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昭和15年

  • 山崎行政書士事務所
  • 5月7日
  • 読了時間: 39分

序幕:新年の実感なき戦火の影

 昭和十四年末を、東京の印刷所は軍の徹夜印刷に追われるまま無感覚に越してしまった。 日中戦争は泥沼から抜け出す見通しもなく、国民総動員法は社会の隅々まで浸透し、人も物も戦争に捧げる状況が続く。 下町では正月気分などほとんど見られない。印刷所の職人たちも徹夜が常態化しており、迎えた昭和十五年(1940年)一月も“戦時の歯車”から逃れられない現実に沈むしかなかった。

第一章:新春の呼び声と軍の年始依頼

一月上旬、印刷所には早速「新春にもかかわらずさらなる戦意を鼓舞する」旨のポスターやチラシの大口依頼が押し寄せる。

  • 「この戦争を勝ち抜くため、国民の気持ちを一つに」といった文面を大々的に掲げ、年始行事の代替として愛国行事や献納、出征兵士の送り出しを呼びかける印刷物が多い。

  • 社長は「もはや年始も何もない。ひたすら軍の印刷だけ」と顔色を失い、戸田は「スケジュールが詰まりすぎて、職人たちをどう回せばいいか……」と苦渋をにじませる。

 幹夫は機械の前で淡々と紙を流し、徹夜のまま朦朧としながら「新年になっても同じ生活が続くだけか」と思う。堀内は用紙在庫や警察報告に追われ、職人たちは正月など忘れ去って軍事印刷に没頭するしかない。

第二章:静岡の父、年明けの諦観

一月中旬、幹夫が下宿へ戻り、父(明義)からの葉書を読む。

  • 「この地も正月らしきものはなく、軍施設が拡張されるばかり。畑はついに大半を放棄する形になり、茶の収穫などほんのわずかしか望めない。

  • 若者は兵役でいないまま、年寄りと女手も疲れ果てている。来月には新たな施設用地の話もあり、わしはもう、何のために生きてるのか分からんよ……。おまえも身体を崩さぬよう」

 幹夫は深い嘆息をつき、「父さん……もう茶畑がほぼ失われたんだな……。でも俺はここで軍のポスターを刷る以外できることがない……」と胸が痛む。 夜、窓を開けても冷たい風が入り込むだけで、二つの風鈴はわずかに揺れるが音を出さない。「もうあの音も消えたのか」と呟き、数時間後の徹夜に備えて眠る。

第三章:警察の年始巡回、徹底する統制

一月下旬、警察が年明けの“秩序確認”と称して印刷所を巡回し、相変わらず「軍命令を最優先しているか」「紙の配給は正しく使われているか」を細かくチェックする。

  • もはや反戦ビラも民間印刷も皆無で、疑われる要素はないが、形だけの監視がより厳格に行われ、帳簿や在庫管理の負担は増すばかり。

  • 社長は「どうせ何も問題ないが、この書類作業が徹夜に拍車をかける……」と疲労困憊の面持ち。戸田と堀内も「新年早々どこまで苦しめられるのか」と互いの顔色を見合わせる。

 幹夫は機械音の中で意識を半分失いながら、「父さんの茶畑はほぼ失われ、自分はここで戦争を一日延命する印刷をしているのか」と心の底で呻くが、それを言葉にする気力もない。紙にインクを落とし続けるしか術はないのだ。

第四章:夜風の凍える音、風鈴の一瞬

月末、気温はますます下がり、東京の夜は乾いた空気が吹き付ける。幹夫が深夜に印刷所から帰宅したとき、窓を開けてみるが、冷風しか入らない。

  • 二つの風鈴が僅かに触れ合い、一瞬だけチリンと小さな音を立てるが、それはすぐに止む。

  • 幹夫は「もう音すら出なくなるんじゃないか……」と悲嘆し、「父さんの畑がなくなるのも、ここでの徹夜が永遠に続くのも、止められないなんて」と悔しさをこらえる。

 すぐに布団へ落ちるように眠り、数時間後にはまた軍用紙の待つ工場へ向かわねばならない――それが昭和十五年最初の月の終わりだった。新しい年といっても、戦争の歯車が回り続ける日々に変化はなく、ただ時間を削り取られていくだけなのだ。

結び:戦いが止まらぬ中の新年

昭和十五年一月、日本は日中戦争の泥沼から抜け出せず、総動員を強化。

  • 東京の印刷所は軍の大量印刷を休みなくこなし、警察の監視に従うしかない。

  • 静岡の父はついに茶畑の大半を事実上放棄せざるを得なくなり、戦争がもたらす破壊を身にしみて感じている。二つの風鈴が夜更けにチリンと鳴る瞬間だけが、かつて繋がっていた平穏な日々をほんのわずか思い起こさせるが、そこに戻る道は見えない。新しい年がもたらすものは、いまのところさらなる戦争の重圧でしかなく、幹夫と父はそれぞれの場所で見通せぬ戦火に耐えている――そんな初春の夜風だけが、わずかに二つの鈴を揺らすのだった。


序幕:冬の終わりを感じさせない戦時

 一月に入っても日中戦争の泥沼は変わらず、日本国内はより一層の総動員体制へと舵を切ったまま。 下町の印刷所は、新しい年が始まった感覚をほとんど味わえず、軍の大量印刷をこなすために休む間もなく機械を回している。 ラジオが「大陸の制圧はあと一息」「奥地まで進撃を続ける」と声高に報じる一方、現場では国民へのさらなる負担が強いられ、昭和十五年(1940年)二月の空気は相変わらず戦争一色に染まっていた。

第一章:途絶えない軍の大口依頼

二月上旬、印刷所にまたしても軍からの新規依頼が届く。「戦果を拡大する」という宣伝を国民に周知するためのポスターや、兵士募集の呼びかけチラシなど――膨大な量を短期で仕上げるよう命じられる。

  • 社長は「年始から休みなし。職人たちが次々倒れる寸前だ……」と嘆きつつ、軍を拒否する術はない。

  • 戸田はスケジュールと紙の配給を調整し、堀内は警察への報告書類を整える。幹夫は機械の前で、身体の疲労を超えて淡々と作業するしかない日々。

  • 徹夜が続くため、職場では仮眠用の簡素な布団が隅に常備され、誰もが休憩は数時間単位となっていた。

第二章:静岡の父、冬越しの苦悩

二月中旬、幹夫が下宿に戻った深夜、父(明義)からの手紙を手にする。

  • 「茶畑を諦めかけているが、わずかな茂みをどうにか維持している。だけど軍施設の圧が強く、町全体が“戦時奉仕”を叫んでいて、もう畑どころではない。

  • 寒さの中、年寄りと女手で耐えているが、春先の耕作がどこまでできるか不明だ。……おまえも徹夜続きと聞く。無理するな。」

 幹夫は目を伏せ、「父さん……茶畑がほぼ消えたのに、それでも耕してるのか」と胸を締めつけられる。 夜、下宿の窓を開けると冷たい風が流れ込み、二つの風鈴がほんのわずかに揺れるが、音は出ない。「もう、あの音も出せないか」と呟き、再び短い眠りに落ちる。翌朝にはまた機械が呼んでいるのだ。

第三章:警察の監視、さらなる帳簿作業

二月下旬、警察から「今月の紙使用報告を詳しく出せ」と通達があり、印刷所は精密な帳簿をまとめねばならない。

  • 軍向け印刷しかしていないにせよ、用紙の一枚一枚の使用計画や実績を書類にし、少しでも違算があれば疑われかねない。

  • 社長は「これでは仕事に集中できん」と頭を抱えつつ、戸田と堀内も仕事の合間に膨大な書類を作るはめになる。

 幹夫はそんな書類作業を横目で見ながら、ひたすら印刷機を回す。彼は「父さんの畑ももう終わりかもしれない。俺たちも紙を刷る歯車として生きているだけ……」と、ふいに涙をこぼすが、誰も気づかず機械の轟音が続くだけだった。

第四章:夜の冷気、風鈴のかすかなる再会

月末、東京の夜はまだ冬の寒さを残している。

  • 幹夫が徹夜の合間に下宿へ戻り、窓を開けると、冷たい風が部屋を通り抜け、二つの風鈴チリンと短く響く瞬間があった。

  • その一瞬だけ、かつて父と語り合った緑の畑や民間印刷でにぎわった職場を思い出すが、それもすぐに現在の絶望が上書きする。「俺は戦争の印刷を続けるだけ、父さんは畑を失ったまま……」という苦い思いが胸に広がる。

 音はすぐに止み、幹夫は布団に倒れ込む。「これが昭和十五年二月か。もう、何のための季節の移ろいか分からない……」と唇を噛む。翌朝にはまた機械の前へ――この繰り返しに疲れ切った身体を奮い立たせるしか道がない。

結び:寒き冬を越えても続く戦時

昭和十五年二月、日中戦争の泥沼から逃れられず、東京の印刷所は軍需の徹夜を延々とこなし、警察の監視と書類作業に明け暮れる。

  • 静岡の父は茶畑をほとんど失い、それでもわずかに残る芽に望みをかけようとしているが、軍施設のさらなる拡張で自由は奪われている。

  • 幹夫は印刷機に身を置きながら、遠い昔の平穏を思い出すも、もはやそれを追いかける気力さえ薄れつつある。

夜の冷たさが去るまであと少し――しかし、暖かな春が来たとしても、この戦争が終わる保証は微塵もない。下宿の二つの風鈴がかすかにチリンと鳴る刹那だけが、幹夫を“まだ息をしている”と感じさせる最後の頼りだが、その音すら戦時下の轟音にかき消されそうなほど弱々しい。昭和十五年の冬、未だ長く終わりは見えないのであった。


序幕:春の気配と鎖された現実

 二月まで徹夜に追われつづけた東京の印刷所。日中戦争は泥沼に入り込み、国内総動員の圧力が厳しさを増すばかり。 世間では「新体制」「国民一致」などと叫ばれ、警察と軍の命令が紙や印刷を細かく管理している。 昭和十五年(1940年)三月、暦の上では春になり始めるが、幹夫や戸田、堀内、そして社長らは、徹夜の軍印刷生活から一歩も抜け出すことができないままだ。

第一章:増える兵士募集と戦果報告

三月上旬、印刷所には「兵士募集のさらなる呼びかけ」や、「大陸奥地での戦果拡大」といったポスター・チラシの大量依頼が届く。

  • 部数は以前よりさらに多く、納期は極めて短い。職人たちの疲弊は、前年からの延長戦のように深刻化している。

  • 社長は「休みなしで誰がこんな量を刷れる?」と苦悶するが、拒否すれば営業停止の恐れ。戸田は無言でスケジュールを組み、堀内は配給紙の帳簿をまとめて警察に報告し、幹夫は機械に向かうしかない。

 民間案件など存在しないのが当たり前になり、印刷所は完全に“戦争の歯車”として徹夜に明け暮れる。夜と昼の区別も曖昧なまま、疲労だけが蓄積していく。

第二章:静岡の父、春を迎えられない畑

三月中旬、幹夫が下宿に戻ったある夜、父(明義)から短い葉書が届いていた。

  • 「春が来ても、畑はもう耕せぬまま。軍施設が拡張を続け、町役場も“勝利のため”と口にするが、わしら高齢と女手で何を守れるか分からない。

  • それでも日が暖かくなれば、茶の芽が勝手に伸びるのではと淡い望みを抱きつつ、日々を凌いでいる。おまえも身体を壊すな。」

 幹夫は読み、「父さん……まだ茶の芽を待っているのか。俺はここで戦争ポスターを一日延々と刷るだけ。春が来ても、実感はないよ……」と唇を噛む。 夜、窓を開けてもひんやりした風だけが入り、二つの風鈴はかすかに揺れるが音にならない。その沈黙が、二人の遠い距離を象徴するように胸に重くのしかかる。

第三章:警察のさらなる取り締まり

三月下旬、警察が「印刷物に関するさらなる統制強化」を打ち出し、軍以外の印刷を一層厳しく管理する方針を伝えてくる。

  • 幹夫たちの印刷所には民間仕事はほぼないため、大きな変化はないが、戸田と堀内は「書類作成がまた増える……」と辟易する。

  • 社長は「これだけ軍の仕事を引き受けているんだ、疑われることはないが、それでも監視が続く限り自由はない……」と自嘲する。

 かつてはビラ勢力を警戒していた時代があったが、いまやビラも民間の印刷も姿を消して久しい。「戦争に従う以外ない」という息苦しい空気が社会を覆い、人々の心を次第に麻痺させているように思われる。

第四章:夜風に揺れる風鈴の儚い合奏

月末、夜風が少し暖かく感じられる頃、幹夫が下宿へ戻り窓を開けると、二つの風鈴が微かにチリンと鳴った。

  • 以前なら心が揺れる音も、いまは疲労しきった身体が無反応に近い。「父さん……、俺はもう何を感じればいいんだ……」と、掠れた声で呟く。

  • そのほんの短い合奏が途絶えると、幹夫は布団に倒れ込むように寝入り、数時間後にはまた機械の轟音へ向かう。

 道端では日中戦争の“勝報”を綴る新聞が売られ、夜遅くにも街頭スピーカーから「国民一致」「支那事変」との言葉が響くが、幹夫は疲れた耳で流すだけ。戦争はまだ続く、もしかすると永遠に終わらないのでは――そんな暗い思いを抱えながら昭和十五年三月が静かに終わっていく。

結び:春になっても止まらぬ戦

昭和十五年三月、日中戦争の泥沼は深く、日本国内は完全な総動員体制で“戦うための社会”と化している。

  • 東京の印刷所は軍の大量印刷を休まず行い、警察の監視と帳簿作成に翻弄されながら、反戦・民間の気配は消滅。

  • 静岡の父は茶畑がほぼ耕作できない状態で、それでもわずかな芽を見守るかのように生き延びようとするが、実際は軍施設の拡張に飲み込まれる寸前。

夜の風が少し暖かさを含むこの時期、本来なら春の訪れを喜べるはずが、彼らにそんな感情を抱く余裕はない。二つの風鈴チリンと一瞬に鳴るだけが、かろうじて東京と静岡の過去の記憶を呼び覚ますが、それも戦争の轟音にかき消されるほど小さく儚い。幹夫は父の苦境を思いながら、己の徹夜がどこへ連れていくかも分からぬまま、ただ空虚に機械を回し続けているのだった。


序幕:花咲く季節も遠い戦争

 三月まで徹夜を重ね続けた東京の印刷所は、日中戦争の泥沼化に呼応するように、ますます軍の印刷需要に押しつぶされていた。 街には桜が咲くはずのころだが、戦時色の濃い空気が彩りを奪い去り、人々は「国民一丸」「英霊に応える」などの標語に従わざるを得ない。 昭和十五年(1940年)四月、下町にはかすかな春の香りが漂うが、幹夫や戸田、堀内、そして社長たちには、徹夜の連鎖が続くこの現状に何の変化も見られなかった。

第一章:軍からの春期宣伝依頼

四月上旬、印刷所には新たに「春の大攻勢をアピールする」ポスターや「内地での物資増産を呼びかける」チラシなど、大量の制作依頼が届く。

  • 「まだ戦果を伸ばすため、国民の士気を高めよう」という狙いのようで、部数や内容も多岐にわたる。

  • 社長は「また増えた……人も紙も限界だが、軍の命令を拒めるはずがない」と蒼ざめた声を漏らし、戸田と堀内は連日の徹夜シフトを組むしか手がない。

 幹夫は機械の音の中で紙を次々と流し込みながら、桜の季節が来ているのだと気づいても余裕はなく、「今年も花など見る間もない」と虚ろな思考を抱える。職人たちは交代で仮眠をとりつつ、紙の山を崩すように印刷し続ける。

第二章:静岡の父、春の傷痕

四月中旬、幹夫が下宿へ戻る夜、父(明義)からの手紙を読む。

  • 「春になれど畑は半ば奪われ、残った茶を守りつつも人手が足りず、思うように収穫できぬ。女や老人ばかりで、軍施設の轟音に耐える日々だ。

  • わしは体力が落ちてきたが、茶の芽だけは律儀に伸びようとする。戦争がいつ終わるか分からんが、せめてこの芽が枯れぬようにと祈る……」

 幹夫は胸が軋む。「父さん……まだあきらめずに茶を見守っているのか。でも俺はここで、戦争をより激化させる印刷をしている。どうしようもない……」 夜、窓を開けてもまだ冷気が残り、二つの風鈴はほとんど動かず。ほんのかすかな揺れだけが、過去の温もりをわずかに想起させるが、幹夫はすぐに眠り、数時間後には印刷所へ戻る――それが延々と続くだけ。

第三章:警察の桜下巡回、情報統制

四月下旬、警察は今月も印刷所へ巡回を行い、「軍命令の印刷を優先しているか」「紙の管理は適正か」をチェック。

  • 街には桜が咲いているらしいが、印刷所の窓からはほとんど見えない。警官の一人が「今年の桜は立派だぞ」などと話すが、職人たちは徹夜で疲れて反応すら薄い。

  • 幹夫は「花を見る余裕などないし、逆に散った花びらが印刷機に入ったらどうするんだろう……」と呆れに似た虚脱を感じる。

 社長は帳簿を見せて「すべて軍向けで問題なし」と報告し、戸田や堀内は書類作成に追われる。警察は形式的に「引き続き協力を頼む」と言って去り、印刷所はまた黙々とポスターを仕上げる。反戦ビラや民間案件は遠い昔の話になり果てていた。

第四章:夜風の弱き調べ、風鈴のわずかな合奏

月末、夜には少し温暖さを帯びた風が吹きはじめ、幹夫が徹夜明けで下宿へ戻ったとき、窓を開けると生ぬるい春の夜気が入ってくる。

  • 二つの風鈴が微かに揺れ、チリンという短い合奏を生むが、それはかつてより小さく、儚い音。

  • 「父さんの茶畑はまだ芽を出そうとしてるが、こっちは機械の轟音しか聞こえない……」と幹夫は囁くが、すぐに眠気が襲い、布団へ沈む。

 少し後、風が止み、部屋は再び静寂に。遠くでラジオが戦況の朗報を流しているが、幹夫は疲れ果てて聞こえず、数時間後にはまた工場の轟音へ向かわねばならない――昭和十五年四月、戦争の歯車は止まる気配すらない。

結び:花の影に隠れた戦時

昭和十五年四月、桜が散りかけ、下町には花の香が漂うはずだが、東京の印刷所は軍の大量印刷に休みなく従事。

  • 静岡の父はわずかな茶の芽に希望を託しつつ、軍施設に奪われた大半の畑を嘆く生活で、戦争の終わりが見えないなか体力をすり減らしている。

  • 警察の情報統制も揺るぎなく、民間活動や反戦ビラは壊滅したまま。職人たちは心を麻痺させて徹夜の連鎖を繰り返し、軍に逆らわない安全だけを守る。

夜にふと二つの風鈴チリンと短く合わさる音だけが、幹夫に「かつての穏やかな日々」があったことを思い出させるが、それが過去か幻かわからないほど、戦争の暗雲が日常を覆っている。花の季節は通り過ぎ、戦乱の轟音はさらに続く――彼らはまた短い眠りの後、次なる徹夜へと向かうしかないのだった。


序幕:夏の前触れと耐えきれぬ日中戦争

 四月を越えても、日中戦争は泥沼から抜け出せず、日本国内では総動員体制があたりまえの日常になっていた。 東京の下町にある印刷所では、幹夫や戸田、堀内、そして社長らが、絶え間ない軍の宣伝印刷をこなすのに休む間もない。 昭和十五年(1940年)五月——暦の上では新緑が彩る季節だが、印刷所には機械の轟音と疲労だけが支配する空気が続いていた。

第一章:軍依頼のさらなる拡大

五月上旬、印刷所にまた新たな大量依頼が到着。「華中・華南での戦線拡大を国民に広報し、戦意を維持するためのポスター・チラシ」「兵士募集の強化策をPRする文書」など、一気に作り上げるよう命じられる。

  • 社長は「もう去年からずっと同じことを繰り返している……終わりが見えない」と呆然。

  • 戸田は用紙配給の割当を必死に確保し、堀内は納期スケジュールを徹夜で組み立て、幹夫は機械の操作に没頭。

 職人たちは交代で仮眠を取る程度の稼働を続け、昼夜逆転が当たり前となっている。「これが戦時下で生きるということか……」と皆が口数少なく機械に向かう日々だ。

第二章:静岡の父、茶の芽の行方

五月中旬、幹夫が夜更けに下宿へ戻り、父(明義)からの手紙を読む。

  • 「わずかに残った茶の芽が今月に少しだけ伸びた。しかし人手不足で摘み取りが追いつかず、軍施設に回された区画はもう雑草まみれだ。

  • 町でも“戦局が長引くほど勝利が近い”と妙な理屈が叫ばれているが、実際は農家が疲労して崩れかけている。おまえも徹夜が続くと聞くが、どうにか息をつけ……」

 幹夫は胸を締めつけられ、「父さん……ほんの少しでも芽が出たのか」と微かな嬉しさを覚える反面、「でも軍施設の圧力で畑は荒れるばかり……」と苦い思いで歯を食いしばる。 夜、窓を開けても暖かい風が部屋を巡るだけで、二つの風鈴はかすかな揺れ。チリンという音は出ず、幹夫は身を沈めて眠る。

第三章:警察の統制と民間の消滅

五月下旬、警察が印刷所へ連絡し、「さらに細かい進捗報告を定期的に提出せよ」と通告する。

  • 民間印刷の需要はほとんどなく、事実上軍の仕事のみで回している状態。

  • 反戦ビラや民間のちらしは完全に消え失せ、職人たちは軍印刷をこなすことが店を生かす唯一の方法と悟っている。

 社長は血走った目で「警察に従わないわけにはいかん。今は静かに言うことを聞こう……」と呟き、戸田と堀内は徹夜シフトを拡張して書類作成に追われる。幹夫はこの戦争がいつ終わるのか見通せないまま、機械に向かう。 徹夜に次ぐ徹夜をこなし、「こんな日々があとどれだけ続く?」と誰かが零すが、誰も答えられない。

第四章:夜の蒸し暑さ、風鈴の儚い一声

月末、蒸し暑さが増し始める夜、幹夫がまた一瞬だけ下宿へ立ち寄る。

  • 窓を開けると、生温い夜風が入り、二つの風鈴が短くチリン……と合わさる。その音は弱々しく、すぐに途切れる。

  • 幹夫は頭を垂れ、「父さんもここまで追い詰められているのに……俺は戦争印刷をしているだけ。何も変えられない……」と低く呟く。

 それでもあと数時間でまた印刷所へ戻らねばならず、職場では軍のポスターを仕上げるスケジュールが詰まっている。幹夫は体力を絞り出すように布団へ沈み、浅い眠りの後、また機械の轟音へ戻る――昭和十五年五月も同じ苦渋のリズムが延々と続くのだ。

結び:夏近き風と果てぬ戦

昭和十五年五月、戦争がやむどころか長期化するなか、東京の印刷所は軍の大量印刷を続け、警察統制に従順に報告しながら徹夜で稼働する。

  • 静岡の父はわずかに伸びた茶の芽を見守るが、人手不足と軍施設拡張でまともな収穫は難しく、この先の夏を越えられるかも分からない。

  • 幹夫は機械音のなかで疲労を抱えつつ、「いつまでこれが続く?」と心中で呟き、しかし答えなど得られない。夜風が下町に生温い空気を運び、二つの風鈴が一瞬だけチリンと鳴るが、それすらすぐにかき消される。戦争の歯車は止まらず、次なる季節へと人々を押し流していく――そこに僅かな救いを見出すことさえ難しくなっていた。


序幕:長雨と総動員の継続

 五月を経ても、日中戦争の行方は泥沼から動かず、国内では戦時体制がいよいよ深まる一方だった。東京の印刷所では、幹夫や戸田、堀内、そして社長たちが、ますます多くなる軍の宣伝印刷を昼夜を問わずこなし続けている。 昭和十五年(1940年)六月、梅雨が近づきつつある下町の空には湿気が漂い、時折強い雨が降って町を洗うが、印刷所の職人たちにはそんな変化すら感じる余地がほとんどなかった。

第一章:軍からの更なるポスター依頼

六月上旬、印刷所にはまた「華南・華中の戦果拡大」を謳うポスターや、「国民の労働奉仕を促す」チラシなどが大量に届く。

  • 社長は「前月の地獄がそのまま続いている……」と疲れた声で唇を噛み、戸田は用紙配給の手続きを一からやり直して徹夜スケジュールを組む。

  • 堀内は警察と軍の求める細かい報告を作成しながら、在庫や納品管理を行う。幹夫は相変わらず機械の前で淡々と印刷を繰り返す日々。

 職人たちの疲労は頂点に達していて、夏本番を前にすでに体力を削られきっている。「どうせ戦争が終わらないなら、いつまで徹夜をすればいいのか……」と誰もが漏らすが、何の解決も見えない。

第二章:静岡の父、梅雨と戦う畑

六月中旬、幹夫が夜更けに帰った下宿で、父(明義)からの手紙を読み込む。

  • 「梅雨が始まり、茶の芽が雨を得て伸びるかと思ったが、耕せぬ区画が多く雑草まみれで、軍施設からの圧も強い。

  • わしも年老いて、せめてわずかな茶だけでも守りたいが、兵役で若者がいない以上、これ以上維持するのも困難だ……。おまえは徹夜続きと聞くが、身体を大切に。」

 幹夫は息を詰まらせ、「父さん……梅雨でも茶を伸ばせないなんて。俺は東京でポスターばかり刷ってるのに、何も役に立たない……」と眉を寄せる。 窓を開けても湿った空気と夜の雨音が混ざり、二つの風鈴は揺れもしない。まるで音を出すことを拒んでいるかのように沈黙し、幹夫は寝落ちるように布団へ沈む。

第三章:警察の定期巡回、反戦の影なき世界

六月下旬、警察がいつも通り印刷所を巡回し、帳簿や在庫を検査する。

  • 「軍以外の印刷はもうやってない」と伝えると、警官は「順調だな。引き続き励め」とだけ応じて去る。

  • 職人たちは見送りながら、誰もが「ここで徹夜し続けるのが“順調”か……」と陰鬱な感情を抱えつつ、もう抵抗する気力もない。

 社長は「これが戦時下の生き方か。自由も何もなく、ただ軍の機械として徹夜するだけ……」とうなだれ、戸田と堀内も疲れ果てて椅子に腰を落とす。幹夫は次のポスターを刷るため、ただ目を伏せながら紙を流し込む作業を再開する。

第四章:夜の雨音、風鈴のかすかな合奏

月末、雨脚が強まる夜、幹夫が徹夜から解放されるわずかな時間に下宿へ戻る。

  • 窓を開けると生暖かい雨風が入り込み、二つの風鈴が短くチリンと合わさる音を作る。

  • 「父さんも俺も、この雨のなか必死に耐えてるんだな……」と、幹夫は目を潤ませる。「何を守ってるか分からなくても、生きるしかないんだ……」

 音はすぐに雨音に溶け、幹夫も布団へ倒れ込むように眠る。朝が来ればまた軍のポスターを刷る現実――昭和十五年六月はこうした繰り返しのまま過ぎ、誰もが虚脱のなかで戦争への奉仕をやめられないでいる。

結び:梅雨と戦争の狭間にある行き詰まり

昭和十五年六月、日中戦争の終わりが見えぬまま日本は総動員を深化し、東京の印刷所は軍の大量印刷を優先する日々。

  • 静岡の父は梅雨の雨を活かせず、わずかな茶の区画さえ軍施設の影に脅かされて苦悩。

  • 警察の監視は続き、反戦や民間印刷の世界は完全に消滅し、徹夜と帳簿作業が職場を支配している。

夜の雨音にまじって二つの風鈴チリンと短く鳴る刹那、幹夫はかろうじて遠い昔の静かな日々を思い出すが、それは明日を変える力にはなり得ない。戦争は進み、徹夜は続く。梅雨と戦時――二重の重圧が、人々を押し潰しそうに広がるだけの季節が終わろうとしているのだ。


序幕:炎暑の気配と続く泥沼

 六月の梅雨と徹夜を乗り越えた東京の印刷所は、夏を前にしても休む間なく軍の宣伝印刷に追われ続けていた。 日中戦争はいまだ泥沼から抜け出せず、総動員体制はますます強められる。ラジオは「さらに奥地へ進攻」「今こそ我が国の結束が重要」と報じ、下町の空はしだいに蒸し暑さを増している。 昭和十五年(1940年)七月、幹夫や戸田、堀内、そして社長ら印刷所の面々は、夏へ向かうどころか、日々の徹夜に埋没するまま時を進めていた。

第一章:徹夜の夏、軍の宣伝強化

七月上旬、印刷所にはまた大口の印刷依頼が相次ぎ押し寄せる。

  • 「華南での作戦をさらにアピールしたい」との軍の意向で、宣伝ポスター・チラシの部数は増加し、納期はますます短い。

  • 社長は「ここから夏本番だというのに、徹夜が止まらない」と頭を抱え、戸田は用紙配給の折衝で警察や軍の窓口とやり取りを続ける。

  • 堀内は在庫と帳簿の管理に追われ、幹夫は眠気に耐えながら機械を回す。ほんの数時間の仮眠を交代で取り、作業を続けるのが当たり前の日常となっていた。

第二章:静岡の父、夏越しの苦境

七月中旬、幹夫が夜中に下宿へ戻ると、父(明義)からの手紙が届いていた。

  • 「夏の暑さが本格化し、わずかに育てていた茶の芽も厳しい環境だ。軍施設が広がるなか、農機具や物資の徴発も激しく、ほとんど耕作を維持できない。

  • わしも体調を崩しかけているが、何とか生き延びるだけ。戦争はいつ終わるんだろうか……」

 幹夫は胸が痛む。「父さん……本当にギリギリなのか。茶畑は消えかけ、施設が増え、物資もない。俺はここで戦争を支える印刷しかできない……」と悲嘆の思いを噛みしめる。 夜、窓を開けば熱帯夜の空気がじっとりと入り、二つの風鈴はわずかに揺れるがほとんど音を出さず、幹夫は疲労困憊で布団に倒れ込むように寝入り、また朝には印刷所へ向かう。

第三章:警察の見回り、監視の常態化

七月下旬、警察は相変わらず印刷所を巡回し、軍の命令に従って印刷が行われているかを確認。「何も問題ないですね」「引き続き励んでくれ」と形式的な言葉を残して去る。

  • かつてのように反戦ビラや民間印刷を疑う様子すらない。もう印刷所が軍の歯車であることが揺るぎなく認められているからだ。

  • 社長や戸田は疲れた面持ちで「今さら疑われないが、自由もない。どこかに逃げることもできない」と苦い笑みを交わす。堀内は黙々と帳簿を付け、幹夫は徹夜シフトの合間に仮眠をとるだけ。

 職人たちは意志を失ったように機械を回す。ラジオは「支那事変、決戦間近」などと煽るが、誰もそれを信じ切る余裕もなく、印刷して納品するだけの閉塞が続く。

第四章:夜の蒸し暑さと風鈴のかすかな呼吸

月末、夜の気温はさらに上昇し、窓を開けても生温い空気が漂う。

  • 幹夫が徹夜明けに下宿へ戻り、窓を開ければ、二つの風鈴が短くチリンと合わさる音を作るが、それは熱帯夜の湿度にかき消されそうな儚さだ。

  • 「父さん、もう限界なのに……。俺も戦争がいつ終わるか分からず、ただ印刷してる。こんな音すら……」と呟く幹夫は、力なく布団へ崩れ、すぐに眠気に襲われる。

 仕事に戻るまでの数時間だけが彼の休息だが、そこで休んでも疲労はまったく回復しない。周囲には戦争の呪いとも言うべき総動員が渦巻き、昭和十五年七月に続いて、夏もまた絶望的な状態で終わろうとしている。

結び:焦熱の夏と終わりなき徹夜

昭和十五年七月、日中戦争の長期化で東京の印刷所は軍需印刷に没頭し、警察の統制に従って昼夜逆転の徹夜を重ねる。

  • 静岡の父は茶畑の維持が困難を極め、病を抱えながら軍施設の影に怯えている。

  • 職人たちは生きるために印刷するしかなく、ラジオが何を報じようとも、それを止める術はない。夜の熱帯夜に二つの風鈴チリンと微かに響く一瞬だけが、かつてあった静かな世界を思い出させるが、すぐに轟音と暑さにかき消される。戦争がこのまま続くなら、彼らはまだ先の見えない苦悶と徹夜を繰り返すほかない。夏は容赦なく訪れ、誰もその重みに抗う術を持っていない――それが昭和十五年の現実だった。


序幕:烈日の空と続く戦争の歯車

 七月を地獄のような徹夜で乗り切った東京の印刷所。 日中戦争は益々深みへと嵌り込み、国内の総動員体制は一層強固となっていて、幹夫たちには息つく間もない徹夜作業が当たり前の日常として定着していた。 昭和十五年(1940年)八月、下町には焼けつくような陽射しが注ぎ、地面に蜃気楼が見えるほどの暑気が溢れるが、印刷所の職人たちにとってはただひたすら軍の印刷機を回す「戦争の歯車」の日々が続いている。

第一章:軍の依頼、夏場の追い打ち

八月上旬、印刷所にまた新規の大口依頼が到着する。「華南方面での決戦をさらに国民に宣伝し、兵士募集と物資提供を呼びかける」ため、ポスター・チラシ・小冊子を大量に短期で仕上げよとの指示だ。

  • 社長は「もうこの暑さの中で徹夜を何度も繰り返すなんて、皆の身体がもたない……」と嘆くが、軍に逆らえば即座に店が潰されるのは分かりきっている。

  • 戸田は用紙配給や納期スケジュールを必死に策定し、堀内は警察や軍との書類作成を徹夜の合間に進める。

  • 幹夫は機械の前でインクまみれになり、眠気を振り払いながら紙を次々に送り込む。幾日もの連続徹夜が当たり前になりすぎて、感覚が麻痺している者も少なくない。

第二章:静岡の父、灼熱の畑を諦める

八月中旬、幹夫が夜に下宿へ戻ると、父(明義)からの手紙を発見する。

  • 「この酷暑でわずかに残った茶の芽も枯れかかり、もはや守りきれないと悟った。軍施設の人間がしきりに“ここも近く再整備する”と口にし、畑はもう放ってある状態だ。

  • わしは高齢で病を抱え、何とか生きているが、この夏を越すのも危うい。おまえの徹夜は続いていると聞くが、これも戦争だな……」

 幹夫は「父さん……ほんの少しでも続けていた茶畑さえ、遂に放棄するのか。戦争に奪われるばかりで、俺は何の役にも立たない……」と唇を噛む。 夜更けの下宿で窓を開けても生温い熱風が入るばかりで、二つの風鈴は殆ど動かず沈黙しているかのよう。仮眠を取るだけで、また印刷所へ駆け出す現実が待ち構えていた。

第三章:警察の厳戒と情報統制の進行

八月下旬、警察は引き続き「反戦ビラなどの危険行為を防ぐ」目的で印刷所を監視しているが、もはや軍仕事だけをこなす現状に何の疑念も挟む余地はない。

  • 幹夫たちにとっては形骸化した監視であっても、書類提出は欠かせず、堀内が徹夜中に間を縫って報告書をまとめるのが当たり前。

  • 社長は「こんなに従順な印刷所はないだろうに、まだ監視に来るなんて……」と呆れながらも、戦時下ゆえ従うしかない。

 戸田は「ビラや民間の印刷をやりたいわけでもないが、こんな状態がいつまで続くんだ」とやるせなさをにじませ、職人たちは誰もがうなだれた表情で機械を動かす。戦争が続く限り、徹夜印刷は止まる気配すらなかった。

第四章:夜の熱帯夜、風鈴の儚い調べ

月末、幹夫が深夜に印刷所を抜け出し、わずかな睡眠を取るため下宿へ戻る。

  • 窓を開けると湿った夜風が流れ込み、二つの風鈴がかすかにチリンと鳴るが、その音は暑さに滲んでかき消されそうなほど小さい。

  • 幹夫は疲れきった目で「父さんの畑も完全に諦め、俺はここで戦争宣伝を刷るだけ。何も救えなかったんだな……」と心で呟き、布団へ倒れ込む。

 夜明けになればまたポスター印刷の指示が待つ。そうして昭和十五年八月も、彼らの人生を容赦なく擦り減らしながら過ぎ去っていく――戦争の轟音が遠のく気配は、いまだどこにも見当たらない。

結び:炎暑のなかの永遠の徹夜

昭和十五年八月、日中戦争の長期化は確固たる現実となり、東京の印刷所は軍の宣伝印刷に昼夜逆転の徹夜で応えるしかない。

  • 静岡の父はとうとう茶畑を諦め、軍施設に地を奪われ、病を抱えながらもただ生き延びる日々。

  • 警察の監視は継続、反戦の影は消え失せ、幹夫と仲間たちは一心不乱に機械を回すだけ。夜の熱帯夜に二つの風鈴チリンと微かな音を立てても、それは失われた平穏の名残を思い出させる刹那にすぎず、戦争は容赦なく人々を巻き込み続ける。暑さと徹夜の重圧に耐えながら、終わりの見えない戦乱の日々へと埋没していく――それが昭和十五年の酷夏の現実だった。


序幕:終わりなき戦時下の夏の名残

 八月を乗り切っても、日中戦争の泥沼から抜け出せない日本は、国内にますます強い総動員体制を敷いていた。 下町の印刷所では、幹夫や戸田、堀内、そして社長らが、依然として軍の宣伝物の大量印刷を夜通し続け、いつ終わるかも知れない徹夜の連鎖に閉じ込められている。 昭和十五年(1940年)九月、残暑の影はまだ街に漂うが、彼らに季節を感じる余裕はない。ラジオや新聞が「支那事変の戦果拡大」を煽り立てるなか、印刷所の機械は休みなく動かされる。

第一章:軍の依頼、終わり見えぬ増産

九月上旬、印刷所にまた新たな大量の印刷依頼が届く。

  • 「華南方面の戦線はさらに続いており、国民への奮起を促すため、新しいポスター・チラシを短期で刷ってほしい」という旨。

  • 社長は「これ以上の徹夜が続けば職人が倒れる」と危惧するが、軍に逆らえないため拒否は不可能。

  • 戸田は用紙と人員の配分を考え、堀内はさらに細かい紙在庫の報告を警察へ提出し、幹夫は機械の前で昼夜の区別なく働く。

 夏から続く疲労は蓄積し、職人の一人が過労で倒れ休職するなど、現場の余力はほとんど残されていない。

第二章:静岡の父、完全な放棄

九月中旬、幹夫が夜遅く下宿へ戻ると、父(明義)から短い葉書が届いていた。

  • 「茶畑はほぼ完全に放棄した。軍施設が拡張を進め、残っていた区画も使えない。わしら老人と女手だけでどうにもならず、あの緑は荒れ草と化している。

  • 戦争がいつ終わるか分からず、わしの体力ももう限界……」

 幹夫は息が詰まる思いで葉書を握りしめ、「父さん……ついにあの畑を捨てたのか……」と唇を噛む。 夜の窓を開けても、生暖かい風が空しく部屋に入り、二つの風鈴はわずかに揺れるが音がほとんど出ない。「音まで絶えたら、俺たちは何を頼りに生きればいい……」と声にならぬ叫びを飲み込み、数時間の仮眠に沈むしかない。

第三章:警察の巡回、影のない抵抗

九月下旬、印刷所には警察がいつもどおり巡回に来るが、ビラや民間印刷の影は皆無。

  • 当局は形骸化した監視を続けつつも、「軍命令通りやっているなら問題なし」と押印するだけ。

  • 社長は「こんなにも軍に従っても、いつ何かで疑われるかもしれない」と暗い目で戸田や堀内を見るが、彼らは「徹夜しているうちは何の文句も言われない」と半ば諦めたように笑う。

 幹夫は黙って機械を動かし、毎日インクの匂いと紙の手触りに浸る。もう“なぜ戦争をしているのか”すら考える余力がなく、仕事こそが生存手段という形で埋没していた。

第四章:夜風の弱い調べ、風鈴のかすかな合奏

月末、微妙に涼しさが混じる夜、幹夫が徹夜明けで帰宅し、窓を開けると、生ぬるい風が部屋を撫で、二つの風鈴が辛うじてチリンと短く合わさる。

  • その音を耳にして、幹夫は目を閉じ、「父さんの茶畑はもう……。印刷所もただ軍のために徹夜するだけ……」と、全てが崩れ去った思いで胸を詰まらせる。

  • 音は一瞬で終わり、彼は布団へ倒れ込むように寝入り、また数時間後には機械の前へ――そうして昭和十五年九月が大きな変化もなく沈んでいく。

 彼の耳には戦争の轟音と徹夜の疲労だけが交錯し、わずかな風鈴の合奏ですら空虚な夢のように感じられる。時代はまだ次の月へ続き、戦争は止まらないままだ。

結び:秋に沈む戦時の暮らし

昭和十五年九月、日中戦争の長期化が確定的となり、東京の印刷所は軍需印刷を徹夜でこなし、警察の監視に従いつつ、自由のかけらもない労働を継続している。

  • 静岡の父はついに茶畑を完全に放棄せざるを得ず、軍施設に圧倒され、かつての緑の大地が荒地と化している現実を嘆く。

  • 反戦や民間の兆しは完全に断絶され、幹夫は心をすり減らしながら、わずかな夜風に揺れる二つの風鈴チリンという音を感じても、それが何を意味するのかさえわからなくなるほど疲弊している。

この国は戦争にのみ注力し、人々の暮らしを喰いつぶしていく――そんな暗鬱な姿がこの九月にも変わらず続いている。幹夫や父がかろうじて抱く思いは、すでに未来の光を見失いつつあるが、それでも生き延びるしかないのだ。


序幕:秋の深まりも感じられぬ戦場の街

 九月に至るまで、日中戦争の泥沼は抜け出せず、東京の下町の印刷所では、軍の宣伝印刷を昼夜を問わずこなし続けていた。 今年も秋が少しずつ深まり、空気には穏やかなはずの季節の移ろいが潜んでいるが、印刷所に身を置く幹夫らは、相変わらず徹夜と疲労の連鎖に押し流されている。 昭和十五年(1940年)十月、世間では「支那事変はいよいよ重要局面」「欧州も不穏」とかまびすしく報じられており、誰もがより強い戦意と従順を求められる日々に沈んでいた。

第一章:軍から続々と降る宣伝物

十月上旬、印刷所にはまたもや「奥地への攻勢をアピール」「国民総動員をさらに鼓舞」などの印刷依頼が大量に舞い込み、スケジュールは埋め尽くされる。

  • 社長は「去年から続く徹夜がここまで常態化するなんて……」と呆れ混じりに苦笑しながらも、軍への納期を落とせない以上、従うしかない。

  • 戸田は用紙配給の調整と作業スケジュールに頭を悩ませ、堀内は警察や軍への書類提出を昼夜の合間にこなし、幹夫は機械の前に張りつくように紙を流し込む。

 職人たちは体力の限界を超えつつも、「ここで辞めても他に行き場はない」と諦め、連日の徹夜に耐えながら無心で機械を動かす。秋の空気は窓からほとんど入らず、印刷所は常にインクと油のにおいに包まれていた。

第二章:静岡の父、荒地と化した地

十月中旬、幹夫がわずかな睡眠を取るために下宿へ戻った夜、父(明義)から手紙が届く。

  • 「茶畑はほとんど荒地となり、軍施設が周囲を取り囲んだ。わしは年老いて病を抱え、もうどうにもならず、妻や他の老人らと引きこもる日々だ。

  • いつ“さらに土地を差し出せ”と迫られるか分からないが、もう失うものも残り少ない……。おまえの徹夜は相変わらずと聞くが、無理はするなよ。」

 幹夫は手紙に記された「失うものも残り少ない」という言葉が胸を締めつける。「父さん……それほどまでに畑が……」と思いつつ、自分がここで軍用のポスターを刷り続けるしかない現実が、余計に苦く心を蝕む。 夜、窓を開けても風が弱く、二つの風鈴はわずかに揺れるだけで、音を立てそうで立たない。「もう何も響かないのか……」と、幹夫は布団に沈み、数時間後の徹夜へ備える。

第三章:警察の監視、疑いのない従属

十月下旬、警察がまた印刷所を巡回し、軍の仕事を順調にこなしているか、用紙使用に不備はないかをチェック。

  • 案の定「問題なし。引き続きご協力を」と形式的に言われるだけで、一応の監視を終えて立ち去る。

  • 社長や戸田、堀内は慣れきった対応をこなし、「どうせ何も疑われる余地もない。軍の仕事に徹夜で追われている印刷所など疑う必要もない」と苦笑する。

 幹夫はそんなやり取りを見ても、何の感情も湧かない。ビラや民間印刷など遠い過去の話で、いまは軍命令をこなすことで店と生活を“守る”だけ。だがその“守る”行為が、父の畑を奪う戦争に加担しているという皮肉が、彼の心をさらに蝕んでいた。

第四章:夜の冷気、風鈴のかすかな共鳴

月末、秋の空気が冷え込みを増し、夜は一段と肌寒くなってきた。

  • 幹夫が徹夜明けに下宿へ戻り、窓を開けると、ひんやりした風が入り込み、二つの風鈴がかすかにチリン……と合わさる音を生む。

  • その音は弱々しくも、幹夫の心に遠い記憶を呼び覚ます。「父さんの畑……もう失われてしまった。俺もここで走り続けるしかなくて……」と彼は目を伏せ、やがて布団へ沈む。

 翌朝にはまた軍の大量部数が待ち構える印刷所へ向かわねばならない。昭和十五年十月がこうして幕を閉じても、戦争と徹夜の連鎖は終わらない。誰もがその歯車に飲まれ続けるしかないのだ。

結び:秋の冷えと尽きぬ戦火

昭和十五年十月、日中戦争は長期化し、日本国内は完全に戦時経済と総動員体制へ浸りきっている。

  • 東京の印刷所は軍依頼による徹夜作業を当たり前に続行し、警察の監視に従いながら一歩も自由を得られない。

  • 静岡の父は茶畑が荒地と化し、軍施設に取り囲まれて日々を閉ざすように生き延びている。

夜、二つの風鈴がチリンと一瞬合わさるだけで、幹夫はかつてあった平和を思い出すが、それはもう戻らない。戦争は続く、仕事は終わらない、父の大地は失われていく――そうして彼らは日常に疲れ果て、ただ次の徹夜へと引きずられるように進んでいく。この秋もまた、戦争の重圧に耐えるばかりの時が過ぎていくのだった。


序幕:秋深き戦時下の虚無

 十月まで徹夜と軍の印刷を続けていた東京の印刷所。 日中戦争の長期化はまるで定常状態になり、国内では総動員と統制が息をつく間もなく進行している。ラジオや新聞では「戦局はいよいよ重要局面」「さらなる国民の献身を」と盛んに呼びかけられるばかり。 昭和十五年(1940年)十一月、下町には晩秋の冷え込みがしのび寄るが、幹夫や戸田、堀内、そして社長らは軍の膨大な印刷物をこなすだけの日々に沈み続けていた。

第一章:徹夜続行、追加の軍ポスター

十一月上旬、印刷所に新たな大口発注が舞い込む。

  • 「華北・華中ともに大攻勢を目指す」いう軍の意向に合わせ、出征兵士や物資献納を呼びかけるポスター・チラシが一挙に注文される。

  • 社長は「先月からまるで休む暇がないのに、またこんな大量を……」と顔を青ざめさせ、戸田は紙とスケジュールを睨み、堀内は警察報告と納品管理に追われる。

  • 幹夫は機械の前に張りつき、印刷物を次々と仕上げる徹夜が途切れることなく続く。

 職人たちの疲弊は極限に達しているが、軍に逆らえば店が潰れるため、誰もがただ作業を続けるほか選択肢はない。

第二章:静岡の父、緑の完全なる消失

十一月中旬、幹夫が夜更けの下宿に戻った際、父(明義)から無言の葉書が届く。

  • ほとんど文が書かれておらず、わずかに「畑が全部、軍施設に転用された。もう茶の芽は……」という悲痛な文言だけ。

  • 幹夫はそれを読み、「父さん……ついに畑が全部失われたのか。何もかも……」と息を呑む。

 涙すら出ないほどの衝撃に、彼は窓を開けても立ち尽くすだけ。二つの風鈴を見上げても、夜風は冷たく、その音が鳴る気配はない。 「もう……何も守れなかったんだな……」と呟き、数時間の眠りを取って再び印刷所へ向かうしかない。

第三章:警察の巡回と“問題なし”の無力感

十一月下旬、警察がいつもの巡回を行い、印刷所で軍の印刷を優先しているか、紙の配給に不備はないかを一通り確認。

  • 「特に問題なし」「引き続き協力を頼む」とだけ言い残し、去っていく。

  • 戸田や堀内は紙の在庫を改め、社長はホッと安堵する一方、「こんな地獄のような徹夜を頑張って、結果“問題なし”と言われるだけだ」と苦渋の笑いを見せる。

 幹夫は「父の茶畑も完全に失われ、ここでも徹夜が当たり前……。反戦ビラなど遠い昔に消え、俺たちはただ戦争を支えているだけだ」と暗い思考に沈む。機械の轟音が続き、誰もそれを止めようとする者はいない。

第四章:夜の冷気と風鈴のわずかな響き

月末、気温はさらに下がり、夜の冷風が部屋を撫でる。

  • 幹夫が深夜に帰宅して窓を開けると、二つの風鈴が一瞬だけチリンと鳴り合う。それは弱々しく、哀しいほど儚い音だった。

  • 「父さん……畑が全部……。ここでも徹夜を続けるだけ。もう二つの風鈴が鳴ったって、何も戻らない……」と思い、彼は疲れた身体を布団へ投げ出す。

 翌朝にはまた印刷機が待つ日常。昭和十五年十一月はこうして終わり、戦争の長い闇が続いていく――幹夫と父から最後の緑を奪い去った時代は、なお先の見えない徹夜の連鎖を突き進むだけである。

結び:秋深く、緑も消えた末の戦

昭和十五年十一月、日本は日中戦争の泥沼で総動員を加速。東京の印刷所は軍の宣伝物を徹夜で刷るばかり、警察の監視と帳簿作成に追われている。

  • 静岡の父は最後まで守ろうとした茶畑がすべて軍施設に転用され、緑は消え去った。

  • 幹夫は機械の騒音のなかで、もう守るものもなく徹夜を続ける日々。夜の一瞬、二つの風鈴がチリンと合わさるが、その音すら空しい響きに聞こえる。戦争の嵐が続く限り、ふたりが築いてきた緑も、民間の自由な印刷も、すべて奪われたまま――ただ歯車として生きながらえるだけの現実が深まっていくのだった。


序幕:年の瀬の影さえ見えぬ戦下

 十一月まで黙々と軍の印刷を続けてきた東京の下町の印刷所。 日中戦争はすでに数年を超え、終わりが見えず、国内の総動員体制は盤石となり、警察や軍部の監視が日々強化されている。 印刷所では、幹夫や戸田、堀内、そして社長らが、相変わらず徹夜の連鎖に陥りながらも、終わりなき軍のポスターやチラシの制作に追われるばかり。 昭和十五年(1940年)十二月、一般には年末の慌ただしさがあるはずだが、ここには戦時の重圧しかなく、年の瀬の余韻さえ感じる暇もない日々が流れていた。

第一章:軍の年末強化印刷

十二月上旬、印刷所に届いた依頼は「年末年始こそ士気を高める」と銘打たれた特大のポスターやチラシ。

  • 兵士募集や国民のさらなる協力を訴えるもの、戦局はまだまだと鼓舞するものなど多岐にわたり、前月からの疲弊をさらに深刻化させる大量部数を要求される。

  • 社長は「これが年末にきてさらに徹夜が加速するとは……」と頭を抱え、戸田は用紙配給の手続きに追われる。堀内は警察への報告と帳簿整備に徹夜仕事を重ね、幹夫は機械の前にかじりつくように動かず作業し続ける。

 職人たちは「去年もこんなだったが、今年はもっと酷い」と疲労をこぼしながら、それでも軍に逆らえない現実を噛みしめている。

第二章:静岡の父、すべて失った大地

十二月中旬、幹夫が夜更けに下宿へ戻ると、父(明義)からの短い手紙が投函されていた。

  • 「ついに茶畑は全面的に軍の施設用地となり、わしの手から離れた。もう何も耕せぬ。

  • わしはこの冬をどう生きるかも分からず、日々ただ息をしているだけ。おまえも徹夜続きと聞くが、身体だけは壊すなよ……」

 幹夫はそれを読み、息が詰まりそうになる。「父さん、とうとう茶畑を完全に奪われたんだ……。あんなに守ろうとしてきたのに。俺もここで戦争のポスターを刷るだけの人生……」 夜、窓を開けてみても、冷たい風が入り、二つの風鈴はほとんど動かない。「もう……音すら消えてしまったのか」と呟き、疲れた身体を布団に投げ出す。数時間の仮眠後には再び工場へ戻るしかない。

第三章:警察の年末巡回、完璧な従属

十二月下旬、警察が年末の監視を強化し、印刷所を改めて巡回するが、軍の印刷以外は一切していないため、当然“問題なし”とみなされる。

  • 巡回の警官は「よくやっている。年末年始も気を抜かずに国のために励め」と言い残す。

  • 職人たちは「年末年始に休みなどあるはずもない」と苦い笑みを交わし、社長は「休める日は来ない。来年も同じ地獄か……」とため息。

 戸田と堀内は淡々と書類を提出し、幹夫は無表情で機械に用紙を送り込み続ける。誰もが疲労の一線を越えて、ただ身体を動かして生き延びるのみの生活で、年末行事や正月気分など消え去っていた。

第四章:大晦日の夜風、風鈴の微かな音

大晦日になっても印刷作業は続き、深夜まで工場を回さねばならない。幹夫が下宿へ戻れるのはほんの数時間だけ。

  • 窓を開けると冷たい空気が部屋を満たし、二つの風鈴がかすかなチリンを短く響かせる。

  • 幹夫はその音に首を振り、「父さんの畑ももうない。俺も年末だというのに徹夜。何も変わらない戦時。二つの風鈴が鳴っても、むなしさしか感じない……」と胸を痛める。

 数時間の仮眠後に、また軍の宣伝物を仕上げに行かねばならない――昭和十五年十二月がそんな無慈悲な日常を再確認させるまま終わりに近づく。戦争も徹夜も、止まる気配は微塵もない。

結び:終わりなき戦争の年の瀬

昭和十五年十二月、日中戦争が明確な出口を見せず、東京の印刷所は軍の命令で徹夜印刷を繰り返し、休むことさえままならない。

  • 静岡の父はついに茶畑をすべて奪われ、日々をぼんやりと生き延びるだけ。

  • 幹夫たちは警察に従い、民間の影はすべて消し去られ、戦意高揚を支える歯車として沈む日々。夜の冷気が下宿に流れ込むとき、二つの風鈴チリンと鳴っても、それは戦争によって奪われた大地と自由を嘆かせる悲しい残響に過ぎない。年の瀬は重苦しく幕を下ろし、戦争の轟音が来るべき年までも飲み込み続けようとしていた。

 
 
 

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