駿府城とヤマトタケルの影
- 山崎行政書士事務所
- 1月22日
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静岡市の中心部には、徳川家康が築いた駿府城が今も威風を残しています。かつて城郭の石垣やお堀に囲まれ、一大政治の拠点として栄えたこの場所。だが、その地下には、人知れずヤマトタケルが遺した**「草薙剣のもう一つの力」**が眠っている――そんな伝説があると言われています。
高校生と不思議な地下の扉
晃(あきら)という名の高校生がいました。歴史部に所属している彼は、地元の資料を調べているうちに「駿府城の地下には、ヤマトタケルが置き残した秘密の剣の力が封じられている」という古文書に出会ったのです。最初は「ただの伝説だろう」と思っていましたが、興味をそそられて放課後の時間を使い、城址公園のあちこちを探検するようになりました。
ある日、城郭公園の端にある古い倉庫のような場所で、晃は石畳の床が一部盛り上がっていることに気づきます。試しにそこを押してみると、かすかに軋む音を立て、ひとつの石板がゆっくりと開きました。――その先には小さな地下通路が続いています。
「こんなところに隠し通路が……?」
胸を高鳴らせながら、晃は懐中電灯を片手に通路へ足を踏み入れました。
地下に眠るもうひとつの力
狭い通路を進むと、石造りの壁や古い木箱が置かれた小部屋のような空間に行き着きます。薄暗い中、奥の台座には錆びついた金属片が安置されていました。何か剣の欠片のようにも見えますが、刀身の形は失われ、ただ歪んだ破片が光を反射しています。
晃「これは……草薙剣の一部……? あり得るのか……?」
手を伸ばして触れた瞬間、晃の頭に、まるで別世界の光景が一瞬映りました。大昔の駿河の地を、日本武尊(ヤマトタケル)が旅している映像――そこには霧立つ原野を進む白い衣の武尊と、まばゆい草薙剣の姿。
幻聴のような声「われはもう一つの力……。剣が持つ秘めたる影……。」
その声はまるで「剣の影」が語りかけているかのようでした。
剣を狙う影の存在
晃が地上に戻り、翌日からどうにも落ち着かない日々を送っていると、駿府城公園の一角で奇妙な出来事が起こり始めます。夜な夜な不思議な影が現れ、石垣の周辺を徘徊し、人影を追い回すという噂が立ち始めたのです。
ある夜、晃は思い切って公園に足を運び、その“影”と対峙する場面に遭遇しました。その影は、人の姿を模しているが、瞳には赤い光が宿り、まるで剣を捜し求めているかのように見えます。
不思議な影の声「草薙の残片は、どこだ……。われを封じた呪いを解くには、剣のもう一つの力が要る……。」
晃は咄嗟に逃げ出そうとしましたが、影はすぐに気づき、追いかけてきました。
武尊の遺志と真の力
苦境に陥った晃のもとに、再び幻のような光景が浮かびます。そこにはヤマトタケルの霊が佇み、草薙剣を手に語りかける姿が見えました。
日本武尊(霊)「草薙剣は、草を薙ぐだけでなく、闇を断ち、人々を自然と調和させるための剣……。その残片を持つ者、あなたがその力を起動させるのなら、この地に眠る影を封じねばならぬ……。」
晃は初めて知る“剣のもう一つの力”。闇に染まった“影”は、この剣の影の部分が生まれた存在なのかもしれない。もしその力を放置すれば、街や人々に害を及ぼすだろう。
戦いと覚悟
次の夜、晃は駿府城公園の地下通路へ足を運び、剣の破片を手に取りました。すると、またしても“影”が姿を現し、破片を奪おうと襲いかかります。
影の存在「その破片を私によこせ。さすれば、われは完全となり、忌まわしき呪いを解けるのだ……。」
だが晃は怯まず、胸にヤマトタケルの霊の声を抱いて、破片を高く掲げました。破片から淡い金色の光が放たれ、影を突き放すように広がっていきます。影は苦悶の声をあげながらも、必死に抗います。
晃「あなたが言う“呪い”って何?もしそれが草薙剣の暗い一面だとしても、剣は人を救うためにあるはずだ……!」
光と闇がせめぎ合うなか、晃の意志が強くなるほど、剣の破片は輝きを増し、影は次第に薄れていきます。ついに影は悲鳴とともに消滅し、遠く夜空へ散っていきました。
街の平和を守る決意
戦いが終わり、駿府城の石垣には静かな月光が降り注ぎます。ヤマトタケルの霊が再び淡く現れ、残片を握る晃に言いました。
日本武尊(霊)「ありがとう。剣の暗い影を封じてくれた。あなたはこの地の自然と人の調和を願う心で、その力を正しく使った。どうか、これからも街の平和を守ることを忘れないで。」
剣の破片は再び光を失い、ただの欠片のように静まりました。晃は深呼吸をし、「僕がこの地の“守り人”として、ヤマトタケルの思いを継ごう」と心に誓います。
新たなる時代の守護者
その後、晃は学生生活を送りながらも、駿府城や静岡市の自然、街の文化を大切にする活動を継続。ごみ拾いのボランティアや歴史散策イベントなど、地味だけれど確かな行動を積み重ねていきました。
人々の心に少しずつ「この街を守りたい」という意識が広まり、歴史と自然を大切にする風土が芽生えはじめます。晃は時々、剣の破片に触れて「あの力はもう眠ったままか」と感じるものの、それでいいのだと思っています――街が平和であれば、剣は安らかに休んでいられるのです。
結び――駿府城に吹く静かな風
こうしてヤマトタケルの残したもう一つの力は、青年の行動を通じて再び静岡市を支える力となりました。時に闇を生むこともある剣の影は、人々が欲や争いに溺れない限り、二度と目を覚ますことはないでしょう。
駿府城の城跡を歩くとき、ひょっとしたら夜風の中にほんのり金色の気配を感じるかもしれません。それは、ヤマトタケルと晃が織りなす新たな守護の物語が、まだ静かに続いている証拠なのです。もし月明かりの下で城壁の影に何かを見つけたとき、それこそがこの街を見守るヤマトタケルの“影”ではないでしょうか。





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