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2025-26年秋冬メンズ・コレクションにおける山本耀司、リック・オウエンス、三宅一生(ブランドとしての継承含む)のアプローチを考察

1. 山本耀司とリック・オウエンス:日常をかみしめる技術と哲学

1-1. 技術的アプローチ

(1)山本耀司:布と身体のあいだにある“空間”

解放されたパターンメイキング

山本耀司のコレクションでは、伝統的テーラリングに対する“解体と再構築”が常に根底にあります。2025-26年秋冬でも、肩や脇下など要所でタックやドレープを巧妙に施し、生地が身体を包むというより“身体と同時に空間を纏う”ようなシルエットを作り出しています。

素材のマット感と落ち感

コットンやウール、さらには新素材の合繊などを組み合わせ、表面の微妙な凹凸(シボ)やドレープの落ち感に意識が向けられています。張りすぎず、かつヨレ過ぎない素材選びにより、“黒”や“ダークカラー”でも奥行きと陰影を生むのが特徴的です。

(2)リック・オウエンス:フォルムと構造がつくる異形の“日常”

アグレッシブなパターンと分割

リック・オウエンスはジオメトリックなカッティングや身体のパーツごとに強調を加えるパターンが特徴です。2025-26年秋冬では、特にボディ中央の縦ラインや袖の外側に施された縫合が、人体を“装飾対象”として際立たせる役割を果たしています。

テクスチャーのコントラスト

レザー、ボンディング加工を施したネオプレン風ファブリック、シアーなオーガンジーなど、異素材を組み合わせながら、重層的な質感の差異を強調。モノトーン基調ながら、光の反射や密度の変化で大胆な視覚効果を演出しています。

1-2. 哲学的アプローチ

(1)日常性の再定義

山本耀司がよく口にする「日常から何かを引き出す」という姿勢は、服を着る行為がありふれた営みである一方、そこには必ず身体の動きや感情が伴うことへの着目でもあります。リック・オウエンスもまた、普段着の延長上で“異形”を受け入れる感覚を重視し、日常のシルエットを変容させることで着る人の意識に揺さぶりをかけます。

両者に共通するのは、**「日常とは常に変容し続ける舞台であり、そこに潜む美と違和感をどう引き出すか」**という考え方です。ファッションは単に「奇抜」であることを競うのではなく、人間の行動や精神の動きまで意図的に作り込む“装置”であるという哲学が底に流れています。


(2)身体と空間のあわい

両者の服づくりには、“身体(着る人)”と“服が生み出す空間”の関係を見つめる視点があります。山本耀司は身体と服の間に生まれる“隙間”や“空隙”を、リック・オウエンスは身体自体を再度構築する“殻”として服を捉え、日常的行為そのものを新しい価値観のもとに再編するのです。

この発想は、東洋と西洋の対比だけで捉えきれるものではなく、**「日常が連続する中でいかに新鮮な視線を手に入れるか」**という普遍的な問いを服で表現していると見ることができます。


2. 三宅一生の思いはパリの空を舞う:技術と哲学

2-1. 技術的アプローチ

(1)イッセイ ミヤケの遺伝子:形状記憶と動き

プリーツやオリガミ的技術の発展

三宅一生が生涯探求したプリーツや折り紙的技術は、現在のチームでもアップデートされ続けています。2025-26年秋冬では、軽量な合成繊維と自然素材を混紡した新たなテキスタイルが登場し、熱や湿度によって微妙に形状を変化させる“可変プリーツ”が試みられています。

動きと機能性

ステージ上やショー会場でのモデルの動きによって、服のフォルムが変化する仕掛けが一部演出されているようです。これは平面の布から立体を生み出すイッセイ ミヤケの思想を更に発展させ、“着る人の動き”をデザインプロセスの一部に取り込んでいると言えます。

(2)エアリーな構築

羽のように軽やかな立体構造

一見すると柔らかな布地が、実は立体的な空間を保持するように構築されています。これによって、「パリの空を舞う」という詩的表現が象徴するような“浮遊感”が実装されており、動くたびにふわりと空気を含むシルエットが印象的です。

伝統のモダナイズ

ジャポニズムの延長で語られがちな折りの技術を、モダンな都市生活に組み込むデザインが目立ちます。たとえば、襟元や袖口に熱可塑性を持たせるなど、“調整可能な実用性”を持つパーツも登場。これにより着用者それぞれが自分好みにフォルムを変化させられる自由度が生まれています。

2-2. 哲学的アプローチ

(1)「空」に託す祈りと希望

三宅一生が抱いていた“服は軽く、自由であるべき”という思想は、パリコレクションの場で新たな形に昇華されています。布が空気を孕むように動くさまは、**「日常に潜む軽やかさや、希望をすくい上げる」**イメージとも重なります。

また、プリーツや折りを“舞う”という表現は、過去のコレクションに見られたダンスとの融合やパフォーマンス芸術への敬意にも通じます。身体と布と空間の三位一体が、都市や時間を超えて“浮遊する精神”を喚起し、まさにパリの空へと飛翔していくようなビジョンを与えています。


(2)服が媒介する“記憶”と“未来”

三宅一生ブランドのクリエーションは、常に過去の伝統(折り紙・和の構造)とテクノロジーによる未来(最先端素材)との融合を試みてきました。それは、**「人間の身体や文化に刻まれてきた記憶を、どのように未来へ繋ぐか」という問いにも近い。

今回のコレクションでも、その問いは“一枚の布がいかに立体化して人の動きに寄り添い、かつ軽やかに飛び立っていくか”という実験に現れているといえます。ここに見出されるのは、「服を通して人々が新しい身体感覚を獲得し、その先の時間や空間へ思いを馳せる」**という思想的営みなのです。


3. 終わりに:ファッションが映す“日常と飛翔”の二面性

メンズ・コレクション2025-26年秋冬の初動となるイタリアからパリへ続く流れの中で、山本耀司とリック・オウエンスが**“日常をかみしめる”という言葉で示されたのは、服を着る行為の根源に立ち返り、日常そのものを新たな角度から照らし出す意図があるからです。

一方で三宅一生(ブランド継承者たち)は、“思いはパリの空を舞う”**という軽やかな表現で、これまで培ってきた技術(プリーツや折りの手法)を“未来への飛翔”としてビジュアル化しました。折りの立体構造や布の動き方に宿る詩情は、都市の上空を自由に舞うかのような幻想を具現化し、観る者に新鮮な驚きを与えています。


技術的観点

山本耀司は身体との隙間を意識したパターンメイキング。

リック・オウエンスはボディラインと構造を強調するジオメトリックなパターン。

三宅一生は可変プリーツや折り構造によるエアリーな立体感。

哲学的観点

「日常とは?」を再考させるアプローチ。

身体と空間のあわいを見つめ、服が生み出す“空隙”や“境界”に宿る意味。

静かなる祈りや希望を“軽やかに舞う”形で表現し、新しい身体感覚・未来への想像力を拓く。

このように、ファッションは同時に技術と哲学の結晶であり、一見きらびやかなコレクションの裏には、布や縫製、素材開発といった地道な試行錯誤が存在します。そして、その技術が生み出す造形は、人々の日常や身体観、時間の感じ方さえも更新する力を秘めているのです。

山本耀司、リック・オウエンス、そして三宅一生(の精神を受け継ぐチーム)は、それぞれのやり方で「日常」と「飛翔」を織り交ぜ、私たちに新たな想像力と日常への再発見を促してくれている、と言えるでしょう。

 
 
 

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