澄んだ小川と山の聖堂――ラムザウの物語
- 山崎行政書士事務所
- 2月4日
- 読了時間: 3分

1. 朝の靄(もや)と木組みの家々
バイエルンのアルプスを背にした小さな村、ラムザウ(Ramsau)。夜明け前の青白い空気が谷間を満たしているとき、木組みの家々はどこか眠たげに影を落としている。屋根には赤茶色の瓦が並び、窓辺には鮮やかな花が飾られていて、バイエルンらしい素朴な温かみが漂っている。
やがて東の空が薄いオレンジ色に染まると、遠くのアルプスの稜線がゆっくりと姿を現し始める。村の中央には小川が流れ、清らかな水が石の底をさらさらと撫でながら北へと流れ去っていく。その音が、まだ活動を始めない村をやさしく揺り起こす。
2. 小さな教会と牧草地のコントラスト
ラムザウのシンボルとして名高いのが、小さな聖堂(Kirche)。白壁と尖塔が特徴的で、牧草地の緑と、アルプスの青い稜線を背景に、まるで童話の一場面のように映えている。 その聖堂の手前を流れる小川には、小さな木製の橋が架かり、橋の上からは教会と川が完璧な構図でカメラに収まる。国内外の観光客がその絶景を収めようと訪れる場面は珍しくないが、それでもラムザウは大都市の喧騒と比べると静寂を保っている。
3. アルプスの風と山あいの香り
朝市をのぞけば、地元の人々がチーズやハム、パン、ジャムなどを出品しており、ほのぼのとした会話が交わされている。周辺の山道を散策すれば、高山植物の花々や木々が広がる森が迎えてくれ、澄んだ空気を吸い込むと、鼻腔に爽やかなアルプスの香りが満ちてくる。 時折、牛の鈴の音がチリンと聞こえ、遠くからは牧童の呼び声もかすかに届く。こうした牧歌的な光景が広がるラムザウは、バイエルンの人々にとっても「美しいふるさと」として愛されているのだという。
4. 夕暮れに染まる小川と黄金の光
日が傾き始める頃、小川の水面はオレンジ色の光を受けてきらきらと輝き、教会の白壁にもやわらかな夕陽が映える。背後のアルプスは、山肌に陰影を増しながら深い青と紫に変化し、まるで自然が一瞬ごとにキャンバスを塗り替えているようだ。 地元の人々は屋外のベンチでビールやワインを楽しみながら、牧草地を駆け回る子どもを見守っている。空気中には澄んだ乾いた冷気が混じり始め、昼間の賑わいがゆっくりと夜の静けさに溶け込もうとしている。
5. 夜の帳と教会の灯
夜が訪れると、聖堂の窓から漏れる小さな灯りが静かに村を見守る。川の水音は変わらず続き、月明かりに照らされた山々が漆黒のシルエットとして空に浮かぶ。 家々にも灯がともり、家族たちが夕食を囲みながら一日を語り合う。聞こえてくるのは鍋を混ぜる音や、低い声で交わされる笑い声。そして心地よい疲れを覚えた旅人たちは、明日のために早めにベッドへつく。 こうしてラムザウは、星空の下で静かにまどろむのだ。アルプスから吹き下ろす夜風が、窓の隙間をかすめて甘い木の香りを運んでくる。
エピローグ
ドイツのラムザウ(Ramsau)―― そこはアルプスの裾野に抱かれた緑の小さな村。教会の白壁と流れる清流が絵画のような風景を演出し、朝は陽光に、夕暮れは黄金に、夜は星に彩られる。 もしこの地を訪れるなら、川べりに立ち、石造りの小橋越しに教会を眺めてみてほしい。静かに繰り返す四季と、変わらない人々の暮らし、その調和の素晴らしさが、胸いっぱいに染みわたるはずだ。
(了)





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