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PRTR届出、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、悪臭防止法、廃棄物処理法、マニフェスト、自治体条例対応

化学メーカーにとって環境法令対応は、単に「年1回の届出を出す」「測定結果をファイルする」「マニフェストを保存する」という事務ではありません。

実務の本質は、工場に入ってくる化学物質が、製品・副産物・排ガス・排水・廃液・汚泥・廃触媒・洗浄廃液・臭気・漏えいリスクとして、どこへ、どの形で、どれだけ出ていくかを把握することです。

化学者の視点で言えば、環境法令対応とは「物質収支」「相平衡」「分配」「反応」「分解」「吸着」「揮発」「沈殿」「錯形成」「臭気閾値」「廃棄物性状」を、行政手続きの言葉に翻訳する仕事です。行政書士の実務としては、それを届出書、添付図面、排出量計算、WDS、委託契約書、マニフェスト、自治体協議資料に落とし込む作業になります。

以下の現場談は、複数の化学工場・研究所・試作ライン・倉庫・産廃委託案件に見られる典型例を、匿名化・複合化したものです。

1. 2026年5月時点で押さえるべき最新動向

まず、PRTRは直近の実務で最も期限管理が重要です。2026年度のPRTR電子届出期間は、2026年4月1日から2026年6月30日までです。2026年度届出は、原則として2025年度、つまり2025年4月から2026年3月までに把握した排出量・移動量を届け出る実務になります。NITEはPRTR届出システムの案内で、2026年度の届出期間を明示しています。

PRTR対象物質は、2021年10月公布・2023年4月施行の政令改正により、第一種指定化学物質が462物質から515物質へ、特定第一種指定化学物質が15物質から23物質へ、第二種指定化学物質が100物質から134物質へ見直されています。経済産業省は、2024年度PRTRデータの取りまとめでも、2023年度PRTRデータから515物質が対象になっていることを示しています。

届出対象の実務判定では、対象業種、常用雇用者数21人以上、事業所ごとの年間取扱量1トン以上、特定第一種指定化学物質は0.5トン以上という要件を確認します。PRTR届出の手引きは、年間取扱量を「対象物質の年間製造量と年間使用量の合計」とし、対象事業者は1年間の環境への排出量・移動量を把握・算出する必要があると説明しています。

水質では、2025年7月1日施行の改正で、ほう素、ふっ素、硝酸性窒素等に係る暫定排水基準の一部強化・延長が行われました。環境省は、10業種のうち8業種で暫定基準の期限を迎え、7業種について一部基準値を強化しつつ2028年9月30日まで延長、ジルコニウム化合物製造業は一般排水基準へ移行するとしています。

廃棄物処理法では、2025年4月22日に公布された施行規則改正が、2026年1月から委託契約実務に影響しています。環境省のWDSガイドライン第3版では、委託者がPRTR法上の第一種指定化学物質等取扱事業者で、委託する産業廃棄物に第一種指定化学物質が含まれ又は付着している場合、当該物質の名称と量又は割合を契約上伝達する事項として追加しています。

電子マニフェストも次の改正が控えています。JWNETは、2027年4月施行の改正により、処分業者が電子マニフェストによる最終処分報告にあわせて、最終処分又は再生までの処分方法、処分方法ごとの処分量、処分後の産業廃棄物又は再生物の種類・量などを報告することになると案内しています。

PFASも無視できません。2025年6月30日に環境省は、PFOS・PFOAについて水道水の水質基準を新設し、2026年4月1日から基準値をPFOS・PFOA合算で50ng/L、つまり0.00005mg/L以下とする改正を公表しています。公共用水域・地下水でもPFOS・PFOAの指針値が設定されており、泡消火薬剤、フッ素系界面活性剤、フッ素樹脂、半導体・表面処理・めっき・撥水処理関連の事業者は、排水・汚泥・廃液・過去在庫の確認が重要になります。

2. PRTR届出:数字を作るのではなく、物質の行き先を追う

PRTR対応で一番大切なのは、対象物質をどれだけ使ったかではなく、どこへ出たかです。PRTR制度では、大気、水域、土壌への排出量と、廃棄物や下水として事業所外へ移動した量を事業者が把握し、届け出ます。経済産業省は、PRTR制度を、第一種指定化学物質について環境中への排出量や廃棄物として事業所外へ移動させた量を届け出る制度と説明しています。

化学メーカーの現場では、PRTR対象物質は次のような経路で出ていきます。

経路

典型例

現場での落とし穴

大気排出

反応釜ベント、乾燥機、塗布工程、溶剤洗浄、貯槽呼吸ロス

局排で吸っているが活性炭の破過を見ていない

水域排出

排水処理後の放流水、スクラバー排水、洗浄排水

排水分析値だけ見て、雨水系・非常排水を忘れる

土壌排出

漏えい、屋外タンク周辺、ドラム置場

「事故なし」でも長期のにじみ漏れがある

廃棄物移動

廃油、廃液、汚泥、廃触媒、廃吸着材、廃フィルター

廃棄物中の含有量を処理業者任せにする

下水道移動

研究所排水、洗浄排水、冷却水系混入

公共下水に流していてもPRTR上は移動量になる

現場談:PRTRの数字が「きれいすぎる」工場

ある工場で、PRTR届出の排出量が毎年ほぼ同じ数字でした。担当者は「前年と製造量が同じなので、今年も同じです」と説明しました。しかし工程を確認すると、その年から洗浄方法が変わり、トルエン系洗浄剤の一部がIPA系に変更され、乾燥温度も10℃上がっていました。

現場に入ると、乾燥機の排気ダクトに甘い溶剤臭が残り、活性炭塔の差圧記録はあるものの、破過確認のVOC測定は行われていませんでした。廃液タンクには「混合溶剤」とだけ表示され、廃棄物のWDSには対象物質名が書かれていません。購買データ、SDS、製造実績、廃液回収量、排気処理設備の能力を突き合わせると、排出量と移動量の配分が実態と合っていない可能性が見えてきました。

化学者として見ると、溶剤の行き先は単純ではありません。蒸気圧が高いものは大気へ、極性が高いものは水相へ、疎水性が強いものは汚泥や活性炭へ、反応性が高いものは副生成物へ移ります。PRTRの排出量計算は、Excelに数字を入れる作業ではなく、反応釜の中から煙突、排水処理槽、廃液ドラムまでの物質収支を読む作業です。

3. 大気汚染防止法:排ガスは煙突だけではない

大気汚染防止法対応では、ばい煙発生施設、VOC排出施設、一般粉じん発生施設、特定粉じん排出等作業、水銀排出施設などの該当性を確認します。環境省の令和6年度施行状況調査では、令和6年度末時点で、ばい煙発生施設、VOC排出施設、粉じん関係施設、水銀排出施設等の届出状況・規制事務実施状況が取りまとめられており、ばい煙発生施設は199,079施設、80,323工場・事業場に設置されているとされています。

VOC排出施設については、施設を新設又は構造等変更する場合、原則として60日前までの届出が必要です。環境省は、VOC排出施設の設置・変更は事前、つまり60日前までに届け出る必要があり、排出基準不適合のおそれがある場合には計画変更又は廃止命令の対象となり得ると説明しています。

化学者の視点:VOCは「使った量」より「開放面積」と「温度」で暴れる

VOC排出量は、使用量だけでは決まりません。実務では、次の要素で大きく変わります。

  • 溶剤の蒸気圧、沸点、混合溶媒中の活量係数

  • 反応・乾燥・洗浄時の温度

  • 開放槽か密閉槽か

  • 撹拌、泡立ち、スプレー、含浸、拭き取りの有無

  • 局所排気の捕集効率

  • 活性炭塔、冷却凝縮器、燃焼装置、スクラバーの実効能力

  • 夜間・休日の保管時呼吸ロス

特に危ないのは、洗浄工程と乾燥工程です。製造担当者は「主反応工程は密閉だから安全」と言います。しかし、フィルターを外す、治具を洗う、ウエスで拭く、乾燥棚に置く、廃液タンクに移すという周辺作業で、実際には溶剤が空気中へ出ます。

現場談:活性炭塔はあったが、破過していた

ある樹脂製造ラインでは、排気は活性炭塔を通して屋外へ出していました。書類上は「処理装置あり」です。ところが、近隣から「夕方になるとシンナー臭がする」と苦情が入りました。

確認すると、活性炭塔の入口濃度は日中の塗布・乾燥工程で高く、午後には吸着容量が落ちていました。差圧は正常、ファンも正常。しかし出口VOC濃度を測ると、特定時間帯だけ上昇していました。活性炭は魔法の箱ではありません。吸着容量、湿度、温度、溶剤種、再生・交換周期を管理しないと、ある日突然「処理しているつもりの排気」が臭気苦情と大気排出リスクになります。

4. 水質汚濁防止法:排水は「最後の放流水」だけ見ても足りない

水質汚濁防止法対応では、特定施設、有害物質使用特定施設、有害物質貯蔵指定施設の該当性、設置届・変更届、排水基準、地下浸透防止、構造基準、点検記録を確認します。神奈川県の手続案内でも、特定施設又は有害物質貯蔵指定施設を設置しようとする場合は工事着手の60日前まで、構造・使用方法・汚水処理方法・排水系統等を変更する場合も工事着手の60日前までに届出が必要とされています。

環境省の令和6年度施行状況では、有害物質使用特定事業場は約17,000、有害物質貯蔵指定事業場は約4,000であり、令和6年度の立入検査は約27,800件、改善命令は10件、指導・勧告・助言等は約6,600件とされています。水質法令は、届出を出して終わりではなく、現場確認と行政指導が日常的に起こる領域です。

化学者の視点:排水処理はpHを合わせれば終わりではない

化学メーカーの排水は、単なる汚れた水ではありません。酸、アルカリ、溶剤、界面活性剤、金属錯体、還元剤、酸化剤、懸濁物、油分、難分解性有機物が混ざります。

排水処理でよく見落とされるのは、錯体と界面活性剤です。重金属はpHを上げれば水酸化物として沈殿する、と教科書には書かれます。しかしキレート剤、アミン、EDTA系洗浄剤、クエン酸、リン酸、界面活性剤が共存すると、金属が沈まず、処理水に残ることがあります。分析値が突然悪化したとき、原因は薬品の変更ではなく、洗浄剤の微量添加だった、ということがあります。

現場談:排水処理場は正常、原因はスクラバー排水だった

ある工場で、排水のCODが月に数回だけ上がりました。排水処理場の担当者は、pH、凝集剤、曝気、汚泥返送を疑いましたが、原因が見つかりません。

工程別に水を追うと、ある反応ラインで酸性ガスを吸収するスクラバーがあり、その排水が不定期に処理場へ送られていました。スクラバー液には、反応副生成物と微量の有機溶剤が溶け込んでいました。排水処理場の入口で混ざると薄く見えますが、投入タイミングによって微生物にショックを与え、COD上昇や処理不安定を引き起こしていました。

現場では「排水は全部処理場へ行っているから大丈夫」と言いがちです。しかし、環境法令対応では、最終放流口ではなく、工程ごとの発生源、排水系統、バッチ排水のタイミング、非常時排水、雨水系への混入を見ます。

5. 悪臭防止法:数値基準より先に、住民の鼻が動く

悪臭防止法は、規制地域内の工場・事業場の事業活動に伴って発生する悪臭を規制し、生活環境の保全と健康保護を図る法律です。規制対象は、政令で指定される特定悪臭物質と、人の嗅覚でにおいの程度を数値化する臭気指数であり、規制基準は敷地境界線、気体排出口、排出水について定められます。

令和6年度の悪臭苦情は全国で11,076件で、前年度から減少しているものの、悪臭防止法の規制地域を有する市区町村は全国市区町村の75.7%に当たる1,318市区町村に及びます。つまり、悪臭は「一部の畜産・食品工場だけの問題」ではなく、化学工場、研究所、倉庫、廃棄物置場、排水処理場でも十分に問題になります。

化学者の視点:臭いは濃度ではなく、閾値と混合で決まる

悪臭の厄介さは、人間の鼻が非常に高感度な分析装置であることです。硫黄化合物、アミン、アルデヒド、低級脂肪酸、フェノール類、溶剤臭は、濃度が低くても不快感を与えます。

しかも、臭気は単一物質ではなく混合臭です。機器分析で個々の物質が基準以下でも、住民は「焦げ臭い」「薬品臭い」「腐ったような臭い」「甘ったるい臭い」と感じます。排水処理槽、廃液タンク、反応釜ベント、真空ポンプ排気、ドラフトチャンバー排気、廃棄物保管庫が重なると、特定悪臭物質の濃度規制だけでは説明しきれない現象が起きます。

現場談:苦情の発生源は煙突ではなく、廃液置場だった

ある工場で、近隣から「夜だけ薬品臭がする」という苦情が続きました。排気筒の測定は基準内。製造部門は「うちのラインではない」と言いました。

現場を夜に歩くと、廃液ドラム置場の周辺で甘酸っぱい臭いがしました。日中はフォークリフトや作業音で気づきにくい程度ですが、夜は風が弱く、住宅側へ低く流れていました。原因は、反応残液を入れたドラムのパッキン劣化と、廃液に含まれる低沸点成分の揮発でした。

悪臭対応で大切なのは、測定だけではありません。苦情時刻、風向、気温、操業工程、廃棄物搬出日、排水処理状況、ドラム開閉、換気ファンの運転時間を重ねることです。臭気は、工程表と気象と人の生活時間が重なったところで問題になります。

6. 廃棄物処理法:排出事業者責任は処理業者に移せない

化学メーカーの廃棄物は、廃油、廃酸、廃アルカリ、汚泥、廃プラスチック、金属くず、ガラスくず、廃触媒、廃吸着材、廃フィルター、廃試薬、洗浄廃液、排水処理汚泥など多様です。外観が同じ「廃液」でも、酸性、アルカリ性、可燃性、毒性、腐食性、発熱性、ガス発生性、重合性、金属含有、PRTR対象物質含有の有無で処理方法が変わります。

環境省のWDSガイドライン第3版は、廃棄物の性状・荷姿、腐敗・揮発等の性状変化、他の廃棄物との混合等により生ずる支障、石綿・水銀・PRTR対象物質など、処理業者に提供すべき情報を整理しています。特に、PRTR第一種指定化学物質が含まれる又は付着している場合、その名称と量又は割合の情報伝達が明記されています。

現場談:WDSに「廃液」とだけ書いたため、処理場で発熱した

ある事業者は、研究所から出る廃液を「有機溶剤廃液」として処理委託していました。WDSには、主成分としてトルエン、MEK、IPAが書かれていました。しかし実際には、開発テーマの変更により、アクリレートモノマー、過酸化物残渣、アミン系触媒が少量混入していました。

処理業者側で混合タンクに入れたところ、温度が上がり、刺激臭が発生しました。大事故には至りませんでしたが、受入停止、原因調査、再発防止書の提出が必要になりました。

現場の研究者は「少量だから問題ないと思った」と言いました。しかし化学者として見ると、少量でも反応性物質は危険です。アクリレートは重合する。過酸化物は分解する。アミンは反応を進める。酸と塩基は中和熱を出す。塩素系溶剤とアルカリ、酸化剤と有機物、酸とシアン・硫化物は、組み合わせ次第で危険物になります。

廃棄物処理法対応では、品目名だけでなく、処理業者が安全に処理できる化学情報を渡すことが重要です。

7. 産業廃棄物マニフェスト管理:紙を保存するだけでは不十分

マニフェストは、産業廃棄物が排出場所から収集運搬、中間処理、最終処分又は再生まで適正に流れたかを確認する制度です。電子マニフェストを利用した場合は、情報処理センターが都道府県等へ報告を行うため、排出事業者が電子マニフェスト分を自ら報告する必要はありません。一方、紙マニフェストと電子マニフェストを併用した場合は、紙マニフェスト使用分について排出事業者が報告する必要があります。

JWNETは、紙マニフェストでは交付したA票、収集運搬業者・処分業者から送付されるB2票、D票、E票を5年間保存する必要があり、電子マニフェストでは情報処理センターが保存し、5年分を常時確認できると説明しています。

2027年4月からの電子マニフェスト改正では、最終処分又は再生までの処分方法、処分方法ごとの処分量、処分後の産業廃棄物又は再生物の種類・数量など、排出事業者が処理の下流情報を把握しやすくなる方向に進みます。環境省通知も、排出事業者が最終処分又は再生が終了するまでのすべての処分について、各処分ごとの状況を把握可能とするための制度整備であると説明しています。

現場談:マニフェストは全部返っていたが、許可範囲が違っていた

ある工場では、マニフェストの返却率は100%でした。環境監査でも「マニフェスト管理良好」とされていました。

しかし委託契約書と処理業者の許可証を確認すると、ある廃液について、処分業者の許可品目・処分方法と、実際の廃棄物性状にずれがありました。マニフェストは返ってきている。しかし、そもそもその処理方法で受け入れてよい廃棄物だったのか、契約書に必要事項が書かれていたのか、WDSが最新だったのか、という問題です。

マニフェスト管理は、返却確認だけではありません。許可証、契約書、WDS、マニフェスト、請求書、計量票、現地確認記録、廃棄物性状が一本につながって初めて管理になります。

8. 自治体条例対応:国法で不要でも、条例で必要なことがある

化学メーカーの環境法令対応では、国の法律だけで判断すると危険です。都道府県・市区町村の条例により、工場・指定作業場・指定事業所・化学物質管理制度・公害防止協定・事前協議・住民説明が求められることがあります。

東京都の環境確保条例では、2.2kW以上の原動機を使用して物品の製造・加工又は作業を常時行う事業場が「工場」として定められ、工場の設置・変更は着工60日前までの申請、指定作業場の設置・変更は着工30日前までの届出が必要とされています。

大阪府では、化管法に基づく届出に加え、府条例に基づく化学物質管理制度を運用しており、計画の作成や排出量等の届出を通じて化学物質管理の充実を求めています。大阪市の条例施設届出でも、設置届・変更届は工事着手予定日の61日前までに提出し、事前相談を実施していると案内されています。

神奈川県生活環境の保全等に関する条例では、公害を生じさせるおそれがある指定事業所を設置する場合に設置許可申請が必要であり、排煙・粉じん、悪臭、水質、騒音・振動に関する規制基準、測定義務、化学物質の適正管理に関する指針などが設けられています。

現場談:国法では届出不要、条例では60日前申請だった

ある会社が、研究所に小型の塗布・乾燥装置を入れる計画を立てました。設備担当は「大気汚染防止法のVOC排出施設には該当しない規模」と判断し、すぐに工事を進めようとしました。

しかし所在地の条例を確認すると、原動機出力、作業内容、有機溶剤使用、排気、騒音の観点から工場・指定作業場の変更申請又は届出が必要になる可能性がありました。さらに、建物の排気口が隣接住宅側を向いており、悪臭・騒音の苦情リスクもありました。

環境法令対応では、国法の該当性確認のあとに、必ず所在地自治体の条例、指導要綱、公害防止協定、下水道条例、消防・建築との関係を見る必要があります。

9. 化学メーカーで特に注意すべき「横断リスク」

環境法令は縦割りですが、現場の化学物質は縦割りでは動きません。1つの設備変更が、複数法令に同時に影響します。

現場変更

PRTR

大気

水質

悪臭

廃棄物

溶剤を変更

対象物質・排出係数変更

VOC排出量変更

排水中溶剤変更

臭気変化

廃液性状変更

乾燥温度を上げる

大気排出増加

排気処理能力確認

凝縮水性状変化

臭気強化

廃吸着材増加

洗浄剤を変更

使用量・移動量変更

作業場排気変化

COD・界面活性剤影響

洗浄臭

WDS改訂

排水処理薬品を変更

汚泥移動量変化

なし又は少

金属・COD・窒素影響

処理槽臭気

汚泥性状変更

産廃業者を変更

移動量管理

なし

なし

廃棄物保管期間増加

契約・許可・WDS・マニフェスト

現場で一番危ないのは、「少しだけ変えた」という変更です。少しだけ温度を上げる。少しだけ溶剤を足す。少しだけ洗浄回数を増やす。少しだけタンクを大きくする。少しだけ廃液保管期間を延ばす。法令上は、その「少し」が届出・変更届・排出量増加・臭気苦情・廃棄物性状変更につながることがあります。

10. 山崎行政書士事務所が支援する実務

山崎行政書士事務所では、化学メーカー、研究所、プラント、倉庫、化学品商社向けに、環境法令対応を次のように整理します。

物質・工程・排出経路の棚卸し

原料、溶剤、添加剤、触媒、洗浄剤、排水処理薬品、廃液、汚泥、排気、排水、廃吸着材を棚卸しし、SDS、購買データ、製造実績、廃棄物契約、排出量実績を突合します。

PRTR届出支援

対象物質該当性、年間取扱量、対象事業者要件、排出量・移動量の算出根拠、届出書作成、電子届出準備、過年度比較、改正対象物質対応を支援します。

大気・水質関係届出

ばい煙、VOC、水銀、粉じん、特定施設、有害物質使用特定施設、有害物質貯蔵指定施設などの該当性を確認し、設置届、変更届、使用届、廃止届、添付図面、工程説明、行政事前相談資料を整理します。

悪臭・苦情対応

臭気発生源、操業時間、風向、排気口、廃棄物置場、排水処理場、スクラバー、廃液タンクを確認し、測定機関・臭気判定士等と連携して、行政説明資料と改善計画を整えます。

廃棄物処理法・WDS・契約書対応

産業廃棄物の種類、特別管理産業廃棄物該当性、委託先許可範囲、処理委託契約書、WDS、PRTR第一種指定化学物質情報、PFOS・PFOA含有廃棄物の確認、マニフェスト運用を整理します。

自治体条例・公害防止協定対応

所在地自治体の条例、指導要綱、下水道条例、工場・指定作業場・指定事業所制度、化学物質管理制度、公害防止協定、住民説明の要否を確認し、国法と条例を横断した手続き一覧を作成します。

必要に応じて、環境計量証明事業者、作業環境測定機関、産業廃棄物処理業者、技術士、公害防止管理者、弁護士、社会保険労務士、建築士等と連携し、行政書士業務の範囲を中心に、実務全体を前に進めます。

まとめ

環境法令対応は、環境部門だけの仕事ではありません。

PRTRは購買・製造・研究・廃棄物管理のデータがなければ正しく算出できません。大気は排気設備だけでなく、洗浄、乾燥、保管、廃液置場が関係します。水質は最終放流口だけでなく、スクラバー排水、バッチ洗浄排水、雨水系、地下浸透防止が問題になります。悪臭は数値基準だけでなく、住民の生活時間、風向、混合臭が問題になります。廃棄物はマニフェスト返却だけでなく、契約書、WDS、許可範囲、PRTR物質、PFAS、処理後の行き先まで見なければなりません。

山崎行政書士事務所は、化学メーカーの環境法令対応を、単なる届出代行ではなく、「物質がどこへ行くか」を起点にした現場密着型のコンプライアンス整備として支援します。工場の操業を止めないために、そして近隣・行政・取引先から信頼されるために、環境法令対応は早い段階で体系化することが重要です。

 
 
 

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