サイバー行政書士、ハッカーと対峙す
- 山崎行政書士事務所
- 1月8日
- 読了時間: 6分

第一章:地方自治体の深夜アラート
ここは地方の中核都市、高屋市(たかやし)。 高層ビルがそびえるわけでもなく、のどかな風景が広がる一方で、近年はIT化が急速に進み、地方自治体の申請システムもネット経由で手続き可能になっている。 そんな深夜、役所のサーバールームで鳴り響く緊急アラート。管理コンソール画面には――**「不正アクセスを検知」**の赤い文字。担当者たちは慌てて対応に乗り出すが、既にシステム内部の一部データが書き換えられたらしい。
翌朝、その報せをスマートフォンで見ながら苦い顔をしているのは、サイバー行政書士・結城(ゆうき)新也。 彼はITの専門知識を持つ珍しい行政書士で、許認可手続きのデジタル化サポートを得意としている。自治体から「電子申請の保守やアドバイス」を受けていたが、今回は相当タチの悪い攻撃らしい。 「改ざんか……こりゃ厄介だ」 結城はコーヒーをすすりながら、頭を抱える。 ――こうして、彼の長い戦いが始まるのだった。
第二章:被害企業のSOS
事件から数日後、結城の事務所には青い顔をした社長が訪れた。名は早坂(はやさか)、地元企業で食品加工を営む中小企業のトップだ。 「実は、うちが提出した“新工場の許認可申請”がデータ上“却下”になってるんです。でも、役所に問い合わせたら“まだ審査中”と言われて……いったいどういうことなんでしょう?」
自治体のシステム上、早坂の会社の申請だけが“不備”や“却下”と表示され、手続きが止まっているという。だが、それが本当に役所の判断なのか、改ざんによるものなのかは定かではない。 結城はPCを開き、早坂が持参した申請データの控えや電子証跡を調べる。すると何やら不自然な痕跡が見つかる。 「うーん、ログファイルが『書き込み』されてる……。しかも夜中の1時半に。これは……不正アクセスの可能性が大ですね」
そして早坂が耳打ちするように言う。 「じつは、ライバル企業であるタケダ食品がうちを蹴落とそうとしてるんじゃないかってウワサがあるんです。そこの関係者が裏で動いてるかも……」 結城は目を光らせ、「なるほど、社内のデータが漏れた可能性もあるか」と推測する。こうして彼は“改ざん”の闇を暴くため、本腰を入れて動き始める。
第三章:結城のサイバー作戦
結城の得意分野は行政書士としての書類作成・手続きサポートだけではない。独自に構築したサイバー分析環境が強みだ。 事務所の一角には高性能PCが数台並び、大きなモニターにはログ解析ツールやパケットキャプチャツールの画面が絶えず流れている。 「まずは自治体サーバーへのアクセスログを徹底的に洗いましょう。管轄の担当者からログを提供してもらわなきゃ」
ところが自治体側もセキュリティの関係で外部へのログ提供に慎重だ。結城は懸命に説明し、「これは依頼企業の申請データ確認が目的であり、不正経路を特定しなければ被害が拡大する恐れがある」と説得。最終的には、提携する弁護士(結城と協力関係にある)を通じ、最低限のログを取得することに成功する。
ログを手に入れた結城は自らの分析システム**「LogHunter」に投入。夜中のアクセス履歴やIPアドレスの追跡を開始。すると怪しいアクセス元が浮上した。 「こいつ……国内のプロバイダを踏み台にしてるけど、その奥には海外のVPNが……」 すかさず結城の事務所スタッフが「となると、個人か集団かわかりませんが、プロのハッカーじゃないと難しいですね」と指摘。 結城は唇を噛む。「よし、これ以上は海外サーバーへの協力要請が必要かもな……」**
第四章:ハッカー集団の影
あれこれ調べるうち、「セイレーン」というハッカー集団の名前が浮上する。 近年、国内外の自治体システムを狙った攻撃が散見されており、その影にセイレーンの存在が囁かれているという。 さらに、タケダ食品が秘密裏にセイレーンに依頼し、競合の早坂企業の申請を偽の却下表示にしてしまおうと仕組んだのでは?――という仮説が浮かび上がる。 結城は相棒のAI監視ツールを起動し、セイレーン関連のダークウェブ情報を収集。すると該当ハンドルネームと一致するユーザーが、高屋市役所のシステム弱点を探っていた痕跡を確認する。 それを見た早坂は唖然。「うちがこんな目に遭うなんて……。小さな会社だと思って油断したのか」 結城は拳を握り、「行政手続きの根幹を揺るがす行為、絶対許せない。彼らを止めましょう」と決意を新たにする。
第五章:大規模攻撃の予兆
そんな中、自治体から緊急連絡が入る。**「また不正アクセスがあり、今度は複数の申請データが改ざんの危機」**だという。 もし大規模な改ざんが起きれば、企業だけでなく市民の生活にも影響が出る。結城はこれ以上の被害を防ぐため、役所と連携して緊急防御策を講じることに。 「ファイアウォールの設定を見直して、外部からのSSH接続をブロック。さらに仮想サーバーの管理ポートを変更する……」 しかし役所の担当者はITに疎い。「そんな専門的なことは……」「いや、ここは一刻を争うんです!」と結城は声を荒げる。
急遽、結城のチームが市役所に出向き、セキュリティ強化とログ監視を支援。AIシステムでリアルタイムにアタックを検知し、関係スタッフに警告を飛ばすよう設定する。 すると深夜、またしてもセイレーンと思われる集団からの攻撃が始まった。しかし今回の防御態勢は盤石で、一度は突破されかけるものの、結城が用意した“ダミー環境”に攻撃を誘導する罠に成功。ハッカーはそこに囚われてしまう。 「やった、相手の仕掛けが丸見えだ。……これでIPアドレスやマルウェア特性を特定できる!」 結城はモニターを睨みつつ、勝ち誇った笑みを見せる。
第六章:法的な追い込み
しかしハッカーを捕まえるのは警察の領分。結城ができるのは、手続き上の書面作成と証拠保全のサポート。そして今回の改ざん被害を受けた企業(早坂の会社)や自治体が示談・告訴などを行う場合、その資料づくりを支援することだ。 結城は迅速にログ解析結果をまとめ、提携する弁護士や警察に引き渡す。「これが改ざんの証拠、そして攻撃元の可能性が高いIPと時系列です」 警察は情報提供を受け、捜査を開始。タケダ食品の内部関係者にも事情聴取が行われ、ついにハッカー集団との繋がりが発覚。タケダ食品としては“社長が独断で依頼していた”という形に落ち着き、大きな社会問題となった。
第七章:最後の戦い
ハッカー集団セイレーンの拠点が海外にあるため、完全な摘発には国際協力が必要。それでも結城は「少なくとも日本の被害拡大は防げた」と胸をなで下ろす。 そして、早坂の会社は改めて提出した申請データが無事受理され、工場の許認可を取得できた。社員たちがホッと安堵の表情を浮かべるとき、結城は苦笑まじりに言う。 「ITは便利だけど、悪用されると怖い。こういうときこそセキュリティと法的保護が大切ですね」 早坂は深々と頭を下げ、「まさにサイバー行政書士の鏡ですよ。あなたのおかげで助かりました」と感謝の意を述べる。
エピローグ:新たなる挑戦
事件後、結城は事務所のモニターに映るログを眺めながら、次のステップを考えていた。自治体のシステム強化や企業向けのセキュリティ指導、そして何より書類作成や申請手続きサポートの高品質化。 所内のスタッフが「所長、次の“サイバー攻撃”に備えてAIもアップデートしますよ」と声をかけると、結城は「うん、頼む」と力強く頷く。 外は雨上がりの青空が広がり、まるで新しい時代の幕開けを告げるようだ。IT×法務の融合を携えて、結城の活躍はまだまだ続いていく――。
―“サイバー行政書士”は今日も電脳の荒野を駆け、法とITの盾で企業を守る。―





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