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バッグ選びの三人の接客続編

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月19日
  • 読了時間: 6分


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第五幕:新たな悩み、再びの来店

数週間後のある昼下がり。静岡駅前の高級ブランドショップには、いつもと変わらない上品なBGMが流れている。三浦は店先のショーケースを念入りに磨き、清水(※旧・宮本)と杉山は在庫整理をしていた。先日の“山下騒動”で、三人は一度は自分たちの接客スタイルを見直したはず……だった。

シーン1:山下の再来店

そんな穏やかな空気の中、ドアが開いて姿を見せたのは――なんと山下!前回の“安いバッグ”騒動も記憶に新しい三人は、思わず同時に声を上げる。

三浦「山下様! お久しぶりですね。先日の商談は成功されたとか……本当におめでとうございます」清水「もうバッグは十分揃っていると思いましたが……今日はどういったご用件で?」杉山「まさかポケットの数が物足りなくなったとか、そういうオチですか?」

山下はちょっとばかり気まずそうに笑いながら、口を開く。

山下「ええと、実は……次の商談とは別に、新しく部署内のプロジェクトでプレゼンをする機会があって。その席がちょっと“お堅い”感じらしくて、形から入って自信をつけたいというか……。やっぱりそれなりのビジネスバッグを持っておきたいな、と思ったんです」

前回、安いバッグで乗り切ったはずの山下が再びブランドバッグを検討するなんて――その理由を聞いた三人は、お互いに目を見合わせる。

三浦「なるほど……前回の商談成功を機に、さらに上を目指すわけですね」清水「少し古いデザインでも、ちゃんと由緒あるものなら評価が高い場合もあります。最新のものももちろんおすすめですけどね」杉山「あ、あのポケットバッグはどうでした? 実際に使ってみて、不便はありませんでしたか?」

山下は苦笑混じりに答える。

山下「あれはあれで便利なんですが、やっぱり“カッチリした場”には合わないかなって……。今回は、ちょっと真面目な雰囲気を演出したいんですよね」

シーン2:三人の“変化”した提案

先日の騒動を踏まえ、「今回はお客様のニーズをしっかり聞こう」という共通認識ができあがっていた三人。それぞれ落ち着いた口調で山下の要望を確認し始める。

三浦「それでは、会場の雰囲気や、どんなお相手が来るのか詳しく教えていただけますか? それによってご提案できるバッグが変わると思います」清水「大人数の前でプレゼンをする場合、スーツのシルエットとのバランスも重要です。最近のトレンドは、少し薄型でスタイリッシュなモデルですね」杉山「でもポケットがないと、いざというときに書類が折れ曲がったりしますよ? そういう細かいところがストレス要因になることもあるんです」

前回のようにいきなり「これです!」と押し付けあうのではなく、まずは山下の求める条件をじっくり聞き出す三人。山下は意外そうに目を丸くするが、すぐに安堵の笑みを浮かべる。

山下「あ……今日はなんだか、落ち着いてますね?」

三浦と清水、杉山は、わずかに顔を見合わせ、軽く笑って肩をすくめる。

清水「ま、私たちも少し学習しまして……。最終的にどんなバッグを選ぶかは、お客様の状況次第ということを痛感したんです」杉山「もちろん私は今でも“ポケット命!”派ですけど、山下さんが必要とする機能やシーンをまずは知りたいですからね」三浦「私も“歴史と伝統”を押しすぎて、お客様を置いてけぼりにしていたかもと反省しました」

シーン3:探し当てた“上質と実用”

何度か山下にヒアリングを繰り返し、三人が選び抜いたのは――

  • 三浦が示した、歴史あるブランドの定番モデルをベースにしつつも、ビジネスの現場で求められる基本的な収納力を備えたシリーズ。

  • 清水が最新トレンドの要素をさりげなく加えたバリエーションをピックアップし、少しモダンな印象をプラス。

  • 杉山が「使い勝手」の観点から、中仕切りや小物ポケットの位置をしっかりチェックし、実用性を確保。

三人の意見がうまく“融合”した、落ち着いたデザインと適度な機能性を兼ね備えたバッグがセレクトされる。

山下「これ、いいですね……。最初見たときはシンプルかなって思ったけど、実はしっかりポケットがあるし、スーツとのバランスも良さそう。雰囲気もかっちりしてる」

そう呟く山下の顔には、どこか前回とは違う“納得感”がある。

三浦「今回は、山下様のご要望をじっくり伺えたので、よりピッタリなものをご案内できたのかもしれません」清水「見た目が地味すぎると感じるなら、こういうアタッチメントもありますよ。ワンポイントでおしゃれを演出できます」杉山「ポケットの数も、いくつかの大きさが均等に配置されているから、書類も名刺も取り出しやすいはずです!」

前回のようなゴリ押し合戦は影を潜め、それぞれが“自分の得意分野”をプラスする形で山下をサポート。山下は満面の笑みでうなずき、とうとう購入を即決する。

山下「これにします! いやあ、何度も足を運んで正解でした。次回のプレゼン、頑張れそうな気がしてきましたよ!」

シーン4:それぞれの思い

山下が会計を済ませて店を出る前、三人はそろって軽く頭を下げる。

三浦「今回も、商談やプレゼンが成功することを祈っております。また何かあればいつでもお越しください」清水「“今っぽさ”も大事ですが、それを活かすかどうかは使う人次第です。山下様のスタイルで、ぜひ輝かせてくださいね」杉山「ポケットを活かした使い方、楽しみにしていますよ! いやー、思い出したら私がワクワクしてきました」

山下は手にした新たなバッグを見つめ、「よし、これで頑張るぞ!」と意気込みながら店を後にする。

その姿を見送りながら、三浦、清水、杉山はふと前回の“オチ”を思い出す。あのときは結局「安いバッグ」を選ばれて終わったのに、今回はしっかりブランドバッグを買っていった。やはり世の中、タイミングと目的次第なのだろう――そうしみじみ感じながらも、三人は満足げに微笑み合った。

エピローグ:次なるステージへ

夕刻になり、お店はディスプレイのライトが一層きらめき始める。前回のような大騒動こそなかったものの、三人にとって今回の接客は大きな前進となったようだ。

三浦「やっぱり、私たちができるのは“最適解”を探すお手伝いなんだなって、改めて思いました」清水「はい。お客様が本当に求めているものを引き出すには、ちゃんと会話しないといけない……反省しつつ、いい勉強になりましたね」杉山「次のお客様には、私たちの“融合力”をもっとアピールしたいところですね。ポケット論争は封印して、“必要ならオススメする”方針で!」

三人は笑い合いながら、それぞれの持ち場に戻る。店内には変わらず優雅な音楽が流れ、ガラス越しに見える夜景が街を彩っている。次に訪れる客がどんな悩みを持っていても、三人ならきっと最適なバッグを見つけ出すに違いない――そんな予感を漂わせながら、物語は続いていく。

こうして、**「ビジネスバッグ・コメディ」**は新たな一幕へ。安いバッグで成功することもあれば、高級バッグを選んで自信を得ることもある。どちらが正解なのか――それは結局、持ち主と場面次第。今日もまた、三浦・清水・杉山の三人は“個性と学び”を武器に、それぞれの正解を求める客を待ち受けている。

(終)

 
 
 

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