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炎上する列島

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月19日
  • 読了時間: 6分



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序章:日本の夜明けに揺れる影

二〇XX年、冬。日本列島は、国際紛争の嵐のただ中にあった。中国軍による台湾侵攻、ロシア軍の極東侵攻、そして北朝鮮の弾道ミサイルによる威嚇――日本はかつてない多正面戦争に引きずり込まれ、次々と重要拠点を攻撃されていた。そんな暗雲の中、首相・西条 啓介は内閣総理大臣官邸で、未明に行われた緊急安保会議を終えたばかり。窓の外に薄青い夜明けを見ながら、重く沈む内心を押し殺すように腕を組んでいる。「総理、次の会議が二十分後です…」という秘書官の淡々とした声。西条は短く頷き、**「わかった」**と返す。

第一章:国会と閣僚たちの混乱

早朝から開催された臨時閣議。閣僚たちの顔は疲労と焦燥に彩られ、声が交錯する。

  • 防衛大臣:沖縄奪還作戦を急ぎたいが、中央防衛も北からの脅威も抱え、兵力がまるで足りない。

  • 外務大臣:アメリカや国連との協議を進めているが、国際社会の利益や駆け引きもあり、期待した援軍を得られない。

  • 経済産業大臣:戦争状態で経済が崩壊寸前。物流網が分断され、企業倒産が激増し、国民への食糧・燃料供給にも支障が出ている。

西条は閣僚たちの意見を冷静にまとめ上げる。「各々、可能な範囲での最善策を詰めてくれ。ただし、国民への負担は覚悟するしかない。これは非常事態だ…」誰もが沈黙する中、**「最終的には国民の犠牲をも厭わないのか?」**という内心の疑問が浮かぶ。 しかし戦争とはそういうものだという厳しい現実に直面している。

第二章:沖縄奪還作戦の難航

東京の対策本部から見るモニターには、沖縄本島や離島が炎上し、制海権が敵に奪われつつある映像が映し出される。西条首相は画面越しにハッキリと燃える街並みを見て、胸を痛める。 沖縄県知事からも「助けてほしい」という悲痛なメッセージが届いているが、救援艦隊も他の正面で手一杯……。防衛大臣が説明する。「海上自衛隊は複数艦を失い、航空戦力も損害が大きい。 大規模な奪還作戦は、米軍の協力なしには困難です…」米国は慎重で、直接的な介入を避ける構え。 かといって他国に仲介を頼んでも時間がかかるばかり。 西条は「それでもやらねばならぬ。沖縄を完全に失ったら、本土も危うい」と決断。だが、それは最終的に多くの兵士や住民が命を落とすことを意味する。 そこに西条はリーダーとしての責任を重く感じる。**「どれだけの血が流れる?」**彼は苦悶を胸に押し隠しながら書類にサインをする。

第三章:東京へのミサイル防衛の破綻

同時に北朝鮮のミサイル攻撃が連日東京を狙い、迎撃システムはもう限界に近い。防衛省地下の指令室では、「迎撃ミサイルが残弾数わずかです」と報告が相次ぐ。 直撃を受けた地域では、ビルが倒壊し、地下鉄が大破、通信インフラも大混乱。内閣官房長官が進言する。「首相、都民の大規模避難が必要では?」 しかし西条は「どこへ逃がす? 北海道もロシアの脅威が……」と頭を抱える。国家運営がいま、瓦解の淵にある。 西条は**「国家とは何か」**を意識する瞬間を迎える。 決断が遅れれば混乱と死者を増やし、早すぎる強硬策は犠牲を避けられない。 リーダーの重圧が彼の肩を押し潰すようだ。

第四章:北海道でのロシア軍迎撃

一方、北海道ではロシア軍が稚内や根室方面からじりじりと南下し、道東エリアを占領する勢い。 自衛隊は必死に迎撃しているが、補給もままならない。陸上自衛隊の部隊が過酷なゲリラ戦を展開し、都度悲惨な死闘が報告される。 西条がその報告を受けるたび、官邸の空気が凍り付く。「彼らの奮闘を無駄にしないよう、何らかの支援策を…」と考えるが、軍港が敵に制圧され物資輸送もできない状況。閣議で西条は声を張り上げる。「国民を見殺しにするのか? 今なお戦っている部隊を切り捨てるなどできない!」だが、参謀たちは兵力不足を叫び、政治的にも「道民の命を取るか、本州防衛を優先するか」の選択を迫る。 まさに「決断の連鎖」が首相を苛む。

第五章:多正面作戦下での外交交渉

同時並行で西条首相は米国大統領や国連安全保障理事会とのビデオ会議を行う。

  • 米大統領: 「我々も極東に艦隊を派遣しているが、中国との摩擦を避けたい。直接沖縄に地上軍を派遣するつもりはない」

  • 国連: ロシアや中国の拒否権行使により決議が機能せず、実質的に手出しできない。

    西条は拳を震わす。「このままでは日本単独で三正面を相手取ることになる…」(事実、もうそうなっているのだが)


    しかし、この外交の壁もまた現実。西条は辛酸を舐める形で会議を終え、閣僚に言う。「我々は自力で何とかしなければならない。国際社会は頼りにならん…」

第六章:犠牲と責任—首相の孤独

攻防が日々激化し、死者数が増大していく。TVでは連日避難所で泣く家族、焼け落ちた街が映る。SNSでは「政府は何してる?」と批判が殺到。西条は首相官邸で仮眠を取る暇もなく、指示を出し続ける。特に民間への犠牲が増え、誤爆や防空失敗で多数の死者が出るたび、彼の心を抉る。彼は心の中で**「自分の決定が、この血を生んでいる…」と苦悶する。 しかし、首相という職責は泣き言を許さない。「たとえ地獄を作ろうと、国家を守るためには行動せねば」と再び自ら鼓舞する。ここに「国家と個人の狭間」**のテーマが色濃く現れる。西条が背負うものはあまりに重い。

第七章:沖縄奪還作戦の結末

大規模な沖縄奪還作戦を打ち出し、本土から海自の艦艇や空自の航空隊を投入するが、中国軍の防空網は鉄壁。航空支援が撃墜され、大半の艦艇も撃沈されるという惨憺たる報告が入る。作戦中止の連絡が来て、西条は首相室で倒れこみそうになる。「こんなにも多くの人命を…」陸自の精鋭部隊も突破に失敗し、島の完全奪回は遂に果たせず。 沖縄知事から届いたメッセージは無念の言葉「もう島は崩壊です…」。 西条は心で**「本当に滅びてしまうのか、この国は…」**と感じる。

第八章:国家と個人—決断の果て

連日続く苦報。ロシア軍が北海道を多く制圧、北朝鮮は再度ミサイルを発射し、迎撃失敗で関東圏にも壊滅的被害が発生。西条の支持率は暴落し、一部政治家は「早期に停戦・降伏すべき」と暗躍する。しかしそれは日本の主権を喪失するに等しい。首相会見を開くことを勧められ、西条はメディアの前で国民に向けて言葉を紡ぐ。 そこには**「国家を守り抜く」という意地**がある一方、無数の犠牲を伴う残酷な現実も凝縮される。彼は全国放送で、「私は責任を取る覚悟で戦い抜く。祖国防衛のためならば…」と訴える。 それをテレビ越しで見ていた市民は賛否に割れるが、指導者としての姿には何かしらの敬意を感じる者もいる。

結末:炎上する列島、その先

戦争はまだ続く。三正面戦の中、日本の多くの街が炎上し、膨大な命が失われる。外交も機能せず、いつ終わるとも分からない。西条首相は**「もはや自分の政治生命はどうでもいい。大勢の命を背負いながら、将来の世代へ微かな可能性を繋げるしかない」と心に決める。しかし、この壮絶な犠牲を払ってなお、勝利する保証は無い。彼が下す決断は、さらに多くの血を流す覚悟でもある。最後の描写:首相官邸の地下室。 砲撃音が上階に近づいてくる。 耳を突き刺す警報の中で、西条は一枚の白紙に「この国を、捨てるな」と走り書き**し、秘書官に渡す。炎が官邸上階を襲い、天井が崩落しつつある中、彼は一瞬空を見上げる――日本列島が炎上するさまを思い描きながら、ぎりぎりと拳を固め、最後の命令を発しようとする。その光景で幕が降りる。「果たして列島は焼き尽くされるだけか、それともそこから何かが再生するのか」――誰もまだ分からない。

—終幕—

 
 
 

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