富士山の麓に眠る「光の石」
- 山崎行政書士事務所
- 1月22日
- 読了時間: 5分

静岡市の外れにある古い民家で、**航汰(こうた)**という少年が暮らしていました。航汰の家には先祖代々伝わるたくさんの骨董品や古書があり、航汰は暇さえあればそれらを眺めながら空想にふけるのが好きでした。
ある日、航汰は屋根裏でほこりをかぶった木箱を見つけ、その中から**「古い地図」**を発見します。地図は手書きで、富士山の麓から駿河湾にかけての地域が描かれていますが、まるで宝の地図のように不思議な印がいくつも記されていました。そこには「光の石」と大きく書かれた文字があり、傍らに細かい注釈が付いていました。
注釈(古い文字)「此ノ石ハ富士ノ力ヲ宿シ静岡ヲ護ルチカラアリ探ス者ハ自然ヲ敬フ心ヲ忘ルルナカレ――。」
地図が示す冒険の始まり
航汰はその地図を大事に抱え、親友の**凜也(りんや)**に相談します。二人は「これは宝探しみたいで面白そうだ」と胸を躍らせ、地図に記された奇妙な記号や道筋を手がかりに、富士山の麓へ向かうことを決めました。
週末、少しばかりの装備とお弁当を持って、二人はバスで富士山の近くまで移動。地図に描かれた古い道を頼りに、あちこちを彷徨いながら、森の奥深くへと入っていきます。すると、木々の合間からは清らかな小川の音が聞こえ、小鳥のさえずりが涼しげに響きます。
航汰「静岡にも、まだこんなに美しい自然が残っているんだな……。」
道なき道を歩き続けると、やがて大きな樹木が鬱蒼と茂る場所に辿り着きます。そこには苔むした巨石がいくつも立ち並び、まるで結界のように見えました。地図の指し示す場所は、まさにその中心部です。
自然を守る精霊との出会い
石の合間を覗きこんでいると、ふいに木陰から緑色の光が浮かび上がり、草や花の精霊たちが姿を現しました。葉や花びらをまとう小さな人型の存在が、二人を物珍しそうに見つめています。
草の精霊「あなたたちは、何をしにここへ来たの?この場所は、わたしたちが長い間守ってきた大切な所……。余計な人間は立ち入りできないよ。」
精霊たちはまるで子どものようにひそひそと話しながらも、警戒感を漂わせています。航汰と凜也は「地図を見てきました。光の石を探しているんです」と正直に打ち明けました。
航汰「光の石って、本当にあるんですか? もし見つけられれば、ぼくたちの街を……静岡を守る力になるって聞いたんです。」
すると、精霊たちは緑の葉を揺らして少し困った顔をしながら「あなたたちが本当にその石を持つ資格があるのか、見極めなくちゃ……」と答えます。
光の石を手にする資格
精霊たちは「もし本当に光の石を手にしていいなら、あなたたちが自然を大切に思う心を示してほしい」と、試練を課します。その試練は三つ――。
小川の清掃
近くの小川が軽い汚れに悩まされている。そこでごみを拾ったり、川岸を整えることで、水を澄ませる行動をするように。
山道の保全
過度の観光客が踏み荒らす山道を、二人と精霊たちで補修。落ちた枝や枯葉を適度に使って道を整備し、山の生き物にも優しい環境を作る。
火の管理
かつて焚き火の不始末で小さな山火事が起きた場所があり、再生が進まない。そこに苗木を植え、火の管理の意識を高めるための行動をとる。
初めは戸惑う二人だったが、やってみると意外とやりがいがあり、精霊たちや地元の人の助けも得て、三つの課題を乗り越えることができました。終わった頃には全身泥まみれ、でも心はすがすがしい気持ち。
光の石との対面
三つの試練を終えたころ、精霊たちが「少しは信用していいかもね」と笑い、「光の石が眠る場所を見せましょう」と二人を巨石の中心へ案内します。そこにはお社のように苔むした石の祠があり、中からうっすらと金色の光が漏れていました。
草の精霊(リーダー格)「ここが富士山の力を宿した“光の石”……。ときに大地を奮い起こし、ときに人を救う力を持つという。あなたたちが自然を愛し、街を守る心を忘れないなら、この石はきっと力を貸してくれるわ。」
祠の中には、透明な水晶のような石があり、淡い虹色の光を放っています。航汰が手を伸ばすと、石はかすかな震えとともに暖かい光を伝え、胸に幸せな気持ちが広がりました。
街と山のつながりを育む
こうして二人は光の石の存在を知り、その力の一部を譲り受けた形になりました。実際に何か奇跡的な魔法が起こるわけではないけれど、心の中には大地とつながる確かな力を感じるのです。
下山した後、航汰と凜也は、自然を守るための行動を起こそうと決意します。地元の人々を巻き込んで、植林や川の保全活動、そして富士山麓の美しさを発信するSNSでの啓蒙――こうした取り組みを少しずつ続けていきました。
航汰「光の石は魔法の道具じゃなく、自然とつながる心の象徴なんだ。ぼくたちが富士山や静岡の自然を守ろうと思う限り、きっと石も応えてくれる……。」
光の石が見せる新しい景色
数年後、山の手入れが進み、小川も清らかに流れるようになったエリアでは、かつてより草花がいっそう豊かに育つ姿が見られるようになります。地元の子どもたちも自然に親しむ機会が増え、精霊とまでは行かないまでも、そこかしこで小さな生き物の声や緑の息吹が感じられる。
航汰と凜也は、時々富士山麓へ足を運び、あの石の祠を訪ねています。精霊たちは姿を見せたり見せなかったりだけど、二人が行くたびに草や花が優しく揺れ、「ありがとう」と囁いているように思えるのです。
凜也「やっぱり、この山はすごいね……。あの日の石を見て、ぼくも人生が変わった気がするよ。」
結び――自然と人をつなぐ宝
こうして、富士山に眠る「光の石」は、ただの伝説の宝ではなく、自然と人の心を結びつける力として蘇りました。もしあなたが静岡の山を訪れたとき、緑深い森の片隅で不思議な光を見つけるかもしれません。それは、かつて航汰と凜也が見つけた“光の石”の輝き――富士山と静岡を守る力が、今も静かに存在している証かもしれません。
人が自然を大切に思う気持ちさえ忘れなければ、草花の妖精たちは喜び、山も海もやわらかな光で満ちるのでしょう。そして、その光はきっと、あなたの心にも優しく届くはずです。





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