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最後の護衛艦

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月19日
  • 読了時間: 7分




プロローグ:荒涼たる海

二〇XX年、核戦争の惨禍によって多くの海上自衛隊艦艇が壊滅した。廃墟と化した祖国本土から離れた海上に、**護衛艦「やましろ」**が漂っている――それこそ日本の“最後の盾”とも呼べる存在。放射能が漂う灰色の空と、油汚れと瓦礫が浮かぶ海面。ある意味、日本という国家の最期を映し出す風景の中、艦長・**黒田 隆一(くろだ りゅういち)は甲板に立ち、波間の先を見つめていた。「ここで死んでも、本当に守るべきものはもう残っていないのか…」そう呟くなかで、しかし彼の胸には、まだ微かな誇りと責務が燃えている。“最後の護衛艦”**としての使命を。

第一章:漂流と集結

やましろは度重なる戦闘と核被害により、大部分が損傷し、クルーも半減。電源系統にトラブルが多発し、給糧・給水も不足。だが彼らはなお“海上自衛隊”の名のもとに行動を続ける。甲板には黒い煤と乾いた血痕が残り、エンジンルームでは整備員が何とか推進力を保とうと奮闘。艦内に響く警告アラームはかれこれ一週間以上止まらない。その折、僚艦からのSOSを傍受――最後の連絡を送ったらしいが、そこに核攻撃後の放射能汚染水域の座標が示され、さらに「人民解放軍が艦隊を派遣中」との情報が記されていた。黒田艦長はCICで苦悩する。「仮にそこへ急行すれば敵艦隊と遭遇する。だが僚艦が生きているなら助けなければ…それに、敵が本土を再度攻めようとしているなら、ここで立ちはだかるのが我々の役目だ。」副長の斎藤は反論。「艦も燃料も尽きかけです。勝ち目など…」と声を震わすが、黒田はただ言う。「それでも戦う。それが“やましろ”に残る、最後の誇りだ。」

第二章:乗組員の極限と人間模様

艦内の悲壮

艦には多くの負傷兵、精神的に限界に近いクルーがいる。 核被害の痕跡が船体に付着しており、防護作業と除染が追いつかない。 乗員は皮膚がただれて苦しむ者も増えた。医務室には限られた薬しかなく、放射線症や火傷を負った者を十分ケアできない。医官は眉を寄せ、「これ以上、被曝を続ければ皆死んでしまう…」と嘆く。しかし黒田は答えようがない。「今、海を離れて陸へ避難する場所などない」――そこも瓦礫の山で、放射能の汚染が等しくある。そして船を降りたところで、国のインフラは消失しているに等しい。

若き士官の涙

若手士官の三浦は甲板上で夜風を浴び、星が見えぬ暗い空を睨む。「この戦いに何の意味がある? もう国は滅んだに等しいのに…」と膝をつき、声も出ず涙を落とす。黒田がふと近づき、「三浦…俺たちが何のためにいるのか、お前自身で答えを探すんだ。俺も答えは分からん。しかし、日本人として最後の一艦がここにある…それだけは確かな事実だ。」その言葉に三浦は涙を拭き、「艦長…すみません。僕は…最後まで艦を支えます」と小さく誓う。 そうして微かな絆がまた繋がれる。

第三章:迫りくる敵艦隊

放射能汚染水域へ向けてやましろが航行を進める中、レーダーに複数の艦艇反応が映り始める。CIC担当が「人民解放軍艦隊らしき反応…駆逐艦数隻、フリゲート数隻、さらに補給艦も…」と報告。 同時に空からも敵の艦載ヘリや無人機が探索している模様。黒田艦長はオペレーターに低い声で「距離は?」「およそ80海里先の海域を展開。こちらを取り囲むように進んでいます…」副長斎藤が息を呑む。「完璧に包囲されるでしょうか…?」「そうだろうな。奴らは日本を核で骨抜きにした今、最後の抵抗を沈めに来ている。」黒田は覚悟を決める。「構わん。我々は突っ込むしかない。」

第四章:海戦の狼煙―第一交戦

(戦闘シーン)

  • 時間: 夜明け前、濃紺の海面に薄い放射能の霧が漂う。

  • 状況: やましろはレーダー射程で先に敵の存在を把握。敵は複数艦で近接し、ミサイル発射準備を整えている様子。

  • 開戦:

    1. 敵駆逐艦が先制飽和攻撃、対艦ミサイルを多数発射。 ミサイルが海面すれすれに飛来し、やましろのCIWSが火を噴く。

    2. 「CIWS作動! 近接防御弾幕を張れ!」 操艦が急旋回し、数発を撃墜するが完全には防げない。一発が艦前部に命中し、火柱が甲板を焼く。 「被弾! 浸水あり!」

    3. 乗員が消火ホースを手に走り回る。火炎と黒煙が夜空を赤く染める。

  • 反撃:

    1. やましろのVLS(垂直発射装置)から対艦ミサイルを逆に発射。 真っ暗な海面を白い噴煙が走り、敵フリゲート艦の船体中央を直撃。

    2. 爆発の閃光が遠くに見え、敵艦が火を噴きながら傾く。 しかし別の駆逐艦もこちらに接近し、砲撃とミサイルの二段攻撃を仕掛けてくる。

    3. 艦内には衝撃で壁が崩れ、血塗れの乗員が転がる。通信士が声を張り上げ「データリンクは不安定、早く応急修理を!」

  • 激戦の余波: 何度も繰り返される相互ミサイル攻撃のうち、やましろは被弾を重ね、煙突や上部構造を失いかける。 それでも最後の力で戦闘を継続。 海面に漂う乗員の遺体が映り、無線には苦痛の声が続く。

第五章:限界の艦内と乗組員の死闘

凄絶な交戦から一息ついても、やましろは大破状態。 電源が断続的に切れ、弾薬も残りわずか。 甲板を吹き荒れる炎を鎮圧するべく、あちこちで隊員が必死に散水するが、水圧が低く制御が難しい。黒田艦長はCICで頭に怪我を負いながら、「敵の補給艦を沈めないと持久戦をしかけられる。こちらに後がないなら、一瞬の勝利を狙うしか…」と決断する。その頃、船医が報告。「被曝が酷い。もうこれ以上ここに居続ければ皆死にます。艦長、どうか退避を…」黒田は沈黙する。「退避する場所などどこにもない。最後まで戦おう…それが、この艦の運命だ。」乗組員はもう口に出さず、祖国が既に廃墟であることを悟っている。 しかし、乗組員同士の絆は残り、「俺たちは日本の最期を見届けるつもりだ…」と互いを励ましている。

第六章:最終戦闘—人民解放軍の主力艦隊と対峙

(壮絶なクライマックス)

  • 状況: 中国海軍の主力艦隊が接近。大型駆逐艦、フリゲート数隻に潜水艦もいる可能性。 彼らはやましろを囲む形で攻撃を準備。

  • やましろ: 重傷を負い、速度も出せず、CIWSやミサイルも残弾僅か。乗員たちは半ば死を覚悟している。

  • 交戦開始:

    1. 敵大型駆逐艦が近距離まで迫り、大口径の艦砲で砲撃。 やましろが必死に回避するも、艦首を数発食らい、甲板が吹き飛ぶ。一瞬にして黒煙と破片が宙を舞う。

    2. 副長が叫ぶ。「艦長、甲板応急修理不可能…エンジン出力が落ちます!」

    3. それでも黒田は咆哮。「最後の対艦ミサイルを発射しろ! 敵の補給艦か駆逐艦を沈めるんだ!」

    4. 発射されたミサイルが海面を低空で突き進み、敵フリゲート艦に直撃。爆炎が広がり、敵艦は大きく傾く。周囲の敵艦が慌てて応急射撃をしてくるが、やましろも弾が尽きかけ。

  • 船体崩壊:

    1. 駆逐艦からのミサイルがまた飛来し、やましろ後部に直撃。 轟音が艦内にこだまし、船体が真っ二つに裂けるかのような衝撃が走る。

    2. 黒田はブリッジの床に叩きつけられ、血だらけの仲間が倒れるのを目撃。 「う…俺は、まだ…」と起き上がろうとするが、火と煙が視界を染め、警告サイレンが途切れ途切れで鳴り響く。

悲劇的な終幕:最後の盾の散り際

やましろは浸水が限界に達し、急速に船体が傾斜していく。 乗組員が「艦長…もう沈みます…退避を!」と促すが、黒田は艦橋に踏みとどまる。「みんな…すまないな。俺はここで沈む。お前たちは生きろ。」

散華の描写

  • 船体が垂直近くまで傾き、砲塔から火花が散る。 水面に巨大な渦が巻き起こり、赤々と燃える海が甲板を呑み込む。

  • 黒田はブリッジ窓から見える夕焼け色の空を見上げ、「結局、守るべき国はもう影しか残っていない。だが俺たちは…最後まで護ったんだ」と微笑む。

  • 海水が制御室を突き破り、押し寄せて艦長の身体を包み込む。「ああ……」という息も絶えぬまま、艦が水中へ沈んでいく

  • 数名が辛うじて海へ飛び出してゴムボートなどで漂流するが、そこに救助の当てもない。 焼け焦げた船体の破片が海面に散らばり、やましろは完全に姿を消す。

この戦闘で中国艦隊も数隻を失ったが、全体の脅威は続き、日本本土もさらなる攻撃に晒されるかもしれない。 しかしやましろの奮闘が、一瞬の時間を作り出したのも事実。だが世界の大局は変わらず、核戦争後の荒廃と無秩序は深まっていく。

最後の護衛艦は壮絶な戦いとともに散り、乗組員もほとんど命を落とした。 廃墟と化した祖国が再び起き上がるかどうか、その先は誰にも見えない。燃える海を赤黒く染めながら、やましろの最期を映す夕陽の赤が、まるで絶望とわずかな希望を二重写しにしているかのよう――「それでも、死んだ海の中に最後の矜持を置き去りにして」――日本の旗は赤い炎に焼かれつつ、水底へ沈んだのであった。

—終幕—

 
 
 

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