IT×法務の一手 ―山崎行政書士事務所の挑戦―

第一章：新時代の事務所

　都心の一角、高層ビルが乱立するオフィス街に、ひときわ小さな看板を掲げた事務所がある。名前は**「山崎行政書士事務所」。どこにでもありそうな名称だが、中に足を踏み入れると、その雰囲気はまるでIT企業のようだ。　奥のフロアには大型モニターが並び、最新のAIシステムのログが絶えず流れている。さらに、書棚の一角には行政や商取引に関する法令集などがぎっしりと並ぶ。　所長の山崎徹（やまざき・とおる）**は30代半ばの若き行政書士。ITの知識を併せ持ち、「AI×書類作成サポートの力でクライアントの難題をフォローする」というコンセプトを掲げている。　所内のホワイトボードには大きく「ITで日本の事業を最適化せよ！」と書かれており、熱い闘志をうかがわせる。

第二章：持ち込まれた難案件

　ある朝、山崎が事務所のモニターの前でプログラムコードをチェックしていると、ドアを叩く音がした。　「失礼します……」　現れたのは、明らかに疲弊した表情の若き社長、牧野誠（まきの・まこと）。彼が切り出した相談内容はこうだった。　「自社開発したアプリが海外に不正流出しているうえ、契約書には抜け穴があって相手に有利な内容が含まれているんです。取引先との話し合いも難航していて……このままじゃ会社が倒産しかねません！」

　牧野の会社はITスタートアップで、独自のアルゴリズムを開発していたらしい。ところが最近、海外企業との取引で思わぬトラブルに直面し、契約面の不備が露呈した。　「助けてください。うちの法務部は小規模で手が回らなくて……」　山崎は面談室の椅子に深く腰掛け、真剣な面持ちで頷く。　「AIを活かした文書分析と、行政書士としてサポートできる契約書面の改善策を検討しましょう。必要なら私どもから提携している弁護士をご紹介することもできますよ」

第三章：AIチームと人間の知恵

　山崎はまず、事務所に導入している独自のAI分析システム**「A-Solver」**を稼働させる。アプリの仕様書や契約文書、関係メール（依頼者から提供されたもの）などを大量に読み込み、双方の書類作成上の問題点や不自然な条文を洗い出す。　同時に、事務所のスタッフたち——契約書作成に詳しいメンバー、プログラミング知識を持つIT担当、そして提携先の弁護士と連携するための調整担当が総出で、人間ならではの“勘と経験”を総動員する。　数時間後、モニターに表示されるAIの解析結果は、契約上の特定条項が相手企業に著しく有利になっている仕組みを示唆していた。　「どうやら契約書の第15条が曖昧で、そこを相手企業が自由に解釈できる内容ですね……」　スタッフが指摘すると、山崎は険しい表情をつくる。　「なるほど、そこに付け入られたわけか。相手企業は海外法人で法域が違うけど、少なくとも日本側での契約内容は修正できるかもしれない。交渉面は提携弁護士と連携して進めていきましょう。とりあえず、私たちは書面の改訂案を用意しましょう」

第四章：相手企業とのやり取り

　山崎たちは依頼者・牧野の会社で使う新たな契約書の案を作成し、書類上の不備を最小限に抑えるようサポートする。一方、実際に相手企業との交渉で必要な法的交渉が生じる場合は、提携する弁護士のサポートを依頼する手筈を整える。　オンライン会議では、海外企業の担当者が「そちらの契約書には以前から不備がある。無効化できる」と主張するが、提携弁護士と山崎たちが協力し、**「これまでの契約文書にある問題点は改訂し、双方が合意できる書面を再度結び直す方向が望ましい」**と指摘。　担当者は渋い顔をしつつも、山崎たちが準備した具体的な改訂案を見て、「もしこれで落とし所が見つかるなら、協議を進めましょう」と態度を軟化させる。

第五章：出てきた裏切り者

　ところが、事態が進む中で予期せぬ情報が舞い込む。山崎のAIシステムが依頼者の提供したメール群を解析したところ、ある従業員が相手企業へこっそり情報を流していた可能性が浮上したのだ。　「社内で裏取引があったんじゃ……？」　山崎は驚きながらも、ここでの対処は弁護士と相談し、場合によっては懲戒や刑事告発の手段もある、と提案するしかない。　牧野は顔面蒼白になり、「そ、そんな……仲間だと思っていたのに」と絶句。山崎は彼の肩を軽く叩き、　「まずは社内のコンプライアンス体制の整備も必要ですね。契約だけじゃなく、再発防止策も一緒に考えていきましょう。もちろん、私たちと提携弁護士がサポートしますよ」　と声をかける。

第六章：契約再構築と解決

　最終的に、海外企業が抱いていた“契約の穴をついた使用”問題は、改訂された契約書をベースに再合意に至る。これは提携弁護士が直接交渉した結果であり、山崎の事務所は契約書の作成・翻訳・AI分析などバックアップを担当した。　裏切り者の従業員は社長に謝罪のうえ退職し、牧野の会社は大きなダメージこそ受けたが、なんとか破綻の危機を乗り越えられそうだ。　牧野は山崎に深々と頭を下げ、「あなたのおかげで新しい契約がまとまりました。今度は正しい形で事業を進められそうです」と感謝を述べる。　山崎は苦笑しながら、「いえいえ、僕は契約書のサポートとIT面のアドバイスをしただけ。実際の交渉や法的処理は提携弁護士さんの力ですよ。でもお役に立ててよかった」と謙遜する。

エピローグ：IT×法務で描く未来

　その後、牧野の会社は新たな契約に基づいて海外展開を再開。社内では不正防止の仕組みが強化され、社員たちも心を入れ替えて働いているとのこと。　山崎は事務所でコーヒーをすすりながら、モニターの画面を見つめ、「やれやれ、大きな難題も無事クリアできたか」とほっと胸をなでおろす。　「AIと法務サポートの融合。これが新しい時代の行政書士の在り方かもしれないな……」　スタッフたちも微笑み、「次はどんな案件が来るんでしょう？」とワクワクしている。　外のビル群が夕日に染まり、オレンジの光が窓から差し込む。山崎の瞳は、これからもAIと人間らしい知恵で依頼者をサポートし続ける、という揺るぎない決意を映していた。

　―ITと法務の力を組み合わせて、事業をサポートする山崎行政書士事務所の活躍は、まだ始まったばかり。―