締め切り当日、編集者が作家と連絡を取ろうとするも、なぜか作家が“温泉旅行”に行ってしまった――。
- 山崎行政書士事務所
- 2025年2月18日
- 読了時間: 5分

1. 温泉旅館のロビーにて
(旅館のロビーでくつろぐ作家。そこに編集者から鬼のような着信が…)
作(男・40代/静岡弁):「おお? 電話めっちゃ鳴ってるら。 ったく、忙しいときに……。(電話を取る) もしもし? 〇〇だけんども、なにやぁ?」
編(女・20代):「先生、なにやってるんですか!? 今日が締め切りなのに、温泉なんて行ってる場合じゃないですよ!」
作:「いや~、締め切り前だもんでさ、気合い入れようと思って、リフレッシュに来とるら? 温泉に入ればアイデアが湧いてくるんじゃんね?」
編:「先生、普通は原稿を終わらせてからリフレッシュするもんですよ! で、原稿は進んでるんですか?」
作:「まぁぼちぼち……。一応、露天風呂で半分くらい書いたつもりだに。けど、途中でのぼせそうになっちゃって……」
編:「温泉で原稿書くなんて聞いたことありませんよ! だいたい、どうやって書いてるんですか? パソコン持ち込んでるんですか?」
作:「パソコンはあれだら? 湯気で壊れそうだから、スマホでポチポチ打っとる。 でも、ガラケーに慣れとるもんで、スマホ打ちづらくてのう……」
編:「スマホデビューしたんですか? この前までガラケーだったのに!」
作:「うん、デビューしたばっかりだけど、やっぱボタンがないのは不便だら~。思わず画面連打したら、画面がびっくりしとるわ。」
編:「画面も先生にびっくりですよ……(ため息)。 で、原稿はあとどのくらい書けてるんです? 締め切りまで残り5時間ですよ!」
作:「おぉ、5時間あれば十分だに。まだプロローグしか書いとらんけど、ここからドバーッと書くさ。」
編:「“プロローグ”だけって、それほぼゼロに等しいですよ! しかも温泉なら余計にのんびりしちゃいそうなんですけど!」
作:「この宿さ、料理もめっちゃうまいんだら~。桜えびのかき揚げとか、金目鯛の煮付けとか、もう止まらんもんで、つい食い過ぎちゃって……。そんで食ったら眠くなっちゃって……」
編:「先生、それ完全に原稿進まないパターンじゃないですか! 寝落ちしたら終わりですよ!」
作:「大丈夫だら。風呂と飯のループで何か閃くっしょ。アイデアはバッチリ湯上がり気分でわいてくるだら?」
編:「出てくるのは、“あくび”だけじゃないですか? ほんとに頼みますよ……」
2. 旅館の部屋に移動して…
(作家が部屋に戻り、スマホ片手に再び編集者に電話)
作:「やいしょ。ちっと部屋で集中して書くわ。 ん~……あれ? Wi-Fiのパスワードがわからんもんで、ネットに繋がんないら。」
編:「え、それじゃ調べものもできないし、メールで送ってもらうこともできないじゃないですか!?」
作:「んだよねぇ。フロントに聞いてみりゃええんだけど……、フロントのオバちゃん、さっきから売店で湯呑み洗って忙しそうだったがし……」
編:「先生、そんなこと言ってる暇ありません! さっさと聞いて、原稿送れるように整えてください!」
作:「おんなしょ。じゃあ、フロント行ってくるで~。……あれ? そこ行く前に、また風呂入りたくなってきた……」
編:「やめてー!! 行かないで!! 原稿を優先してください!!」
作:「はっはっは、まぁまぁ、落ち着きんしゃい。風呂で気分サッパリさせて、一気に執筆するほうが効率良かっぺ?」
編:「先生、静岡弁どころか、方言いろいろ混ざってませんか!? もういいです。とにかく書いてください。今から3時間だけですよ、残り……!」
作:「えぇ!? もうそんなに経ったら? まあ、焦ってもしゃーないんで、風呂入ってビール飲んで……」
編:「そこ完全にダメパターンーーーっ!!!」
3. 旅館の中庭にて
(結局フロントに行かず、風呂に行かず、中庭で一服しながら電話する作家)
編:「先生、あと2時間です。いい加減、原稿書くの間に合わなくなりますよ!?」
作:「いや~、やっと落ち着いたんだけんど、ここ、鯉が泳いでて見とれちゃうら~。そういう風情ある風景を作品に活かせるかもしれんがし。」
編:「鯉、関係ないですよね!? そもそも今回のテーマは“SNS時代の若者の恋愛”でしょう!?」
作:「そうだっけ? でも『鯉』と『恋』って同じ読みだもんで、ちょっとロマンチックで……」
編:「……うまいこと言ってるつもりですか!? 先生、そのままだと“鯉愛小説”になっちゃいますよ!」
作:「それはそれで新しいジャンルかもしれんけど……。だもんで、早よ書きゃあいいっけな。もう今から部屋戻って集中するで。」
編:「ホントに書くんですね? 信じますよ? もう時間ないんで、急いでください!」
4. 旅館チェックアウト間際
(チェックアウトの時間が来てしまい、フロントに立つ作家。編集者から再び着信)
編:「先生! 今、送ってもらった原稿、見ましたけど……タイトルしか書いてないんですけど!? “鯉に恋して(仮)”って!」
作:「バレたか……。 ちょっと寝ちゃってさ、起きたらチェックアウトの時間きちゃっただよ。」
編:「嘘でしょ!? 先生ぇぇぇぇぇ!!(絶叫)」
作:「まぁまぁ、だいじょぶ。 今から帰って、すぐ書くら。車で3時間くらいかかるけど、家に着くころにはアイデアわいてくるっしょ?」
編:「3時間じゃ終わらないですよ! もうお手上げです……(泣)」
作:「じゃあ帰りにさ、静岡みやげ買うてくるで。お茶っ葉とかさわやかのハンバーグ券とか。それで編集さんの機嫌をなおしてくりょう?」
編:「ハンバーグ券で原稿の遅延はチャラにならないですよ!!」
作:「ほいじゃあ、頑張って書くから、あと12時間だけ、もう一回延長してくりょう?」
編:「締め切りは今日なんですぅぅぅ!!(絶望)」




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