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星々の会議と静岡の未来

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月19日
  • 読了時間: 8分


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夜が深まり、街の灯りが少しずつ減っていく頃、静岡市の上空では無数の星々が静かに輝きはじめます。その星々の奥、さらに高い夜空のかなたには、いつしか星の会議が開かれていました。

星の円卓――地上を見つめる者たち

 星の円卓と呼ばれるその場所には、様々な星座の代表が集まります。オリオン、シリウス、スバル、北斗七星の守り星――彼らは遠い宇宙の稜線から地球を見下ろし、静岡の街とその人々の暮らしに思いを馳せていました。

オリオン星「ここ数十年、静岡市では便利さと発展が進み、人々の暮らしは豊かになったように見える。けれど夜空を見上げる人は減り、光害で星が見えにくくなっているとか。」
スバル星「そうよ。私たちはもっと地上とつながりたいのに、人間たちは忙しそうに下を向いてばかり……。このままでは、星を想う気持ちが消えてしまうわ。」

 星々は静岡市の夜景を遠くから見下ろしては溜息をつきます。巨大なビルや住宅街、街灯の光が強く放たれ、昔のように美しい星空を仰ぐことができない場所が増えています。

シリウス星「とはいえ、人間は単に星を忘れたわけではない。静岡の自然を愛し、富士山や駿河湾の風景を守りたいと思う者もいるはず。だけど今のままでは……。」

 北斗七星の使いである北斗星が、円卓を囲むみんなの視線を集めながら言います。

北斗星「このまま人々が星の存在を忘れてしまえば、わたしたち星々と地上をつなぐ光の道は閉ざされるだろう。それでも、希望はある。たとえ少数でも、星空を愛する心を持った人々がいる限り……。」

ひとつの星の決断

 そこへ現れたのは、円卓でもまだ若い小さな星。幼いながら金色の輝きを持ち、**「ティアラ星」**と呼ばれています。ティアラ星は、その小さな体を震わせながら星々の円卓に意を決したように告げました。

ティアラ星「わたし、地上へ降りて、人間たちのもとで彼らの心を聞きたい。それでも星を見上げる人がいるのなら、その人に未来を託したい……!」

 その言葉に、オリオンやスバルは不安げに目をやります。星が地上に降り立つことは、相当な力を使ううえ、人間界では星の輝きが弱まってしまう恐れもあるからです。

オリオン星「本気なのか、ティアラ星……。地上に降りてしまえば、あなた自身が危うくなる。星の命が縮んでしまうかもしれないんだぞ……。」
ティアラ星「わたしは構わない。そうしなければ、いつまでもこのまま閉ざされたままだから。人々が星を忘れ、わたしたちも人々を見守れなくなるなんて、耐えられない……。」

 北斗星は静かにうなずき、ほかの星々も躊躇いながらもティアラ星の決意を見守りました。ついに会議は、ティアラ星が地上へ向かうことを承認します。

地上の少年との出会い

 地上の静岡市。夜が更けた頃、**航(わたる)**という少年が一人で家を抜け出し、街のはずれへ向かって歩いていました。最近あまりうまくいかないことが多く、夜の散歩で気分を落ち着かせようと思ったのです。

 しかし空を見上げても星はまばら。しんとした空気の中、航は胸の奥で「もっと星が見えたらな……」とつぶやきました。

 すると、急に夜空から金色の光のしずくが落ちてきて、航の目の前で弧を描くようにきらきらと揺らめきます。その光の中から現れたのは、小さなヒト型の光――ティアラ星でした。

「あ……あなたは……誰?」

 航が戸惑いながら問いかけると、ティアラ星はかすかな笑みを浮かべ、透きとおる声でこたえます。

ティアラ星「わたしは星。静岡の夜空を見守っていたのだけど、あなたの心にかすかな想いが響いて……星をもっと見たい、という願いを、わたしは感じ取ったの。」

星空を取り戻すために

 航は最初こそ信じられませんでしたが、ティアラ星が放つ金色の輝きと、その内に宿る優しい力に、自然と疑いは消えていきました。星が地上に来るとはどういうことなのか、航にはまだわかりません。それでも、ティアラ星は続けます。

ティアラ星「わたしたち星々は、地上の人間の暮らしを見つめてきた。だけど今は、街の光が強すぎて、星が見えにくくなっている場所が多い……。そればかりか、環境の変化で空が霞み、人々が夜空を忘れつつあるなんて、悲しい……。」

 航は星が消えかけている夜空を思い浮かべ、胸がきゅっと痛むようでした。

「僕ひとりに何ができるんだろう……。でも、星を奪うことはしたくない。僕も星空を取り戻したいと思う……。」

 ティアラ星は希望の輝きを宿した目で、航の手をそっと握ります。

ティアラ星「あなたがそう思ってくれるだけで、わたしは地上に降り立ったかいがある。星々とのつながりを、人々に少しずつ伝えてくれないか?懐中電灯や街の照明を落とす夜を作るとか、富士山や駿河湾の美しい風景を守る取り組みを広めるとか……。どんな小さな行動でもいいの。」

星の言葉を人々へ

 翌日、航は学校の友人たちに「光害(ひかりがい)」という言葉を教えました。夜に外灯を減らせば星がよく見えること、そのためのイベントを企画してみたいこと。最初は「急にどうした?」と怪しまれましたが、星空の写真を見せたり、富士山とのコラボ風景を紹介したりすると、興味を持つ仲間が少しずつ増えたのです。

  • 地域の人と協力して、夜8時~9時だけ電気を少し落とす「星を迎える時間」を作る

  • 安倍川や駿河湾のほとりで、星空観察会を開いてみる

  • 学校の文化祭で「星と静岡の未来」をテーマにした展示を企画する

 そういった小さな活動が話題を呼び、地元の新聞やSNSでも取り上げられていきました。夜空に少し意識を向けるだけで、これまで気づかなかった星が増えて見える――人々はそんな驚きを新鮮に感じているのです。

星々の再集結

 一方、夜の星の円卓では、他の星々がティアラ星の行動を見守りながら、新たな光を感じはじめていました。

オリオン星「どうやら地上で、少しずつ動きが生まれているらしい。静岡の人々が星空を取り戻すために立ち上がっているとか。」
スバル星「ティアラ星は命を削ってまで人間に寄り添っている。このまま人々が変わってくれるのなら……」

 そう。ティアラ星は地上に降りたことで輝きを保ちづらくなっていました。だんだんと光が弱まり、夜が深まるほどに痛みを感じるようです。星が地上で生き続けることには大きな代償があったのです。

北斗星「ティアラ星を救えるかどうかは、地上の人々次第。われらはただ祈るばかり……。」

危機と最後の希望

 航は活動を続ける中で、ティアラ星が弱っていることに気づきました。金色だったその輝きが、夜になると淡く青ざめ、言葉にするのも辛そうです。

「星の命って、そんなに危ういものだったんだね……。このままじゃ消えてしまう……どうしたらいいんだ……。」

 するとティアラ星は苦しそうに微笑み、かすかな声をしぼりだします。

ティアラ星「夜空に星が戻り、人々が星を慕う心を取り戻せば、わたしもきっと空へ帰る力が出るでしょう。どうか最後まで、みんなで星の光を守って……。」

 航は仲間と共に、さらに行動を加速させます。街灯を見直す運動や、自然の景観を守る取り組みなど、様々なアイディアが広まり、大人たちも巻き込んでいきました。

 ある晩、富士山がくっきりと浮かぶ空に、久々に無数の星が舞う日が訪れます。街が少しだけ灯りを落としたことで、見事な星空が静岡市を包みこんだのです。

別れの時――星の未来と地上の未来

 その夜、ティアラ星は最後の力を振り絞り、航の前に現れました。いつもより透明感が増し、風に溶け込みそうな儚い姿です。

ティアラ星「ありがとう、航。あなたが始めたことは、小さくても大きな可能性を秘めている。いつか、静岡の夜空はもっと多くの星で溢れるよ。」

 航は溢れる涙をこらえられません。

「僕はまだ何もできてないよ……。でも、もっと星を見上げる人を増やして、いつかティアラ星が戻って来られるくらい、夜空を綺麗にしたい。だから……!」

 ティアラ星は微笑み、金色の輝きが身体を淡く包みこみ始めました。

ティアラ星「わたしは帰るわ。星々の円卓へ。だけど、わたしたちはどこかであなたを見ている。どうか忘れないで。あなたの胸の中にはわたしの光の一部が残っているから……。」

 そう言い残すと、ティアラ星は夜空へ吸い込まれるように昇っていき、やがて少年の視界から消えました。

その後の空と街

 翌日、航はなんとも言えない切なさを抱えながら空を見上げます。青い昼の空には星は見えませんが、心には確かに星の痕跡を感じていました。

 それからしばらくして、彼が始めた活動や、多くの人が協力してくれた星空を取り戻すための取り組みが実を結びはじめます。夜に少しだけ灯りを減らして星を楽しむ「星を迎える夜」が定期的に行われ、地元の人も観光客も、富士山と星空の共演を楽しむ機会が増えていきました。

 やがて夜の街を見あげれば、金星やシリウス、オリオン座などが以前よりはっきりと見えるようになった――そんな変化が少しずつ起こりはじめています。

「きっと、ティアラ星も喜んでる。僕はまだまだやることがあるけど、この星空を広げていきたいんだ……。」

 航はそうつぶやき、仲間たちと次のイベントの打ち合わせに向かいました。星々の円卓では、ティアラ星が戻り、新しい光の物語を語っていることでしょう。

 ――こうして、地上と星空の未来を守るために旅立った一つの星が、人々に夜空への愛情と希望を思い出させたのです。もし今夜、あなたが静岡の空を見上げるなら、新たに増えた星の輝きをそっと感じられるかもしれません。

 
 
 

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