第11話 FinOps姫とコスト怪獣
- 山崎行政書士事務所
- 5月12日
- 読了時間: 15分

静岡市葵区、青葉通りから少し入った山崎行政書士事務所では、その朝、陽翔が怪獣の絵を描いていた。
仕事中である。
もちろん、仕事中である。
タブレットの画面には、巨大な怪獣が描かれていた。頭には「Azure利用料」と書かれ、背中からは請求書が何枚も突き出し、口からは「従量課金ガオー」という吹き出しが伸びている。
「陽翔くん」
所長の山崎香澄が、湯呑みを片手に言った。
「はい」
「それは仕事?」
「概念図です」
「怪獣だけど」
「クライアントの不安を視覚化しました」
悠真が横から静かにのぞいた。
「不安は伝わりますが、稟議資料には使えません」
「表紙だけなら?」
「余計に使えません」
さくらが笑いをこらえながら言った。
「でも、ちょっとかわいいですね。コスト怪獣」
「かわいくしてはいけません」
奏汰がヘッドホンを片耳だけ外して言った。
「クラウド費用は、かわいい顔で増えます」
事務所が一瞬静かになった。
陽翔がすかさずメモを取る。
「本日の名言、一体目」
「怪獣みたいに数えないでください」
さくらが言った。
その日、山崎行政書士事務所に相談に来るのは、静岡市内の医療機器メーカー、駿河メディカルテックの経理部長・大村だった。
相談内容は、Azure利用料の急増。
先月まで想定内だったクラウド費用が、今月になって突然、社内の誰もが二度見する金額になったらしい。
大村部長は電話口で、こう言っていた。
「最近、コスト怪獣に追われる夢を見るんです」
その言葉に、陽翔が張り切った。
そして、怪獣が生まれた。
午前十時、入口の鈴が、からん、と鳴った。
「お世話になります……駿河メディカルテックの大村です……」
入ってきた大村部長は、五十代前半の男性だった。きちんとしたスーツ姿だが、目の下には濃い影がある。手には分厚い請求書の束と、印刷されたグラフ。
その後ろには、情報システム担当の若手社員、杉原がついてきた。こちらも疲れていた。疲れ方の種類が違う。大村は数字に追われ、杉原は上司とAzureポータルに追われている顔だった。
「どうぞ、おかけください」
香澄が穏やかに案内する。
大村は椅子に座るなり、深く息を吐いた。
「山崎先生、私はもう、夢の中でも請求書を承認しています」
「それはおつらいですね」
「しかも、巨大な怪獣が追ってくるんです。口から“追加ディスク”“転送量”“ログ保存”と叫びながら」
陽翔が小さく感動した。
「僕の絵より具体的です」
悠真が言った。
「張り合わなくていい」
杉原が申し訳なさそうに資料を広げた。
「Azureの利用料が、前月比でかなり増えています。開発チームも、製造管理チームも、分析チームも、それぞれ使っているんですが、誰の何が増えたのか説明しきれなくて」
大村が続けた。
「経理としては、請求書を払うだけでは困るんです。なぜ増えたのか。誰の予算なのか。稟議は通っているのか。来月も増えるのか。役員会で聞かれても、今は“クラウドなので……”しか言えません」
「“クラウドなので”は、説明になりませんね」
悠真が静かに言った。
「はい……」
大村の肩が落ちる。
そのとき、みおが資料を持って応接室に入ってきた。
みおは、いつものようにふんわりした雰囲気だった。だが、今日は手に持っている資料が違った。
表紙には、こう書かれていた。
「Azure費用可視化レポート案」
陽翔が目を輝かせた。
「出ました。FinOps姫」
みおが首をかしげた。
「姫?」
「コスト怪獣に立ち向かう、可視化レポートの姫です」
「また変な役職を作っている」
悠真が言った。
みおは少し考えてから、にこっと笑った。
「では、怪獣退治というより、怪獣の正体を見えるようにする係ですね」
「強い」
陽翔が感動したように言った。
みおはテーブルに資料を置いた。
「まず、費用をいくつかの切り口で見てみましょう。サービス別、リソースグループ別、部署別、プロジェクト別、環境別です」
「環境別?」
大村が聞く。
「本番環境、検証環境、開発環境です。開発用のものが動いたままになっていると、思ったより費用が増えることがあります」
杉原の目が泳いだ。
「開発環境……」
奏汰がヘッドホンを外した。
「何か心当たりがありますね」
杉原は小さく手を挙げた。
「検証用の仮想マシンが、たぶん何台か……」
「たぶん」
悠真が言った。
「クラウド費用で一番怖い単位の一つです」
陽翔がすぐにメモを取る。
「“たぶん”はコスト怪獣の卵」
「それは少し分かりやすいです」
さくらが言った。
みおは可視化レポートを開いた。
棒グラフ。 円グラフ。 前月比較。 急増したサービス一覧。 所有者不明のリソース一覧。 タグ未設定のリソース一覧。
大村部長は、それを見て目を丸くした。
「おお……色がつくと、急に現実になりますね」
「請求書だけだと、怪獣が大きいことしか分かりません」
みおが言った。
「でも、部位ごとに見ると、どこが大きくなったのか分かります」
陽翔が身を乗り出す。
「つまり、怪獣のしっぽがログ保存、右腕が仮想マシン、左足がストレージ、角がデータ転送ですね」
「怪獣で説明しなくてもいいです」
悠真が言う。
大村は少し笑った。
「いえ、今のは分かりました。私の夢にも出てきそうですが」
最初に見つかったのは、検証環境の仮想マシンだった。
杉原が画面を見て、額に手を当てる。
「これ、性能テスト用に一時的に作ったものです。テストが終わったら止める予定だったんですが……」
「止めたんですか?」
蓮斗が聞いた。
「停止はしました」
奏汰がすぐに言った。
「割り当て解除までしましたか?」
杉原は沈黙した。
陽翔が小声で言う。
「クラウド界の“電気は消したけど家賃は払っている”状態ですね」
「たとえとしては近い」
奏汰がうなずいた。
大村が顔を引きつらせる。
「電気は消したけど家賃は払っている……それは経理として非常につらいです」
みおはレポートに赤い丸をつけた。
「検証環境は、利用時間や終了予定日を決めましょう。作成時に責任者と削除予定日を登録して、定期的に確認する仕組みが必要です」
「なるほど」
大村はメモを取る。
「一時利用には、終わりの日を決める」
「はい。終わりのない検証環境は、コスト怪獣の寝床になります」
陽翔が言った。
「それは正式資料には書きません」
悠真が即答した。
次に問題になったのは、タグだった。
みおのレポートには、「タグ未設定リソース」として大量の項目が並んでいた。
大村は眉をひそめた。
「タグというのは?」
陽翔が待ってましたとばかりに立ち上がった。
「ここは僕の出番ですね」
「なぜ?」
悠真が聞く。
「タグ付けルール担当として」
「今決まった担当ですね」
「はい。自主就任です」
陽翔はホワイトボードに大きく書いた。
タグ付けルール案 ・部署 ・プロジェクト名 ・環境 ・責任者 ・費用負担先 ・稟議番号 ・終了予定日
「これを各リソースにつけておけば、誰の、何のための、どの予算のクラウド費用なのか追いやすくなります」
杉原がうなずいた。
「技術側でも助かります。今、リソース名だけだと、誰が作ったか分からないものがあります」
「名前が“test2”とかですか?」
陽翔が聞く。
杉原は目をそらした。
「test2、あります」
奏汰が低い声で言った。
「test2は、いつか誰かを泣かせます」
さくらがホワイトボードに小さく書いた。
test2禁止。
悠真が見た。
「正式ルールでは、命名規則を定めましょう」
「test2禁止も、ある意味命名規則です」
陽翔が言う。
「かなり低い次元の命名規則です」
大村は、タグ付けルール案をじっと見ていた。
「稟議番号までタグに入れるんですか」
「はい」
陽翔が言った。
「経理の方が見たとき、どの承認に基づく費用か分かるようにするためです」
大村の目に、少し光が戻った。
「それは助かります。今は、請求書の数字と稟議書がつながらないんです。役員から“この費用は承認済みなのか”と聞かれても、探すのに時間がかかる」
悠真が契約書と社内規程を開いた。
「そこが重要です。クラウド費用は技術部門だけの問題ではありません。契約、稟議、予算管理とつながっている必要があります」
香澄がうなずいた。
「使う前の承認、使っている間の確認、使った後の説明。この三つを整えると、社内で納得しやすくなります」
みおがレポートの最後に一枚追加した。
説明できるクラウド費用管理 一、誰が使っているか 二、何のために使っているか 三、どの予算で使っているか 四、いつまで使うか 五、増えた理由を説明できるか
大村はそのページを見て、静かに言った。
「これです。私が欲しかったのは、ただ安くする方法ではなく、説明できる状態です」
応接室が少し静かになった。
陽翔が、珍しく軽口を控えた。
大村は続けた。
「もちろん、無駄な費用は減らしたいです。でも、必要な費用なら払うべきです。医療機器の品質管理やデータ分析に必要なら、クラウドを使う意味もあります。ただ、説明できない費用は、社内の不信感になります」
悠真が頷いた。
「説明できない費用は、疑いを生みます。説明できる費用は、投資になります」
陽翔が我慢できずにメモを取った。
「本日の名言、怪獣退治の核心です」
「今回は認めます」
香澄が笑った。
次に、契約と予算の整合性を確認した。
悠真は、駿河メディカルテックのクラウド利用に関する契約書、社内稟議書、予算管理表を並べた。
「まず、クラウド利用契約では、利用上限や通知の条件が明確ではありません。利用料が増えたとき、誰がどのタイミングで確認するのかを決めたほうがいいです」
大村がうなずく。
「経理には月末に請求が来るまで分かりませんでした」
「それでは遅いですね」
みおが言った。
「予算アラートを設定して、一定額を超えたら情報システム部門と経理部門に通知する仕組みにしましょう」
杉原がメモを取る。
「部署ごと、プロジェクトごとの予算も設定したほうがいいですか?」
「はい。ただし、あまり細かくしすぎると運用が続きません」
香澄が言った。
「最初は、主要なプロジェクトと大きな費用項目から始めるのがよいと思います」
悠真は稟議書を指した。
「稟議書には、クラウドを使う目的、想定月額、上限、期間、責任者、費用負担部署を入れるとよいです。追加費用が発生しそうな場合の再承認ルールも必要です」
「再承認……」
杉原が少し緊張する。
「つまり、途中で増えたら怒られるということですか?」
みおが首を振った。
「怒るためではなく、相談するためです」
大村が顔を上げた。
「相談するため?」
「はい。使う価値があるなら、予算を増やす判断もできます。でも、誰にも言わずに増えると、経理も現場も困ります」
みおはやわらかく言った。
「コスト管理は、止めるためだけではなく、ちゃんと使い続けるための会話だと思います」
陽翔が胸に手を当てた。
「FinOps姫、怪獣を説得する」
「怪獣は説得できるんですか?」
さくらが聞く。
「まず可視化して、タグを付けて、予算を渡して、会話の場に座らせます」
「だいぶ高度ですね」
奏汰が真顔で言った。
「怪獣より、人間の会議のほうが難しいことがあります」
全員が妙に納得した。
昼休み前、大村が一枚のグラフを見つめていた。
「このストレージ費用、じわじわ増えていますね」
蓮斗が確認する。
「バックアップとログの保存が長くなっています。必要な保存期間かどうか確認しましょう」
悠真が言った。
「保存期間は、契約や社内規程、法令対応、業務上の必要性とも関係します。安いから短くする、高いから消す、ではなく、必要性を確認して決めるべきです」
大村が深くうなずく。
「なるほど。コスト削減だけで判断してはいけないんですね」
「はい」
香澄が言った。
「削ってはいけない費用もあります。守るための費用、記録を残すための費用、復旧するための費用です」
陽翔が言う。
「コスト怪獣にも、実は番犬部分があるんですね」
「その表現、意外と悪くない」
奏汰が言った。
悠真も少し考えてから言った。
「費用をすべて敵と見るのは誤りです」
大村は笑った。
「私の夢の怪獣にも、少し話を聞いてみます」
午後、山崎事務所の応接室は、FinOps作戦会議のようになった。
みおは可視化レポートを整えた。 陽翔はタグ付けルール案を作った。 悠真は契約、稟議、予算管理との整合性を確認した。 蓮斗と奏汰は、技術的な費用増加の原因を洗い出した。 さくらはチェックリストを作り、しょうこが要点を三行にまとめた。
しょうこの三行は、こうだった。
一、クラウド費用は、見える形にする。 二、費用には、責任者、目的、予算、期限を結びつける。 三、削るだけでなく、説明できる状態にする。
大村はその紙を見て、深く息を吐いた。
「これなら、役員会で話せそうです」
杉原もほっとした顔になった。
「情シス側でも、経理から怒られるだけではなく、相談できる形になりそうです」
陽翔が言った。
「怒られる前にタグを付ける。これが平和への道です」
「かなり限定的な平和ですね」
さくらが笑う。
みおは、大村にレポートのダッシュボード案を見せた。
「月次で、部署別・プロジェクト別の費用、前月比、予算超過、未タグリソース、終了予定日超過のリソースを確認します。数字だけでなく、増減理由のコメント欄も入れましょう」
「コメント欄?」
大村が聞く。
「はい。たとえば、“新製品分析プロジェクトの検証環境を一時的に増強したため増加”“バックアップ保存期間変更により増加”“未使用リソース削除により減少”のように」
大村の顔が明るくなった。
「それが欲しかったんです。数字だけだと、上がった下がったで終わってしまう。でも理由があれば、判断できます」
悠真が言った。
「説明責任とは、言い訳を用意することではありません。判断に必要な情報を残すことです」
陽翔はまたメモを取った。
「今日、湯呑み候補が多すぎます」
「FinOps湯呑みは、あまり売れなさそうです」
みおが真面目に言った。
「売る予定はありません」
香澄が笑った。
夕方近く、作戦はまとまった。
まず、Azure費用の可視化レポートを月次で作成する。 部署、プロジェクト、環境、責任者、稟議番号、終了予定日をタグとして設定する。 タグ未設定のリソースは、翌月までに是正する。 検証環境や一時利用リソースには終了予定日を設定する。 予算アラートを設定し、一定額を超えた場合は情シスと経理に通知する。 新規利用や大幅増額は、稟議書に目的、想定月額、上限、期間、責任者を記載する。 費用削減だけでなく、必要な費用は理由を説明できるようにする。 月次会議では、数字とあわせて増減理由を確認する。
大村は、朝とは別人のような顔をしていた。
疲れは残っている。 だが、コスト怪獣から逃げ回る顔ではなかった。
「山崎先生、皆さん、本当にありがとうございます」
大村は頭を下げた。
「今日は、怪獣退治に来たつもりでした。でも、退治というより、怪獣の名前を知って、餌を管理して、暴れないようにする話でした」
陽翔がうなずく。
「コスト怪獣、飼育計画」
「正式資料にはしないでください」
悠真が言った。
杉原は、みおのレポートを見て言った。
「みおさん、社内でこの資料を説明してもいいですか?」
「もちろんです」
「その……FinOps姫という名前も?」
みおが少し笑った。
「それは説明しなくて大丈夫です」
陽翔が残念そうに肩を落とした。
「社内展開されないのか、FinOps姫」
香澄が言った。
「山崎事務所内だけにしましょう」
「では、事務所内称号として保存します」
「保存しなくていい」
大村は帰り際、ふと立ち止まった。
「今夜、またコスト怪獣が夢に出たら、どうしましょう」
みおは少し考えた。
「その怪獣に、タグを付けてみてください」
「タグ?」
「部署、目的、予算、責任者、終了予定日」
大村はぽかんとしたあと、声を出して笑った。
「夢の中でタグ付けですか」
「はい。説明できれば、少し怖くなくなるかもしれません」
悠真が静かに言った。
「怪獣であっても、説明可能なものは管理対象です」
陽翔が感動したように言った。
「悠真さん、ついに怪獣を管理対象に」
奏汰がぼそっと言った。
「ただし、夢の中の怪獣は課金停止できません」
全員が笑った。
大村と杉原が帰ったあと、事務所には夕方の光が差し込んでいた。
青葉通りの木々が、窓の外でさらさらと揺れている。
みおは可視化レポートの表紙を整えながら言った。
「クラウド費用って、数字だけ見ると冷たいですね」
「そうだね」
香澄が湯呑みを置いた。
「でも、その数字の向こうには、誰かの開発、分析、検証、挑戦があります」
悠真が続けた。
「だからこそ、説明できる必要があります。必要な費用を守るためにも、不要な費用を減らすためにも」
陽翔は、朝描いたコスト怪獣の絵を見直していた。
「怪獣って、最初は怖いだけでしたけど、今日の話を聞くと、正体が分からないから怖かったんですね」
みおがうなずいた。
「見えるようにして、名前を付けて、誰が見るか決める。それだけで、少し落ち着きます」
さくらが笑った。
「不安も、タグ付けできたらいいですね」
しょうこが即座に分類した。
「不安のタグ。原因、担当、期限、次の行動」
「しょうこさん、人生まで整理しそうですね」
陽翔が言った。
「必要なら」
「怖いくらい頼もしい」
その日の終業前、みおは正式なファイルを保存した。
「Azure費用可視化レポート_初版.xlsx」
陽翔は横からのぞいた。
「正式ですね。姫感がありません」
「姫感は不要です」
「では、思い出フォルダ用に」
悠真がすでに振り向いていた。
「作る前から止めます」
「まだ何もしてません」
「顔が作っている」
しかし、陽翔は三分後にやはり作った。
「FinOps姫とコスト怪獣_説明できるクラウド費用管理版.xlsx」
悠真は静かに画面を見た。
削除キーに指を置いた。
だが、みおが少しだけ照れながら言った。
「思い出フォルダなら、いいかもしれません」
陽翔は勝ち誇った顔をした。
「FinOps姫の許可が出ました」
「その呼び方は許可していません」
みおが笑った。
香澄はお茶を淹れながら、壁のホワイトボードに残った言葉を見た。
説明できるクラウド費用管理。
クラウド費用は、ただ削ればいいものではない。 必要な挑戦には、必要な費用がかかる。 守るためのログにも、復旧のためのバックアップにも、未来の製品を作る検証環境にも、意味のある費用がある。
けれど、意味があるなら、説明できなければならない。
誰が使うのか。 何のために使うのか。 どの予算で使うのか。 いつまで使うのか。 増えた理由は何か。
その問いに答えられるようにしておくことが、経理と情シスと現場の信頼をつなぐ。
青葉通りの山崎行政書士事務所では、今日も契約書と規程とクラウドの画面を行き来しながら、会社の小さな不安を少しずつほどいている。
翌朝、大村部長からメールが届いた。
「昨夜、コスト怪獣の夢を見ました。しかし、今回は怪獣の額に“検証環境・終了予定日超過”というタグが付いていました。少し安心しました」
陽翔がそれを読み上げ、事務所に笑いが広がった。
悠真は静かに言った。
「夢の中でも改善が進んでいますね」
奏汰がヘッドホン越しにぼそっと言った。
「タグ付けは、精神衛生にも効く」
香澄は笑いながら、お茶を配った。
青葉通りの契約書は、今日も笑う。 コスト怪獣が、少しだけおとなしくなった朝に。







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