第3章:トラブル解決の現場
- 山崎行政書士事務所
- 1月6日
- 読了時間: 4分

内容証明郵便の作成とトラブル対応
午後の陽射しが薄暗いオフィスを照らす中、一人の男性が慌ただしい様子でドアを開けた。その手には乱雑に詰められた書類が握られている。
「田中先生、助けてください! 取引先が約束の支払いを全然してくれなくて……。」
田中颯太は、慌てる男性を落ち着かせるため、深く頷きながら椅子を勧めた。
「まずはお話を伺います。取引内容やこれまでの経緯を教えてください。」
男性は息を整えながら、未払い金額や過去のやり取りを説明した。颯太はそれを丁寧にメモに取りながら、必要な書類を確認した。
「取引先に対して内容証明郵便を送り、支払いの意思を確認するところから始めましょう。文面は、感情的ではなく事実を簡潔に伝えることが重要です。」
颯太はすぐにパソコンに向かい、文案を作成し始めた。
内容証明郵便の文面(例):
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、令和X年X月X日に御社との間で締結した契約に基づき、貴社よりお支払いいただくべき金額XX円が未だ入金されておりません。つきましては、令和X年X月X日までにお支払いくださいますようお願い申し上げます。
本書面は記録として残すため、内容証明郵便にて送付させていただいております。何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
敬具
男性は書類を見つめながら、安心した表情を浮かべた。
「これなら安心です。ぜひお願いします。」
その後、内容証明郵便を受け取った取引先から支払いの連絡が入り、未払い金が無事に回収された。
男性は何度も頭を下げた。
「本当に助かりました。これで会社をなんとか続けられます。」
颯太は微笑みながら答えた。
「お役に立ててよかったです。また何かあればご相談ください。」
離婚問題への対応
雨が降りしきるある日、30代の女性がオフィスを訪れた。彼女は傘を閉じる手を震わせながら、濡れた髪をかき上げた。
「田中先生、どうしても離婚協議書を作りたいんです。」
その声には決意と悲しみが入り混じっていた。颯太は傘立てを指差し、落ち着いた声で促した。
「どうぞお掛けください。まずは詳しいお話をお聞かせください。」
彼女は、夫との不和や家庭内の問題、そして子どもの将来について語った。その言葉一つひとつに、彼女が背負ってきた重荷が感じられた。
「離婚協議書では、財産分与や親権、養育費について明確に取り決める必要があります。これがあると、後々のトラブルを防ぐことができます。」
颯太は、以下のような文面例を示した。
離婚協議書の例:
財産分与 双方は以下の通り、財産分与を行う。 - 自宅(住所:○○市○○町○○)は妻○○が所有する。 - 銀行口座(口座番号:○○○○)の預金は夫○○が全額受け取る。
親権 長女○○(生年月日:○○○○年○月○日)の親権者は妻○○とする。
養育費 夫○○は、毎月○○円を養育費として支払う。支払期限は毎月末日とする。
その他 本協議書に記載されていない事項については、双方協議の上、決定するものとする。
彼女は書類を見つめ、しばらく考え込んでから静かに頷いた。
「これなら、冷静に話し合えそうです。ありがとうございます。」
数週間後、彼女から感謝の連絡があった。
「協議書のおかげで話し合いがまとまりました。先生に相談して本当に良かったです。」
その声に、颯太は胸の奥に温かさを感じた。
行政機関との調整
週末の午前、地元でNPO法人を立ち上げたばかりの男性が颯太のオフィスを訪れた。彼は机に分厚い書類を広げ、困惑した表情を浮かべていた。
「補助金申請のための書類を提出したのですが、役所から追加の書類を求められていて……。どれが必要なのかも分からなくて。」
颯太は書類を一通り確認し、行政機関が求める情報を整理し始めた。
「事業計画書と予算書ですね。これらを補足し、さらに提出が必要な書類は次の通りです。」
補助金申請に必要な書類(例):
事業計画書 - 事業目的 - 実施スケジュール - 期待される成果
収支予算書 - 収益予測 - 経費内訳
法人登記事項証明書
定款の写し
活動報告書(過去の実績がある場合)
銀行口座情報
その場で見本を示しながら、計画書の作成を進めた。特に事業の目的や地域貢献の部分は重点的に記載するようアドバイスした。
「予算書の形式についても役所に確認しながら進めます。一緒にやっていきましょう。」
数週間後、書類は無事に受理され、補助金の交付が決定した。
代表は満面の笑みを浮かべながら、颯太の手をしっかりと握った。
「これで活動を本格的に始められます。本当にありがとうございました。」
颯太はその言葉に力強く答えた。
「地域のための素晴らしい活動を、ぜひ続けていってください。」
行政書士としての仕事は、法律と人々の生活を繋ぐ架け橋だ。その一つひとつの案件に向き合いながら、颯太は自分の存在意義を改めて噛み締めていた





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