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『法務ロワイヤル外伝6 ~パラレルワールドと草薙の坂の下で~』―山崎行政書士事務所、“異世界”の扉が開く!? 新章開幕編―

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月19日
  • 読了時間: 9分



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プロローグ:朝の静寂、漂う不穏(?)な気配

 静岡市清水区、草薙の坂の下にある山崎行政書士事務所。 かつては“幽霊物件”や“宇宙人”“深海人”、そして“江戸時代”や“未来”からの来訪者を受け入れてきた、まさに時空越境のお祭り状態の場所だ。 普通の行政書士事務所にしては刺激が多すぎる毎日だが、所長の山崎哲央はいつも変わらぬ穏やかスマイルでスタッフを見守る。

 新人スタッフの斎藤夏海は、前日の膨大な書類を抱え「まだまだこんなに残ってるの…?」とげんなり。元銀行員の丸山修は「ちょっとプリンターさん、今日は紙詰まりしないでね…」とパソコンをなでなで。若手の森下舞は新規メールをチェックしつつ「ふう、今回は普通の相続相談みたい…」とホッとしている。 ところが、その“普通の相続相談”すら、のちに大混乱を引き起こす“きっかけ”になるとは、誰も想像していなかった。

第一章:不可解な相続相談

■ 「草薙の坂の上にもう一軒、うちと同じ家があるんです」

 電話で予約を入れたのは、地元に住む主婦の大月静香。「実は、祖父の遺産で山林を相続したんですが、そこに“そっくり同じ家がもう一軒”存在するって噂があって…」 事務所で話を聞いた斎藤は思わず首をかしげる。「えーっと、同じ家がもう一軒? それって“空き家が二重に建っている”ってことですか?」 大月は神妙な面持ちで言う。「いえ、住所も地番も同じなのに、外観も内装もまったく同じ家が、坂の上の山林奥にあるらしいんです。しかも、近隣の人が何度か“あれ、ここじゃない世界に迷い込んだ”なんて言ってるらしくて…」

 丸山が地図を確認するが、該当の場所には家どころか道すらないはず。「もしかして古い地図に載ってるとか? あるいは昔の分筆ミス?」と頭をひねる。 山崎は「ひとまず現地調査が必要ですね。座標の確認や登記情報との照合をしましょう。というか、そもそも“地番が重複”なんて聞いたことがない…」と冷静に分析する。

第二章:現地へGO! 不思議な坂の上

■ いつものメンバーで山道を突き進む

 翌週末、山崎・斎藤・丸山・森下の4人は、依頼人の大月とともに草薙の坂を越え、山林に足を踏み入れる。道なき道をしばらく歩いて行くと、突如として目の前に古びた門が現れた。「え、こんな場所に門…?」と驚く斎藤。門の向こうには森が広がっているように見えるが、なぜか雰囲気が違う。まるで霞がかかったような空気感で、先がよく見えない。 大月がおそるおそる門を押し開けると、ふわりと風が吹き抜け、森の奥から“家”らしき建物の屋根が見えた。

■ 見えるのは“もう一軒の家”?

 森を抜けると、確かにそこには大月の祖父が暮らしていた家と“瓜二つ”の建物がある。しかも、まるで鏡に映したように左右対称。「うわあ、これ本当に同じ…。色あせ具合まで似てるし…」と森下が唖然。 玄関には鍵がかかっていないようで、ドアを軽く押すと開いてしまった。 すると、玄関先にかかっていた表札には“大月”ではなく、「大月(?)」と文字がかすれ、何とも表現しづらい未知の文字が書かれている。「何これ。大月なんだけど、文字がちょっと歪んでる…」斎藤が目を凝らすが、読み取れそうで読み取れない。

第三章:謎の住人、まさかの“パラレルワールド”!?

■ 誰かいる…? 姿を現した“もう一人の大月さん”

 家の奥から足音が聞こえ、みんなビクッと身構える。 そこに現れたのは…大月静香と瓜二つの女性。しかし、髪型や服装が微妙に異なる。まるで“鏡の世界の静香”が出てきたかのようだ。「あ、あなたは…!」 斎藤が声をあげると、相手もまたこちらをじっと見ている。奇妙なのは、相手の口の動きと出てくる言葉が完全には合っていないこと。まるで翻訳がワンテンポ遅れているように聞こえる。「私…コチラ…住人…“ダイツキ”静香…?」 音声がずれているため、しっかりとは伝わってこないが、どうやら同じ“静香”であるらしい。

■ パラレルワールド説が急浮上

 山崎は落ち着いて観察しながら、「ここはひょっとして“パラレルワールド”なのかもしれませんね」とポツリ。 丸山が「ま、まじですか? 深海や未来どころの騒ぎじゃない…」と顔を青ざめさせる。一方、森下は好奇心旺盛に「うわぁ、SF映画みたい! 本当にあるんだ…」と瞳を輝かせる。 斎藤は頭が追いつかないまま、「じゃあ相続登記とか、どうなるんですか…? パラレルワールドの家なんか日本の法務局に登録できるわけない…!」と絶句する。

第四章:衝突する“二つの世界”、そして法務上の問題

■ “もう一人の大月”が主張する所有権

 お互い言葉は通じにくいものの、“もう一人の大月静香”もまた、この家を「自分の家だ」と主張している様子。「ここ、私ノ財産…誰にも渡サナイ…」 山崎が必死に言語コミュニケーションをとろうとするが、向こうの静香も怪しげな言語変換デバイス(らしきもの)を持ち出してきて、お互いに片言で会話を繋いでいく。 どうやら向こうの世界でも“祖父”から受け継いだ山林に建つ家らしく、登記のような手続きもあるにはあるらしい。しかし、それは“こちらの世界”の法律とはまったく互換性がない。

■ 二重登録? いや、そもそも別次元

 現状、この家が“日本の登記”に載っているかどうかすら謎だ。斎藤がスマホで法務局のオンライン情報を確認するが、こんな場所は登録されていない。 丸山は「一種の亜空間にある不動産…って、どうやって処理すりゃいいんだよ…」と冷や汗をかく。 山崎は「とにかく衝突を避けるために、双方が納得する解決策を模索しましょう。できれば、争わずに共存したいですからね」と柔らかな笑みを浮かべるが、果たしてどうしたものか。

第五章:山崎事務所の知恵と、奇妙な合同協議

■ 言語変換デバイスでの交渉

 翌週、事務所の応接スペースには“こちらの大月静香”と“パラレルワールドの大月静香(仮に“ダイツキ”と呼ぶ)”が向き合う形で座っている。 斎藤と森下は相手が使うデバイスを頼りに、なんとか通訳めいたことを試みる。時差のある音声に四苦八苦しながらも、なんとか意志を伝え合う。「私タチ、家ヲ守リタイ…」「私も家を守りたいんです。でも、ここは私が正当に相続した…」 互いに一歩も譲らない。

■ 山崎の提案:「境界線」を活かす

 しばらく硬直状態が続いたが、山崎が穏やかに提案を持ちかける。「そもそも、二軒は全く同じ構造の家。お互いの世界でそれぞれ所有権を主張するのは当然でしょう。ならば、“行き来する門”の場所をどう扱うかが鍵になりそうですね」 つまり、家の敷地そのものはパラレルワールドとこちらの世界で二重に存在しているが、“門”という接点だけが共有領域になっているわけだ。そこに何らかの契約(たとえば通行許可など)を設定すれば、衝突を回避できるかもしれない――という算段である。 丸山は「確かに“境界線”を定義することで、相互不干渉をルール化する感じですね…?」と理解し、森下も「まあ、現行の日本の法律では無理筋ですけど、紳士協定みたいにまとめるしか…」と同意する。

第六章:思わぬ障害と“法人化”の奇策

■ パラレルワールド側の行政

 ただし、ダイツキ静香の世界にもそれなりに“法”があるようで、勝手に協定を結ぶと彼女の行政機関が問題視する可能性があるらしい。「私ノ国、他世界トノ条約、厳シイ規定…」 斎藤が頭を抱える。「うわあ、国際問題のさらに上を行く“異世界国際問題”…。ウチ、行政書士事務所なんですけど…」

■ 山崎の“法人設立”プラン

 そこで山崎がまた妙案を思いつく。「“異世界両国が協力する新法人”を作ったらどうでしょう。日本国内で必要な許認可は山崎事務所が手続きし、向こう側でも同様に“ダイツキ行政”が認める形にすれば、家そのものを法人名義で管理できるかも」 森下が目を丸くする。「え、法人? つまり、この家を会社の“資産”として扱うんですか?」 丸山は「面白い。ちょっと複雑だけど、二重の法人格を持つ架空の存在を作るイメージ…?」と興味を示す。

■ ダブル電子定款!?

 同じような発想で“深海人”や“未来人”を法人枠に入れた前例(?)はないが、少なくとも日本国内での契約主体を作れば、相続登記の問題は一歩進展する。 あとはダイツキ側に同様の“法人設立”に相当する手続きがあるかどうか。運良く、ダイツキ側の行政にも“電子式公文書”が存在するらしく、お互いに電子定款(?)を作ってスキャンを交わし合うという前代未聞のスキームが浮上した。

第七章:クライマックスと不思議な合意

■ 両世界同時電子定款署名の日

 ついに迎えた「両世界合同法人設立」の日。こちらの世界で山崎事務所が整えた定款を、門の向こうでダイツキ静香が何やら怪しげな端末で受信し、向こうの世界での認証を受ける――という離れ業が同時進行で行われた。 斎藤と森下は「紙詰まりもメールエラーも起きませんように…」と神頼み。丸山は「異世界サーバーなんて聞いたことないよ…どうやって送るんだ…」とヒヤヒヤ。 しかし山崎はいつも通り落ち着いて、「大丈夫、上手くいくはずですよ」と微笑んでいる。

■ 法人設立! そして境界線の平和

 数時間にわたる混乱を経て、両世界での許可がおりたとの報せが届く。「やった…! これでこの家は“両世界が共有する法人の所有物”として、堂々と登記できるんですね?」 大月静香もホッと胸をなで下ろす。「とりあえず、私とダイツキ静香さんが争わなくて済むなら、それで十分です!」 門の向こうにいるダイツキ静香も笑みを浮かべ、「アリガトウ…」とメッセージを送ってくる。彼女の声はまだ少し時差があるが、心はしっかり伝わるようだ。

エピローグ:また一つ不思議が増えた町

 こうして、前代未聞の“パラレルワールド合同法人”が設立され、草薙の坂の上にある二軒の家は、法的にも(?)一応の秩序が生まれた。 大月静香は、自宅を通常通り使いつつ、ときどき門を開いてダイツキ静香と連絡を取り合うようになる。門は相変わらず不思議な霞に包まれているが、二人の関係は平和そのもの。門の周辺は少しずつ整理され、危険な探検者も近寄らなくなった。

 そして、草薙の坂の下に戻ってきた山崎事務所の面々は、いつもの慌ただしさに苦笑いを交わす。「また大きな事件を解決したね。異世界まで巻き込むなんて、さすがに想定外だったけど…」と斎藤。「でも、深海や未来、江戸時代を超えて、ついにパラレルワールドですからね」と森下は目を輝かせる。 丸山はプリンターを見つめながら、つぶやく。「もう驚かなくなっちゃった自分がこわいよ…」

 そこで山崎が、いつもの優しい口調で声をかける。「みんな、本当にお疲れさま。また面倒な案件が来ても、僕たちらしく対応していこう。法務の力で、人の想いをつなぐ――それが山崎行政書士事務所だからね」 夕陽が差し込む草薙の坂の下、事務所の看板がほんのりオレンジ色に染まっている。きっと明日もまた、新たな奇妙な依頼が待ち構えているだろう。だが、この事務所なら大丈夫。どんなに常識外れの世界でも、笑いと温かさで乗り越えていくのだから。

(さらに続く…かもしれない)

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