『法務ロワイヤル外伝3 ~深海と草薙の坂の下で~』―山崎行政書士事務所、今度は海の怪!? 新たなる騒動編―
- 山崎行政書士事務所
- 1月19日
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ロローグ:またもや静かなる朝
静岡市清水区、草薙の坂の下にある山崎行政書士事務所。 所長の山崎哲央は今日もゆるやかな笑顔を浮かべながら、スタッフたちを見回している。 新人スタッフの斎藤夏海は相変わらず慌ただしく電話を取り、元銀行員の丸山修はパソコンと睨めっこ、そして若手の森下舞は書類棚の整理で上へ下への大忙し。 つい先日、「宇宙人が物置に住み着いている」という前代未聞のトラブルを解決したばかりである。幽霊や宇宙の次に来るのは一体何なのか――その答えはすぐに訪れようとしていた。
第一章:突如現れた“海の男”
その日の午後、事務所の扉を勢いよく開けたのは、潮の香りを身に纏ったような初老の男性だった。「お、お邪魔します! わしは網代功っちゅう漁師でして…いや元漁師かな? 実は困っとるんです!」 本人は興奮しているのか、声が大きい。斎藤は慌てて応接スペースへ案内しながら、何があったのかと問いかける。 網代は上ずった声でまくし立てる。「船をやめて、陸で食堂を始めようと思っとったんですが…そこで“深海人”を雇いたいって客が現れまして…」
――深海人? 斎藤と森下は顔を見合わせ、同時に「えぇぇ!?」と声をあげる。「深海人って…まさか、人魚とか、海底に住むとかいうアレですか?」 森下が聞くと、網代は真剣な表情でうなずく。「そうなんだよ! そいつ、まるで本物の人魚みたいに、ウチの海近くの洞窟から来たって言うんだ…でも、役所に行っても『そんな人、住民登録できません』と取り合ってくれん! 山崎事務所なら何か方法を知っとるんじゃないかと思って…」 呆れるやら笑うやらで困惑するスタッフたち。丸山は苦笑しながらボソッと「また宇宙に続いて、今度は深海か…」とつぶやく。 しかし山崎はどこ吹く風の calm な表情で、「まずは事実確認をしてみましょう。深海人…もし本当に人魚なら、在留資格どころの話じゃありませんからねぇ」と言う。 そう、山崎行政書士のモットーは“どんな依頼もまずは冷静に”。今回もその姿勢で臨むようだ。
第二章:海辺の食堂計画と謎の“深海人”
■ “深海ダイナー”構想
網代が語るところによると、昔の仲間と一緒に「深海ダイナー」というユニークな食堂を作る構想があるらしい。駿河湾で採れる深海魚をメイン料理に、店内にはアクアリウムを設置して“海中感”を演出するのだとか。「昔は漁師じゃったが、歳で腰をやられてな。陸で漁の魅力を伝えたいと思っとるんです」 話を聞くうちに、これはなかなか面白い企画のように思えてきた。一方で、問題は“人魚の店員”をどう扱うかだ。「そもそも、その深海人とやらは日本語、しゃべれるんですか?」と丸山が尋ねると、網代は「アワアワ言うとるが、なんとなく通じる気がしてな…」と謎の回答。 斎藤は「むしろ詐欺じゃないか?」と疑うが、山崎は笑いながら「まあ、会ってみないことには何とも言えませんね」と言う。
■ 見参! 不思議な来訪者
翌日、網代がその“深海人”なる人物を事務所に連れてきた。その名もマーレと名乗る青年。 一見すると普通の男性に見えるが、やたらと肌が白く、常にしっとりしているような雰囲気がある。言葉はたどたどしく、確かに「アワワ…」と間に息を漏らす。「アナタ…行政書士? 私…陸の暮らし、知らナイ…」 本人は真剣そのものだが、まるでファンタジー映画の登場人物のようだ。森下は思わず目を輝かせる。「わあ、本当に海から来たんですか?」「深い海底…ヒカリ、少ナイ…」 そう言いながらマーレは、事務所の蛍光灯を見て「まぶしい…」と目を細めている。斎藤はもう完全に目が点。「え、えっと…在留資格…じゃなくて住民登録? うーん…」
山崎は相変わらず余裕の微笑みで、「とりあえず“人”として扱うにしても、国籍とか住民票とか、クリアすべきハードルがいっぱいありますね」と冷静に言う。まさか深海バージョンの国際法(?)を検討する日が来るとは誰も思わなかった。
第三章:冴え渡る(?)山崎事務所の知恵
■ まずは事実確認
さすがに「海底人」では行政手続きのしようがないため、山崎たちはマーレの背景をもう少し詳しく知りたいと考える。「あなたは、どうやってここまで来たんですか?」 質問を繰り返すうち、マーレは片言で答える。「船…沈ム…ワタシ、ソコデ“拾ワレタ”…」 どうやら数年前に難破した船から漂流したところを、網代が助けたらしい。ただマーレはその後、漁師小屋の裏の海を拠点にひっそり暮らしていたとか。あまりに不思議な話だが、網代本人は全く疑っていないという。「わしは最初、深海魚かと思ったが、人の姿だったからなあ。漁師人生で初めての衝撃だったよ」 斎藤は頭を抱える。「これは…法律を超えた問題ですね…」
■ “労働許可”は必要か?
しかし、網代の希望は「マーレを自分の店で雇用したい」というもの。その場合、最低でも労働契約や社会保険、税金の問題が浮上してくる。「もしマーレさんが外国人扱いなら、在留資格が必要。だけど、国籍不明じゃ申請もできないし…」 丸山がため息交じりに話すが、山崎は腕を組んで考える。「国際法的に“国籍を有しない者”として特例を探すか、いっそ“日本人として戸籍に入れる”手段を模索するか…いや、これはかなり難しい。市役所も対応に困るだろうなあ」 そこに森下がメモを取りながら提案する。「どうせなら“海の生態研究の被験者”という形で、研究機関に所属してもらうとか…?」「それも発想としてはアリだけど、マーレさんが嫌がったら無理だよね」 マーレはキョトンとした顔で二人を見比べ、「陸で働きタイ…アワワ…」とつぶやく。網代も「頼む、なんとかならんか!」と懇願する。
第四章:思わぬ協力者、再び
■ 幽霊物件オーナーの吉本が一役買う?
この話を聞きつけたのが、幽霊物件で一世を風靡(?)した元銀行員の吉本だ。彼は今や“ちょっとヘンテコな観光ビジネス”のエキスパート扱い。「深海人が店員? それ、超おもしろいじゃないですか。僕の物件に呼んで、特別イベントでもやりたいなあ。『海と幽霊のコラボ』とか…」 斎藤は「またヘンなこと考えてる…」と呆れるも、吉本は「だって注目集まりますよ? 観光客も増えて地域活性化に貢献できるかも!」と意気込む。 すると、以前NPOを設立した遠藤柚香(課金ビジネスに走りかけたが、今は高齢者支援で健全に活動中)も興味津々。「高齢者の皆さんに“海の不思議”を体験してもらうプログラムを開発したいんです! おじいちゃん・おばあちゃんに深海の魅力を伝えたい! マーレさん、ぜひ協力して!」
気づけば、町の面々が総出で“マーレ就職応援プロジェクト”を立ち上げはじめた。山崎事務所のスタッフは「いや、盛り上がるのはいいんだけど…」と少々戸惑い気味だ。
第五章:法の壁と市役所の反応
■ 市役所での大混乱
山崎らは市役所の担当者と相談すべく、マーレを連れて役所を訪ねる。「えっと…深海人の住民登録を、ですか…?」 担当者の杉山は目を白黒させる。斎藤が必死にかいつまんで説明する。「はい…国籍が不明でして、本人は“海底出身”と言ってるんですけど、日本語は(たどたどしく)話せるんです。働きたい意志もあるので、雇用契約を前提に何とかしたいんです!」 さすがに担当者も頭を抱える。「こ、これは私の権限じゃどうにも…。上司にも相談します」
■ 思わぬ検討事項
数日後、山崎事務所に市役所から電話が入る。「法務局にも確認しましたが、どうやらマーレさんは正式に外国人登録できる要件が満たせそうにありません。戸籍を新たに作るのも難しいです」 こうなると、在留資格などのルートは絶望的に見える。「やっぱりダメか…」と網代は落胆し、マーレもシュンと肩を落とす。「陸で働キタイ…」 ところが山崎は「まだ諦めるのは早い」と言わんばかりに微笑む。「こういうとき、行政書士の腕の見せ所じゃないですか。何か他の方法があるかもしれない」 その姿にスタッフたちも「また始まった、所長のマイペースなやる気スイッチ…」とニヤリとする。
第六章:妙案、そして奇策
■ “研修生”という立場?
丸山が過去の資料を漁りながら思いつく。「『技能実習生』とか『特定活動ビザ』のような枠組みがあるんですけど、国籍が不明だとそもそも無理かな…?」 山崎は首をかしげる。「一般的にはそうだけど、研究機関と連携して“生態調査の一環”として短期滞在の扱いにする…とか?」 思い返せば、マーレの存在そのものが“まだよく分からない”のだ。もし大手の海洋研究センターと協力できれば、“特例的に”実習や調査の名目でマーレを滞在させることができるかもしれない。 しかも、いずれ“正体”が明確になれば、正式な手続きを進める道が開けるかもしれないのだ。
■ 思わぬ味方、海洋研究センター
さっそく山崎が旧友のつてを頼って、近隣の大学附属海洋研究センターに連絡すると、「え!? 深海人!? それは面白い! ぜひ詳しく調べたい!」と研究者たちが食いついてきた。 網代にしてみれば「マーレがモルモットにされるのは嫌じゃ」と心配そうだが、マーレ本人は「海ノ研修…面白ソウ…」と何やら前向きな様子。 こうして、**“海洋研究所の特別研修員”兼“食堂の見習いスタッフ”**という、やや複雑な二足のわらじ的立場でマーレが陸に滞在できるよう、山崎事務所が書類を整えることになった。
第七章:ドタバタの結末とほのぼのエピローグ
■ やっぱり起こる事務所の大混乱
そんな前例のない手続きを進めるため、事務所には大量の申請書類や確認書が山積みとなる。森下が「書類棚、もう限界です…!」と悲鳴を上げれば、斎藤は「社内共有ドライブにうまく整理しましょう!」と提案するが、丸山はエクセルのマクロが暴走し「やばい、データが消えたかも…!」とパニック。「落ち着いてください、みんな!」と山崎が声をかけるが、その声は雑踏に掻き消され…。 結局、アナログ作業とデジタル作業の両方で右往左往しながらも、最終的に山崎の采配でなんとか期限に間に合わせる。
■ 大団円、そして新たな一歩
数週間後、無事に**“海洋研究センター特別研修員(暫定)”**としての書類が受理され、マーレは晴れて(?)陸の世界で生活できることに。網代が準備した「深海ダイナー」もめでたく開店し、マーレは店頭で“深海魚のおいしさ”を伝えるPR係として大活躍しているらしい。「アワワ…いらっしゃいませ…」という独特の接客が逆に評判を呼び、連日メディアが押し寄せるほどの人気ぶり。 事務所を訪ねてきた網代とマーレは、感謝の気持ちを込めて深海魚の干物やら特製スープやらを山崎らに手渡す。「ありがとう、これでわしらも食っていける。マーレも陸で幸せに暮らせるってもんだ!」 マーレも「ミンナ、アリガトウ…」と深々と頭を下げる。
エピローグ:今日も坂の下で笑い声
夕暮れの草薙の坂の下、山崎事務所には相変わらず電話が鳴り止まない。斎藤と森下は新規相談のアポイントを取り、丸山は次の案件の資料をめくりながら「次は何が来るのかな…宇宙、深海、もしかして空を飛ぶ妖精とか…?」と冗談混じりに言う。 そこに山崎がやってきて、いつものやわらかな口調で言う。「みんな、お疲れさま。そろそろ一服しようか。あ、海洋センターからいただいた深海珈琲があるんだけど、飲んでみる?」 スタッフたちは思わず笑みをこぼす。「深海珈琲ってなんだか怪しい…けど、ちょっと気になる!」
こうして、山崎行政書士事務所の業務は今日もゆるやかに、そして騒がしく進んでいく。幽霊も宇宙人(?)も深海人も大歓迎、どんなにヘンテコな相談でも、彼らはまず「話をきちんと聞いて、法務の力でできる限りサポートする」。 ――次はどんな依頼が舞い込むのか? そんな予感に胸を躍らせながら、静岡の夜風に包まれて一日が終わっていくのだった。
(まだまだ続く…かもしれない)





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