それは禁断の甘さ?! シャインマスカット・クレープ狂騒曲
- 山崎行政書士事務所
- 1月23日
- 読了時間: 7分

登場人物
岡田(おかだ)いずみ:
30代OL。スイーツ好きで、新作には目がない。
服部(はっとり)真琴:
いずみの先輩。やや毒舌だが面倒見が良い。
店長:
Afternoon Teaの店長。やけにテンションが高い。
謎の青年「緑の貴公子」:
シャインマスカットマニアで、クレープケーキに尋常でない執着を持つ青年。
第一幕:きっかけはインスタの写真
「先輩! 見てください、コレ!」昼休み、社内の休憩スペース。岡田いずみはスマホを服部真琴の目の前につきつけた。「ん? 何、またスイーツ? お腹減ってるときに見せないでよ~」服部がやる気なさそうにひょいと画面に目をやると、そこには目を見張るような緑のフルーツが美しく並んだミルクレープケーキの写真が映っている。しかもキラキラした加工付き。
「Afternoon Teaの期間限定『シャインマスカットミルクレープケーキ』ですって! 私、ミルクレープ大好物なんですよー。しかもシャインマスカットなんて最高じゃないですか! ほら見て、この瑞々しさ…」「ああ、これか。最近SNSですごい話題だよね。でもアフタヌーンティーの新商品って激混みらしいわよ?」「それでも食べたいんです! だってシャインマスカットって、あの高級フルーツの代名詞ですよ? ぶどう界のキングですよ? しかもケーキに乗っかってるとか…もう脳内カーニバルですよ!」「わかったわかった。落ち着きなさい。そんなに好きなら、一緒に行く?」服部が苦笑しながら提案すると、いずみは満面の笑みで「ぜひ!」と手を叩いた。
第二幕:Afternoon Teaへ突撃
その週末。二人は開店前のAfternoon Teaに向かった。「うわ、もう並んでる人がいる…」服部が前を見て唖然とする。朝イチだというのに、すでに長蛇の列。
「これは…まるでコンサートの物販並みじゃないですか…!」いずみは目を丸くしながらも、並ぶのをためらわない。「さっさと並んで、サクッと買ってサクッと食べて帰りましょ」「はい!」
開店と同時に列が動き始め、ワクワクしながら店内へ。ところが――「申し訳ありません、ただいま入荷が少々遅れておりまして、“シャインマスカットミルクレープケーキ”は数量がわずかなんです。先着10名様までのご案内になっております」と店員がアナウンス。「じゅ、10名様!? そんな! こんなに並んでるんだよ!?」服部が目を剥く。いずみは列の人数をざっと数える。自分たちはギリギリ…どうだ…? いや、10番目よりも後ろくさい…。
「わああああ、先輩! あとちょっとで手が届かないかもしれない…!」「ま、まだわからないわよ、ほら行くわよ!」
小走りで店内に入ると、案の定、ケーキカウンター前は押し寄せる客で大混雑。「ぐおおお、あそこにフォークを構えて待ってる人がいるし!」いずみが指差す先を見ると、まるでバトル漫画の主人公のような険しい表情でフォークを握りしめる客が。
第三幕:出会いの衝撃「緑の貴公子」
そんな混沌の中、いずみと服部はどうにかカウンターの近くへ辿り着く。すると突然、背後から声がした。「あなたも“シャインマスカットミルクレープ”狙いですか…?」振り向くと、爽やかな緑色のストールをたなびかせた青年が、何故かキラキラオーラを放って立っている。
「えっ…まあ、はい…そうですけど…?」「それは良かった。僕もなんですよ。いやあ、マスカットの香りは青春の香り、清流が流れる山奥の一粒の輝き…!」いきなりポエムを朗々と語り始める青年に、いずみと服部は完全にポカーン。
「だ、誰なんですか? というか、こんな混んでる店内でポエム読み上げないでください」服部がツッコミを入れると、青年は胸に手を当てて自己紹介。「自分、シャインマスカットを愛しすぎて“緑の貴公子”と呼ばれております。お二人も同士とお見受けし、つい親近感が…」「同士…?」「ええ、だってあなた方、目が“マスカット色”に輝いてますから…!」「いやどこ見てんのよ!」
青年のテンションに少し飲まれかけたいずみと服部。だが、ケーキを手に入れることが先決。
第四幕:最後の1ピースをめぐる死闘
レジの近くにあるショーケースを見やると、店員が申し訳なさそうに叫んでいる。「シャインマスカットミルクレープ残り1ピースです! 残り1ピース!」
「……は?」店内が一瞬静まり返る。次の瞬間、争奪戦の嵐が吹き荒れた。「キャーーー!」「私が先よ!」「あと一個!? 嘘でしょ!?」服部といずみは、一瞬ハッとしてお互いに目を合わせる。「先輩…どうします?」「ど、どうするって言われても…!」
そこへ“緑の貴公子”がすかさず割り込んできた。「お嬢さん、最後の一個を争うなら、僕に譲ってくれませんか? 代わりにあなた方には、わたくしの秘蔵マスカットジャムを…」「いらないです!」服部が即答。いずみも必死の形相で、「私、ずっと楽しみにしてきたんです! 譲れませんっ!」
すると店内の客たちもそれぞれに「いや自分だって…」「私は前から並んでたんだ!」と声を上げ、もう目も当てられない混乱状態。その時、「お静かにお願いします!」と店長がカウンターの奥から姿を現した。めちゃめちゃテンション高い。「皆さま、最後の1ピースということで、大変心苦しいのですが…こちら“抽選”で決めさせていただきます!」
第五幕:激闘・くじ引き勝負
店長の提案により、シャインマスカットミルクレープの最後の1ピースは“特別くじ”で当選した人だけが買えることになった。「さあ、こちらに皆さんの名前を入れますので、順番にクジを引いてくださいませ~!」まるでお祭りのように、カラフルなガラガラ抽選器が登場。お客たちは次々と名前を記入していく。いずみも服部も忘れずにエントリー。もちろん“緑の貴公子”も参戦。
ガラガラガラ……カラカラカラ……ドキドキしながら見守る中、一人目、二人目、三人目……「ハズレです」「ハズレです」。店員の無情な宣言が続く。
そして店長が、次の球を取り出した。「さあ、この色は……ピンク! お名前は……岡田いずみ様!!」「えっ……嘘っ、本当ですかっ!?」いずみは思わず悲鳴のような歓声を上げ、周囲の人々は落胆の声を漏らす。「くっ…運命という名の女神は彼女に微笑んだのか…」と“緑の貴公子”が膝から崩れ落ちる。
「いずみ、良かったじゃない! おめでとう!」服部が祝福すると、店長もニコニコ顔。「では、岡田様、ご購入の手続きをお願いいたします。あとついでに“貴公子”さんにも感謝の拍手を~」「何で僕だけ拍手!? いらないいらない!」
第六幕:歓喜の一口
こうして、いずみは“シャインマスカットミルクレープケーキ”を無事購入。服部と二人、店内のイートインスペースで早速いただくことに。「いただきまーす……んんっ、なんじゃこりゃあ! おいしい…!」口に運んだ瞬間、みずみずしいシャインマスカットが生クリームとクレープ生地に絡まって、至福のハーモニーを奏でる。
「うわー! これヤバいね。甘さ控えめで果汁感が半端ない!」服部もその贅沢な味わいにうっとり。「このジューシーさ、一切種もないし、皮ごとパリッと食べられるのが最高すぎます…!」いずみは思わず目を閉じ、感激の表情。
すると、横からスッと何者かの陰が…。「……すみません、ひと口だけ…だめでしょうか…」声の主は、“緑の貴公子”だった。涙目になっている。
「いや、さすがにそれは…他人のケーキをつまみ食いはダメでしょ」服部が即ツッコミ。「それなら僕が持ってきたマスカットジャムと交換とか…」「だからいらないって!」
第七幕:エピローグ~奇跡の追加発注~
ところがその直後、店長がバタバタと駆け寄ってくる。「皆さま、お騒がせしました! 先ほど電話が入りまして、追加でシャインマスカットミルクレープが今届きました!!」「えっ!?」「やったああああ!」店内のお客たちが歓喜に沸く。机に突っ伏していた“緑の貴公子”もガバッと顔を上げる。「し、しんじられない…さっきまで最期の一切れだと…これは希望の光…!」
「良かったですね、貴公子さんも食べられますよ。どうぞゆっくり堪能してください」服部がやれやれという表情で声をかけると、貴公子は涙を浮かべながら店長に走り寄る。「ありがとう、ありがとう! 今日という日は生涯忘れません!」
いずみはそれを横目に、再び自分のケーキを一口。「…うん。何かハプニングもあったけど、このケーキの美味しさは格別ですね」「ほんとね。朝イチで並んだ甲斐あったわ。まあ、最後にちゃんとみんな食べられそうで良かったけどね」
店内はあの混乱が嘘のように、シャインマスカットミルクレープに酔いしれる幸せな空気に包まれている――。「うん、この甘さなら、なんでも許せちゃう気がする…」そう言って、いずみは一口また一口。舌の上で踊るシャインマスカットが、まるで祝福のファンファーレを鳴らしているかのようだった。
そして、いつの日か…
後日、いずみたちはSNSでとんでもない写真を目にする。そこには“緑の貴公子”が満面の笑みで、シャインマスカットミルクレープをホール買いしている姿が映っていた。キャプションにはこう書かれている。
「僕の愛を証明するために、ホールで購入。これで世界は緑に包まれる!」
「いや、どんだけ好きなんだよ!」二人は爆笑しながら、“緑の貴公子”の伝説を語り継ぐのだった。
――甘くてジューシー、そしてちょっぴり波乱含み。Afternoon Teaの“シャインマスカットミルクレープケーキ”は、たくさんの笑いと幸せを運ぶ魔法のスイーツなのかもしれない。





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