三つの盾

第一章：国際連携を巡る不穏な始動

在韓米軍司令部での日米韓調整

ソウル近郊にある在韓米軍司令部に、日本の高級将官・米軍司令官・韓国軍幹部が集う緊急会合が開催される。日本代表は**海上自衛隊旗艦の艦長・高山 修司（たかやま しゅうじ）**一佐。 彼は国防省の特別指令で来ており、海上での日米韓共同作戦を主導する立場だ。韓国代表は海軍少将・パク。 そして米国側は第七艦隊の将官・ジェンキンス中将。円卓に作戦地図が並べられ、中国の空母打撃群が台湾方面へ進撃中、北朝鮮が韓国領内への攻撃を準備、さらにはロシアが北海道北部への軍事行動の兆しを見せている――という混迷の報告が相次ぐ。意見対立：

• 韓国側「まず北の攻撃を防がねばソウルが陥落する。日本が東シナ海への力を振り向けてほしい」

• 米国「台湾有事を最優先とし、中国空母を叩くべきだ。北朝鮮は在韓米軍で対処する」

• 日本「我が国にはロシアへの備えもあり、中国艦隊が南西諸島を脅かす懸念がある…」

三者とも利害が絡まり、協力より内紛が顕在化しかねない。 しかし共通の理解は「三方向とも放置すれば全滅」という危機感だ。

第二章：高山艦長の決意

海上自衛隊と多正面防衛

高山修司は、海上自衛隊の中堅指揮官だが、台湾侵攻の最中にロシアが北海道に進軍を始めるかもしれないという報に苛立ちを隠せない。彼の艦はイージス護衛艦「ひのかぜ」。この艦を中心に日韓米の艦隊が東シナ海に展開し、中国空母打撃群を抑えつつ、北朝鮮とロシアの動きにも応じられるよう動かすのが任務だ。しかし艦上で参謀たちが「三正面同時なんて、分散しかなく危険すぎる…」と口を揃える。 高山は答える。「それでもやらねば…わが国を守る“盾”が複数必要だ。日米韓、三つの盾を重ね合わせるしかないんだ。」

第三章：最初の衝突 — 中国空母群との遭遇

海域：南西諸島〜台湾近海

連合艦隊（日米韓）が共同で海上哨戒を開始。

• 日本：イージス艦「ひのかぜ」ほか2隻の汎用護衛艦。

• 米国：第七艦隊から航空支援を受ける空母1隻・駆逐艦数隻。

• 韓国：駆逐艦「テジョン」など2隻が参加。

(戦闘シーン)

• 状況: 中国空母「遼陽」(仮称)が駆逐艦とフリゲート数隻を伴い、台湾東側へ抜けて制海権を狙う。 日米韓連合はこれを迎撃すべく陣形を組む。

• 先制攻撃: 中国空母の艦載機J-15多数が発艦し、ミサイル飽和攻撃を試みる。 米空母の艦載機との空中戦が展開する一方、海上では対艦ミサイルが飛び交う。

• ひのかぜ（高山艦長）はイージスシステムで防空指揮。SM-2, SM-3を連射し、敵ミサイルを空中で複数撃破。 夜空に無数の閃光が咲き乱れ、破片が雨のように海面に降り注ぐ。

• 韓国駆逐艦テジョンは対空砲火を放ちながら、近付く敵フリゲートと砲撃戦を開始。被弾し甲板が火を噴くが、必死に耐えつつ反撃ミサイルを放ち、敵フリゲートを大破に追い込む。

• 米駆逐艦もトマホークで中国空母の随伴艦を狙うが、中国側の飽和攻撃により、1隻が被弾炎上。 「船体傾斜！」「応急修理班、急げ！」など悲鳴の無線が共有される。

  
  

  戦場は爆煙と火線が入り混じる大混沌の様相に。 各艦が連携して対空防御を固めるが、敵空母はまだ健在。

第四章：作戦のすれ違い — 日韓米の軋轢

激戦の合間にも、国際的な思惑が火花を散らす。米国は「中国空母を沈めるのが最優先」と指示。だが韓国は「北朝鮮が大規模攻撃を準備中で、艦隊を引き上げたい」と声を上げる。 さらにロシアの動きを念頭に日本は「北海道防衛への備えを…」と主張。緊迫する無線会議で意見が衝突。 米艦隊の提督ジェンキンスは「勝手に動けば指揮系統が崩壊する！」と怒鳴り、韓国艦隊司令・パクは「我々は国境が直接火の海になる！」と反論。高山艦長は艦橋で苛立ちを押し殺し、「今や三方向全てが火急だ…だが、連携を解いたら敵の思う壺だ」と苦しく説得し、何とか共同戦線を維持する。

第五章：北朝鮮の攻撃とロシアの動き

北朝鮮ミサイル発射

さらに報告が来る。「北朝鮮が韓国首都圏へ長距離砲撃・ミサイル攻撃を開始。韓国陸軍は対応に追われ、海軍も帰還要請を出している！」韓国艦隊が撤収を検討し始め、連合陣形が崩れかねない。高山は「ここで韓国艦が抜ければ、中国空母への圧力が弱まり、台湾が危ない」と憤るも、韓国側の事情を無視はできない。米国も「我々の空母艦隊がメインで対処しよう」と言うが、既に被害を受けている。

ロシアの北方領土侵攻の兆し

また別の偵察報が入り、「ロシア軍が北方領土へ大規模増援を送り、北海道北端に向け艦隊を出した」と…。日本にとってはまた別の正面が生まれ、海自の一部艦をどう振り分けるか――高山艦長は頭を抱える。「この艦隊が解体されれば、中国を抑える海が手薄になる。だが北海道を見捨てるわけにもいかない。」

第六章：激烈なる海戦 — 中国空母打撃群との最終衝突

米艦が強行する形で中国空母にミサイル攻撃を再開。 中国側も大規模対艦攻撃を行い、双方がミサイルの雨に包まれる。 夜空が白い閃光で断続的に染まり、艦橋に悲鳴の通信が飛び交う。ひのかぜはイージス防空システムで味方艦を守ろうとするが、敵艦載機が空母艦隊上空を制圧し、ミサイルを大量発射。 防空網が飽和状態に陥り、「もう迎撃弾が足りない！」の声。韓国駆逐艦テジョンは苦渋の末、ソウル防衛の要請に応えるため一部艦を引き上げを始める。 しかしテジョン自身は残り、「ここは踏ん張る」と覚悟し、連合艦隊から離脱する僚艦を見送る。

戦闘シーン

• 敵空母が艦載機J-15を再度大量発進。弾幕を張った米空母からもF/A-18が迎撃に上がり、空では機銃とミサイルが無数に飛び交う。 漆黒の雲間に閃光が散り、コクピット越しに無線で断末魔が重なる。

• 海上: 敵駆逐艦が集中砲撃で米駆逐艦を撃破。 船体が半分に折れるシルエットが見え、乗員が海へ投げ出される。 「救命ボートを出せ！」と怒号が響くが、余裕なく次弾が降り注ぐ。

• ひのかぜ: 「SM-2発射！」CIC内でオペレーターが幾度も叫び、 レーダー画面には数十本の敵ミサイルが螺旋を描いて接近。 CIWSが火花を噴き、空中でドンドンと破片が弾ける。

  
  

  しかし完全には迎撃しきれない。1発が艦首近くを貫き、大爆発。 甲板が炎と破片で荒れ、艦内にも浸水が始まる。 高山艦長は血まみれの額を押さえつつ「応急修理急げ！」と強い口調で命令。

作戦の帰結：3正面への分散

• 韓国艦: 「申し訳ない、北朝鮮がもう南へ総攻撃を開始…我々は母港へ戻る」と連絡。 結局、テジョンを残して、他艦は高速で帰投を始める。

• 米空母: 「中国艦隊をこれ以上押しとどめるのは困難だ。後退し、再編成を行う」と判断し、損傷艦や負傷者救助を優先して方向転換。

• ひのかぜ: 高山が「我々だけでも、空母を追撃しなければ台湾が落ちる…！」と矢面に立とうとするが、艦はもう大破寸前。 装備や弾薬も尽きかけだ。

最終章：悲劇の結末と微かな希望

時間が経つにつれ、中国空母打撃群も大きな損害を負ったが、まだ主力が健在。 米艦隊も撤退を決め、韓国艦は本土防衛に移り、日本艦「ひのかぜ」とテジョンだけが最後まで追撃を試みる。しかし火力差はあまりにも大きく、敵駆逐艦の集中ミサイルを受けてテジョンが真っ二つに裂けて沈没。 無線で悲鳴が轟き、高山艦長が唇を噛む。ひのかぜも立て続けに被弾。 船体が黒煙を吹きながら進むが、機能停止が迫る。 「艦長…もう…」という副長の震える声に、高山は小さく頷く。「ここまでだ。…だが、我々の行動が少しでも台湾を救えたなら…」エンジンが停止し、艦が回頭不能に陥る。 敵ミサイルの最後の一撃が甲板中央を直撃し、炎と水柱が入り混じって艦体を呑み込む。 そこにはもう言葉も交わされず、艦長たちが諦観の笑みを浮かべたまま闇に沈む――。

エピローグ：三つの盾は崩れ

海面に焦げた破片と遺体が漂う。 日米韓が築こうとした**「三つの盾」**は、互いの利害や戦略がぶつかり合い、完全には機能しなかったと言えよう。北朝鮮の攻撃は韓国本土を苦しめ、中国は台湾侵攻を継続し、ロシアは北方領土から北海道への牽制を続ける。 国際社会の調停も追いつかず、アジア太平洋地域が炎上する危機が高まる。廃墟の海から望む水平線には、黒煙が一筋立ち昇り、遠くでは空母が後退する姿が見えるだけ。 生き残った数少ない乗員や市民たちは、いずれの方向にも救いを見出せず、ただ荒涼とした未来を凝視するばかり。

—終幕—三国の盾が崩れ、戦局はさらに深い混迷へと落ちていく。 決定的勝利もなく、ただ“戦い”だけが残酷に続き、国家も人々も疲弊の極みに達する。 この物語は、そんな無情な戦争の真実を浮き彫りにしながら幕を引くのである。