怪物退治、実は危機一髪だったが、笑い話にしちゃえ!」という楽天精神こそ団結力の源。

  • テクニック5:歴史と神話をミックス


    「事実だけでは地味、神話だけでは説得力に欠ける。両方混ぜれば最強!」という発想。民衆はほどよいドラマに燃えるもの。

終わりに: こうして眺めると、神武イワレビコやその仲間たちが紡ぎ上げた国づくりは、笑いと冒険、時々シリアスが混ざった最高のファンタジーかもしれません。 しかし、この物語の本番はまさに今、あなたがページを閉じた後から再開します。神々が微笑む大地で、笑顔の人々が手を取り合う国——それこそが、私たちの暮らす日本なのだと信じて。 物語は続く。神武たちが作った“初代のシナリオ”に、私たちは新しい章を重ねていくのです。さあ、あなたもこの国の一員として、次の一幕を一緒に創り出しましょう。神々とともに笑うこの国の物語は、まだまだ終わりません——。



 
 
 

コメント


bottom of page