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はじめに(当ブログについて)
山崎行政書士事務所は、
事業の「はじめる」「続ける」「育てる」各段階で生じる
法律・手続きに関する課題をサポートする行政書士事務所です。
許認可申請、契約書の作成・チェック、各種相談、
個人情報保護への対応、事業承継、知的財産の登録支援など、
事業者の皆さまが直面しやすい幅広いテーマを取り扱っています。
新規開業や事業拡大の場面で避けて通れない
行政手続きや法規制について、
専門的な知識と実務経験をもとに支援しています。
当ブログの位置づけについて
当ブログでは、
動画や記事を通じて 山崎行政書士事務所の考え方や取り組みを
できるだけ分かりやすくご紹介しています。
また、
理解を深めていただく目的で、
小説・フィクション形式の記事も掲載しています。
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一部の記事には 実際の事例とは異なる表現や
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Key Vaultを「入れた」だけで安心していませんか?
期限切れ・過剰権限・委託先/CI-CDで“秘密情報の事故”が起きる組織の共通点(情シス向け) ※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の法的助言・紛争対応を行うものではありません。個別事情に踏み込む判断が必要な場合は、内容に応じて弁護士等の専門家と連携して検討してください。 情シスが本当に怖いのは「侵害」より「期限切れ+説明不能」 Azure Key Vaultを導入している企業でも、事故の引き金はだいたい次の3つです。 期限切れ (証明書/シークレットが切れて“業務停止”) 過剰権限 (開発・委託先・CIが“読める/書ける/消せる”) 属人化 (誰が更新するか、誰が承認するか、誰が監査に出すかが曖昧) 山崎行政書士事務所の「Key Vault運用設計」ページでも、Key Vaultは「入れているか」ではなく、 期限切れ・過剰権限・属人運用で事故を起こさないために、運用と説明責任(証跡)まで含めて設計できているかが重要 、と整理しています。さらに、Secrets/Keys/Certificatesを アクセス統制・ローテーション・監査
山崎行政書士事務所
21 時間前読了時間: 6分


「ログはあるのに出せない」を終わらせる:Microsoft 365 / Azure / Entra ID の“監査に耐える証跡”設計(情シス向け)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の法的助言(弁護士法上の業務)を行うものではありません。個別の契約判断・紛争対応等は、内容に応じて弁護士等の専門家と連携して検討してください。 監査・取引先照会で刺さる質問は、いつも同じ 情シスが詰まるのは「ログを取っていない」からではありません。監査・取引先のセキュリティチェックシートで刺さるのは、だいたい次の3点です。 保持期間は要件に合っているか (半年?1年?7年?) 事故時に“削除停止”できるか/真正性(改ざんされていない)を説明できるか 誰が、何営業日以内に、どの形式で提出するか(主語が割れないか) 山崎行政書士事務所のクラウド法務では、まさにこの「ログ・権限・監査に耐える形へ」「“証跡の所在”を明記し、“提出の再現性”をつくる」整理を重視しています。 まずは“事実”として押さえる:Microsoft系ログのデフォルト保持は短い 「Microsoft 365を入れてるから、過去のログは出せるはず」と思いがちですが、 何もしないと短期で消えるログ が混ざっています。 1) Entra.
山崎行政書士事務所
22 時間前読了時間: 6分


清の字
朝の手水鉢(ちょうずばち)は、まだ雨の冷たさを抱えていた。 石の縁に、夜の水が細く残っている。 残った水は、音まで湿らせる。 さらさら、の前の、ぬるり。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 中には、小さな白い小石。 昨日、川で拾って、家の水で洗った。 洗ったのに、まだ少しだけ砂の匂いがする。 白いのに、白くなりきってない。 白くなる途中の白。 ――いき。 息を入れると、目が“途中”を見ていられる。 急がない目。 急がない目は、濁りを怖がらない。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの困りごとが入った印。 困りごとは、言う前に角が立つから、箱で丸くする。 母がふたを開ける。 中には、小さな紙。 角が丸く折ってある。 丸い角は刺さらない。 刺さらないと、手が取れる。 母の目が、紙の文字を追って、そこで止まった。 ちょうず の みず ぬめるきよく したい みてもらえますか きたむら ぬめる。 ぬめるは、濁りより先に来る。 ぬめるは、見えないのに、手に分かる。 分かると、怖さが胸に来る。.
山崎行政書士事務所
1 日前読了時間: 9分


夫の字
朝のちゃぶ台は、まだ湯気を抱えていた。 薄い粥の湯気。 米が少ない日の湯気は、軽いのに、鼻の奥に残る。 箸が、一本だけ、ちょっと短い。 母の箸の先が、欠けていた。 欠けは、小さい。小さいのに、口へ行く道の先にある。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 中には、竹の小さな削り屑。 昨日、父が箸を削ったときの、白い薄片。 鳴らない。 鳴らないのに、ちゃんと“尖り”の匂いがする。 ――いき。 息を入れると、尖りが少し丸くなる。 丸いと、刺さらない。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの困りごとが入った印。 困りごとは、言う前に角が立つから、箱で丸くする。 母がふたを開ける。 中には、小さな紙。 角が丸く折ってある。 丸い角は刺さらない。 母の目が、紙の文字を追って、そこで止まった。 ふうふ ばしいっぽん おれて ささりそう こわいよかったら つくってください かねこ 夫婦箸。 二本で一つ。 一つで二本。 “ささりそう”。 箸が怖いんじゃなくて――箸のささくれが、指や口に刺さるのが
山崎行政書士事務所
1 日前読了時間: 10分


幹の字
朝の楠の幹は、まだ雨の冷たさを抱えていた。 樹皮の溝に、夜の水が細く残っている。 残った水は、光を思い出す前の黒さをしている。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 袋の中には、丸い木片。 庭で剪った枝の、輪切りの小さな木。 年輪が、渦みたいにいくつも入っている。 鳴らない。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 木の時間の重さ。 ――いき。 息を入れると、胸の中に一本の柱が立つ。 柱は、揺れても折れない場所を探す。 幹夫の名前の一文字。 幹。 木の、まんなか。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの困りが入った印。 困りは、言う前に角が立つから、箱で丸くする。 母がふたを開ける。 中には、小さな紙。 角が丸く折ってある。 丸い角は刺さらない。 刺さらないと、手が取れる。 母の目が、紙の文字を追って、そこで止まった。 くす の みき われて こわいよかったら きてください やしろ くす。 楠。 みき。 幹。 幹夫の胸の奥が、ぽん、と鳴った。 鳴ったのは、紙の「みき」が、幹夫の「幹」に触れた
山崎行政書士事務所
2 日前読了時間: 10分


間の字
雨上がりの縁側は、板の間に湿り気を残していた。 濡れた木は、音を吸う。 吸った音は、まだ外へ出てこない。 障子の白が、薄い朝の光を受けて、少しだけ青く見えた。 幹夫は縁側の端に座り、首から下げた布の袋を掌で押さえた。 中には、小さな木片。 昨日、父が鉋(かんな)で削った、ひらひらの削り花。 軽い。 軽いのに、ちゃんと“今日”の匂いがする。 湿った杉の匂い。 それは鼻の奥に、静かに座る匂い。 ――いき。 息を入れると、縁側と庭のあいだに、小さな“ま”が生まれる。 その“ま”は、雨だれが落ちきる前の、いちばん柔らかい場所。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かが“言う間”を探して、やっと入れた印だ。 母がふたを開ける。 中には、紙。 角は丸く折ってある。 丸い角は刺さらない。 刺さらないから、手が取れる。 母の目が、文字を追って、そこで止まった。 もん が あかん あいだ なくて こわいよかったら みてください ささき あいだ、なくて。 門が開かない。 門が開かないのは、木が膨らんだせいかもしれない。
山崎行政書士事務所
2 日前読了時間: 8分
公取委が日本マイクロソフトに立ち入り検査――いま企業がやるべきは「クラウド選定」より先に“持ち込みライセンス”を説明できる状態にする
※本稿は、報道内容と Microsoft 公式のライセンスガイダンスを踏まえた 一般的な情報提供 です。個別案件の適法性判断・紛争対応・交渉代理などは弁護士業務の領域となるため、必要に応じて弁護士へご相談ください(当事務所でも連携の上、文書整備・整理支援は可能です)。 何が起きたのか(2026年2月25日) 2026年2月25日、米マイクロソフト(MS)について「他社クラウド上で Microsoft 365 などを使う事業者に高額な利用料を課して競争を阻害している疑い」があるとして、公正取引委員会が審査を開始し、日本法人への立ち入り検査を行った――という趣旨が報じられています。 現時点では “疑い” の段階であり、実態解明はこれからです。とはいえ、このニュースが示しているのは「クラウドは技術だけで選べない」という現実です。特に Microsoft 製品は “ライセンス条項” が設計・運用・コストに直結 します。ここを曖昧にしたままマルチクラウドを語ると、最後に詰まるのは決まって「説明責任」「契約」「費用」です。 技術者目線で見る「今回の論点
山崎行政書士事務所
2 日前読了時間: 7分


助の字
朝の井戸は、まだ冷たい音を抱えていた。 つるべの木が、水の重さを思い出す前の静けさ。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 「まちばこ」のふたが、ほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの困りごとが入った印だ。 母がふたを開ける。 中には、小さな紙。 角が丸く折ってある。 丸い角は、刺さらない。 母の目が、紙の文字を追って、そこで止まった。 いどの なわすれて こわいよかったらみてくださいひらた すれて、こわい。 縄がこわい、じゃなくて――縄が切れるのがこわい、ってことだ。 切れると、水が落ちる。 落ちる音は、胸に刺さることがある。 幹夫の胸の奥が、ぽん、と鳴った。 鳴ったのは、平田さんの“こわい”が胸に届いた音。 鳴ったから、息。 ――いき。 父が縁側の端から顔を出した。 紙を読む前に、いったん置き布の上へ置いてから、指の腹で端を撫でる。 撫でると、紙が暴れない。 父の目が「いどの なわ」で止まる。 止まると、肩がふっと上がりかける。
山崎行政書士事務所
2月19日読了時間: 9分


頼の字
朝の「まちばこ」は、ふたがほんの少しだけ浮いていた。 浮いているのは、誰かの気持ちが入った印だ。 幹夫は縁側のふちで、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 ふたを開けると、紙が一枚。 角が、急いだみたいに尖っている。 尖った角は、胸に刺さりやすい。 母が台所の境目から、湯気の匂いを連れて言った。 「組の紙だに。……今朝、回しとる」 父が紙を読む。 読む前に、いったん置き布の上へ置く。 置いてから、指の腹で端を撫でる。 撫でると、紙が暴れない。 さら。 父の目が、途中で止まった。 今夜 拍子木当番(○○さん) よろしく頼みます 「頼みます」。 その文字が、紙の上でちょっと重そうに座っている。 父の肩が、ふっと上がりかけた。 上がりかけて――止まる。 止まった「間」に、父は懐へ触れて、丸い角のま札を撫でた。 ふう……。 「……今夜、か」 母は頷く。 頷きは、急がない。 「うん。……順番だに。頼まれたら、断れん。けど、抱えこむのも違うだに」 抱えこむ。 抱えこむと、胸が固ま
山崎行政書士事務所
2月19日読了時間: 10分


与の字
朝の台所は、干物の匂いがいちばん先に起きていた。 火にかけた鍋の湯気より先に、あの、海と塩と日なたの匂い。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 ちゃぶ台の上に、清水屋のおばさんから受け取った“端っこ”が並んでいる。 端っこなのに、きらっと小さく光る。 小さな光は、少しだけ「もったいない」を連れてくる。 母が、欠けた椀――今は塩の皿――から指先で塩をつまんだ。 つまむ指が、急がない。 急がない指は、刺さらない。 「これな、ちょっとだけ塩して焼く。……でな」 母は干物を見ながら、声を落とした。 「平田さんとこにも、少し持ってくかね」 平田。 回覧板の最後に名前があった家。 “最後”って言葉は、なんでも少しだけ重くする。 幹夫の胸がぽん、と鳴った。 鳴ったのは、うれしさと不安の混ざった音。 混ざった音は走りやすい。 走る前に、息。 ――いき。 父が縁側の端で、袖口の返し縫いを指でなぞっていた。 父の目が干物に落ちて、そこで止まる。 止まると、肩がふっと
山崎行政書士事務所
2月19日読了時間: 11分


受の字
朝の戸口に、控えめな影が立った。 影は鳴らない。 鳴らないのに、家の空気が一枚だけ、そっとめくれる。 とん、とん。 木を叩く音。 小さい音。 小さい音は眠る。 幹夫は縁側のふちで、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 母が戸を開けると、清水屋のおばさんが立っていた。 味噌と干物の匂いが、外の風に混ざっている。 「おはようだに。昨日は回覧、助かったで」 おばさんの手には、小さな包み。 紙じゃなくて、布。 布はやさしい。 でも、布の中には“重さ”がある。 母が一瞬、受け取る前に止まった。 止まるとき、胸の中に線を引いている。 「そんな……ええよ。気にせんで」 “ええよ”は、返す言葉。 でも、おばさんは包みを引っ込めなかった。 引っ込めない手は、お願いの手だ。 「うちの干物の端っこだに。端っこでも、あると助かるだら。……受け取って」 受け取って。 その一言が、幹夫の胸の奥をぽん、と鳴らした。 ぽん。 鳴ったから、息。 ――いき。 母の手が、前へ出そうになって、でも“掴む”手
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2月19日読了時間: 9分


返の字
朝の「まちばこ」は、今日は少しふくらんでいた。 空っぽの箱が、何かを抱えている。 抱えていると、家の中の空気も、ひとつ息を入れやすくなる。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 母が台所の境目から、湯気の匂いを連れて言った。 「みき、まちばこ、見てみ」 幹夫は箱のふたを、いきなり開けなかった。 ふたの端を、指の腹でそっと触ってから、少しだけ持ち上げる。 “門”みたいに、ちょうどよく開ける。 中にあったのは、回覧板。 きのう清水屋に置いてきたはずの板が、戻ってきている。 戻ってきた板は、少しだけ匂いが増えていた。 味噌の匂い。 干物の匂い。 人の手をいくつか通った匂い。 匂いは、届いた匂いでもある。 ――いき。 回覧板の上に、紙が一枚、折って挟んであった。 折り方が、少し硬い。 硬い折り方は、急いだ折り方だ。 紙には、短い字が書いてある。 組長さんへ返却 (最後 蒲原の平田) 返却。 返す。 返す、は、怒られる匂いが少し混ざる日がある。...
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2月19日読了時間: 10分


届の字
朝の「まちばこ」は、今日は空っぽじゃなかった。 薄い板が、ひとつ――角を丸くして、そっと入っている。 回覧板。 木の匂いと、紙の匂い。 匂いは静か。静かなのに、胸の奥をくすぐる。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 母が台所の境目から、湯気の匂いを連れて言った。 「みき、これ……きのう夜に回すはずだっただに。黒布で手がふさがってて、うっかりした」 うっかり。 母の「うっかり」は、責める匂いじゃない。 人の手は、たまに落とす、っていう匂い。 父が縁側の端で、袖口の返し縫いを指でなぞっていた。 指が止まって、少しだけ息が遅れる。 ふう……。 「……次の家、清水屋だな」 母が頷く。 「そうだに。朝のうちに届けんと、次が動かん」 次が動かん。 次の次まで止まってしまう。 それは、糸が切れるのと似ている。 幹夫の胸の奥が、ぽん、と鳴った。 鳴ったのは、責任の音。 責任の音は、走りやすい。 走る前に、息。 ――いき。 「……ぼく、届ける」...
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2月18日読了時間: 10分


伝の字
朝の光は、戸のすき間から入ってきて、畳の目を一本だけ白くした。 一本の白は、線みたいだ。 線があると、今日が始まる場所が分かる。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 ちゃぶ台の端の「まちばこ」に、今朝は紙が一枚入っていた。 白い紙。 白いのに刺さらないように、角が折ってある。 母の折り方。掴まない折り方。 「学校の、お知らせだに」 母が言った。声が急がない。 紙には、太い字で書いてある。 今夜 灯火管制 合図 拍子木先生より 家の人へ 家の人へ。 それは、紙が歩いていく言葉だ。 歩いていく言葉には、転びやすいところがある。 途中で、違う顔になってしまうところ。 父がその紙を見て、肩がふっと上がりかけた。 上がりかけて――止まる。 止まった「間」に、幹夫は息を入れた。 ――いき。 父は懐のま札に触れて、ふう、と吐いた。 ふう……。 「……先生から、か」 母が頷く。 「そうだに。……学校からのは、ちゃんと伝えんといかん。道中で“らしい”にせん」.
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2月18日読了時間: 10分


聞の字
戸の外で、紙の角がこすれる音がした。 こすれる音は小さい。 小さいのに、家の中の空気を一枚だけめくる。 ――いき。 「回覧(かいらん)だに」 母の声が、台所の境目から落ちた。 落ちた声は尖らない。尖らないと、朝が暴れない。 父が戸を少し開けて、薄い板みたいな回覧板を受け取った。 受け取る前に、いったん置き布の上へ置く。 置いてから、端をそっとつまむ。 掴まない。掴まないと、胸も紙も荒れない。 とん。 小さい音。 小さい音は眠る。 幹夫は縁側のふちで、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 父が回覧板の紙をめくる。 さら。 紙の音。 乾いた音。 乾いた音は、胸の奥の硬いところを起こしやすい日がある。 父の肩が、ふっと上がりかけた。 上がりかけて――止まる。 止まった「間」に、幹夫の胸は勝手に鳴った。 ぽん。 鳴ったから、息。 ――いき。 父の目が、紙の一行で止まった。 今夜 警戒 灯火管制合図 拍子木 半鐘 (各組) 灯火管制。 警戒。 合図。 言葉が並ぶと、紙
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2月18日読了時間: 11分


間の字
踏切の向こうから、音が先に来た。 カン、カン、カン。 金属の音。 乾いた音。 乾いた音は、胸の奥の硬いところを起こしやすい。 幹夫は首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 父と並んで、踏切の手前で止まる。 止まると、音が近くなる。 近くなると、肩が上がりやすい。 父の肩が、ふっと上がりかけた。 上がりかけて――止まる。 止まった「間」に、父の指が懐へ行って、丸い角の札に触れた。 ふう……。 「……踏切の鐘だ」 父が口の中で言った。 名前を置く。 置けると、音は音のままで座る。 でも鐘は、座らない。 カン、カン、カン。 小刻みに、ずっと続く。 幹夫の胸がぽん、と鳴って、鳴ったまま忙しくなりそうだったから、息を入れた。 ――いき。 そのとき、幹夫は気づいた。 鐘と鐘のあいだに、ほんのちょっと―― 音がないところがある。 カン、……カン、……カン。 ……のところ。 そこだけ、耳が休める。 幹夫は小さく言った。 「……父ちゃん。……ここ」 父が一瞬だけ幹夫を見る
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2月18日読了時間: 8分


線の字
朝の風が、軒下の貝殻を起こした。 ちい。 ちい。 眠った音。 眠った音は、刺さらない。 刺さらない音は、家の中の角を丸くする。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 軒の先――燕の巣の前に張った貝殻の糸が、風で小さく揺れている。 揺れるものは、不安も揺らす。 でも、揺れるものは、守りも揺らす。 父が、その糸の“端っこ”を指でなぞっていた。 なぞる指は荒くない。 荒くないのは、息が通っている指だ。 父がぽつり。 「……糸、ゆるんだな」 ゆるんだ。 ゆるむのは、悪いだけじゃない。 でも、守りの糸は、ゆるみすぎると隙になる。 父の肩が、風の音でふっと上がりかけて――止まった。 止まった「間」に、幹夫は息を入れた。 ――いき。 父が口の中で小さく言った。 「……風の音だ」 名前を置く。 置けると、音は音のままで座る。 ふう……。 父は糸をいきなり引っぱらない。 引っぱると結び目が固まる。 固まると、解けなくなる。 解けなくなると、胸も固まる日がある
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2月18日読了時間: 10分


守の字
朝の軒下は、潮の匂いがまだ眠ったまま座っていた。 眠った潮は、冷たいのに刺さらない。 ちち、ちち。 燕の声が、巣の奥から小さく漏れてくる。 漏れてくる音は、家の中の“やわらかいところ”を起こす。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 そのとき、燕の声とは違う音が、屋根の端に落ちた。 カァ。 黒い声。 黒い声は、光より先に胸へ来る。 幹夫の胸の奥が、ぽん、と鳴った。 鳴ったから、息。 ――いき。 見上げると、軒の先――守りの網のすぐ外に、烏が止まっていた。 目が、巣のほうを見ている。 見る目が、丸くない。 “狙う”目だ。 幹夫の喉の奥が熱くなった。 熱いと走りそうになる。 走る前に、息。 ――いき。 「……だめ」 声は小さい。 小さいのに、胸の中で必死だ。 烏がもう一度鳴いた。 カァ。 父の肩が、家の中でふっと上がりかけた。 上がりかけて――止まる。 止まった「間」に、幹夫は父の背中を見る。 父は縁側の端から出てきて、烏を見た。 見
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2月18日読了時間: 9分


許の字
朝の台所は、味噌の匂いがいちばん先に起きていた。 湯気は白くて、白いのに刺さらない。 白い湯気は、胸の奥の角をそっと丸くする。 幹夫は縁側のふちに座って、首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 袋の口の蝶結びは、きのうより少しだけほどよく揺れていた。 ほどよい、って、たぶん“許されてる”揺れ方だ。 ぎゅっと縮んでない。 抜けないのに、息が通る。 台所から、母の声が落ちた。 「みき、汁運ぶかい? 熱いでな、ゆっくりだに」 運ぶ。 運ぶって言葉は、胸の中でちょっとだけ背伸びする。 背伸びすると、うれしい。 うれしいと、走りそうになる。 走る前に、息。 ――いき。 「……うん。……ゆっくり」 母は椀を両手で持って、いったん置き布の上に置いた。 置いてから、幹夫の手のひらの位置を確かめる。 「ここ、受け皿にして。掴まん。……置く手だに」 置く手。 受ける手。 幹夫は椀を持ち上げる前に、指の腹でふちをそっと触った。 熱い。 熱いときは、急がない。 急ぐと、胸も手も暴れる。 ――いき。
山崎行政書士事務所
2月18日読了時間: 10分


解の字
朝の光は、昨日より少しだけ薄かった。 薄いのに、冷たくない。 冷たくない薄さは、胸の奥の角をそっと丸くする。 縁側の端で、幹夫は首の布の袋を掌で押さえた。 揺れても鳴らない石。 鳴らないのに、ちゃんと重い。 ――いき。 袋の口に結んだ麻紐の蝶結びが、今日は少しだけ固い顔をしていた。 きのうは、ほどよく揺れていたのに。 たぶん、夜のあいだに、布団の中で押されて、結び目が小さく縮んだ。 縮むと、ほどけにくい。 ほどけにくいと、胸も少しだけ縮む。 幹夫は、結び目を引っぱりそうになって――止まった。 止まった「間」に、息を入れる。 ――いき。 母が台所の境目から、湯気の匂いを連れて言った。 「みき、結び、固いかね」 幹夫は、すぐ「うん」と言う前に、指で結び目の端っこをそっと撫でた。 撫でると、糸が怒らない。 怒らないと、ほどける道が見える。 「……ちょっと、固い」 母は笑わない笑いで言った。 「固いときは、引っぱらん。……端っこを探して、息だに」 端っこ。 端は、逃げ道。 逃げ道があると、心は潰れない。 父が縁側の端から顔を出して、
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2月18日読了時間: 11分

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