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ローマのアーバン近所――日常に息づく歴史とモダン

  • 山崎行政書士事務所
  • 2月3日
  • 読了時間: 4分

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 ローマと言えば、コロッセオやパンテオンなどの古代遺跡を連想する人が多いかもしれない。しかし、この街には、観光名所から少し外れたアーバンな近所(quartiere)が数多く存在する。そこには古い建物と新しいグラフィティ、オシャレなカフェや屋台のフードトラックが共存し、今を生きるローマの若者や家族たちの暮らしぶりを垣間見ることができる。

1. モダンとレトロが同居するサン・ロレンツォ地区

 ローマの中心部からバスやトラムで少し移動した先にあるサン・ロレンツォ(San Lorenzo)は、大学が近いこともあって若者が多く集まる地区だ。石畳の路地を抜けると、落書きと呼ぶにはあまりにも完成度の高いグラフィティが壁一面を彩っている。 カフェやバー、ピッツェリアが並び、夕方になると軒先にはテーブルが出て、学生やアーティストたちがアペリティーボ(食前酒)を楽しみながらおしゃべりに興じている。建物自体は古めかしく、窓枠に吊るされた洗濯物もまた絵になる風景の一部だ。

2. ガルバテッラの温かい共同体

 一方、ガルバテッラ(Garbatella)は、1920年代に建てられた労働者向け住宅地がルーツの地区だ。緑豊かな中庭を囲むようにレトロな建物が並び、アーチや小窓が可愛らしい外観を作り出している。 朝には子どもたちが自転車で通学し、路地で挨拶を交わす老人たちの姿が見られる。誰もが顔見知りのように振る舞い、パン屋や八百屋も昔ながらの対面販売を続けている。新しいカフェやデザイナーショップが増えてきているが、今も昔のコミュニティ精神が色濃く残る場所だ。

3. テスタッチョの市場と夜のカルチャー

 テスタッチョ(Testaccio)地区は、かつて食肉市場があったことからグルメの街として知られている。現代では、オシャレなクラブやライブハウスが入り混じり、昼と夜でまったく違う顔を見せる。 昼間は新しい屋内市場(Mercato di Testaccio)で新鮮な野菜や肉、魚が売られ、地元の主婦やシェフたちが活気ある声を交わす。トラットリアでは、ローマの郷土料理を味わうことができ、とくに「coda alla vaccinara(牛の尻尾の煮込み)」など、昔ながらのメニューが愛されている。 夜になると、倉庫を改装したクラブやバーがオープンし、若者から大人までがDJイベントやライブを楽しむ。石畳の路地を歩いていると、音楽が様々な方向から響き、街自体が一つのステージのように感じられる。

4. オスティエンセとストリートアートの融合

 オスティエンセ(Ostiense)は、かつての工業地帯をリノベーションしたエリアで、大胆なストリートアートとモダンなビル、そして廃工場跡を改装したギャラリーなどが点在している。 遠くにはガスホルダー(旧ガスタンク)の円筒状の鉄骨がランドマークとしてそびえ、そばの壁にはカラフルな壁画が描かれている。土日にはフリーマーケットが開催され、若いアーティストたちが手作りアクセサリーや古着を売り出す光景が見られる。 近代的なショッピングモールと、昔ながらのバールが同じ通りに混在しているのも面白い。まさに「古代都市ローマが持つ新しい表情」を体現したような場所だ。

5. 地下鉄とバス、トラムを乗り継ぎながら

 ローマの公共交通機関は必ずしも便利とは言えないが、地下鉄やバス、トラムを上手に使えば、こうしたアーバン近所をいくつも巡ることができる。慣れない人にはわかりにくい路線も多いが、そのぶん発見や小さな冒険が待っているとも言える。 路地に迷い込めば、古代遺跡の一部が突然姿を現すこともあるし、モダンなビルの谷間から中世風の鐘楼が覗くことも。そうしたコントラストを満喫するには、何度も足を運び、ゆっくり歩き回るのが一番だ。

エピローグ

 古代の栄光とバロックの華麗さだけではない、ローマのアーバン近所には、若者のエネルギーや職人たちの息遣いが活き活きと漂っている。 サン・ロレンツォで深夜までバーを巡り、ガルバテッラで古き良きコミュニティを感じ、テスタッチョでお腹いっぱい郷土料理を堪能し、オスティエンセでストリートアートを眺める。そんな多面的なローマを知れば、必ずやこの街の虜になるだろう。 石畳に刻まれる歴史を踏みしめながら、新しい感性が息づくローマのアーバン近所。そこには未来を紡ぐ人々の物語が、今日も続いている。

(了)

 
 
 

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