『山崎行政書士事務所のリアル奮闘記 ～日常に寄り添う法務の物語～』

プロローグ：静かな坂の下、しかし仕事は山積み

　静岡市清水区・草薙の坂の下にある山崎行政書士事務所は、一見こぢんまりとしていて目立たない。しかし、ドアを開ければ電話が頻繁に鳴り、コピー機が稼働し、相談者たちが次々と訪れる。　ここには、所長の**山崎哲央（やまざき・てつお）**を中心に、スタッフ数名が日々忙しく働いている。彼らの仕事は、会社設立や相続、許認可申請など、多岐にわたる法務サポート。華やかな舞台はないが、現実に寄り添う“縁の下の力持ち”として頼りにされている。

第一章：朝、いつもの風景

■ 朝礼とメールチェック

　午前9時。　所長の山崎が柔らかな表情でスタッフを見回す。「おはようございます。今日は午前中に相続相談が2件、午後からは建設業許可の打ち合わせがあります。書類不備がないよう、各自確認をお願いしますね」　新人スタッフの**斎藤夏海（さいとう・なつみ）は「はい！」と気合いを入れつつ、PC画面でメールをチェックし、今日のスケジュールを再確認する。　一方、経験の長い丸山修（まるやま・おさむ）**は、依頼者ごとに分厚いファイルを棚から取り出して「相続相談の準備は斎藤さんと一緒にやろうか」と落ち着いた声で呼びかける。

■ 小さなトラブルは日常茶飯事

　コピー機が紙詰まりを起こし、斎藤が「またですか…」とため息をつく。山崎は慣れた手つきでカバーを開け、「これも仕事のうち」と微笑む。　こんなささやかなアクシデントも、山崎事務所では日常の風景だ。

第二章：午前の相続相談、家族の思いが絡み合う

■ 相談者1：親の介護をしてきた長女

　10時、最初に訪れたのは落ち着いた雰囲気の女性・佐久間由紀子。　「母が亡くなり、相続の手続きが必要なのですが、私しか介護していなかったし、弟はほぼ家に帰ってこなくて…。遺産の分け方に納得してくれるか心配で…」　丸山がファイルをめくりながら、「ご遺産はご実家の土地と預貯金ですね。まずは法定相続分の確認と、弟さんとの話し合いが必要になります」と優しく説明する。　由紀子は不安そうな表情。「相続って法律で分割が決まっていると聞きますが、介護した分を考慮してほしいという気持ちがあるんです…」　斎藤は深くうなずき、「そうですよね。ご家族ならではのお気持ちもありますし、一度弟さんも含めて円満に話し合えるよう、私たちがお手伝いします」と声をかける。

■ 相談者2：遠方の兄弟との連絡手段

　すれ違うように入ってきたのは、作業服姿の中年男性・高村誠。　「俺、長男なんすけど、父の相続で兄弟が北海道と九州に散らばってて、話し合いをどうやったらいいのか…」　山崎が書類を確認しながら、「兄弟の住所を確認し、委任状や同意書を郵送で取り交わす方法もありますよ。最近はオンライン会議で意見調整するケースも増えています」と提案する。　高村は少しホッとした様子。「オンライン…か。難しそうだけど、離れてる分、そういうツールもありですね。助かります」

第三章：お昼休み、ちょっとした会話

■ コンビニ弁当を囲んで

　お昼時、スタッフたちは事務所内でコンビニ弁当を広げ、プチ情報交換。　斎藤は溜息交じりに「相続の相談って、家族の気持ちがいろいろ絡むから難しいですね…」　丸山は箸を動かしながら、「そうだね。ただ書類を作るだけじゃなく、相続人の気持ちを整理するのも大事だから。行政書士とはいえ、本当に色んな側面を見る必要があるんだ」　山崎は微笑んで、「そう。私たちの仕事は単に書類屋じゃない。相談者の思いに寄り添いつつ、法の手続きでサポートする。大変だけどやりがいがありますよね」とまとめる。

■ 午後に向けてスケジュール調整

　森下舞がタブレットでスケジュールを確認し、「午後イチで建設業許可の打ち合わせが入ってます。相続の続きは夕方ですね」と報告。　斎藤は書類の山を見て、「気合い入れなくちゃ…」と立ち上がる。

第四章：午後、建設業許可の相談

■ 建設業者・鈴木社長の悩み

　13時、少し日差しが強くなってきたころ、地元の工務店を経営する鈴木社長が入ってきた。　「実は新しい分野の工事を始めたくてね。許可を追加で取得する必要があるのか確認したいんだが…」　建設業許可には細かな区分があり、追加の業種許可を得るには経営経験や専任技術者の要件を満たす必要がある。　丸山は書類を整理しながら「工務店としては既に一般建設業の許可をお持ちですけど、今回の新分野は“管工事”扱いかもしれません。必要書類や実績証明があるか確認しましょう」と淡々と説明。　鈴木社長は「うちは技術者はいるんだけど、過去の実績をどう証明するか悩んでてね…。見積書や契約書のコピーを持ってきたから確認してくれないかな？」と大きなファイルをドサッと置く。

■ 地道な証拠集めと確認

　斎藤と森下はファイルをめくりながら「これ古い契約書ですね。ちゃんと押印してあるけど、相手先の名称が変わってる…」とか「こっちは確かに管工事に該当しそうですね」と頭を突き合わせる。　所長の山崎は「実績の整理が必要ですが、急げば来月には申請できると思いますよ。今からでも書類をきちんと揃えれば大丈夫」と安心させる。　鈴木社長は「助かるよ。うちは現場仕事で資料作りが苦手だから、本当にありがたい」と深々と頭を下げる。

第五章：夕方、相続の再調整と一歩前へ

■ 兄弟が納得へ向けて歩み寄る

　夕方には午前中に来た相続相談者たちが再度顔を揃える。　- 佐久間由紀子：弟と話してみたら、介護のことを理解してくれる意向があるらしい。具体的な分割案を作成してほしいとの要望。　- 高村誠：オンライン会議の日程を兄弟で検討中。郵送でも書類のやり取りを進めるよう、フォローを依頼。

　斎藤は遺産分割協議書のひな形を提示し、「こんな感じで財産を振り分ける形でどうでしょう？ お弟さんにも確認していただいて…」と説明。　山崎が補足しながら、「もちろん話し合いで細かく調整はできます。後でトラブルにならないよう、公正証書にする方法もありますので検討しましょう」と進める。　由紀子は「ありがとうございます。なんとか落としどころを見つけたいので、もう少し頑張ります」と少し晴れやかな表情。

第六章：一日の終わり、振り返り

■ 帰り際の事務所

　時計は18時を回り、今日の業務も終わりに近づく。　斎藤と森下はファイルを整理しながら、「いやあ、相続の話って本当に家族それぞれの背景があるんだなあ…」としみじみ。　丸山はPCを閉じ、「建設業許可の申請、書類が揃い次第すぐに取り掛かろう。ちょっとバタバタするけど、うまくいけば鈴木社長も新事業に間に合うだろう」と呟く。　山崎は微笑みを絶やさず、「みんなお疲れさま。今日も色んな相談があったけど、一つずつ解決に向かってるね」と労いの言葉をかける。

■ 明日への準備

　最後の電話対応が終わると、事務所のシャッターを下ろす。外はすっかり夕闇に包まれて、坂の上の街灯がぽつりと灯り始めている。　山崎が鍵をかけながら、「明日も頑張りましょう。相続も許可も、まだ続きがありますから」と穏やかに言うと、スタッフ全員が「はい！」と力強く返事をする。　こうして、実務に追われながらも確実に相談者をサポートしていく一日が終わる。地味だが、確かなやりがいを感じながら、彼らはまた明日、坂の下の事務所で静かに笑顔を見せるのだ。

エピローグ：当たり前の日々が誰かの支えになる

　山崎行政書士事務所の業務は、派手さやドラマチックな展開こそ少ないものの、一つひとつが確かに人々の人生を支えている。　- 亡き親の遺産をめぐって悩む人、　- 新しい事業に挑戦したい人、　- 離れて暮らす家族との連絡に困る人…　そうした“現実”に寄り添い、書類の向こう側にある相談者の想いをくみ取りながら、法律の枠組みを駆使して道筋を示す。　明日もきっと、ここには新たな相談者が訪れ、スタッフたちが柔らかな対応で迎えるのだろう。地味であっても、その日常こそが誰かの希望を支えている――それが、山崎行政書士事務所の真の姿なのである。