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狐と獅子の夜

冬の葡萄畑は、骨の匂いがする。葉を落とした蔓は、地面から引き抜かれた肋骨のように白く、風に触れるたび、乾いたきしみを立てた。きしみは生活の音だ。生活の音ほど残酷なものはない。生活は英雄譚を拒む。英雄譚を拒むくせに、英雄を欲しがる。

丘の上の小屋の戸を閉めると、外の冷たさが一瞬だけ止まった。止まった冷たさは、すぐ別の冷たさになる。室内の冷たさだ。室内の冷たさは、追放者の冷たさだ。火鉢の炭が赤くなっても、追放者の冷たさは残る。残る冷たさほど、言葉を鋭くする。

ニッコロは、昼の間は土をいじり、夜になると衣を替えた。昼の衣は泥の衣で、夜の衣は宮廷の衣だった。宮廷の衣といっても、もう宮廷へ行けるわけではない。行けない衣ほど不潔なものはない。行けない衣は、望みの形だけを残すからだ。

彼は蝋燭に火を点け、机に向かい、紙を広げた。紙は白い。白は潔白ではない。白は、汚れが目立つことを初めから知っている者の色だ。羽根ペンの先が紙に触れる前に、彼の肩がわずかに痛んだ。あの縄の痛みだ。宙吊りの痛み。拷問の痛みがまだ筋肉の奥に残っていて、彼に「運命」という言葉の手触りを思い出させる。

運命――フォルトゥーナ。女の名を借りて呼ばれる、あの無礼な力。無礼な力は、いつもこちらの礼儀を笑う。礼儀が笑われるとき、人は二つの道に走る。泣くか、噛むかだ。ニッコロは噛む方を選んだ。噛むという行為は、言葉の代わりになる。言葉はしばしば甘い。甘い言葉は腐る。腐った言葉の上で、国は滅ぶ。

彼は書き始めた。君主は、善人である必要がない。――そう書くと、胸が痛む。痛みは恥に似ている。恥は、まだ倫理が生きている証拠だ。倫理が死ねば、言葉はもっと滑らかに流れる。滑らかな言葉ほど危険なものはない。滑らかな言葉は、血の匂いを消す。

「善人でなくてよい」

彼はもう一度、心の中で反芻した。善人でなくてよい、と言うために、彼は善人であろうとしてきた人生を一度、否定しなければならない。否定は簡単だ。簡単な否定ほど、後で長く残る。

窓の外で犬が吠えた。吠え声は低く、鈍い。鈍い吠え声は恐怖の匂いを運ぶ。恐怖はいつでも、家の内側より外側にいる。外側の恐怖は、門の形を欲しがる。門の形を欲しがる恐怖が、都市を築き、都市が軍を持ち、軍が国を喰う。

ニッコロの手は止まらなかった。彼の文字は、清潔で、乾いていた。乾いた文字ほど残酷だ。乾いた文字は涙を許さない。涙は湿っている。湿り気は、政治の歯車を錆びさせる。錆びた歯車は、必ず誰かを潰す。潰すなら、最初から錆びを拒め――そんな声が、彼の指先から出ているようだった。

「愛されるより、恐れられる方が安全だ」

彼は書き、書いた自分を憎んだ。憎むのは、その通りだからだ。愛は気まぐれで、気まぐれは美しい。美しいものほど危険だ。愛されたい、という欲望は、君主を人形にする。人形は、民の都合の良いときだけ抱かれ、都合が悪くなると投げ捨てられる。

恐れは違う。恐れは鈍い。鈍いものほど長持ちする。だが長持ちする恐れは、必ず憎しみを生む。憎しみは火種だ。火種は、ある日ふいに都市を焼く。焼かれた都市は、きれいに見えることがある。きれいに見える焼け跡ほど危険なものはない。人はそこに「刷新」という札を貼りたがる。

彼は「恐れ」と「憎しみ」の間の、薄い線を探した。薄い線。地図の上の国境と同じ線だ。線は紙の上では正しいが、現実では血を吸う。血を吸う線ほど、不潔なものはない。

机の隅に、封蝋があった。赤い蝋。赤は血の色に似ているが、血ではない。血でない赤ほど不吉だ。血でない赤は、死を手続きに変える。彼は蝋を指でつまみ、火に近づけた。蝋はすぐ柔らかくなる。柔らかくなる赤は、肉に似ていた。肉に似た赤を見つめながら、彼は思う。政治とは、肉を蝋のように扱う技術なのか、と。扱えるものほど残酷だ。扱えると思った瞬間、人は平気で握り潰す。

その夜、彼は狐と獅子のことを書いた。狐は罠を見抜く。獅子は狼を追い払う。罠は言葉でできている。狼は数でできている。言葉と数――どちらも人間を簡単に殺す。刀より簡単に。

「君主は、善人のふりをせねばならぬ」

ふり。ふりという語は下品だ。だが下品な語でしか言えぬ真実がある。人間は見たものを信じる。見たものしか信じない。信じないくせに、信じたがる。信じたがりの目の前で、君主は香を焚き、祈り、慈悲を示し、笑う。笑いは薄い。薄い笑いは、凶器を隠すための麻酔だ。

ニッコロはその麻酔を、文章で作ろうとしていた。文章は、刃と同じだ。使い方で救いにもなるし、ただの殺しにもなる。彼は救いを欲していた。自分のための救いではない。祖国のための救いだと、信じたかった。信じたかったという言い方が、すでに弱い。弱さは恥だ。だが恥がある限り、彼はまだ人間だった。

夜更け、外で風が変わった。風が木の枝を鳴らし、雨が来る匂いがした。匂いは時間を知らない。知らない匂いほど残酷だ。ニッコロはペンを置き、手のひらを見た。指先に黒い染みがある。インクの染み。インクは乾けば消えない。消えないものほど胸に残る。消えない染みは、罪の形に似ている。

そのとき、奥の部屋で子どもが寝返りを打った。布の擦れる音。生活の音。生活の音の前で、世界の終局を語ることが、彼には急に滑稽に思えた。滑稽は恥だ。恥は、生の証拠だ。彼は一瞬だけ、君主のための書など燃やしてしまいたくなった。燃やせば、きれいになる。きれいになるのは危険だ。きれいになれば、臭いが消える。臭いが消えれば、人はまた同じことをする。

翌朝、彼は原稿を綴じた。紙束は軽い。軽い紙束が、彼の人生を変えるかもしれない。封蝋を溶かし、封をした。赤い蝋が固まるとき、彼は妙に安心した。形ができると、人は安心する。安心は甘い。甘い安心は腐る。腐った安心の上で、国家は寝る。寝ている国家ほど、危険なものはない。

原稿は、都へ送られた。メディチ家へ。彼は「献呈」という名の祈りを添えた。祈りはいつも遅い。遅い祈りは、たいてい届かない。届かない祈りほど、胸に残る。

数日、数十日、返事はなかった。返事のない沈黙は、最も確実な拒絶の形をしている。拒絶は冷たい。冷たさは正しい。正しい冷たさが、彼から余計な夢を剥いだ。夢が剥がれると、残るのは文章だけだ。文章だけが残るとき、書き手は初めて怖くなる。文章は、書き手を離れて歩く。歩く文章は、誰かの刃になる。刃になった文章が、どんな肉を裂くか、書き手にはもう止められない。

夜、彼は蝋燭の火を見つめた。火は美しい。美しい火ほど危険だ。美しさは、罪を清めた気にさせる。彼は自分が、清めを欲していたことを知った。追放された辱め、吊られた痛み、都への渇望——それらを「祖国のため」という香で包みたかった。香は甘い。甘い香は腐る。

彼はそっと呟いた。

「君主とは、誰だ」

誰だ。メディチか。フィレンツェか。それとも、文章を読む未来の誰かか。あるいは、文章を書かせる自分の内側の欲望か。

蝋燭の火が揺れ、壁に影が伸びた。影は狐のようにも、獅子のようにも見えた。影は形を変える。形を変えるものほど、真実に近いことがある。真実は、いつも一定の形を嫌う。

ニッコロはその影を見ながら、やっと理解した。君主論とは、君主のための教科書ではない。それは、権力という病の症状を、いちばん冷たい言葉で記録した病理標本だ。冷たい標本は、見る者に熱を与える。熱は危険だ。熱は、次の君主を産む。

だからこそ、彼は恐ろしくなった。恐ろしくなりながら、彼はまた紙を広げた。書くしかない。書くという行為は、最も卑しい。卑しいが、彼にはそれしか武器がない。傭兵を雇う者は国を失う。自分の軍を持たぬ者は滅びる。——ならば、彼の軍は文章しかない。文章の兵は、彼の意志に忠実であってほしかった。忠実であるほど、罪深い。

窓の外で、雨が降り始めた。雨は土の匂いを立てる。匂いは生活を呼ぶ。生活の匂いの中で、彼の文章は冷たく乾いていった。

乾いていくインクの黒を見つめながら、彼は胸の奥で小さく誓った。美しく語られないように。善人の香で覆われないように。読まれるたびに、誰かの指がインクの染みに触れて、「この黒は血の匂いを消している」と気づくように

その気づきだけが、狐と獅子の間に残された、いちばん細い、しかし最後まで折れない線なのだと。

 
 
 

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