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最後の一線

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月19日
  • 読了時間: 6分



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プロローグ:戦略の崩壊

二〇XX年、日米が中国空母打撃群に対して戦術核を用いた一撃によって一時的に戦勢を逆転。しかし、この事実に激昂した中国指導部は「報復核」を公然と宣言し、周辺国も緊張をさらに高める。国際社会では日米を「核使用国家」と非難する声が強まる中、状況は一気に世界核戦争の瀬戸際へ。海上自衛隊の本間 進(ほんま すすむ)は、護衛艦隊の中でも最前線を任される艦長であった。戦慄を禁じ得ない彼の前に、さらなる“核使用”という暗い命題がのしかかる――。

第一章:新たな報復の影

中国の逆襲

中国政府が「日米が先に核を使った以上、われわれも核使用は正当」とのプロパガンダを展開。実際、沿岸部に配備した戦術核ミサイルを沖縄や日本本土に照準するなど、具体的な準備を進めているという情報が入り、海自・米軍の分析では「中国艦隊が再度出撃し、核を含む飽和攻撃を図る」とされる。日本政府は国内の強い反対デモや国際批判に晒されつつも、「再び核を含む自衛的措置」を排除しない立場を表明。こうして世論は混乱し、世界は日米と中国の“核応酬”を懸念する。

艦隊司令部の作戦会議

那覇基地に集結した日米艦隊司令部では、米軍司令や海自幕僚らが「もし中国がまた核を使うなら、こちらも対抗核を発射するしかない」と強硬発言。海自の一部将官はこれに躊躇しつつも、「核を持つ敵に通常兵器だけで対抗するのは難しい」と認めざるを得ない。そこで**“ミサイル発射艦”**が再度行動を起こすことが決まり、その護衛任務を本間艦長が命ぜられる。

第二章:護衛艦長・本間の苦悩

命令と倫理のはざま

本間が率いる護衛艦**「うらしま」**は、これまで数多くの対潜・対艦任務をこなしてきたが、今回の“核搭載ミサイル発射艦”護衛は格が違う。

  • 「発射艦が核を放つ時、俺はどう対応すればいい…? ほんとうに押し止める権限はないのか…」

  • 艦内の乗員たちも「第二の核攻撃など正しいのか?」と動揺を隠せない。だが命令に逆らえぬまま作業を続ける。

家族からの一通のメール

本間には本土に残る妻と子がいる。 「戦争がさらにエスカレートするなら、この国がどうなるかわからない…」という切実なメールを受け取り、本間は自らの職務を果たすことが本当に正義なのか、葛藤が深まる。

第三章:敵艦隊の核攻撃と阻止行動

中国の核先制

ほどなくして、中国海軍が沖縄周辺へ大艦隊を展開し、核搭載の可能性があるミサイルを運用しているとの情報が飛び込む。 一部北方からはロシアの艦隊が牽制しているとの噂もあり、事態は多方面戦の様相を呈する。米艦隊は「核発射の徴候あり」と警戒レベルを上げ、本間の「うらしま」は発射艦**「すおう」**とともに前線へ進んで警戒に当たる。

飽和攻撃の混戦

中国艦隊が対艦ミサイルと巡航ミサイルの飽和攻撃を仕掛け、日米艦隊も迎撃ミサイルを大量発射。海面には炎と油が浮かび、被弾艦が次々と沈む地獄絵図。CIWSが火を噴き、艦上は火災と爆発音で包まれる。本間の**「うらしま」**も艦橋近くに被弾し火炎にあがるが、必死のダメコンで沈没は回避。 電源系統が一部損壊する中、なんとか核発射艦を護り続ける形だ。

第四章:戦術核の発射準備と対艦ミサイルの猛襲

もう戻れぬ道

「すおう」のCICから本間に「戦術核搭載ミサイルの発射カウントダウンに入る」と連絡が入る。指揮系統は「既に中国艦隊も核攻撃を実施しつつある」と判断し、こちらも躊躇なく発射を断行しようとしている。本間は艦橋で固唾を呑む。「これが俺たちの“自衛”か…!」と歯噛みする一方、「守るべき仲間が目の前で沈んでいる」現実が目に入り、心が千々に乱れる。

敵の猛攻と時間稼ぎ

まさに発射目前、中国駆逐艦が接近し「すおう」に対艦ミサイルを集中放射。本間は「うらしま」で必死に間に割り込み、「チャフ! デコイを放て!」と叫びながら、被弾覚悟で盾になる。 CIWSが敵ミサイルを何本か撃ち落とすが、1発がうらしまの艦首を直撃し、甲板が火炎を噴く。衝撃で本間が床に倒れ、額から血が滴る。周囲の乗組員が悲鳴を上げながらも、発射艦を守るために踏ん張り、何とかミサイルの大半を逸らすことに成功。

第五章:核の夜明け――発射遂行

最後の警告

その時、中国側が「もし日本が再度核攻撃を行うなら、北京は日本本土への戦略核を躊躇しない」と最後通告。上層部は依然として「構わん、撃つしかない」と冷酷に宣告。 国会も混乱し、国内世論の声は届かないまま、現場は“発射”の一手を打つしかない道に追い込まれる。

発射の瞬間

カウントダウンが始まり、すおうのVLS(垂直発射システム)から戦術核弾頭を搭載したミサイルが噴煙を吐いて飛翔。 「発射確認……」という通信が艦橋に流れ、本間は震える手を握り締める。数十秒後、大きな閃光が水平線の向こうに走り、圧倒的な衝撃波が数秒遅れて海を揺らす。 中国艦隊の旗艦が直撃を受け、周辺艦も含め大破壊が発生した模様。 搭載機材や弾薬が誘爆し、火柱が高く上がる。海面には凄まじい爆風の渦、キノコ雲がゆらりと立ち昇る光景がカメラ映像に映り、誰もが言葉を失う。

第六章:壮絶かつ悲劇的な結末

報復が来るのか、それとも

中国艦隊の指揮系統は壊滅し、海上戦線は一時的に沈静化。 しかし国際社会は激怒し、**「日本が二度目の核を使用」**と世界中で大規模抗議が勃発。 アジア近隣国は日本と一切の外交関係を断つ動きが広がり、国連では日本への軍事制裁さえ議論される事態になる。中国も戦略核の報復をちらつかせるが、世界も強く自制を促し、あわや世界大戦という緊張で膠着状態となる。

本間の最期の独白

うらしまの艦橋で本間は、捨て身で発射艦を護ったことで艦首を失い、今にも沈みかける艦の状況を見下ろしていた。 負傷者が多数、火災が収まらない甲板。「俺たちは自衛の名の下に核を使った。だがこの海は、仲間も敵も区別なく飲み込む…」本間は血を流しながら倒れそうになり、かすれ声で乗組員に「皆を救命ボートへ…おれは…ここで…」と指示し、息絶え絶えに艦橋の床へ膝をつく。その背後には燃え盛る海と放射能汚染を示す計器の警報音が交錯している。 「俺の選択は…正しかったのか…?」と、誰に届くこともない呟きが艦内に消えていく。

エピローグ:核の果てに

焦土の盾”と呼ばれるこの二度目の核攻撃は、中国艦隊を撃退し、日本本土への大規模侵攻を阻んだと一部は賞賛する。 しかし国際社会からの非難と制裁、またいつ再燃するかわからない中国の“戦略核報復”の脅威は消えない。沈みゆくうらしまのブリッジから、最後に海に沈んでいった本間の姿は、国民にも詳しく伝わることはなかった。 ただ、焦げ付いた乗員名簿だけが回収され、“核を撃ち、そして死んだ艦長”として後の歴史に刻まれることになる。海には赤い日差しが差し、遠い水平線には黒い雲が垂れ込めていた。 それはさらなる破滅か、あるいは人類が再び目を覚ます契機か――誰にもわからないまま、物語は幕を下ろす。

—終幕—

 
 
 

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