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坂と音の街――リスポン・トラムと暮らす日

  • 山崎行政書士事務所
  • 2月4日
  • 読了時間: 3分

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1. 朝のコメルシオ広場からの出発

 大西洋から吹く少し湿った風が、リスボンの街を爽やかに包み込む朝。コメルシオ広場(Praça do Comércio)の先に広がるタグス川は、やわらかなオレンジ色を帯び、川面に反射する光がトラムの車体を優しく照らしている。 古めかしい黄色い車体に白い線が描かれたリスポン・トラムは、石畳の上で小さくキュルキュルと音を立てながら、今日も出発の時を迎える。観光客も地元の人々も一緒になって乗り込むと、トラムはひとつの小さな劇場のようだ。

2. 28番線の狭い路地

 リスボンのトラムのなかでも有名な**28番線(Eléctrico 28)**は、街の起伏を縫うように走ることで知られている。座席に腰掛けると、運転手が軽くベルを鳴らし、狭い路地へトラムが進みだす。まるで冒険の始まりだ。 外を眺めると、ゴシック様式の教会やタイル張り(アズレージョ)の壁が、窓のすぐ脇をかすめるほどの近さを感じる。坂道の傾斜が急になれば、エンジン音が少しだけ力強く響き、乗客たちは体を斜めにしながら支柱を掴む。一瞬ヒヤリとしながらも、運転手の慣れたハンドルさばきに安堵する。

3. アルファマの古い階段と洗濯物の風景

 トラムがアルファマ地区の高台に差し掛かる頃、路地と路地の合間に石段が続いているのが見える。その段々の両脇には、窓枠にカラフルな洗濯物が揺れ、風に乗ってアジアやアフリカのスパイス匂いがかすかに流れてくる。この街には、かつての大航海時代の名残と、国際色豊かなコミュニティが同居しているのだ。 そんな情景をトラムの小さな窓から眺めていると、ふと「こんな坂道を歩いたら足が疲れそうだな」と思いつつも、石畳の階段を上り下りする老婦人の軽快な足取りが見えて、なんだか励まされる気分になる。

4. ベレン方面へ――モニュメントと海風

 リスボンのトラム路線はさまざまな方向へ伸びており、タホ川(タグス川)の河口近くにある**ベレン(Belém)**方面へ向かうルートも魅力的だ。カステロ周辺を離れ、少し広い通りへ出るとトラムが加速し、窓からは川のほうから吹く海風を感じる。 金色の夕陽が街を斜めに染めはじめると、列車がガタンゴトンとリズミカルなサウンドを響かせる。遠くにはベレンの塔が見え、歴史と大航海の浪漫をかすかに呼び覚ましている。

5. 夜の坂道とトラムの灯り

 夜になると、石畳の坂道にはオレンジ色の街灯がともり、マリアッチョ広場やアルファマ地区の斜面を一望できるスポットでは、小さな音楽のパーティーやファド(Fado)の調べが聞こえるかもしれない。 トラムの黄色い車体にもライトが点き、暗い路地をゆったりと照らし出していく。レールが軋(きし)む音と鈴のようなベルの響きが、夜風に溶け込み、乗客たちもどこかノスタルジックな気分に浸っている。運転手の小さな笑顔が見えると、初めての訪問者でも安心して旅を続けられる。

エピローグ

 リスポン・トラム――曲がりくねった路地と急坂の連続を、誇りに満ちた黄色い車体で走り抜けるこの乗り物は、リスボンの街を象徴する大きな存在です。過去と現在が混じり合う古都で、人々の暮らしを支えながら観光客を歴史めぐりの冒険へと誘ってくれる。 もしリスボンを訪れることがあれば、ぜひトラムに身を委ねてみてください。坂を登るたびに広がるパノラマと、運転手が鳴らすベルの音、そして窓外に迫る美しい煉瓦壁と洗濯物――それらが、忘れられない光景とともに、あなたの旅を彩ってくれることでしょう。

(了)

 
 
 

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