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アサヒGHD、サイバー攻撃の影響続く 動向

  • 山崎行政書士事務所
  • 10月30日
  • 読了時間: 5分

サマリー(2025年10月29日時点)

  • 9/29にアサヒGHDがランサムウェア攻撃を受け、国内の受発注・出荷・コールセンター等が停止。10/6以降、工場や一部出荷は段階的に再開するも、復旧は長期化。

  • 犯行はRaaS型のQilinが主張。財務資料等約27GBの流出を示唆。10/14には決算発表の延期も公表。供給網全体で代替需要・出荷制限が波及。

  • 月末時点で出荷品目は通常の約1割との報道。年末商戦前にBCPと供給網再設計、法令(個人情報保護法)に沿った報告・通知と再発防止の両立が急務。

主な動向(時系列ダイジェスト)

  • 9/29:サイバー攻撃で国内の受発注・出荷・コールセンターが停止。

  • 10/3:ランサムウェアによる攻撃と公表。

  • 10/6:国内複数工場で生産・一部出荷を段階再開。受注は電話・FAX等の手作業に依存。

  • 10/7–8:Qilinが犯行声明。社内文書等約27GB窃取を主張。

  • 10/14:決算発表を延期(会計データアクセスにも影響)。

  • 10/15以降:ビール・ノンアル・ウイスキーなどの部分出荷を拡大。

  • 10/下旬:出荷品目は通常の約1割との報道、供給網への波及が顕著。

何が起きたのか/長引く理由(考察)

  • DXの集中リスク:受発注~出荷~CSが統合された基幹が止まると、全社オペレーションが同時停止しやすい。手作業の迂回路(電話・FAX)ではスループットが激減。

  • 二重恐喝モデル:暗号化+漏えい公表の圧力で、復旧と広報・法令対応を同時並行で迫られる。

  • 供給網への波及:代替需要が競合へ流入し、出荷制限やギフト商品絞り込みなどの二次影響が発生。

現場SEのための実務アドバイス

0–24時間(止血と証拠保全)

  1. ネットワーク分断:被疑セグメントの物理/論理隔離、東西トラフィックと外向きC2遮断。

  2. アカウント急速防衛:特権/レガシー/休眠アカウントの棚卸し→即時無効化とMFA強制。

  3. 証拠保全:イメージ化・メモリダンプ・ログ退避(EDR停止前の採取を優先)。

  4. バックアップ隔離:オフライン/イミュータブル保護。感染済みマウントは遮断。

  5. 第一報の統制:インシデント指揮系統と法務/広報の窓口を一本化し、記録様式を統一。

24–72時間(感染源/横展開の除去とクリーンルーム)

  • 初期侵入経路の遮断:SSL-VPN/公開RDP/境界機器の既知脆弱性を総点検。

  • クリーンルーム構築:新規に隔離した再構築用AD/PKI/管理端末を用意し、ゴールデンイメージから最小構成で再開。

  • 仮設の業務継続:受注をFAX/CSV/メールで暫定運用し、二重承認と台帳で突合。

3日~1週間(再構築と限定再開)

  • Active Directory復旧:フォレスト前提でのクリーン復旧が基本。汚染DCの流用は不可。

  • バックアップ健全性:3-2-1-(1)-0原則とリストア演習で“復元できること”を検証。

  • 段階的リリース:受注→出荷→会計の順で、リスクの低い機能から順次開通。

  • 広報・FAQ:事実・対策・問合せ窓口を一枚に統合し、定点アップデートを継続。

OT/工場(生産再開)

  • 安全側停止→クリーン立上げ:IT-OT分離を維持し、工程単位の最小良品構成から再稼働。

  • “紙と人”の一時復活:現品票・ピッキング票・便乗り合わせなど、物理トレーサビリティで工程抜けを防止。

  • EDI/得意先:代替CSV仕様(型・桁・照合キー)を周知し、一時的な出荷調整ロジックを共有。

法令・公表(個人情報保護法の要点)

  • 速報:報告対象事態を知ったときから概ね3~5日以内に個人情報保護委員会へ報告。

  • 確報30日以内(不正目的が疑われる場合は60日以内)に追加報告。速報と兼ねても可。

  • 本人通知:被害の性質・二次被害防止策・窓口等を明記し、段階公開で可。

  • 委託/共同利用:委託元や所管庁との届出分担・期限管理を設計(グループ横断で調整)。

現場で“やりがち”なNG

  • 感染ホストをスナップショット復元してそのまま本番合流(再感染リスク)。

  • ADの部分復旧(汚染メタデータ温存)。フォレスト単位のクリーン復旧が基本。

  • オンライン接続のままバックアップ検証(暗号化の二撃目を誘発)。

中長期の強化ポイント

  • 経営×セキュリティの整合:サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer3.0の「重要10項目」を運用に落とす。

  • ASMの常時運用:外部露出資産の発見・評価・是正を継続(EASM/EASM連携)。

  • 教材と訓練の定着:IPA/JPCERT/警察等の教材を“標準教材化”し、机上演習から実動訓練へ。

山崎行政書士事務所の支援メニュー(PR)

技術×法令×現場運用を接続し、復旧と信頼回復の同時進行を支援します。

  1. PPC報告・本人通知の実務支援:速報/確報ドラフト、本人通知文・FAQ・Web告知、期限管理台帳。

  2. 社内規程・委託契約の整備:情報セキュリティ/事故対応規程、委託・再委託・越境条項、Pマーク/ISMS文書。

  3. BCP×暫定業務の書式設計:FAX/CSV受注の標準手順、突合台帳、問合せ一次応答テンプレ。※訴訟等の弁護士領域は提携弁護士と連携のうえ適法に対応します。

すぐ使える雛形(骨子サンプル)

1) PPC速報ドラフト:①事案概要 ②対象データ種別 ③原因推定/暫定対策 ④本人通知方針 ⑤公表計画 ⑥調査計画/確報予定2) 顧客・取引先通知:事実関係、影響範囲、推奨対策、窓口、再発防止策と続報予定3) 復旧作業ログ票:対象/操作/取得ログ/変更点/承認/ロールバック/次アクション

まとめ

  • 止血→清浄化→再構築→段階開通の原則で、IT-OT一体の“最小安全構成”から戻す。

  • 速報3–5日/確報30日(不正60日)のタイムラインを意識し、技術対応と文書対応の二本柱で。

  • 経営はガイドライン×ASM×訓練で“露出資産の常時可視化”と運用定着を。

参照リンク集

 
 
 

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