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烈火の海域 エンディング:戦争の残響

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月19日
  • 読了時間: 5分



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1. 血に濡れた海と大地、その後

戦術核が使われたことで、大規模な破壊と放射能汚染が数多の命を奪い、また海戦・陸戦の泥沼の中で、日米と中国・ロシアの兵士、そして巻き込まれた市民たちが無数に散っていった。戦いの最後には、日米連合艦隊が核ミサイル再使用を阻止し、戦局を収束へと持ち込んだ形となった。だが、それは同時に“人類がどれほど凄惨な地獄を生み出すのか”を、世界にまざまざと提示する結末でもあった。

海と大地には依然として放射能が残り、港の水面には油と残骸が混じり、焦げた金属と肉片の残滓が漂う。陸上には焼け落ちた街並みや砲痕が無数に刻まれ、砂と血が路地を埋め尽くしている。まさに“戦争の爪痕”が、そのまま世界を覆っていた。

2. 国際社会の揺れ動き

核使用への激しい議論

世界中のメディアや国連で、日本がかつて戦術核を受け容れたという事実、そして今回の戦争全体が持つ核の影が、激しい非難や議論を巻き起こす。「再び核の恐怖を世界にもたらしたのは誰か?」という糾弾の声もあれば、「日本は結果として核を封じた」という擁護論もある。国連安全保障理事会は真っ二つに割れ、国際社会が再編されるかもしれないという動きすら見えた。

日米同盟の強化、そして負の側面

多大な犠牲を払いながらも一連の戦闘で協力を果たした日米同盟は、軍事的にはさらに結束を高めた。しかし日本が「米国に追従するだけでなく、自らも核抑止論の一端を担った」という見え方もあり、アジア諸国からは複雑な視線を向けられている。

3. 戦場を去る人々:弔いと祈り

沈む艦の葬列

海上では、沈んだ護衛艦や駆逐艦が海面に残骸を浮かべている。そこでは国籍を問わず、多くの水兵が命を失った。乗組員たちは互いに亡くなった仲間を海へ還すための“船上葬”を行い、血染めの甲板には簡素な祭壇がしつらえられている。国旗で覆われた遺体が海へ滑り落ちていく時、甲板の生存者は静かに敬礼し、涙を流す。遠くではまだ爆炎が残る海域に、陽が沈みかけ、海面を赤く染め上げるその景色は、戦場の地獄を象徴していた。

奄美や沖縄の惨状

奄美大島や沖縄、あるいは他の戦場となった諸島では、焼け焦げた街が広がり、その瓦礫の中で市民が生き残りを探している。そこで陸上自衛隊や米海兵隊が捜索救難を続け、倒れた人々を掘り起こし、あるいは被ばく症状で苦しむ住民に止血や応急手当を施す。そこには多言語が飛び交い、兵士同士が互いに血と汗と泥にまみれた姿で助け合う。悲鳴と泣き声が交錯する一方、物資を分け合う小さな連帯が芽生える場面もある。

4. 復興への一歩:微かな希望

政治の動き:再構築と支援

日米首脳と各国の代表が会合を開き、被災地支援と放射能除染に向けた国際的な“復興プロジェクト”が議論される。広島・長崎の記憶を持つ日本が、またしても核の業火に晒されたことに対し、国民も軍も大きな精神的衝撃を受けているが、「もう二度と核を使わせない」という決意が再燃し、国内外からも支援を集めようという動きが出始める。

日米同盟:絆を超えた理解

戦場で血を流し合った日米兵士が、終戦後に合流し、簡素なテントの前で酒やコーヒーを分かち合う場面がある。そこでは、言語が違っても互いの傷や亡き仲間の話をしながら、「俺たちは戦争を終わらせるためにここまでやったんだ」と力なく微笑み合う。中には核への拒否反応を露わにしつつ、しかし一緒に戦うしかなかったことを痛感し、「結局、俺たちは何を守れたのか…」と遠く海を眺めて黙り込む兵士もいる。

5. 主人公たちの心境:戦いを振り返る

片桐の帰艦

艦長・片桐は自らの護衛艦「やまと」が沈んでしまったため、他の生存艦に移乗し艦隊司令部の補佐官となった。甲板に立ちながら、鋼鉄の破片と血のシミを眺め、「あのとき核を再使用せずに済んだのは、本当に正しかったのか…。多くの仲間を犠牲にしなければならなかった」と苦悩しながらも、「それでも核を使わなかった意義がある」と静かに自らに言い聞かせる。

弔いと黙祷

艦隊の一部が港に帰投した際、失った将兵のため黙祷と追悼式が行われる。血痕が残る制服のままの隊員たちが隊列を組み、遺影の前で深々と頭を垂れる。飛び散った血と残骸の記憶が彼らの瞼を焼き付け、涙を流す者も多い。しかし、その涙には「これから再び国を立て直す」という決意が微かに宿る。

6. 戦争の意味を問い直すラストメッセージ

核を超えた戦争への問い

戦術核に頼った瞬間、さらなる悲劇の連鎖が生まれ、多くの無辜の市民や兵士が命を落とした。その果てに「再度の核使用」を回避できたが、**“核戦争”**という悪夢はすべてを焼き尽くしてしまったも同然だ。片桐は埃と油と血にまみれた甲板に立ち、遠くの海を眺める。「俺たちは、あの最期の瞬間に核を封じた。だが、ほんの少しの差で世界が滅んでいたかもしれない…」そのつぶやきに同僚将校が肩を叩き、「生き残った俺たちが、これからどうするかが大事だ。あの戦いを無駄にしないために」と力無く微笑む。

未来への一歩

墜ちた仲間や犠牲者たちの想いを抱え、国際社会の厳しい現実と傷ついた国土を目の当たりにしつつ、日米の兵士や政治家たちは復興と平和への道を模索し始める。そっと海風に乗って漂う焼け焦げの匂いは、まだ消えない。しかし、その風の中で小さな声が聞こえるかのようだ――「もう核に頼らない世界を築け」と。血濡れの航跡を乗り越えながら、少なくとも核を再使用しなかった意思が、一筋の光となって人々を支えている。いま、残された人々はその光を頼りに、荒れ果てた焦土を再び住みよい場所へ変えようと歩き始める。

—終幕—


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