『法務ロワイヤル外伝5 ~未来都市と草薙の坂の下で~』―山崎行政書士事務所、新たな“時空超越”騒動編―
- 山崎行政書士事務所
- 1月19日
- 読了時間: 8分

プロローグ:いつもの朝、いつもの雑踏
静岡市清水区、草薙の坂の下にある山崎行政書士事務所。 朝の日差しが柔らかく降り注ぐなか、所長の山崎哲央はいつものように穏やかな笑顔で出勤し、スタッフの様子を見やる。 新人スタッフの斎藤夏海は、昨日の残務処理のファイルを抱えながら「ああ、もう書類が多すぎ…」とぼやき、元銀行員の丸山修は「紙詰まりしないプリンターはどこにあるんだ…」と相変わらずプリンターと格闘中。 若手の森下舞はせっせとメールをチェックしながら、「今日も新規の相談がいくつか入ってますね…。今度は地元アイドルの引退セレモニーに関する手続きだとか」と、いつものバタバタを予感している。
幽霊、宇宙人、深海人、さらには江戸時代からの訪問者まで――さまざまな“境界を越えた”依頼を解決してきたこの事務所。 いよいよ次は何が飛び込んでくるのやら…と思う間もなく、まさに“時空超越”ど真ん中の相談が舞い込もうとしていた。
第一章:未来から来た(?)ゲスト現る
■ 謎の男性、名乗りは“222X年から来ました”
その日、事務所の扉を開けたのは、シルバーメタリックなジャケットを着込んだ若い男性。どこか近未来映画を思わせるファッションで、周囲をキョロキョロと見回している。「ええっと…ここ、山崎行政書士事務所、ですよね…?」 少し不安そうな口ぶりに、斎藤が「はい、そうです」と応じると、彼はほっと息をついてから、一気にまくし立てた。「ぼ、僕は**鷹野(たかの)**といいます。実は、222X年からタイムマシンでやってきたんです! ええと、帰れなくなっちゃって…法的にどうにかならないかと…」
再び、事務所内に沈黙が落ちる。森下は思わず目を瞬かせ、「222X年…つまり、二百年後とかではなく、ちょっと先の未来…?」とこぼす。 丸山が苦笑いしながら「あ、またきたよ、時空系…」とつぶやくと、斎藤も同感だ。「江戸時代の次は近未来!?」と心の中で叫ぶ。 しかし所長の山崎はマイペース。「なるほど、未来人というわけですね。詳しくお話を伺いましょう」と、いつもの穏やかなトーンで促す。
第二章:未来人・鷹野が抱える“帰れない”事情
■ 行きはよいよい、帰りはどうする
鷹野いわく、故障したタイムマシンが修復不能で、元の時代に戻れなくなったという。「部品がすべて未来の素材でできていて、今の時代には代替素材がないんです…。そもそも量子コンピュータがないと制御できなくて…」 斎藤が半ば呆れ気味に「ということは、こちらの時代でずっと暮らすしかないんですか?」と問うと、鷹野はうなだれたまま「はい…。とりあえずここに留まるしか…」と力なく答える。
■ “戸籍”も“身分証明”もゼロ
しかし困るのは、当然ながら戸籍や住民票、在留資格が一切ないことだ。 鷹野がポケットから取り出したのは、“未来の身分証”らしきカード。「これ、指紋認証やら網膜スキャンやら、未来の技術が詰まってるんですけど…この時代じゃ読み取れないんですよね」 丸山が受け取って眺めるが、「え、何このホログラム…? すごいけど、こちらでは使えない…」とため息。 山崎は「やはり、法的には“存在しない人”になってしまいますね…。前に深海人や江戸の方をサポートしたときと同じく、何か特別な枠組みを探るしかありません」と冷静に分析する。
第三章:未来技術に群がる人々
■ 研究機関からのアプローチ
早速、鷹野が未来の人間だという噂が地元で広まり、様々な人物が接触を試みてくる。 ある日は、大学附属の「量子力学研究センター」職員が事務所に押しかけ、「ぜひ彼を研究対象として提供してほしい」と申し出る。「彼の脳波や身体的特徴を調べれば、未来の技術のヒントが得られるかもしれない!」 斎藤は呆れながら「いやいや、人を“研究対象”扱いしないでください…」とピシャリ。鷹野も「勘弁してください、未来の技術といっても僕はただの一般人なんです…」と怯えた様子。
■ “怪しいビジネス”の影
また、外資系コンサルを名乗る人物が再び登場。「あなたの未来知識を活かして、新しい事業を立ち上げましょう! 莫大な利益が見込めますよ!」と、甘い言葉をかけてくる。 丸山は「また来たか、こういうタイプ…」と苦笑い。森下も「未来株の情報とか、そういうの聞き出そうとしてるんじゃ…?」と、眉をひそめる。 鷹野自身は「そんなの知らないですよ! 歴史の大きな流れは教科書で習ったくらいで、細かい株価や企業動向なんか全然知りません!」と困り顔だ。
第四章:山崎事務所の方針と“未来人”の生活
■ 鷹野の“居場所”を確保するには?
鷹野の希望は「普通に仕事をして、普通に暮らしたい」というもの。だが法的身分がなければ働くのは難しい。 山崎は頭をひねりながら、「うーん、過去の例に倣うなら、やっぱり研究所や企業との“特別研修生扱い”とか、NPOとの提携で社会活動に参加する方法が考えられますね」と言う。 そこで思い出されるのが、かつて深海人マーレや江戸時代から来たお滝をサポートした“地域連携”スタイルだ。 斎藤が「じゃあ、鷹野さんも地域のイベントとか、NPO活動に協力して、特別ポジションを得られないかな」と提案する。
■ 幽霊・宇宙・深海・江戸…そして未来?
幸いにも、山崎事務所には奇妙な経歴(?)のクライアントが多い。幽霊物件のオーナー・元銀行員の吉本や、ペットビジネスを運営する大林老人、アイドル支援NPOの遠藤柚香など、個性的な面々が顔を揃えている。「きっと彼らなら、鷹野さんを温かく迎えてくれるでしょう」と山崎は笑う。 鷹野も「え、そんな人たちがいるんですか…? じゃあ僕でもやっていけるかも…」と、ほんの少し元気を取り戻す。
第五章:不穏な動き――“未来予測”の悪用?
■ 噂を聞きつけたダークな勢力
ところが、一筋縄ではいかないのがこの町の常(?)だ。鷹野が持つ“未来の出来事に関する知識”に目をつけた者たちが暗躍を始める。 丸山が外出先で怪しい会話を耳にする。「奴が未来の災害情報を知ってるかもしれない。うまく聞き出せば、投資先を操作できるんじゃないか?」「あるいは、未来の技術のヒントを得て特許を抑え込んでおけば大儲けできるぞ!」 とんでもないことを企んでいるらしい。鷹野は「そもそも僕、未来の大まかな歴史しか知らないし、技術者でもなんでもないんですけどね…」と困惑するばかり。
■ 山崎事務所VS陰謀論?
やがてその勢力のリーダーと名乗る倉科という男が、山崎事務所に直接やってきて、鷹野を引き渡せとまくしたてる。「我々は世界の発展に寄与したいだけだ。未来人が協力すれば、きっともっと文明が発達するはずだ!」 しかし、斎藤が毅然とした態度で「人権を無視するような手法は容認できません。鷹野さんの自由意志が最優先です」と言い放つ。 当然、丸山や森下も同調して反対。最後に山崎が「彼を無理矢理連れて行くなら、法的手段をとりますよ。警察にも連絡済みです」と穏やかながら鋭い眼差しを向けると、倉科は「ちっ…」と舌打ちをして退散する。
第六章:クライマックスは地域の祭り!?
■ “未来体験ブース”構想
そんなドタバタが続くなか、タイミングよく地元商店街がイベントを企画していた。テーマは「時代を超えて楽しもう!」という、まさにピッタリな内容。 アイドル支援NPOの遠藤や、幽霊物件の吉本らが中心となり、いろんな“時空”をテーマにしたブースを出すことに。 深海ダイナーを出した網代功は、海底っぽい演出を担当。江戸時代から来たお滝は和装体験や江戸の甘味の屋台を開く。 そして「未来ブース」として、鷹野が中心となり、彼が知る限りの“未来の雑学”を紹介する小さな展示をすることに決まった。「僕、機械の専門じゃないですけど…未来のファッションや文化なら、ある程度お話できるかもしれません」と鷹野は意欲を見せる。
■ 謎の妨害工作!?
しかし、イベント前日になって会場の電源設備にトラブルが発生。誰かが意図的に配線を切った形跡があるとか。「これは絶対倉科たちの仕業じゃない?」 斎藤が憤慨すると、丸山も「ひどいなあ…。せっかく盛り上がろうとしてるのに!」と怒りをあらわにする。 だが、ここで鷹野が意外な知識を披露。「僕、そこそこ電気工作の授業は受けたんです。未来の配線技術と違いますけど、原理は変わらないかも…!」 慌てて現場に駆けつけた鷹野は、主催側と協力しながら応急処置を施し、見事に電源設備の復旧に成功!
第七章:ハッピーエンドと新たな日常
■ イベント大成功、鷹野の居場所
こうしてイベント当日は大盛況。幽霊ブース、江戸ブース、深海ブース…そして鷹野の“未来ブース”には、ひっきりなしに人が訪れる。 鷹野は未来の服や道具のイラストを描いたパネルを見せながら、子どもたちに「これはね、将来のスポーツウェアで空気抵抗をほとんど受けないんだよ」などと解説し、笑顔を振りまく。 大林老人は「おお、なんだかSF映画みたいじゃのう」と目を輝かせ、遠藤は「若い人たちが興味津々ですよ! 大成功!」と喜ぶ。 そして、鷹野の誠実な人柄も相まって、地域の人々との結びつきが一気に強まっていった。
■ 行政書士としての着地点
祭りが終わった後、山崎は鷹野に提案する。「この地域の各種事業に協力する“特別スタッフ”として、NPOや企業との個別契約を結ぶ形にしましょう。法的な立場は複雑ですが、ひとまずはこれで生活も安定するはずです」 斎藤や森下、丸山も「いずれ法整備が追いつくかもしれないし、それまでサポートしますよ!」と笑顔を向ける。 鷹野は何度も頭を下げながら、「こんな僕に優しくしてくれて、本当にありがとうございます。未来では当たり前の権利も、この時代では一つひとつ積み重ねないといけないんですね…」としみじみ語る。
エピローグ:坂の下に灯る未来の光
こうして、また一人“時空を超えた住人”が草薙の坂の下に根を下ろすこととなった。 鷹野は町の行事や企画に参加しながら、少しずつ現代文化に慣れていき、かたわらで壊れたタイムマシンの修理方法を探り続けているという。いつの日か未来に帰る道が見つかるのか、それともこの時代に留まるのかは分からない。 いずれにせよ、山崎行政書士事務所の役目は変わらない。どんな奇妙な依頼であっても、誠実に耳を傾け、法務の力で寄り添い、支えていく――。 夕日が差し込む中、斎藤と森下は並んで事務所のシャッターを下ろし、丸山は「今日は紙詰まりしなくてよかった…」とホッと胸をなで下ろす。最後に山崎が笑顔で声をかける。「お疲れさま、みんな。今日も大変だったけど、また明日も頑張ろうか。鷹野さんを歓迎する打ち上げでもやろう!」
草薙の坂の下から、また新しい物語が始まる。幽霊、宇宙、深海、江戸、そして未来…。どんな時空の住人も、ここではきっと温かく迎えられるのだ。
(さらに続く…かもしれない)





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