甘蜜レモン・パニック! ~ラベイユの誘惑~
- 山崎行政書士事務所
- 1月23日
- 読了時間: 8分

登場人物
伊藤(いとう)ひろみ:
30代OL。スイーツ大好きで、新作情報を見つけると絶対に食べたくなるタイプ。
安藤(あんどう)沙織(さおり):
ひろみの同僚。ややツッコミ気質で、冷静な視点を持つ。
店長・蜂須賀(はちすか):
ハチミツ専門店「ラベイユ」の店長。テンション高めで「ハチミツ愛」が止まらない。
謎の“レモン紳士”:
レモン柄のスーツを着た怪しい男。ハチミツ×レモンに執着を持つらしい。
第1幕:噂の「ハチミツとレモンのケーキ」
「ちょっと聞いてよ、沙織!」昼休み、社内の休憩スペースで、伊藤ひろみがスマホを握り締めて舞い上がっている。
「どうしたの、そんなにテンション上がって」安藤沙織はコーヒーをすすりながら流し目。
「ついに出たんだよ! ラベイユの新作、『ハチミツとレモンのケーキ』! なんか蜂蜜専門店ならではの限定メニューらしくて、めちゃくちゃ美味しそうなの!」「ああ、あのラベイユね。百貨店にあるおしゃれなハチミツ屋さんでしょ? いろんな国のハチミツがずらーっと並んでるあそこ?」「そうそう! 実はSNSで見つけたんだけど、これがものすごく評判いいんだ。レモンの酸味とフローラルなハチミツの香りが絶妙らしくて、『食べた瞬間、脳内に女神が舞い降りる』とか大袈裟なコメントがいくつもあってね!」
ひろみは口角がピクピク上がりっぱなし。「で、どうせ行くんでしょ?」「もちろん! 週末一緒に行こ! “女神”に会いたいし!」「(女神…?)ま、いいわ。つきあってあげる」
第2幕:ラベイユへ潜入
週末、都内の某百貨店。エスカレーターを上がっていくと、甘く優しいハチミツの香りが漂ってくる。そこが目的地「ラベイユ」だ。「うわぁ、見てよ沙織! すごい種類のハチミツ!」棚一面にビンが並び、オレンジやラベンダー、アカシアなど、いろんな産地のハチミツが勢ぞろいしている。すでにひろみの目はキラキラ。
「いや、ほんと“ハチミツパラダイス”って感じ。すごいね」ふと目線をやると、カウンターの向こうで赤いエプロンをまとった男が元気よく手を振っている。「いらっしゃいませー! 本日も甘~くおもてなし! 店長の蜂須賀でございます!」その勢いに飲まれそうになりながらも、ひろみは「えっと…『ハチミツとレモンのケーキ』ってまだありますか?」と聞いてみる。
「ああ、あれですね。大人気でしてね、ちょうどあと数個だけ残ってますよ!」「やったー! 2つください!」にこやかに注文を受ける蜂須賀店長。すると周囲のお客からも「私も」「私も!」という声が上がる。
「ちょっと待ってくださーい、在庫を確認しますねー!」店長が奥に引っ込んだと思ったら、別の客の背後から怪しげな人影が……。なんだかレモン柄のスーツを着て、頭に黄色いハットをかぶっている。「なに、あれ……?」ひろみと沙織は思わず目を合わせる。男はカウンターにドンッと手をついて言った。
「店長、レモンとハチミツの組み合わせは、私が世界で一番愛しているものだ。どうかこの私に、そのケーキを優先的に回していただけんかね!」「うわ、いきなり来たよ……」と沙織は困惑。
第3幕:謎の“レモン紳士”の要求
「なんなんですかあなた……? 私たち先に並んでたんですけど」ひろみが抗議しようとしたが、男はまるで気にしない。「失礼ながら、私は“レモン紳士”と呼ばれておりましてね。レモンと名のつくスイーツはすべて制覇している。最近は特に『ハチミツとレモンのコラボ』をライフワークにしているんだよ!」周囲のお客がザワつく。さも当然といった顔で「譲っていただきたい」と迫るその姿は、かなり暑苦しい。
「ちょっと、あんた全然紳士じゃないんだけど!? 割り込みするなんて失礼でしょ」沙織がピシャリとやるが、男は「まったく譲る気配がない…」とばかりに眉をひそめる。「レモン紳士たるもの、高貴なレモンを愛するがゆえ……いや、ここは譲っていただくのが筋というもの…!」「そんな謎理論、初めて聞いたわよ!」
店長の蜂須賀が戻ってきて状況を把握すると、目をバチバチさせながらも、大声で宣言する。「本日はハチミツとレモンのケーキ、残り4個しかありません! こちらにいらっしゃる方がすでに2つ注文済み、他にもお客様がいらっしゃいます。なのでレモン紳士さん、申し訳ないですが割り込みは……」「ああ……なんという悲劇! 我が愛するレモンとハチミツが、目の前で奪われていく……この胸の蜂が刺すような痛み……!」
第4幕:店長の“蜜”計(みつけい)発動!
売り場はちょっとしたパニックムード。そこで蜂須賀店長はひときわ大きな声を出した。「皆さま、落ち着いてください! こうなったら私の“とっておき”をお見せしましょう!」
不思議そうに見守る中、店長はカウンター奥から小瓶をいくつか取り出した。「こちらは世界各地から集めた厳選ハチミツ! アカシア、ヒマワリ、ローズマリー……そして極上のレモンブロッサムハチミツもございます! これを使って“特製ハチミツレモンソース”を追加で作れば、ケーキの数は限られていても、皆さん大満足間違いなし!」
「ええっ、そんなことができるの!?」「ああ、もちろんです! この店長・蜂須賀、ハチミツへの情熱なら誰にも負けませんから!」
店員たちが慌ただしく動き出す。そこへレモン紳士が突っ込む。「待て、そんな急造のソースで良いものができるのか? レモンとハチミツの相性は極めて奥深いんだぞ!」店長は笑顔でキメ顔。「ご安心ください。私、ハチミツの“テイスティング講習”を何百時間も受けております。レモンの酸味を最大限に活かすブレンド、ここでお見せしましょう!」
第5幕:ケーキ争奪戦、まさかの和解?
やがて4つのケーキがトレーに乗せられ運ばれてくる。先に注文を済ませていたひろみたちや他のお客が受け取り、一安心。レモン紳士はほかのお客が完売前に確保した分を「くっ…」と指をくわえて見送る。
しかし、その直後、店長が小瓶に入った“特製ハチミツレモンソース”を掲げながら声を張る。「みなさま、よろしければこちらのソースをケーキにかけて追加の味わいを楽しんでみませんか? もちろん無料サービスです!」「えっ…いいんですか!?」ケーキをゲットしたお客たちが色めき立つ。ひろみも「絶対おいしいに決まってる!」と興奮。
そして店長は、レモン紳士のほうを向いてこう言った。「レモン紳士さん。もしよければ、お客さまが許してくださるなら、彼らのケーキにこの特製ソースをひとふりしてあげてくれませんか? レモンへの情熱がおありなら、きっと最高の“仕上げ”ができるはず!」
店内が静まり返る。ひろみと沙織は「そこに委ねるのか…?」とドキドキ。しかしレモン紳士は少し考えてから、神妙な面持ちで頷いた。「いいだろう。私の“レモン愛”を存分に注がせてもらおうではないか。何しろハチミツとレモンは二人三脚! 私も共に歩まねばならぬ!」「……何言ってるか微妙だけど、まあいいか」と沙織は苦笑い。
第6幕:奇跡のハーモニー誕生
こうして、ひろみ&沙織の「ハチミツとレモンのケーキ」はレモン紳士の手によって“特製ハチミツレモンソース”を丁寧にかけられることに。
「では……最初の一切れ、いただきまーす……パクッ…」「ど、どう?」と沙織が息を飲む中、ひろみは目を見開いた。「う、うわあ……めちゃくちゃ美味しい! しっとりしたケーキに、ハチミツの甘みがじゅわっと染み込んでレモンの香りがふわって広がる…!」
「やば、ちょっと私もいただくわ」沙織が続けて一口。すぐに声を失い、しばし固まる。「……おいしすぎ…スッパ甘……何これ、最高……」
ケーキそのもののレモンアイシングもさることながら、追加のソースがさらに味を引き立てている。少し離れたところで、レモン紳士が腕組みをしながら満足気な笑みを浮かべ、「ふっ…どうだね、私の“レモン愛”は?」とひそかにドヤ顔。
他のお客も同じようにソースをかけてもらい、大盛り上がり。店内はハチミツとレモンの爽やかな香りに包まれ、ちょっとした祭り状態だ。店長の蜂須賀も「やったね!」とガッツポーズ。
第7幕:エピローグ~甘酸っぱさの向こう側~
食べ終えて大満足のひろみと沙織。レジで会計を済ませようとすると、店長の蜂須賀が笑顔で挨拶。「本日はありがとうございました! 新作ケーキ、いかがでしたか?」「最高でした! しっとりしてて程よい酸味と甘み…これまさに“甘酸っぱさの極み”ですね! もう虜です!」ひろみは目を輝かせる。
「次回はぜひ、ほかのフレーバーも試してみてくださいね! ラベンダー蜂蜜とか栗の花の蜂蜜とか、いろいろありますから!」「わぁ、楽しそう…また来ます!」
ふと見ると、レモン紳士が入口のあたりで急に振り向き、深々とお辞儀をしてくる。「あんた、結局ケーキは食べられなかったのに、大丈夫なの?」と沙織が声をかけると、男は「ふっ、私にはまだやるべき“レモン道”がある。次なるスイーツを追い求めねばならないのさ……」と謎めいた返事を残し、颯爽と去っていった。
「なんだったんだろうね、あの人……」「うーん、でも最後はいい仕事してくれたから、まあ結果オーライじゃない?」そう言い合いながら笑みを交わし、ラベイユを後にする二人。頭の中には、しっとり甘い蜂蜜の余韻と、爽やかなレモンの香りがまだ残っている。
「ね、また食べたいね。あのケーキ」「うん。今度はレモン紳士がいない時に、ゆっくり味わいたい気もするけどさ」
甘くて、でもちょっぴり酸っぱい。それはまるで恋のような味――なんてことを思いつつ、二人は小さく笑う。**ラベイユの「ハチミツとレモンのケーキ」**は、その甘酸っぱさで、今日もまた誰かの心に小さな女神を舞い降ろしているのかもしれない。
(終わり)





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