第16話 在留資格と外国人エンジニアの昼休み
- 山崎行政書士事務所
- 5月13日
- 読了時間: 15分

静岡市葵区、青葉通りから少し入った山崎行政書士事務所では、その日の午前中、二種類の言葉が空中でぶつかっていた。
一つは、技術の言葉。
Azure。 Entra ID。 Virtual Network。 監査ログ。 バックアップ。 IaC。 ゼロトラスト。
もう一つは、入管手続きの言葉。
在留資格。 職務内容。 雇用契約。 勤務実態。 所属機関。 申請理由書。 立証資料。
その二つが同時に飛び交うと、山崎行政書士事務所の応接室は、少しだけ国際空港の保安検査場とクラウド管理画面を足して二で割ったような空気になった。
「つまり、Entra IDの権限設計と、在留資格の活動内容の整合性を見ればいいんですね」
陽翔が真顔で言った。
悠真は書類から目を上げた。
「近いようで、遠いです」
「遠いですか」
「かなり」
奏汰はヘッドホンを首にかけ、ノートパソコンを見ていた。
「でも、整合性は大事です。クラウドでも、入管手続きでも」
「奏汰くんが橋を架けました」
陽翔が感動したように言う。
「橋というほどではありません」
所長の山崎香澄は、お茶を淹れながら微笑んだ。
「今日のお客様は、外国人エンジニアを採用したい会社さんね。Azureに詳しい方で、クラウド運用体制を強化したい、と」
さくらが相談票を確認する。
「清水区の製造業向けシステム会社、株式会社ミナトDX。採用予定者は、ベトナム出身のエンジニア、グエン・ミンさん。現在は別会社で働いていて、転職予定」
ふみかがピンクのクリップボードを開いた。
「雇用契約、職務内容、勤務場所、情報管理、クラウド運用権限……確認することが多いですね」
かなえが契約書ファイルを持ち上げた。
「雇用契約書も見ます。業務委託ではなく雇用なのか、職務内容がどう書かれているか、実際の業務とずれていないか」
あやのが赤ペンを手にした。
「職務内容がふわっとしていると危険ですね」
陽翔がうなずく。
「“クラウドっぽいこと全部”みたいな?」
悠真が言った。
「それは職務内容ではなく、雲です」
その瞬間、入口の鈴が、からん、と鳴った。
「お世話になります。ミナトDXの杉浦です」
入ってきたのは、四十代半ばの男性だった。やや緊張した顔で、手には分厚い資料ファイル。後ろには、人事担当の小田、そして採用予定者のグエン・ミンが続いていた。
ミンは三十代前半くらいの穏やかな男性だった。紺色のジャケットに、きれいに磨かれた靴。少し緊張しているが、目はまっすぐだった。
「こんにちは。グエン・ミンです。よろしくお願いします」
ミンは丁寧に頭を下げた。
香澄が笑顔で迎えた。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。どうぞ、おかけください」
応接室に座ると、杉浦社長はすぐに話し始めた。
「当社では、製造業向けのクラウドシステムを提供しています。最近、Azure案件が増えてきまして。ミンさんはAzureの設計や運用に詳しいので、ぜひ採用したいんです」
小田が続けた。
「ただ、在留資格の手続きや雇用契約の作り方が心配で。技術者として採用する場合、職務内容をどう整理すればいいのか、勤務実態をどう説明すればいいのか……」
ミンも少し不安そうに言った。
「私は、Azureのネットワーク、バックアップ、監視、セキュリティ設定を担当できます。でも、日本の在留資格の手続きは難しいです」
陽翔が小声で言った。
「Azureも十分難しいですけどね」
「両方難しいです」
奏汰が即答した。
香澄は三人を見て、穏やかに言った。
「大丈夫です。今日は、技術の話と在留資格の話を一つずつ分けながら整理しましょう。大切なのは、ミンさんが実際にどんな仕事をするのか、それが契約や社内体制と合っているかを、きちんと言葉にすることです」
悠真がホワイトボードに書いた。
職務内容。 雇用契約。 勤務実態。 クラウド運用体制。 申請資料。
「まず、職務内容です」
悠真は静かに言った。
「“Azureに詳しい人”だけでは足りません。具体的に、どの業務を担当するのかを整理しましょう」
杉浦社長が資料をめくる。
「クラウド環境の設計、移行支援、監視設定、バックアップ設計、顧客向けの技術説明、障害時の一次対応……でしょうか」
ミンがうなずく。
「はい。あと、IaCで構成を管理します。Terraformを使うことがあります」
陽翔が手を挙げた。
「すみません。IaCは“家”ではないですよね?」
奏汰が目を閉じた。
「Infrastructure as Codeです」
「インフラをコードで管理する」
「はい」
「入管手続きで“住居”の話も出るので、一瞬混ざりました」
小田が笑った。
「私も今、少し混ざりました」
香澄も笑う。
「今日は混ざりやすい日ですね。混ざったら、その都度ほどきましょう」
蓮斗が構成図を見ながら言った。
「ミンさんが担当する業務は、Azureの設計・構築・運用支援が中心ですね。顧客の本番環境にアクセスする可能性もありますか?」
ミンは真剣な顔で答えた。
「あります。ただし、権限は必要な範囲だけにしたいです。管理者権限をずっと持つのは危ないです」
奏汰が少しだけ頷いた。
「良い感覚です」
陽翔が小声で言う。
「奏汰くんの“良い感覚”判定、かなり貴重です」
悠真はホワイトボードに追加した。
顧客環境へのアクセス。 権限範囲。 作業記録。 委託先・顧客との契約整合。
「在留資格の説明でも、雇用契約の職務内容でも、実際の勤務内容が重要です」
かなえが言った。
「たとえば、クラウドエンジニアとして採用すると言いながら、実際には単純作業やまったく違う業務ばかりになると、説明がずれてしまいます」
杉浦社長は背筋を伸ばした。
「それは避けたいです。当社としても、ミンさんには専門性を活かしてもらいたい」
ミンは少しほっとした顔になった。
「私も、設計や運用改善をしたいです。前の会社では、夜中の障害対応が多くて、少し疲れました」
その言葉に、事務所の何人かが静かに反応した。
夜中の障害対応。 鳴り続ける通知。 誰が責任を持つのか分からない運用。 それは、山崎事務所が何度も見てきた不安だった。
香澄はやわらかく言った。
「採用は、会社が人を選ぶだけではありません。働く人が安心して力を出せる環境を作ることでもありますね」
ミンは小さくうなずいた。
次に、雇用契約書を確認した。
あやのが赤ペンを構える。
「では、契約書チェック係として見ます」
陽翔が小声で言う。
「赤ペンが国際対応モードに入りました」
「契約書は国籍を問いません」
あやのはにっこり笑って、条文を読み始めた。
「業務内容の欄に、“IT関連業務全般”とあります」
応接室が一瞬静かになった。
悠真が言った。
「広すぎます」
奏汰も言った。
「雲より広いです」
陽翔がメモを取る。
「本日の名言、雲より広い職務内容」
あやのは赤ペンで線を引いた。
「ここは具体化しましょう。Azure環境の設計、構築、運用改善、監視設定、バックアップ設計、セキュリティ設定、顧客向け技術資料の作成、障害対応支援など」
かなえが続ける。
「勤務場所、勤務時間、休日、賃金、契約期間、試用期間、職務変更の可能性も確認します。契約書に書かれている内容と、申請資料や実際の働き方が合っていることが大切です」
小田はメモを取りながら言った。
「在留資格の手続きと雇用契約って、別々の話だと思っていました」
「別々ですが、つながっています」
香澄が言った。
「契約書は、働き方を言葉にするものです。在留資格の手続きでは、その働き方がどんな内容なのかを説明する必要があります」
ミンがゆっくり言った。
「つまり、私が何をする人なのか、会社と私が同じ言葉で説明できることが大事ですね」
みおが資料を抱えて入ってきて、にこっとした。
「名札と仕事内容が合っていることですね」
陽翔が目を輝かせた。
「前回の迷子札から続いていますね」
悠真が言った。
「今回は迷子にしないための職務札です」
「悠真さんが比喩に乗った!」
「少しだけです」
次は、勤務実態の話になった。
ふみかがピンクのクリップボードに項目を書き込む。
「実際にどこで働くのか、誰の指揮命令を受けるのか、顧客先へ常駐するのか、リモート勤務はあるのか、夜間障害対応はどの程度か。ここを整理したいです」
杉浦社長は少し考えた。
「基本は当社の静岡オフィス勤務です。ただ、顧客との打ち合わせやリモート対応はあります。夜間対応は輪番にしたいと思っています」
ミンが少し驚いた。
「輪番ですか?」
「はい。一人に集中させないようにしたいです」
杉浦社長は、少し照れたように言った。
「前職で大変だったと聞いて、そこは当社でも考えたいと思っていました」
ミンの表情がやわらかくなった。
「ありがとうございます」
奏汰が静かに言った。
「良い運用体制です。属人化を避けるのは、セキュリティにも労務にも大事です」
陽翔がすかさず言う。
「クラウドも人も、一人に背負わせない」
香澄が微笑んだ。
「今日の陽翔くん、いいことを言いますね」
「広告にしますか?」
「しません」
蓮斗は、クラウド運用体制の確認に入った。
「ミンさんが入社した後のAzure権限設計も必要です。入社初日から全顧客環境の管理者権限を渡すのは避けたほうがいいです」
ミンも頷く。
「はい。最初は、担当する環境だけ。作業記録を残して、権限申請の手順を作りたいです」
杉浦社長が少し驚いた。
「そこまで考えてくれているんですね」
「はい。自分を守るためにも、会社を守るためにも必要です」
応接室が少し静かになった。
悠真が言った。
「権限管理は、信用していないから行うものではありません。信用を続けるために行うものです」
小田がメモを取りながらうなずいた。
「外国人エンジニアだから特別に厳しくするのではなく、社員全員に同じように必要な運用として整えるんですね」
「その通りです」
香澄が言った。
「国籍に関係なく、安心して働けるルールにすることが大切です」
昼近くになると、相談はかなり濃くなっていた。
職務内容。 雇用契約。 勤務実態。 リモート勤務。 顧客環境へのアクセス。 夜間対応。 権限設計。 申請資料。 社内体制。
陽翔はホワイトボードを見て、深く息を吐いた。
「今日のホワイトボード、入管とAzureが同居していますね」
「同居にはルールが必要です」
奏汰が言った。
「それはクラウドの話ですか、生活の話ですか?」
「両方です」
小田が笑った。
そのとき、香澄が休憩スペースから箱を持ってきた。
「少し休憩しましょう。静岡茶のロールケーキを買っておきました」
箱を開けると、淡い緑色のロールケーキが現れた。 ふんわりした生地に、静岡茶の香り。 中には白いクリームが巻かれている。
陽翔が目を輝かせた。
「これは……在留資格相談史上、最も上品な昼休みです」
「前回はメロンパンでしたね」
さくらが笑う。
「山崎事務所、甘い相談が増えてますね」
ミンはロールケーキを見て、少し嬉しそうに言った。
「静岡茶、好きです。来日して初めて飲んだとき、少し苦いけど、落ち着く味だと思いました」
香澄が一切れを皿に乗せた。
「今日は、皆さんでいただきましょう」
昼休みのテーブルは、少し不思議な景色になった。
日本人の所員たち。 ベトナム出身のミン。 採用する会社の社長と人事担当。 机の上には、在留資格の資料とAzure構成図と、静岡茶のロールケーキ。
陽翔がフォークを持ちながら言った。
「このロールケーキ、国際的ですね」
「どういう意味ですか?」
さくらが聞く。
「静岡茶と洋菓子がチームを組んでいます。国籍を越えたお菓子です」
悠真が少し考えてから言った。
「表現は雑ですが、今日のテーマには合っています」
「悠真さんから合格判定!」
ミンはロールケーキを一口食べ、目を細めた。
「おいしいです。静岡の味ですね」
杉浦社長が笑った。
「ミンさんが入社したら、昼休みに静岡の店をいろいろ案内しますよ」
ミンは少し照れたように言った。
「ありがとうございます。でも、私もベトナムのコーヒーを持ってきます」
小田が嬉しそうに言った。
「いいですね。昼休みが国際交流になります」
みおがロールケーキを見ながら、ぽつりと言った。
「一緒に働くって、契約書だけじゃなくて、一緒に昼ごはんを食べられることでもあるんですね」
応接室が、ふっと温かくなった。
香澄はその言葉を聞いて、静かに微笑んだ。
午後は、申請資料と社内体制を具体的に整理した。
悠真がホワイトボードにまとめる。
ミンさんの職務内容を具体化する。 雇用契約書の業務内容を実態に合わせる。 会社の事業内容と採用理由を説明する。 ミンさんの経歴、技術経験、資格や実績を整理する。 勤務場所、勤務時間、給与、指揮命令系統を明確にする。 顧客環境へのアクセス権限と作業記録のルールを整える。 クラウド運用体制を属人化しない。 夜間障害対応は輪番とし、負担を分散する。
かなえが雇用契約書の修正案を作る。
「“IT関連業務全般”ではなく、“Azureを中心とするクラウド基盤の設計、構築、運用改善、監視・バックアップ設計、顧客向け技術支援”のようにしましょう」
あやのが赤ペンで確認する。
「職務変更の可能性がある場合も、専門性から大きく外れないように表現したいですね」
蓮斗が運用体制表を作る。
「ミンさんだけに本番環境の管理者権限を持たせるのではなく、チームで権限を分けます。作業申請、承認、ログ確認、緊急時の手順も必要です」
奏汰が言う。
「オンボーディングも大事です。入社時に、社内ルール、顧客ごとの運用手順、アクセス権限、秘密保持、インシデント報告を説明する」
ふみかがクリップボードに書いた。
「国籍を問わず、分かりやすい資料にしましょう。日本語だけでなく、必要なら英語の補足もあると安心です」
ミンが驚いたように顔を上げた。
「それは、とても助かります。日本語は読めますが、入社してすぐは専門用語が多いと少し不安です」
小田がうなずいた。
「社内資料も見直します。日本人社員にも分かりにくい資料がありますし」
陽翔が言った。
「分かりにくい資料は、国籍を問わず人を迷子にします」
悠真が言った。
「今回は良いことを言っています」
「今回は?」
「今回は」
杉浦社長は、少し真面目な顔で言った。
「正直、最初は“在留資格の手続きが通るか”ばかり気にしていました。でも今日話していて、手続きだけじゃないんだと分かりました。ミンさんが当社で安心して働けるように、仕事内容も、契約も、クラウド運用も整えないといけない」
ミンは杉浦社長を見た。
「私も、長く働きたいです。技術だけでなく、チームを作りたいです」
応接室が静かになった。
外では、青葉通りの木々が午後の光に揺れていた。
香澄はやわらかく言った。
「在留資格の手続きは、書類をそろえる作業に見えるかもしれません。でも、その書類の向こうには、一人の人がどんな仕事をして、どんなチームで働き、どんな未来を作るのかがあります」
みおが続けた。
「ロールケーキみたいですね」
全員がロールケーキを見る。
「静岡茶の生地とクリームが、別々だけど一緒に巻かれている。違うものが一緒になって、おいしい形になる」
陽翔が胸に手を当てた。
「結論の妖精、国際交流スイーツ編」
悠真は少しだけ口元をゆるめた。
「今日の比喩は、かなりよいです」
ミンは笑った。
「私も、チームの一部になりたいです。静岡茶ロールケーキのクリームみたいに」
「それは主役級ですね」
さくらが言った。
相談が終わるころには、最初の緊張はだいぶほどけていた。
杉浦社長は、整理された資料を見てうなずいた。
「これで進められそうです。手続きのためだけでなく、入社後の体制も整えます」
小田も言った。
「雇用契約書と職務説明書を修正します。あと、入社時の説明資料も見直します」
ミンは深く頭を下げた。
「ありがとうございます。難しい言葉が多かったですが、少し安心しました」
香澄は微笑んだ。
「分からない言葉が出たら、一つずつ確認すれば大丈夫です。技術用語も、手続きの言葉も、働くための道具ですから」
陽翔が言った。
「道具は、使い方が分かれば怖くないですね」
「そうですね」
香澄がうなずいた。
「そして、困ったらまた相談してください」
三人が帰ったあと、事務所には静岡茶の香りがほんのり残っていた。
陽翔は空になった皿を見て言った。
「静岡茶ロールケーキ、良い仕事をしましたね」
「お菓子を評価しないでください」
さくらが笑う。
奏汰はヘッドホンをつけ直しながら言った。
「昼休みの相性は、チーム運用の初期設定です」
陽翔がすかさずメモを取った。
「名言です」
悠真も少し考えてから言った。
「悪くない」
ふみかはピンクのクリップボードを閉じた。
「国籍が違うと、制度や言葉の壁が見えやすいです。でも、日本人同士でも、職務内容や勤務実態が曖昧だと不安になりますよね」
かなえがうなずく。
「契約書は、人を縛るためだけではなく、安心して働くための約束でもあります」
あやのが赤ペンを片づけた。
「未来の喧嘩を減らすだけじゃなくて、未来の不安も減らす仕事ですね」
みおが、残ったロールケーキの箱を見て言った。
「違う国から来た人と、同じテーブルで同じお菓子を食べる。それだけで、少しチームになりますね」
香澄は窓の外を見た。
青葉通りには、夕方の光が差している。 通りを歩く人たちは、それぞれ違う場所から来て、それぞれ違う場所へ帰っていく。 それでも同じ街の中で働き、暮らし、誰かと一緒に時間を重ねている。
在留資格。 雇用契約。 職務内容。 勤務実態。 クラウド運用体制。
堅い言葉に見える。 けれど、その向こうには、一人の人の昼休みがある。 新しい職場で緊張しながら食べるロールケーキがある。 自分の技術を活かしたいという思いがある。 会社として仲間を迎えたいという願いがある。
手続きは、その願いを現実にするための道筋なのだ。
その日の終業前、悠真は正式な資料を保存した。
「外国人エンジニア採用_職務内容整理_初版.docx」
陽翔が横からのぞいた。
「正式ですね。ロールケーキ感がありません」
「必要ありません」
「では、思い出フォルダ用に」
「作る前から止めます」
しかし、三分後。
共有フォルダに、新しいファイルができていた。
「在留資格と外国人エンジニアの昼休み_静岡茶ロールケーキ版.xlsx」
悠真は画面を見た。
削除キーに指を置いた。
その瞬間、みおが言った。
「ロールケーキ版、今日のことを忘れない感じがします」
ふみかも頷いた。
「国籍を越えたチーム作り、って分かりやすいです」
香澄が笑った。
「思い出フォルダなら、残しましょう」
悠真は静かにため息をついた。
「思い出フォルダなら」
陽翔は勝ち誇った顔をした。
翌朝、ミナトDXの小田からメールが届いた。
「昨日はありがとうございました。社内で、ミンさんの入社準備チームを作ることになりました。職務説明書、雇用契約、クラウド権限、入社時説明資料、すべて見直します。昼休みには、ベトナムコーヒーと静岡茶ロールケーキを用意する予定です」
陽翔が読み上げると、事務所に温かい笑いが広がった。
奏汰がヘッドホン越しに言った。
「良いオンボーディングです」
悠真も静かにうなずいた。
「職務内容と昼休みの両方が整っていますね」
香澄はお茶を淹れながら微笑んだ。
「新しいチームが、いい形で始まるといいですね」
青葉通りの契約書は、今日も笑う。 Azureの構成図と在留資格の書類、そして静岡茶のロールケーキが、同じテーブルの上で少しずつチームになっていくのを見守りながら。





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