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最後の予算委員会

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月18日
  • 読了時間: 5分


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プロローグ:静岡県議会の新星、山田の登場

静岡県庁の議会棟がいつになく騒がしい。予算委員会が近づくなか、620億円の財源不足をどう埋めるかが大きな争点となっていた。公務員の給与削減案や財政改革案を巡り、議会内では与党・野党が激しく対立し、メディアの注目も高い。その場に登場する新人議員・山田 大貴(やまだ だいき)、32歳。初当選後、まだ右も左も分からないまま、党の方針を学びつつ地元の声をどう反映させるか苦悩していた。そんな彼に、運命的な試練が迫る。**「最後の予算委員会」**と人々が呼ぶほど、今回は県政の将来を決定づける大舞台になりそうな気配が漂っている。

第一章:表向きの公約、裏の党利党略

山田は地元住民を回り、財政問題や公務員給与の削減に対する不満や期待を聞いてきた。「給与削減で税金が浮くなら賛成!」という声もあれば、「行政サービスが落ちたら困る」と訴える声もある。山田自身は「県民のための改革が必要だ」と感じるが、自分が所属する党の幹部は違う。「給与削減を大きく叫ぶのは選挙受けがいいが、実際どこまでやるかは…」と打算的。さらに、党内の有力者や地元企業から「俺たちの利権を守れ」と圧力がかかる。山田は戸惑いを隠せない。“表向きには住民のためと言いながら、裏では党内の利益を優先させる” そんな二枚舌が議会では当たり前とされている現実を知り、苛立ちを覚える。

第二章:予算委員会の火蓋が切られる

予算委員会が開幕。県の執行部は給与削減案や新たな財政改革案を提示し、与党は「これを推進しよう」と叫ぶ。一方、野党側は「公務員を悪者にするだけで、本質的な財政改革にならない」と猛反発。**「天下り先や不透明な補助金を削る方が先だ!」と声を上げる。マスコミも議長席後方の傍聴席でカメラを構え、「激突必至!」と報道を続けている。山田は与党の一員として席につきながら、「確かに無駄な支出もあるかも…」と内心複雑。自分の党が“公務員給与大幅カット”**を主張する一方で、裏では特定企業との契約を温存していたりする二面性を感じてしまう。

第三章:野党議員の追及と暴かれる不正

委員会で野党議員桐野がマイクを握り、**「給与削減もいいが、本当に削るべきはどこなのか? 特定企業への随意契約や政治家への献金があるのでは?」と声を張り上げる。県幹部は「そのような事実はありません」と応じるが、桐野は資料を出し、不透明な契約一覧を指摘。会場が騒然となる中、山田の党の幹部たちは渋い顔で睨みを利かせている。「桐野の追及はやりすぎだ」「我々も調整がある」と囁きあう。山田は胸中で「桐野さんの言ってること、結構正しいかもしれない…」**と共感するが、与党として桐野を“攻撃”する立場に立つことを強いられる。

第四章:党内のプレッシャー

党の会合が開かれ、ベテラン議員や秘書たちが山田を取り囲む。「山田くん、桐野の追及に与しちゃ困るよ。あくまで我々は給与削減推進だ。あっちの不透明契約なんて表沙汰にして何になる?」「だが、それが事実なら見過ごせません。住民が困ってるのに!」と反論する山田。すると幹部が笑顔で肩を叩き「次の選挙を考えろ。君の地元への補助金もある。協力してくれるよね?」と含みのある言葉。山田は強烈な圧力を感じる。**「自分の政治生命か、正義か?」**葛藤が深まる。

第五章:住民の期待と揺れる心

地元に戻った山田は、町内会の集まりで住民たちと話す。「給与だけが悪いんじゃないんじゃ…?」「誰かが裏で儲けているのでは?」など住民たちの声を聞く。ある主婦は「うちの子どもの施設が予算削減で閉鎖されるかも、と言われた。どうか助けて」と涙ぐむ。山田は「そう簡単には変えられないんだ」と思いつつも、**「僕がやらなければ誰がやる?」**という責任感を新たにする。

第六章:予算委員会の最終局面

最終日に近づく予算委員会。給与削減案新たな財政改革案がメイン議題となる。与党議員は「職員給与を思い切り減らす」「その分、形だけの投資をして県民に還元」と言葉を飾る。対する野党の桐野は「削減も必要かもしれないが、本当の問題は利権まみれの無駄遣いだ」と再び声を上げ、**“裏の契約リスト”**をさらなる証拠とともに委員会で提示する。委員会は大混乱。与党からは「根拠が不十分だ」と罵声が飛び、議長が「静粛に!」と叩くが収まらない。

山田は心臓がバクバクするなか、マイクを握るかどうか逡巡する。ここで真実を語るなら、自分の党に逆らう。キャリアは絶たれるかもしれない。 しかし、住民が求めるものは何か?

第七章:決断の言葉

意を決して、山田が立ち上がる。会場が一瞬静まる。「私は与党に属し、この給与削減案を支持する立場だ。……しかし、本当にそれだけで財政が救われるんだろうか?」幹部が「おい、何を言い出す」と焦りの表情を浮かべる。山田は構わず続ける。「桐野議員の指摘する不透明契約や利権が実際にあるなら、それこそが財政赤字の大きな原因では? まずそこにメスを入れなければ、住民が納得するはずがない!」場内が騒然。党の先輩が「山田、控えろ!」と叫ぶが、山田は勇気を振り絞り、「住民のための政治をしなければ、こんな委員会など意味がない!」と叫ぶ。

第八章:新しい一歩と結び

結果、与党は山田の発言に怒り心頭、彼を除名しようと動く。だが世論やメディアが「若手議員が勇気ある告発をした」と注目し、支持が高まる。住民は「給与削減も大切だが、もっと無駄や利権を無くしてほしい」と声を上げ始め、議会はこれまでにない形で**“真の財政改革”の必要性を議題に取り上げる。桐野議員の追及が功を奏し、不正契約や政治家の裏献金が一部摘発され、県は前向きに改革を進める方向に傾く。山田は党を離れる覚悟で、「最後の予算委員会」で燃焼しきった気分。家に戻ると、家族が「大変だったね。でも誇らしいよ」と微笑み、山田は小さく微笑む。最終場面:テレビで“予算委員会の波紋”が報じられるなか、山田は窓の外に広がる静岡の街を見下ろす。「これで終わりじゃない。住民のための政治は、ここから始まるんだ」**と心で呟き、夕暮れの光に包まれる——。幕。

(了)

 
 
 

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