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核の十字路

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月19日
  • 読了時間: 6分

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プロローグ:風雲急を告げる極東

二〇XX年――日本政府が米国からの戦術核供与の事実を突如公表したことで、アジアの緊張が一気に高まる。中国は激しく反発し、北朝鮮も「日本が核を手にするなら、核攻撃は不可避」との声明を発表。国連や欧州諸国は「日本の無責任さ」を非難する声を強め、国内外で“日本は国際社会から孤立しかねない”という懸念が広がっていた。この事態を収束すべく、日本政府は若手だが実力ある外交官・大石 修平(おおいし しゅうへい)を中心に、新たな外交チームを編成し「戦争回避と国際的信用回復」を目指す。しかし、極東では既に中国と北朝鮮が本格的な軍事行動の準備に入り、戦火の兆しが燻っていた。

第一章:日本への非難と国連の動揺

国連安保理 緊急会合

ニューヨークの国連本部では、日本が事実上“核保有”に足を踏み入れたとの糾弾が巻き起こる。

  • 中国大使: 「日本が過去の歴史を忘れ、再び軍国主義へと進むなら、我々は断固対抗措置を取る!」

  • ロシア代表も同調し、「極東の安全保障を脅かすのは日本の核保有だ」と糾弾。

  • 米国代表は日本擁護に回るが、自国利益もあり歯切れが悪い。ヨーロッパの主要国からも厳しい批判が飛ぶ。


    大石は傍聴席でそのやり取りを見つめつつ、胸がざわつく。「このままでは日本は孤立しかねない……」

日本国内の混乱

東京では「核兵器に絶対反対!」と掲げる平和運動デモが激化。一方、「中国・北朝鮮に攻められるなら核しかない」という強硬派も出現し、社会が混迷する。大石は外務省本庁から呼び出しを受け、「国際社会の理解を得るため、あらゆる外交チャンネルを動かしてくれ。君には日米韓の緊密連携を担ってもらう」と言い渡される。

第二章:戦場の空気—日米艦隊の苦戦

沖縄近海の海戦

中国は東シナ海へ艦隊を派遣し、北朝鮮も弾道ミサイルによる威嚇を強化。日本と米国の艦隊が沖縄近海で迎撃態勢を取り、連日のように小規模交戦が発生していた。海自や在日米軍は「核を使用する可能性」をちらつかせることで中国を抑止しようとするが、相手も核使用の構えを見せており、海上はいつ本格的な核戦争に発展してもおかしくない状況に。

外交官 大石の苦悩

大石は一方で韓国とも協力体制を強化しようと試みる。北朝鮮が韓国を射程に収めている以上、韓国が日本の核保有をどう見るかがカギだ。しかし韓国の外務当局は「日本が先に核を公表したのは容認できない」と態度を硬化。大石は何度も交渉を試みるが難航する。「このままでは、中国・北朝鮮の圧力を共有する日米韓の連携が崩れてしまう…」 彼は苛立ちを抱えながら、次なる手を考える。

第三章:危険な密談—戦争終結への道

米国からの強硬提案

米政府高官が密かに大石を呼び、「もし中国や北朝鮮がさらに侵攻を進めるなら、限定的核攻撃で彼らの軍事拠点を叩くしかない。日本も同意してほしい」と打診。大石は「そんなことになれば、世界大戦に発展しうる。絶対避けるべきだ」と反論するが、米国は「もう猶予が少ない。抑止力を最大限に使うしかないんだ」と譲らない。

韓国との交渉チャンス

一方、大石は韓国外務次官から「米国と日本が核を使う意思を見せるなら、韓国国民もパニックを起こす。何とか協調して、核使用を阻止できないのか」と密かに相談を持ちかけられる。これを機に、日米韓三国が一堂に会し「北朝鮮を含む停戦協議の糸口」を探る可能性が浮上。大石は「これだ…」と閃き、国際社会の理解を得ながら戦争を終わらせる道を模索し始める。

第四章:前線激化—中国海軍の猛攻

大規模ミサイル攻撃

中国海軍は核保有を公にした日本を最大の脅威と見なし、沖縄周辺を封鎖すべく大規模艦隊を進出させ、ミサイル攻撃を開始。那覇沖の海戦では日米艦隊が甚大な被害を受け、米軍内部でも「このまま被害が拡大すれば核使用は不可避」と声が上がる。

大石の現地出張

大石は緊張の走る那覇へ飛ぶ。外務省の一員ながら、外交官として戦争終結への道筋を前線で探るためだ。そこでは乗艦中の将兵が「核は使うんですか?」と不安気に尋ねる。同時に海自幹部から「戦況次第では政治が核のスイッチを押すかもしれない」と言われ、大石は暗い衝撃を受ける。「今こそ、日米韓の外交チャンネルで中国との交渉を可能にしなければ…」と意気込む。

第五章:戦争終結への交渉と国際舞台

水面下での日中接触

裏では大石が韓国仲介で中国外務担当との極秘交渉をセッティング。 中国側も「核戦争は最悪」と理解しており、北朝鮮を抑えるには何らかの合意が必要と考え始める。交渉の場は第三国(スイスのジュネーブ)に設定され、米国も静かにそれを支持。 しかし中国は「日本が核を捨てるなら検討する」と強硬な姿勢。大石は「核はあくまで米国のもの。日本が使わない方針を明言する代わりに、中国も沖縄近海から艦隊を引く合意ができないか」と探る。

国連と世界の視線

国連本会議でも「日本が核を公然保有した」とされる件で制裁決議案が出されかかるが、大石は各国の外交官に「実際には使用を拒否し、抑止としてしか存在していない」と説く。 その裏で米国が票固めを行い、ロシアや欧州勢の反発を柔らげようとする。

第六章:壮絶かつ悲劇的な結末

最前線の危機—核発射寸前

その矢先、中国艦隊が沖縄本島への上陸を狙う動きを見せ、日米艦隊が再度激突。 米軍は「やはり核使用しかない」と準備を進める。 もしここで核が発射されれば、全てが破局だ。大石は“協議中断”の報を聞いて焦る。「中国が裏切ったのか? あるいは米軍が核を使うと知って強硬に出たか…」時を同じくして北朝鮮が短距離ミサイルを日本列島に乱射し、国民がパニックに陥る。

外交官の最後の一押し

大石は中国交渉団に直接ホットラインを繋ぎ、息を切らしながら叫ぶ。「あなた方がこのまま進めば、米軍は核を使う! 我々日本は全面的破局を望んでいない。どうか、今すぐ停戦協議に戻ってくれ…!」一方、米軍も“核発射”の最終カウントダウンを開始。その時、国連安保理が急転直下で**「日中双方の即時停戦と国境線再協議」**の決議案を可決(米中双方が妥協)。同時に中国が艦隊の後退命令を下したとの情報が飛び込み、米軍も核発射中止を宣言。戦場で艦艇が静かに引く中、日米艦隊も沖縄海域を守り抜いたが、その惨状はすさまじいものだった。

エピローグ:核の十字路、その先

国際社会はその後、日本が事実上米国の核に頼ったことを大きく批判する。だが同時に、中国の軍事行動を抑えたのも事実であり、停戦協議が行われる一歩になった点は評価される。大石は国連で記者会見に臨み、「日本はこれ以上核兵器を使用しない。あくまで抑止力にとどまる」と宣言。国際世論の風当たりは強いが、最終的に戦争を回避できた事実も認められる。日米韓三国の連携は“外圧”にさらされながらも、結果として北朝鮮を抑え込み、中国と停戦合意へ向かう流れを作った。この終結が果たして本当の平和か、それとも核を引きずる不安定な休戦か――世界はまだ“核の十字路”の上に立ち尽くしている。だが、大石は胸に確かな使命を感じつつ歩みを止めない。

—終幕—

 
 
 

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