第二十五章 該当なしの穴
- 山崎行政書士事務所
- 5月6日
- 読了時間: 15分
一か月後。
アステリオン本社の二十八階には、ようやく昼の光が戻っていた。
深夜の電話、攻撃者のメール、会見、臨時取締役会、A市との緊急協議。それらが消えたわけではない。
ただ、毎日鳴り続けていた警報音は少し減り、文書保管室に置かれた紙コップのコーヒーは、冷める前に飲めるようになっていた。
会社は、平時へ移りつつあった。
そして、その日が来た。
第一回月次確認会議
平時移行後、初めての正式な月次点検だった。
会議室は、あえて役員フロアではなく、文書保管室の隣の小会議室にした。高瀬瑛子の指示だった。
「月次確認は、社長室でやると儀式になります」
彼女はそう言った。
山崎行政書士事務所の山崎は、いつものようにオンラインで参加していた。画面の向こうに見える事務所の棚には、分厚いファイルが整然と並んでいる。
山崎は、最初に言った。
「今日の目的は、安心することではありません」
怜子は、少しだけ笑った。
もう、その言葉には慣れていた。
山崎は続けた。
「忘れかけている未了、根拠のない緑、放置された黄色、そして便利に使われる“該当なし”を見つけます」
佐伯が、画面を共有した。
月次確認表 第一回
表は、部署ごとに色分けされている。
法務。情報システム。個人情報管理。広報。財務。人事。経営企画。自治体事業部。内部監査。取締役会事務局。
緑、黄色、赤。
以前より、緑の数は少ない。黄色が多い。赤もある。
それは悪いことではない。少なくとも、隠れてはいない。
高瀬は、表の上部にある凡例を読み上げた。
「黄色・赤の存在自体を問題視しない。放置を問題視する」
山崎がうなずいた。
「はい。今日は、黄色や赤よりも、“該当なし”を見ます」
宮内が少し眉をひそめた。
「該当なし、ですか」
「はい」
山崎は、静かに言った。
「該当なしは、空欄より危険なことがあります。空欄は未入力だとわかります。該当なしは、確認済みに見えます」
怜子は、旧台帳を思い出した。
閉鎖済み。完了。不要。該当なし。
それらの言葉が、どれほど多くの未了を覆っていたか。
高瀬が言った。
「該当なしを抽出してください」
佐伯がフィルターをかける。
画面に、該当なしの項目が並んだ。
二十八件。
小会議室の空気が、少し重くなった。
最初の該当なしは、人事部の項目だった。
採用広報における本件説明:該当なし
高瀬が聞いた。
「なぜ該当なしですか」
人事部長が答えた。
「今月は、サイバーセキュリティや自治体事業に関わる職種の採用面接がなかったためです」
怜子は、資料を見た。
今月の採用面接一覧には、営業職、経理職、デザイナー、カスタマーサポート職が並んでいる。
高瀬が言った。
「本件は、サイバーセキュリティ職だけに関係しますか」
人事部長は、そこで表情を変えた。
「いいえ……全職種に関係します」
山崎が言った。
「採用広報ガイドラインでは、本件を隠さず、ただし変革物語にしないことになっています。対象は全職種です」
人事部長は、画面を見直した。
「該当なしではありません。今月実施した全職種面接で、どの説明資料を使ったかを確認する必要があります」
高瀬はうなずいた。
「ステータスは?」
佐伯が答えた。
「黄色です。確認期限は?」
人事部長は即答した。
「本日十七時までに、面接で使用した説明資料と説明履歴を確認します」
山崎が言った。
「さらに、今後は採用職種にかかわらず、本件説明の適用要否を確認する欄を標準化しましょう」
怜子は、規程対応表に追記した。
採用広報における本件説明は、職種限定ではなく全職種で適用要否を確認する。
最初の該当なしが、黄色に変わった。
二つ目。
AI利用台帳:内部通報関連利用 該当なし
遠野が説明した。
「内部通報情報をAIに入力することは禁止しているため、該当なしとしました」
高瀬は聞いた。
「禁止していることと、実際に利用されていないことは同じですか」
遠野は、少し黙った。
「違います」
「確認方法は?」
遠野は、AI利用ログを開いた。
「内部通報関連ワードで検索したログはありません。ただし、通報という言葉を使わず、別名で入力された可能性までは完全には見ていません」
山崎が言った。
「禁止項目は、“該当なし”ではなく、“利用禁止・監査対象”が適切です」
怜子は、思わず山崎を見た。
「利用禁止・監査対象」
「はい。禁止しているから見ない、ではなく、禁止しているから見ます」
遠野は、深くうなずいた。
「ステータスを変更します」
佐伯が入力する。
内部通報関連AI利用:利用禁止・監査対象。月次ログ監査継続。
高瀬は言った。
「該当なしが、監査対象になりましたね」
山崎が静かに返した。
「それが正しい扱いです」
怜子はメモした。
禁止項目は、該当なしではなく監査対象。
また一つ、平時の穴が見えた。
三つ目。
A市以外の自治体への影響説明:該当なし
自治体事業部長が説明した。
「今月、A市以外で新しい漏えい事実は確認されていません。そのため該当なしとしました」
西森A市健康福祉部長も、今日はオンラインで参加していた。A市は、月次確認の一部をオブザーバーとして見ることになっている。
西森が静かに言った。
『新しい漏えい事実がないことと、A市以外への説明が不要であることは同じではありません』
自治体事業部長は、少し顔を強張らせた。
山崎が補足した。
「関係自治体には、最終報告後の再発防止実装、委託先監査、AI利用管理、外部サービス棚卸しの進捗を定期的に知らせる方針でした。新しい漏えい事実がなくても、説明すべき進捗があります」
高瀬が言った。
「該当なしではなく、定期説明未実施です」
その言葉は厳しかった。
自治体事業部長は、すぐに頭を下げた。
「申し訳ありません。A市以外の関係自治体向け月次説明の初回案を、三営業日以内に作成します」
西森が言った。
『A市向け資料をそのまま使うのではなく、各自治体との契約・対象業務に合わせてください』
山崎が言った。
「自治体別説明マトリクスを作りましょう。対象業務、保有情報、影響可能性、説明済み事項、未説明事項、次回説明予定」
佐伯が表を作る。
自治体事業部長は、苦い顔で言った。
「また表ですね」
高瀬は静かに返した。
「今回、その表がなかったから該当なしになりました」
自治体事業部長は、何も言えなかった。
四つ目。
委託先監査:広報外部委託先 該当なし
飯倉が顔を上げた。
「これは、広報部の項目です。まだ監査対象に含める準備ができていないため、該当なしにしていました」
高瀬は、すぐに聞いた。
「準備ができていないものは、該当なしですか」
飯倉は、少し苦笑した。
「いいえ。未着手です」
山崎が言った。
「正確には、広報外部委託先台帳は作成中、監査項目未整備、初回監査未実施。黄色または赤です」
飯倉は頷いた。
「赤でよいです。Re:Trust案の外部共有リンク問題があったにもかかわらず、初回監査が未設定でした」
高瀬は、少しだけ表情を和らげた。
「赤にする判断は、評価します」
飯倉は答えた。
「赤を隠すほうが、もう怖いです」
怜子は、その言葉を記録した。
広報が、自分で赤をつけた。
これは小さいが、大きな変化だった。
午前九時十五分。
該当なし二十八件のうち、十六件が黄色または赤に変わった。
残った十二件も、そのままでは終わらなかった。
山崎は言った。
「今後、該当なしには理由欄を必須にしましょう」
佐伯が、月次確認表の項目を修正する。
該当なし理由。確認者。次回見直し要否。
高瀬が追加した。
「該当なしのサンプル監査も入れてください」
宮内が言った。
「緑監査に加えて、該当なし監査」
山崎は頷いた。
「はい。緑と該当なしは、安心に見えるので監査が必要です」
怜子は、壁から制度対応表に移した言葉を思い出した。
緑を信じる前に、根拠を見る。
新しい表現が加わった。
該当なしを信じる前に、理由を見る。
これは、制度対応表の月次確認項目に入れることになった。
午前十時。
住民向け更新は予定通り出た。
この日、住民向けには該当なしの議論は出さない。
ただし、関係自治体向け説明が未了だったことを受け、次回更新に「A市以外の関係自治体への説明状況」も分かりやすく載せる方針が決まった。
西森が言った。
『住民は、自分の市だけでなく、同じような仕組みが他でも大丈夫なのかを気にしています』
怜子は頷いた。
「次回、A市と相談して入れます」
山崎が言った。
「住民向けには、自治体名を全部出すのではなく、説明対象の範囲と進捗を示す形がよいでしょう。関係自治体との調整も必要です」
自治体事業部長が、もう表を作り始めていた。
関係自治体説明状況一覧
以前なら、山崎が作っただろう。今は、現場が自分で作り始めている。
怜子は、それを見て少しだけ安心した。
午前十一時四十分。
人事部から、採用面接で使用した資料の確認結果が届いた。
全職種の候補者に、本件を簡潔に説明する共通資料が用意されていた。しかし、営業職の面接で、一部の面接官がこう説明していた。
「現在は再発防止策が整い、通常業務に戻りつつあります」
怜子は、その文を見て眉をひそめた。
高瀬が聞いた。
「何が問題ですか」
佐伯が答えた。
「“再発防止策が整い”が強すぎます。実装中です」
山崎が補足した。
「“通常業務に戻りつつあります”も注意が必要です。元に戻さない方針とずれます」
人事部長は、深く頭を下げた。
「面接官向け説明が不十分でした」
高瀬は言った。
「面接官を責める前に、資料を直しましょう」
修正文。
当社は、外部調査委員会の最終報告を受け、再発防止策を実装中です。通常業務を継続しながら、未了事項、被害者支援、A市対応、AI利用管理、委託先監査を続けています。事件前の状態に戻ることを目指しているわけではありません。
山崎が言った。
「よいです。採用候補者にとっても、会社の現状がわかります」
人事部長は、面接官向けに緊急通知を出した。
また一つ、平時の言葉が修正された。
午後一時二十分。
昼食後、山崎が珍しく自分から発言した。
「今日の該当なし監査は、御社にとって重要な節目です」
高瀬が聞いた。
「なぜですか」
「危機対応では、人は赤を見ます。火が見えているからです。平時では、人は赤を避け、緑を増やし、該当なしを使います。該当なしを監査する会社は少ないです」
怜子は言った。
「該当なしを監査する会社は、面倒ですね」
山崎は少し笑った。
「はい。面倒です。ただ、面倒な会社は、事故に少し強くなります」
佐伯が言った。
「面倒な会社」
高瀬は、すぐに反応した。
「いい言葉ですね」
山崎は少し慌てた。
「広報には使わないでください」
飯倉が笑った。
「使いません。でも、社内では使えるかもしれません」
高瀬は言った。
「次の社内メッセージに入れます。『私たちは、面倒な会社になります』」
宮内が苦笑した。
「株主がどう受け取るか」
山崎が言った。
「株主向けには、“確認可能な会社”がよいでしょう」
飯倉がメモする。
社内向け。
面倒な会社になる。
株主向け。
確認可能な会社になる。
住民向け。
次がいつか分かる会社になる。
怜子は、それぞれの表現を見て思った。
相手ごとに言葉は変わる。だが、意味は同じだ。
隠さない。省かない。確認する。
午後二時四十分。
攻撃者からメールが届いた。
件名。
N/A
本文。
Not applicable is where ghosts sleep.
該当なしには、亡霊が眠る。
怜子は、その文を読んだ。
まただ。
また、攻撃者は痛いところを突く。
しかし、今日は会社が先に該当なしを見ていた。
怜子は、淡々と記録した。
攻撃者より該当なし項目に関する示唆メールを受信。対応は攻撃者の評価ではなく、該当なし理由必須化、該当なしサンプル監査、月次確認表改定、関係自治体説明マトリクスに基づき進める。
高瀬は、それを見て言った。
「今日は、こちらが先でしたね」
遠野が頷いた。
「珍しく」
山崎が言った。
「珍しく、ではなく、そういう習慣を増やすのが平時運用です」
怜子は、少しだけ笑った。
まさに、拍手のない習慣だった。
午後三時三十分。
該当なし監査の結果を、社内向けに共有する文案が作られた。
高瀬が自分で冒頭を書いた。
本日の月次確認で、複数の“該当なし”が、実際には“確認中”“未着手”“監査対象”であることが分かりました。これは担当者を責めるための共有ではありません。平時には、未了事項が“該当なし”という言葉で見えなくなることがあります。今後、該当なしとする場合は、理由、確認者、次回見直し要否を記録します。
山崎が確認し、言った。
「よいです。最後に、“該当なしを減らすことが目的ではなく、正しく使うことが目的”を入れてください」
高瀬は追加した。
該当なしを減らすことが目的ではありません。正しく使うことが目的です。
社内に配信されると、反応が来た。
自部署でも該当なしが多いです。見直します。該当なし理由欄、必要だと思います。面倒ですが、事故後なら当然ですね。“該当なしには亡霊が眠る”という言葉が刺さります。それは攻撃者の言葉ですか?使わないほうがいいのでは。
飯倉が最後の投稿を見て言った。
「社内でもわかってきていますね」
怜子は頷いた。
攻撃者の言葉を、会社の標語にしない。
その感覚が、少しずつ社内にも広がっている。
高瀬は返信した。
攻撃者の言葉を標語にはしません。当社の言葉としては、「該当なしを信じる前に、理由を見る」です。
その返信は、多くの社員に引用された。
午後五時。
A市向けに、関係自治体説明の未了を報告した。
西森は、厳しくも落ち着いて聞いた。
『A市以外への説明が該当なしになっていたのは、危ういですね』
自治体事業部長が答えた。
「はい。新しい漏えい事実がないことを理由にしていましたが、再発防止や監査進捗の説明は必要でした」
『今後の説明予定は?』
「三営業日以内に対象自治体別マトリクスを作成し、一週間以内に初回説明を開始します」
山崎が画面で補足する。
「A市様へも、説明マトリクスの共有版をお送りします。A市様への説明内容と他自治体向け説明に齟齬がないようにします」
西森は頷いた。
『お願いします。A市だけが例外的に説明を受けているように見えると、他自治体との関係でも問題になります』
また一つ、平時の視点が増えた。
A市だけではない。他自治体も、同じように情報を預けている。
事件の中心ではなかった相手にも、説明責任はある。
午後六時三十分。
その日の終業前確認で、高瀬は言った。
「今日は、該当なしの穴を見ました」
会議室の全員が、月次確認表を見ている。
「該当なしは、便利な言葉です。対象外、不要、関係なし、確認済み。そう見せることができます。でも、理由がなければ、該当なしは未了を隠します」
彼女は、佐伯が更新した表を見た。
該当なし理由欄。確認者。次回見直し要否。サンプル監査対象。
「来月も、該当なしを見ます」
山崎が言った。
「はい。月次確認表に固定しました」
高瀬は頷いた。
「平時に入って、一つずつ敵の顔が見えてきています。緑の嘘、善意の省略、善意の装飾、該当なしの穴。明日は、また別の顔でしょう」
怜子は、その言葉を記録した。
平時の敵は、顔を変える。
しかし、見つける方法はある。
表。理由欄。根拠資料。次回確認日。監査。A市の視点。住民の声。外部専門家の目。
午後八時十五分。
日下部澄江の娘から、A市経由でメッセージが届いた。
会社の資料で「該当なし」を見直したと聞きました。母のような人は、会社にとって該当するのか、しないのか、そういう線引きで不安になります。該当なしにする前に、本当に関係ないのか見てください。
怜子は、その文を読んで、静かに目を閉じた。
該当なしは、本人から見れば「自分は見られていない」という不安にもなる。
会社にとって対象外でも、本人は不安を持つ。その不安に対して、どう説明するか。
怜子は、該当なし理由欄に新しい項目を追加した。
相手から見た関係可能性。
山崎が確認し、言った。
「よい追加です。会社から見て該当なしでも、相手から見て不安がある場合、説明対象になることがあります」
高瀬は頷いた。
「住民向け、株主向け、自治体向け、全部に必要ですね」
また、制度が少しだけ深くなった。
午後九時四十分。
攻撃者から、その日最後のメールが届いた。
件名。
Reason
本文。
A reason is heavier than a checkbox.
理由は、チェックボックスより重い。
怜子は、その文を読んだ。
理由は、チェックボックスより重い。
今回も、攻撃者の言葉を壁には貼らない。
だが、会社の言葉にはできる。
怜子は、月次確認表の該当なし欄に一文を入れた。
チェックだけでなく、理由を書く。理由は次回確認の入口である。
山崎が言った。
「よいです。理由欄が、次の確認につながります」
怜子は、いつもの記録も残した。
攻撃者より理由欄に関する示唆メールを受信。対応は攻撃者の評価ではなく、該当なし理由欄、相手から見た関係可能性、該当なしサンプル監査、月次確認表改定に基づき進める。
この構文は、攻撃者のメールが続く限り続くのだろう。
しかし、もうそれは恐怖だけではなかった。
攻撃者の言葉を、会社の未了事項へ接続し直す。物語を奪い返す。その作業にも、少しだけ慣れてきた。
午後十一時。
文書保管室の壁には、今日は新しい紙を貼らなかった。
代わりに、月次確認表の該当なし欄が更新された。
壁ではなく、表へ。
これが、壁を卒業するということなのだろう。
佐伯が言った。
「今日は壁に貼らないんですね」
怜子は頷いた。
「貼りたくなるけど、今日は表に入れました」
山崎が画面越しに言った。
「よいです。言葉が運用に入っています」
高瀬も言った。
「壁は入口。表が出口ではないけれど、少なくとも通路です」
怜子は笑った。
「山崎さんの言葉みたいです」
高瀬は少しだけ笑った。
「影響を受けていますね」
午前零時。
月次確認表の改定版が保存された。
月次確認表_該当なし理由欄追加版
保存ログ。資料番号。取締役会報告予定。A市共有版。社内通知。該当なしサンプル監査。関係自治体説明マトリクス。採用説明資料修正。AI内部通報関連利用監査。
佐伯が確認した。
「完了根拠、あります」
怜子は頷いた。
「ありがとう」
文書保管室の灯りを消す前に、高瀬が言った。
「明日は、該当ありを見ましょう」
佐伯が聞き返した。
「該当あり?」
「はい。該当ありと書かれたものが、本当に扱われているか。対象になっているだけで、対応されていないものがあるかもしれません」
山崎が、少しだけ嬉しそうな声で言った。
「よい視点です。該当ありにも穴があります」
怜子は、思わず笑った。
平時は本当に終わらない。
該当なしを見たら、次は該当あり。
緑を見たら、黄色を見る。黄色を見たら、放置を見る。赤を見たら、対応を見る。完了を見たら、根拠を見る。規程を見たら、読まれた後を見る。
これが、拍手のない習慣だ。
文書保管室の灯りが消えた。
暗闇の中で、壁の言葉は見えない。
しかし、月次確認表の中に、新しい欄が残っている。
該当なし理由。相手から見た関係可能性。次回見直し要否。
平時の敵は、また一つ名前を与えられた。
名前を得た敵は、少しだけ弱くなる。





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