炎の連合艦隊
- 山崎行政書士事務所
- 1月19日
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プロローグ:燃え上がる海域への航路
二〇XX年、日本政府が米国からの戦術核供与を公表した事実が、国際社会に衝撃を与えた。その発表に触発されるように、中国は沖縄近海での“航行の自由”を大義名分に大規模軍事出動を表明。一触即発の空気が漂うなか、日米は**「連合艦隊」**とも言える規模で艦艇を集結させ、沖縄海域での防衛戦に備える。主人公・**高橋 義文(たかはし よしふみ)は海上自衛隊の中堅艦長で、護衛艦「きさらぎ」**を率いることになった。 その背後には世界中の注目が集まり、沖縄本島や離島住民の安否を懸けた“決戦”が始まろうとしていた。
第一章:連合艦隊の結成
米空母の到来と日米合同司令部
沖縄本島の那覇沖合、在日米軍と海自の艦船が続々集まる光景。
米空母「レキシントン」(原子力空母)を中心に、米巡洋艦・駆逐艦数隻
海自イージス艦「はるかぜ」や護衛艦群、計十数隻
これらが合同司令部を通じて「連合艦隊」を構成し、総司令は米海軍のダグラス提督。海自からは倉田司令が副指揮官として参画する。
高橋艦長は「きさらぎ」で作戦参加し、米艦との通信やデータリンクを担当。だが核を手にしたことで日米艦隊間の空気はギリギリの緊張感に包まれている。
中国の対抗姿勢
中国外務省は、「日本が核保有を事実上認めた以上、我が海軍は正当な防衛措置として沖縄周辺を支配する」と強硬姿勢。 実際に中国空母打撃群と多数の駆逐艦、潜水艦を東シナ海・南西諸島近海へ進出させている。国連は仲裁を試みるが、中国は「日本こそ脅威」と主張し、世界も日本を疑視。 そんな中、連合艦隊が出撃する。
第二章:漂う戦術核の影
核の存在と戸惑い
連合艦隊の中で囁かれる噂――「日本が核を載せた艦がいるらしい」。米軍自体も戦術核を保有しているとの情報が飛び交い、乗員たちの間で動揺が広がる。高橋は「きさらぎ」の艦橋で副長から耳打ちされる。「もし中国空母を仕留められなければ、米軍は核使用に踏み切る可能性があるとか…」高橋は歯を食いしばる。「我々はどこまでやれる? 核に頼らず勝つ道を探さねば…」と決意を固めるも、その確信は薄い。
米空母の提示:核使用案
ダグラス提督は会議で「中国の新型極超音速ミサイルを封じるには、先制的に中国艦隊を殲滅する方法、つまり核オプションも視野にある」と強調。海自の倉田司令は「それは…沖縄住民への影響も…」と反対するが、提督は「このままでは沖縄奪還どころか、われわれが大損害を被る。時間がない」と冷たく言い放つ。高橋はそれを傍らで聞き、「日本を守るためにどれだけ破壊を容認するか…」暗い疑問を抱くのだった。
第三章:敵の新型ミサイルと脅威
中国の駆逐艦部隊と潜水艦群
偵察機からの情報によれば、中国軍が最新鋭駆逐艦を数隻投入。さらに潜水艦も多数配置し、制海権を握る構えだという。特に、新型超音速ミサイルを搭載しているとの報が衝撃を与える。それは既存のイージスシステムで迎撃が難しいとされ、飽和攻撃を受ければ一瞬で連合艦隊が壊滅しかねない“切り札”だ。
戦前調整:作戦計画
倉田司令は「陣形を凝縮して相互防衛を強化すべき」と提案するが、米艦隊は空母中心の展開を維持し、意見衝突が生じる。高橋はなんとか和を保とうとするが、ダグラス提督は「中国空母に一気に集中攻撃をかける。失敗すれば核を使う。それが最速だ」と主張。核使用がリアルに取り沙汰される中、高橋は「核は最終手段…まだやり方があるはず…」と苦渋の表情で艦長席を握りこむ。
第四章:海戦発生 — 閃光に揺れる海
場所: 沖縄海域。 時刻: 早朝。 空に淡い朝日がにじむが、海上の空気は張り詰めている。
中国側の初撃:ミサイル飽和攻撃
夜明けとともに中国空母の艦載機が一挙に離艦。大量の対艦ミサイルが海面すれすれを進んで日米艦隊へ飛来する。同時に駆逐艦群もミサイルを一斉発射し、数十本の火線が波上を滑る。 レーダー画面に映る無数の赤い矢印が“飽和攻撃”を物語る。連合艦隊もイージスシステムでSM-2/SM-6を放ち、必死に迎撃。CIWSの火線が白い弧を描き、空中で弾頭が爆発する閃光が連続する。だが漏れを完全には防げず、米駆逐艦1隻が2発被弾し、甲板を火柱が舐める。「船体が大きく傾斜! 緊急修理班、急げ!」と通信が悲痛な声で響く。
日米の反撃
米空母からF/A-18が発艦し、攻撃隊を編成。海自イージス艦「しらぬい」なども対艦ミサイルを発射し、中国駆逐艦1隻を撃沈。
海面には赤い火の帯が広がり、幾重にも轟音が反響。爆炎と黒煙が立ち上り、轟沈する艦の乗員が海へ飛び降りるシルエットがかすかに映る。
しかし、肝心の中国空母は強大な防空艦と連携し、迎撃ミサイルを雨のように飛ばし、日米のアプローチを打ち落とす。「空母を仕留められない限り、彼らはなお新型ミサイルを使ってくる…」 高橋はブリッジで焦燥を抱え、「このまま被害が増えれば、米軍は核使用に本腰を入れるだろう…」と吐き捨てる。
戦闘激化:超音速ミサイルの恐怖
中国側が更に切り札の超音速ミサイルを発射すると報が入り、連合艦隊に緊張が走る。 迎撃は困難とされ、被害が一挙に増大する懸念が高まる。高橋は艦橋で「CIWSの配置を前面に増やせ! ECM妨害も全力だ!」と叫ぶが、何せ敵の速度が尋常でない。一瞬の閃光が艦隊を襲い、米駆逐艦2隻が短時間で大破。 海面は燃料と油、火の粉が混ざる修羅場となる。 甲板で火炎に包まれた乗員の叫びが通信に乗り、背筋を凍らせるような地獄絵図だ。
核使用の議論再燃
米艦隊司令部では「やはり核しかない」との声が高まり、ダグラス提督が「敵空母を沈めれば戦局が変わる。 核を限定使用して一気に終わらせる」と準備を開始。海自幹部から「民間被害や国際世論を考慮せよ」と反対も続くが、前線の艦が続々と沈む中、猶予はほとんど無い。高橋のブリッジにも「米空母から核使用準備開始」との報せが走り、部下が蒼白。「本当に撃つんですか…?」高橋は歯ぎしりする。「黙れ…こんな形で島を守れるのか…!」
第五章:奇策—戦局逆転への賭け
高橋の大胆提案
逼迫した空気の中、高橋は突如「空母に一気に近接攻撃を仕掛け、艦橋や飛行甲板を狙う特殊隊を投入する」奇策を打ち出す。
一部護衛艦が囮となり、中国駆逐艦群を引き離す。
その間に米空母の攻撃隊が空母本体へ集中砲火を浴びせ、海自ヘリ部隊が艦橋近辺に破壊工作を行う。
これが成功すれば、中国空母の艦載機運用能力を失わせ、超音速ミサイル発射能力も削げるかもしれない。
ダグラス提督は「そんな危険な強襲…成功率は低いぞ」と呆れるが、核を使うよりはマシと渋々了承。 高橋は艦の全乗員に「ここが勝負だ。核を使わずに勝つ!」と声を張り上げる。
囮作戦と集中砲火
囮となる海自の古参護衛艦2隻が、捨て身で中国駆逐艦隊の注意を引く。 その甲板には炎が上がり、乗員たちが悲壮の覚悟で戦う。
同時に米空母艦載機は集団攻撃で空母周辺の防空艦を叩き、一部を制圧しにかかる。 空に幾重にも交差するミサイル航跡、爆発の閃光、海面を焦がす炎が広がる。
隙をついた海自ヘリ部隊が低空飛行で空母横へ接近し、艦橋にロケット弾をぶち込む奇襲。甲板で誘爆が起き、空母は一時的に指揮系統を失う。
第六章:壮絶かつ悲劇的な結末
空母の沈黙と連合艦隊の代償
結果、中国空母は艦橋付近が破壊され、飛行甲板が使用不能に陥る。 駆逐艦の援護も追いつかず、空母は速力を失い、次々とミサイルを受けて燃える。 ついに自沈を選択するような形で後退を図る。一方、日米艦隊も大きな犠牲を払う。囮となった護衛艦は沈没し、多くの乗員が海に散る。 米空母にも被弾があり、艦載機を失った数が膨大だ。海一面に破片と油が浮かぶ地獄絵図だ。核の使用は最終的に回避されるが、海は赤く染まり、死者の数は計り知れない。 高橋は艦橋で「これが俺たちの選んだ戦いの結末か…」と、声にならない嘆きを胸に抱く。
エピローグ:炎の連合艦隊、残されたもの
中国艦隊は空母を失い、事実上の撤退を余儀なくされたことで沖縄海域は辛うじて日米の手に戻る。しかし大量の艦艇が沈み、“炎の連合艦隊”と呼ばれた日米艦隊は満身創痍の状態。国際社会はなお日本の核に目を向けて糾弾を続ける。 だが「実際に核が使われなかった」事実と「多大な犠牲」が記録に残り、核を回避した選択が良かったのかどうか、誰もが黙して語らない。高橋は艦を降りる前、血と汗と硝煙に包まれた甲板を見渡し、そっと呟く。「もう二度と……こんな戦いは繰り返しちゃいけない……」海上にはなお、黒煙が立ち昇り、漂う船体の破片から火の粉が舞う。 これが、核を使わずに勝利したはずの日米艦隊のあまりに大きい代償の姿であり、物語は静かに幕を閉じる。
—終幕—





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