エントラ・ガード、本人性は見逃さない
- 山崎行政書士事務所
- 10月7日
- 読了時間: 5分

—山崎行政書士事務所コメディ新章—
登場人物(さくっと)
EntraGuard(エントラ・ガード)Azure Entra ID を象徴する守護ロボ。胸の盾ユニットは「不正バウンサー」。決めセリフは「IDこそが契約の根拠。認証なくして、信頼は生まれない。」
Justice Vault(ジャスティス・ヴォルト)クラウド法務ヒーロー。口癖は「規程、遵守!」。
山崎行政書士事務所メンバー律斗(リーダー)、りな(条文検索機関)、ゆい(癒し&ドジ)、ふみか(広報)、みお(命名担当)、叶多・陽翔・悠真・蓮斗・奏汰(にぎやかな後輩ズ)
やまにゃん尻尾がUSB‑Cの猫。バックアップの化身。
第一話:初出勤はMFAから
富士山にうっすら笠雲の朝。自動ドアの前で銀と金の装甲がきらり——EntraGuardが立っていた。
「本日より、本人性の守護を担当します。まず入館の多要素をお願いします」自分からMFAを要求してくる新人は前代未聞だ。
「顔とICカードと……お茶の湯気?」とゆい。「蒸気は不要です」とエントラは即答。ヴォルトが頷く。「お茶は可用性、認証ではない」
入館ログがクラウドに記録されると、胸の盾が小さく青に灯った。「契約の根拠、確立」——端正なバイザーの奥が光る。
第二話:共有アカウントの亡霊
午前10時、最初の相談が飛び込む。地元メーカー・白波精機の総務部から、電子契約の署名者が誰だかわからないという悲鳴だ。
「アカウント名は“営業部”。誰でも入れる共有アカウントでした」りなが肩を落とす。「本人性ゼロのサインは契約ゴーストです」エントラの声が低い。「成仏させよう」ヴォルトは胸の盾を光らせた。「規程、遵守!」
二人と所員は白波精機へ。受付の線香のような加湿器が、なぜか不吉だ。
エントラの現地調査メモ
サイン用メールが部署共有の受信箱に届く
たまに誰かがクリック
ログは「営業部」しか残っていない
監査人「それ、誰?」
「“誰が、何を、どの権限で行ったか”が基盤です」エントラは右腕の認証デバイスを展開した。「Azure Entra ID で個人単位のIDを発行。共有は廃止。PIM(特権ID管理)で承認制。電子契約は個人の署名へルーティング」「同時に**本人確認(eKYC)**を導入——免許証OCR+本人セルフィー照合。GDPRの同意は画面で明示、撤回もワンクリック」りなが条文化していく。
「のれん分けもやろう」ヴォルトが口を挟む。「ネットワークの話に見せかけて、実は役割分担の比喩だね」律斗が笑う。
午後、運用に乗った途端、総務部長が蒼白になる。「えっ、“営業部”でサインしていたの、私かも……」「大丈夫、今日からはあなたの名前で、あなたの意思でサインです」エントラの胸の盾がふわりと紫を湛えた。
第三話:同意はドレッシング、わかりやすさは野菜
白波精機のウェブで個人情報を扱うフォームも見直すことになった。みおがキャッチコピー案を出す。「『同意なくしてサラダは味気ない』」「ドレッシング比喩は悪くないけど、暗喩は薄めに」ふみかが苦笑する。
エントラは画面モックを開き、次々に指示を出す。
取得目的は一文で、用途ごとに改行
必須/任意を視覚で区別
保存期間と問い合わせ先を同じ面に表示
同意はチェックを外して送信できる(必須化しない)
同意の履歴はユーザーごとにタイムスタンプ付きで保管
「ISMAP対応のベースはここ。ログは後から探せる形で持っておく」「やまにゃん、ミラーお願い」ヴォルトが呼ぶと猫が「みゃ〜てら!」と尻尾USBを振る。二重化は、今日も猫任せだ。
第四話:コーヒーマシンの管理者
作業は順調……に見えたが、突如コーヒー室から警告音。新しいアクセス制御で、コーヒーマシンの管理画面に誰も入れなくなったらしい。
「管理者アカウント名“root”、パスワード“coffee”」全員が遠い目をした。
「装置のためのサービス・プリンシパルを作って、権限は最小に。管理操作はPIM昇格+理由入力で」エントラが淡々と手順を示し、ヴォルトが運用規程に落とす。「運用ルールに**“豆の補充は権限不要”って書いておいて」とゆい。「そこだけは物理多要素認証(筋力)**だね」と律斗。
再び香るコーヒー。総務部長は涙目で一杯すすり、「本人性の味がする」と言った。たぶん深煎りだ。
第五話:監査という名のレビューショー
導入後一か月。白波精機に社内監査が入る。「見せてください、本人性の根拠」審査員のセリフが今日だけはカッコよく聞こえる。
ふみかが司会進行、みおが照明(卓上スタンド)、やまにゃんが舞台監督(ケーブル管理)。レビューショーが始まった。
入館からサインまでのログ・ストーリーエントラが誰が・いつ・何をを直列で表示。
同意のタイムラインりなが「撤回」ボタンを押して見せ、撤回後の処理が自動で走る様子をデモ。
特権IDの昇格と証跡ヴォルトがPIMで昇格、理由:緊急のコーヒーフィルター詰まり。会場がどっと笑う。
バックアップ&復元やまにゃんが「みゃー!」。尻尾USBのランプが二回点滅=成功。
審査員はメモを閉じた。「誰が何をしたかがすぐに読める。そして何より運用が回っている」拍手。ヴォルトが静かに胸の盾を光らせる。エントラは短く言った。「IDこそが契約の根拠。」
第六話:本人性と人間味
帰社の車内。夕焼けの富士が赤い。「エントラさん、真面目すぎて疲れない?」と陽翔。「私は疲労をログに記録します」「休む、のでは?」「ログを見て、計画的に休みます」
ゆいが笑った。「なんか人間味があるんだかないんだか」ヴォルトが言葉を継ぐ。「本人性は機械で証明できる。人間味は一緒に働いて育つ」エントラは少しだけ胸の灯りを柔らかくした。「認証なくして、信頼は生まれない。でも信頼が育つのは、日常ですね」
エピローグ:静岡の空に二つの盾
夜。事務所の前で、二体のロボが空を見上げる。雲は薄く二重。誰かが冗談を言い、誰かがメモを取り、誰かが急須に湯を注ぐ音。
「ヴォルト先輩」エントラが呼ぶ。「なんだい」「本人性が守られた世界では、冗談も安心して言えます」「いいこと言うじゃないか。規程、遵守!」二つの盾が同時に光った。
明日も山崎行政書士事務所には、小さな事件と大きな笑い、そして確かな本人性がやってくる。
おまけ:エントラ・ガードの“同意”ポケットガイド
簡潔明瞭:取得目的は一文+改行。
選べる意思:同意はオプトイン、撤回はワンクリック。
履歴は宝:同意・撤回は時刻と本人IDで保管。
最小権限:人も機械も「必要なときだけ昇格」。
共有アカウント禁止:アカウントに“個人名”がないと、信頼もない。
——次回、「やまにゃん、ディレクトリ同期を見守る(尻尾で)」へ続く(かもしれない)。





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