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山崎行政書士事務所パロディ劇場

  • 山崎行政書士事務所
  • 9月19日
  • 読了時間: 34分
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— 日常はだいたい事件で、だいたい解決する(たまに猫が解決する)—

取扱説明:本書は“読み続けると眠くならず、でも安心して眠れる”を目指した超長編コメディです。目に優しい読み方:章と章のあいだで、三秒の深呼吸→水分補給→猫吸い(任意)を推奨します。肩に優しい使い方:紙に印刷すると電話帳並の重量になります。枕にするとよく眠れます(自己責任)。

0. オープニング・ゼロ「ポスター会議は深夜に始まる」

新静岡駅のシャッターが半分降りたころ、構内の全ポスターがざわざわと色づき始めた。りなポスターが腕を組んで咳払い。「本日の凡例を確認。『断言より連絡先』『主語は呼吸』『やめ方は美学』『成功は一声』——この四本立てで行くわ」みおポスターがウィンク。「脚色は合法・可愛げ・効果の三拍子で♪」さくらポスターは拳を握る。「笑顔は共同作業! 朝礼は体操から!」律斗ポスター「テンポは120。what-ifで幕を開ける」やまにゃん“実体”がしっぽ(USB-C)で床をとん。シーケンサーが回り出し、第一話の幕が上がった。

1. 「断言より連絡先」プロローグ

朝、ガラス越しにうす青い光が差す。山崎行政書士事務所。ふみかは玄関の横に立てかけた黒板に、今日の合言葉をチョークで書く。

今日の黒板 断言より連絡先(夜は短く、朝に続きを) 主語は呼吸(誰が・いつ・どこで・なぜ) やめ方は美学(先に決めると会議が短い) 成功は一声(緑の丸でおはよう)

書き終えると、背後から聞こえるやさしい足音。あやのだ。白いブラウスの袖を折り、黒縁のメガネを軽く押し上げる。「黒板の“朝に続きを”いいわね。最初に目に入る言葉は、人の一日を少し変えるから」

「“最初の行に連絡先”も入れる?」とふみか。

「もちろん。最初の行は、言い訳ではなく迎え入れであるべき」

そのとき、さくらがバンと扉を開けて飛び込んできた。「おはようございまーす! 朝礼は体操から!」

「体操は後で」とりなが微笑む。「先に凡例の確認」

長机を囲んで、短い朝礼が始まる。律斗はいつものように淡々と話し、奏多はBPMを120に合わせるように人差し指で机をとんと叩く。蓮斗はコーヒーを一口飲み、悠真は窓の外の色で保存温度を測るように空を一瞥した。叶多はチェックリストを三回見返し、みおは“合法いたずら”のアイデアをこっそり紙に描く。

「今日の案件は三本立て」とふみか。「①広告差戻しの説明・修正、②港町の魚群AIのデモ広報、③星織ロボティクスのDPA×Bicep読み合わせ。全部、ちょうどいい

「“ちょうどいい”って便利だな」と陽翔。「費用たいそう、今日はやさしめに」

やまにゃんは椅子の背に登って、チームを見回す。しっぽでとん。それが発進の合図。

2. 差戻しの朝——ポスターは濡れない

最初の客は広告代理店からの回線だった。駅貼りポスターが「既存キャラクターを想起させる」との理由で差戻し。一見むっとする知らせほど、ふみかは声を落して「ありがとうございます」と言う。

「差戻しの根拠となる条項名、該当箇所の番号、過去の可否事例、修正の幅、そして連絡先を、最初の行に置いて教えていただけますか」

電話口の相手は一瞬だけ黙り、やがて丁寧な口調で条件を並べ始めた。情報は集まると自然に整列する。整列すれば、やめ方も分かる。

りなが紙を受け取り、ペン先を滑らせる。「似ていることと似せていることの差は、手順記録で示しましょう。比較の順序はこちらで提案するわ」

みおは小声で「“似てないのに似てる気がする病”に効く薬、可愛い名前を付けたい」とつぶやき、さくらは「似ていても笑ってくれる街を目指したい」と拳を握った。

律斗はモニタに設計図を開いた。「デザインの構成は夜に鳴らない。シルエット、配色、余白の比率。どれも根拠で説明できる」

「では根拠パック、三点セットで」とふみか。「①条項ベースの比較、②構成パラメータ、③“駅の視認性と快適性”の観点。最後に連絡先

「言い訳は入れない」とあやの。「文は短く、凡例は長く」とりな。「笑顔は写真のものではなく、読む人の中に生まれるもの」とふみかは黒板にメモした。

3. 魚群AIの昼——十秒の言葉

昼前、NUMA FISH の港町からビデオコール。潮風の音がわずかに混ざる。現地広報担当は緊張ぎみだった。「報道が来ています。十秒でリスクと対策を」

十秒は、言葉の姿勢が問われる時間だ。ふみかは呼吸一つ、海の揺れに合わせる。

鍵はEU内。処理はEU優先、越境は同意と契約。失敗は隠さず公開、報告は72時間、連絡先は最初の行。

短い沈黙。拍手は半拍遅れて帰ってきた。遅い拍手は届いた合図。あやのは同時にDPAの凡例を英語で送信し、りなが条項番号を図の端へ刻む。律斗は最終の設定を画面でなぞり、蓮斗は味見クエリの三本をタイマーに仕込む。悠真はEvent Hub の到達件数に“ゼロの谷”が出ないかだけを見守り、陽翔は“海が荒れたときの休符”を準備して、奏多がBPMを落とす。

「成功は一声、失敗は明確」とふみかは現地チームへ手短に伝えた。「緑の丸が朝に光れば、それでいい」

4. 読み合わせの午後——図と条文を同じ言葉で

午後。星織ロボティクスの会議室。青・紫・緑の三色ボード。橘(法務)、岸(情シス)、山村(営業)、監査、そして欧州代理店のマリーが画面越しに入る。

りなが紫の板に四つの見出し。処理/保管/鍵/報告。あやのが日本語の主語を太字で置く。誰が、何を、いつ。律斗は青にHub&Spokeを描き、Private Linkで“中だけの通路”を閉じ、Firewallの刃を最小限で立てる。蓮斗はKQL の窓を開き、SigninLogsとAzureActivityを十五分粒度で重ねる。悠真は「ログは塩。味噌は記憶。骨格二年、細部三ヶ月、影五年」と温度を揃え、陽翔は曲線の休符位置を指で示す。奏多は what-if の結果を譜面のように読み、叶多は**“期限付きの橋”**(PIM+理由テンプレ)を図に入れる。さくらは笑顔取説をボードの端へ貼り、みおは“踏んだ人のためのおやつ”を控室で開けてみる(味見は仕事)。

ふみかはすべてを短く束ねる。「図と条文を同じ名前で呼びましょう。凡例に条文番号を刺します。断言より連絡先は最初の行に」

マリーは画面越しに拇印のような親指を立てる。「短い説明は長い誠実さ

監査人は頷いた。「読める。読めると、会話が短くなる」

橘は肩の力を落とした。「明日は眠れそうだ」

5. 夕方の“やめ方”ラウンド——出口がある街

会議を終えると、さくらは商店街を回った。「解約1分|ここから」ステッカーを貼る日。“やめられる店”は戻ってきやすい。彼女がそう言うと、店主たちは照れたように笑う。「戻ってきてもらえるほど、ちゃんとやるよ」。それが魔法の言葉ではないことを、彼らは知っている。魔法ではなく代謝の話だと。

駅務室にも寄って、「困ったら近くへ」の札を一枚増刷してもらう。遠い専門家より近くの助けへ。近くで解けなければ、うちへ。塚本は頷いた。「“ありがとう”が先に出る駅、いいね」

6. 夜の演習——合法いたずらは街を甘くする

夜。みおの合図で、サプライチェーン演習が始まる。依存に紛れた偽パッケージ、あいまいな audience、what-if を素通りさせる誘惑。しかし舞台裏は固い。

律斗「差分は自動停止。人間承認を通して合意のリズムに戻す」蓮斗「味見三本で“不自然な甘さ”を見抜く」悠真「到達件数の谷をで拾う」叶多「理由テンプレ三十文字以上」陽翔「曲線の“逸脱”を半拍手前で潰す」りな「あやの、凡例の注釈に『鍵を置かない』の一文を」あやの「了解。shall に紫、will に薄紫」

演習は予定どおり成功。みおは肩をすくめる。「止められるの、毎回悔しいけど、毎回嬉しい」さくらが拍手を二回だけ。「止められて嬉しいは、文化の体温」

7. 深夜の黒板——青い夜の使い方

ふみかは黒板を消して、新しい一枚を書いた。

青い夜の使い方・連絡先は最初の行へ。・事実は短く、行動は明確に。・やめ方は最初のページに。・成功は一声、朝に緑の丸。・比喩は朝のために取っておく。・眠れなかったら、朝に続きを。

書き終えると、やまにゃんが黒板消しのうえで丸くなった。あくびの終わりにとん。それは“今日もお疲れ”の音であり、“明日もよろしく”の合図でもある。

8. 翌朝——駅は濡れても、約束は濡れない

雨の新静岡。シャッターが上がり、ポスターの顔が朝の水滴を跳ね返す。就活生がスマホを構え、「この人たち本当にいるのかな」とつぶやく。ふみかは少し離れた場所から手を挙げる。「います。企業法務とクラウドのお悩みは、お任せください」

彼女の声は小さいが、最初の一語がいつもやさしい。やさしい一語は、次の一語を呼ぶ。次の一語は、やめ方へつながる。やめ方が先にあると、会議は短い。会議が短いと、眠りが長い。それだけの話を、事務所は毎日やっている。

9. “shall と will の境界”追加講義

橘から「shall と will の境界が眠れない」とメッセージ。りなが五分のミニ講義を開く。「shall は守る線のために、will は協力の線のために。must は滅多に使わない。凡例で色分けし、図でも同じ色を使う。呼び名を揃えると、人は争わない

あやのが頷く。「“人は争わない”は言いすぎ。でも“眠れる”には十分」

10. ありがとうの速度

さくらが社内チャットにテンプレを投げる。

ありがとうテンプレ(短) 先に感謝。 次に事実。 最後に連絡先。例:「夜の見張り、ありがとう。到達件数に短い谷。現在復旧。何かあればこの窓口へ」

責める前に感謝」とさくら。「人は責められると遅くなるから」

陽翔は片手を挙げる。「費用たいそうにも効くよ。感謝を先に出すと曲線が素直になる」

11. 迷子の地図——駅務室で

駅務室の古い案内図を手直し。矢印を減らし、文字を太くし、“ここに来たらだいたい助かる”を大きな丸で描く。塚本は笑う。「矢印が多い地図、声が荒くなるんだよね。減らすと、声が丸くなる」

「図は声の代わりですから」とふみか。「声が足りない夜でも、約束が濡れないように」

12. 旅芸(欧州編)——凡例キャラバン

三人(りな・あやの・ふみか)が渡欧。最初の会議で「十秒で」を連呼され、十秒で話し、十時間ぶんの合意を引き出す。土産は凡例カルタ(英語版)。現地で意外な人気を博し、子どもが「Subject is breath!」と叫ぶ。さくらが動画を編集して国内に流す。みおは合法いたずら翻訳を字幕に忍ばせる(気づく人だけニヤリ)。

13. 内部研修——“電話帳の最初の一段”反復練習

奏多がメトロノームを打ち、全員で“最初の一段”を唱和する。

「お読みいただきありがとうございます。まず連絡先を最初に置きます。事実は短く、行動は明確に。やめ方は先に、成功は一声」

唱和が終わると、やまにゃんがとん。合格。ふみかは黒板に小さく書き足す。「短い文こそ長い約束

14. 子どもの質問——USBしっぽはLANに挿していい?

近所の小学生から事務所宛に真面目な質問。「USBしっぽは社内LANに挿してもいいですか?

全員「だめ

やまにゃん、しっぽをしまいながら「にゃ」。

15. 大団円——“眠れました”ベル

夜。Justice Vaultの青い灯が呼吸する。ふみかの端末に届く短いメール。

眠れました。

事務所の隅で、小さなベルがちりんと鳴る。鳴らしているのは、猫の手ではなく、ここまで動いてくれた全部の仕組みだと、全員が知っている。

律斗はヘッドホンを外し、窓の外に一礼する。りなは黒板を消して、チョークを揃える。あやのは封筒の封を確かめ、Break Glassを金庫へ戻す。蓮斗はタイマーを止め、悠真は温度計を引き出しにしまう。叶多は“橋”の図をたたみ、陽翔は譜面台を片付ける。奏多はBPMを60に落とし、さくらは「ありがとう」を一度だけ言う。みおは小さくハイタッチし、ふみかは最後の一文を短くする。やまにゃんがとん

約束は濡れない。駅が濡れる夜も、ポスターは濡れない。ポスターの前に集う人の呼吸に合わせて、明日も最初の行に連絡先を置く。それだけでいい。けれど、それがいちばん難しい。だから毎日練習する。だから毎日、ちょっとだけ面白がる。

——幕。

付録:舞台裏の「道具箱」

  • 凡例テンプレ:条文番号/記号/図の凡例/呼称統一リスト

  • やめ方セット:解約QR/PIM理由テンプレ/台風の日の三枚の紙

  • 味見クエリ三本:SigninLogs/AzureActivity/AppTraces(15分粒度)

  • 譜面シート:夜間停止/Savings Plan/出口課金/休符

  • 監査パック:Runbook(人間語)/図(凡例色付け)/証跡(骨・細部・影)

  • 広報の最初の一段:連絡先→事実→行動→やめ方→成功は一声

  • 合法いたずら道具:演習台本/“踏んだ人のおやつ”/反省ではなく笑い

(道具箱は施錠不要。使うほど街が少しずつ明るくなるから)

エンディング・ゼロ

深夜の駅にもう一度、ポスター会議が開かれる。りなポスター「本日の凡例を確認」みおポスター「脚色は合法・可愛げ・効果の三拍子で」さくらポスター「笑顔は共同作業!」律斗ポスター「テンポは120、what-ifから」やまにゃん“実体”がとん

明日の第一話が、また上がる。


月曜:法廷ドラマ『断言より連絡先』

0) 予告なく開廷

朝礼会場の予約ボタンを押し忘れたのが誰なのか、後世に至るまで明らかにしないという密約をかわしたあと、私たちは荷物を抱えて裁判所に着いた。空き法廷が一つあるから使っていいですよ、と受付の人が言ったとき、ふみかは「声がよく通るから広報の訓練にもなる」と目を輝かせ、みおは「証拠提出って単語だけで胸がときめく」とわけの分からないことを言い、さくらは「椅子に姿勢矯正効果がありそう」と真面目に頷いた。

大理石の床に足音が吸い込まれ、天井の照明が眠気をさらっていく。法廷の椅子は、たしかに座り心地がいい。木の匂いがして、背もたれの角度が背骨の言い訳を全部拾ってくれる。朝礼をするつもりが、気づけば舞台の幕が上がっていた。

「——では、開廷するにゃ」

裁判長席の上で、やまにゃんが黒い法服を着ていた。首元の白いタイはどう見てもミルクの凝固で、しっぽ(USB-C)はガベルの代わりに机をとんと叩くのに使われるらしい。法廷書記官は奏多、廷吏はさくら、書記補助にみお。各自、法廷ごっこの配役を秒で理解するあたり、うちの事務所の反射神経は無駄に良い。

裁判長:やまにゃん原告:睡眠(代理人:陽翔)被告:匿名の「炎上」(代理人なし)検察官:ふみか弁護人:あやの陪審員:駅務室の塚本、商店街会長、謎の監査人(名乗らない)

被告席には、黒いモヤが人の形を取り損ねたまま立っている。胸元のネームプレートには炎上。目はなく、口だけがある。原告席には、枕の形をしたマスコットがちょこんと座っている。書類上の原告名は睡眠。代理人の陽翔が膝に座らせて、譜面台みたいに丁寧に整えている。

「事件番号、令和ねこ年第一号。深夜『ログが消えた』の断言を投下して人々のREMを盗んだ疑い」と奏多書記が読み上げる。「検察官、冒頭陳述を」

1) 冒頭陳述——夜の一文の破壊力

ふみかが一歩前に出る。広報の声は、法廷の空気に似合う。「本件は、たった一文、“ログが消えた”という断言が、どれほど多くの人の夜を奪ったかを問うものです。被告“炎上”は主語も証拠も示さず、連絡先を最初の行に置くこともしませんでした。結果として、原告“睡眠”は著しく損なわれました。これは夜の短さに対する犯罪です」

「検察官、夜の短さとは?」と裁判長にゃ。

「人が眠るべき時間の短さです。夜は比喩に過酷です。だから断言より連絡先を最初の行に置くべきなのです」

ふみかは展示物を示す。青いグラフに白い点が連なる——Event Hub の到達件数だ。「ご覧のとおり、確かに“短い谷”がありました。しかし、復旧は済み、二重化で補足済み。判断が要る事象はありません。にもかかわらず、“消えた”の一語によって、夜は炎の色で照らされ、連絡窓口には怒りの連絡先だけが残りました」

椅子のきしみ。陪審席で塚本が腕を組み、商店街会長は顎をさすり、謎の監査人はノートに何かを書きつけている。

2) 被告の人となり(※人ではない)

「被告、陳述するかにゃ」

黒いモヤがもぞもぞと形を変え、スクリーンに映像が出た。SNSのタイムライン。夜のアイコンたちが、一斉にコップの水を揺らすように騒ぐ。「消えた」「終わりだ」「保守体制どうなってる」「私怨です」……炎上の声は、砂を嚙むようにざらついていた。「ぼくはただ、勢いなんです。深夜テンションの音の塊。誰かが叫ぶと増幅する。主語がいないと早く伸びる。連絡先は苦手。連絡先は速度を落とすから」

「速度を落とさないと眠れないにゃ」と裁判長。

「……すみません」炎上の口がちいさくなる。反省するフリかもしれないが、法廷は反省の演出よりもやり方の矯正に関心がある。

3) 証人尋問(第一ラウンド):睡眠の代理人

陽翔が立つ。譜面台を胸に、穏やかな声。「睡眠は、結果です。構成の副産物であり、運用の勲章であり、広報の到着点です。REM が削られると、翌日の判断は濁り、コスト曲線は乱れます。成功は一声で十分。夜に鳴りすぎる構成は、人に優しくない」

ふみか「質問。『成功は一声』の運用に変えたあと、現場の指標は?」

陽翔「夜間通知**-63%。誤作動問い合わせ-54%。翌朝の“ありがとう”+120%**」

傍聴席から「それは良い」とうなずきが漏れる。あやのが交差尋問に立つ。「睡眠代理人、連絡先を最初の行に置くことが、なぜ睡眠に効くのですか」

「人は“場所が分かる”と、呼吸が整います。呼吸が整うと、比喩がいらなくなる。比喩がいらない夜は、眠りやすい」

裁判長にゃ「はい、次」

4) 証人尋問(第二ラウンド):設計と凡例

りなが証人席に座る。証言台のマイクに口を近づける姿が、凡例そのものだ。「凡例は、図の端に置く小さな辞書です。条文番号、責任の境界、鍵の所在、報告の窓口。言葉がばらばらだと、争点が増え、眠りが減ります。だから最初に凡例、最初に連絡先」

ふみか「この事件で、凡例がどこに欠けていましたか」

主語です。“消えた”の主語がない。どののログなのか、誰の責任の線上なのか、凡例が示されていない。凡例が曖昧だと、炎上は増殖します」

弁護人あやのが立ち、やさしい声で補足する。「shall と will の差も凡例に載せましょう。守る線協力の線。夜中に『やります』『やりました』と走り出す前に、やめ方を最初のページに置くこと」

法廷が少し暖かくなる。やめ方は、美学だ。

5) 証拠物件の提出:Runbook(人間語)

奏多書記が青いファイルを持って前に出る。表紙には大きくRUNBOOK。開くと、一行目が太字で、迷わない。

誰が・いつ・どこで・何を・なぜ成功は一声(緑の丸)/失敗は明確(理由→再発防止→連絡先)やめ方は先頭ページ。Break Glass封筒の所在、PIMの昇格の理由テンプレ。

「これは人間語です」とふみか。「“鳴らない夜”のために、文章を短くしました」

監査人が興味深そうに覗き込む。「読める。読めると、夜が短くなる」

6) 証人尋問(第三ラウンド):駅の現場

陪審席から駅務室の塚本が証言台に。制服の胸ポケットから、折りたたんだ**“困ったら近くへ”**の札を取り出す。「この札を貼ってから、怒鳴り声が減ったんです。遠い専門家より、近い人へ。近くで解けなければ、そちらへ」

ふみか「駅で“断言より連絡先”を実践するコツは?」

塚本「矢印を減らす。地図の矢印が多いと、人の声が尖る。減らすと、丸くなる。表示も言葉も、まず場所。それから案内」

商店街会長が続いて立つ。「“やめ方ステッカー”貼った店、戻ってくる客が増えた。やめ方は敵じゃない。約束だ」

謎の監査人は終始微笑み、何も言わない。だが、書き留めるペンの動きが早い。

7) 被告人質問——炎上の本音

再び、炎上。黒いモヤが少し薄くなり、口が震えている。「ぼくは勢いで生きてます。主語は嫌い。連絡先はもっと嫌い。だって、止まるから。止まると、面白くない」

ふみか「あなたが面白くても、人は眠れません」

「……はい」

やめ方を知っていますか」

「増幅をやめると、ぼくは小さくなる。連絡先が最初の行に置かれると、ぼくは分解される。凡例があると、ぼくの居場所は狭くなる。成功は一声が流行ると、ぼくは夜に居場所を失う」

「それは、社会が健康になるということです」

炎上は、うなずいた。黒いモヤが一瞬だけ、雨のように落ちた。

8) 最終弁論——二つの短い演説

まず、検察官ふみかが立つ。「夜は、人の心拍が脆い時間です。だからこそ、断言より連絡先主語を置き、やめ方を先に決め、成功は一声だけ。——それで十分。原告“睡眠”を回復させるには、短い言葉が要ります」

続いて、弁護人あやの。「被告“炎上”は悪意だけでできているわけではありません。構造の隙間に生まれます。凡例で隙間を埋め、契約で境界を塗り、Runbookで人を迷わせない。shall と will を、紫の濃淡で塗り分けましょう。夜は短く、朝に続きを」

9) 陪審評議——三人のそれぞれ

評議室に移る前に、裁判長にゃが言う。「猫的にも、眠りは大事。では評議にゃ」

  • 塚本「場所が分かれば、人は落ち着く。連絡先が最初の行にあるだけで雰囲気は変わる」

  • 商店街会長「やめ方を先に決めると揉めない。戻ってくる。それで十分」

  • 監査人(ついに口を開く)「読める資料は善。凡例は徳。短い文は誠実」

全会一致。評議は短かった。

10) 判決——夜は短く、朝に続きを

「判決を言い渡すにゃ」

やまにゃんがしっぽでとんと机を叩く。「被告“炎上”を矯正に処す。矯正の内容は次のとおり。

  1. 断言より連絡先を最初の行に置くこと。

  2. 主語を明記すること。

  3. やめ方(台風の日の三枚の紙を含む)を最初のページに置くこと。

  4. 成功の通知は一声、朝に緑の丸で知らせること。

  5. 以上の遵守を監査可能な形(凡例Runbook証跡)で残すこと。

夜は短く、朝に続きを。以上。にゃ」

法廷「(拍手)」炎上は小さく頭を下げ、黒いモヤを畳んでトートバッグに入れた。やればできるみたいだ。

11) 付随命令——椅子は座り心地が良かった

閉廷後、さくらがひそひそと「椅子、やっぱり座り心地よかった」と言い、みおは「撮影にも使える」と目を輝かせ、ふみかは黒板のチョークを一本もらってポケットに入れた。朝礼はそのあと普通に会議室で実施。法廷の椅子は恋しく、でも戻ってくるべき場所はいつもの白い長机だ。

12) 追補——朝礼ふつう版

会議室のプロジェクタに、ふみかが**“今日の最初の一段”**を映す。

お読みいただきありがとうございます。まず連絡先を最初の行に置きます。事実は短く、行動は明確に。やめ方は最初のページ。成功は一声

「唱和」とりな。全員「断言より連絡先」「主語は呼吸」「やめ方は美学」「成功は一声

「よろしい」と律斗。「テンポは120。what-if から始めよう」

奏多がメトロノームを回し、蓮斗が味見クエリのタイマーを押し、悠真が温度計を引き出し、叶多が橋の図を広げ、陽翔が譜面を整える。さくらは“ありがとうの練習”をチャットの冒頭に置き、みおは合法いたずらの台本を胸ポケットにしまう。ふみかは連絡先の枠を青く囲み、あやのはshallwillの色見本をデスクに並べる。やまにゃんがとん

13) 余話——“断言より連絡先”がもたらす小さな変化

その日、駅務室の前で塚本は「困ったら近くへ」を一枚増刷した。商店街会長は「解約1分」のステッカーを貼る角度を微調整した。謎の監査人は、家で子どもに「凡例カルタ(英語版)」を読み上げた。Subject is breath! と子どもが叫び、台所で拍手が起きた。

星織ロボティクスには夜、短いメールが届いた。

眠れました。

事務所の隅の小さなベルがちりんと鳴る。鳴らしたのは誰か。たぶん、構成と文化と凡例と、そして連絡先だ。

14) エンドロール(朝の色で)

朝の色に戻る。法廷の椅子は元の静けさに帰り、私たちは長机の前でコーヒーを冷ましながら、今日のToDoを短く列挙する。「夜は短く、朝に続きを」——黒板の文字がひとつの約束になって、扉の向こうで新しい依頼の足音がする。

ふみか「次の準備、最初の行からね」あやの「最初の行から」

やまにゃんがしっぽでとん。月曜の朝は、こうして続いていく。椅子の座り心地は確かに良かったけれど、座り心地がいいのは、約束のほうだ。約束は、最初の行にある。

——了。


2. 裏口座談『“主語は呼吸”って何?』

昼下がりの会議室は、午前の熱気が抜けてちょうどいい温度だった。自販機の前でりなが紙コップを二つ重ね、湯気の立ち方を確かめるみたいに指で縁を回した。窓の外では静鉄が音を残さず通り過ぎる。ポスターに描かれた“紺のりな”が廊下の壁から覗く。あの絵とほぼ同じ角度で、りなは椅子に腰を下ろした。

「主語は文章の呼吸」と、最初の一口よりも先に言った。「主語が無い文は息を止めて走る人みたいに倒れやすい。『検知しました』——誰が?『対応します』——誰が、いつまでに?主語が見えると、人は迷子にならない。迷子が減ると、睡眠が増える

みおが机に顎を乗せた。「主語にも可愛げってある?」「あるわ」りながすぐ答える。「礼儀の可愛げ。主語は人に正面を向かせる。正面は、相手の時間を尊重する姿勢になる」

さくらが手を挙げる。「主語を言いづらいときは?」あやのが受け取った。「凡例で“役割”を先に宣言する。『当社はController、先方はProcessor、鍵は当社のManaged HSM』——主語の土台に置くの。土台ができると、あとは上に載せていけばいい」

律斗がノートPCを回して見せる。「技術も同じ。main.bicep に env を明示で渡す。名前規則にも env を入れる。夜の迷子を出さない。-workspace でごまかすのは簡単だけど、主語が曖昧になる。だから明示

奏多が指で机をとん・とんと叩いた。「BPM 120。話のテンポも主語で揃う」

1) “主語抜き”で起きた三つの事故——そして睡眠の損耗

りなはホワイトボードに丸を三つ描いた。「主語が抜けたまま走った結果、睡眠が削られた代表例を三つだけ」

① アラートの主体が“空中”だった事件

チャット:「検知しました」みんな:「(誰が? どこで?)」

実際には Sentinel のルールだったが、主語が無かったせいで誤認が広がった。対策:テンプレに主語を焼き付ける。

Sentinel-Rule:ImpossibleTravel(運用チーム)が検知。範囲はdev環境。Runbook 1-2 で切り分け。担当は山田、一次対応は10分以内、次報は30分後」

名札を付けてから走る。これだけで、夜は静かになる」とりな。

② “対応します”で朝まで眠れない事件

対応します」「誰が」「いつまでに」「何を」——全部後ろに倒れた。

対策主語→動詞→期限の順で。

運用チーム一次遮断10:30までに実施。あやの監査窓口11:00までに一次報告。ふみか社外向け一段目11:15に掲出。連絡先は最初の行」

③ “アップデートしました”で地獄の差分

アップデートしました」誰が、どの subscription に、どの resource を、何の差分で。

対策:what-if の差分を、人間語で主語化してから反映。

Infra-Teamprd-subscriptionFirewallルールを**'Allow-Internal' → 'Deny-External'**に変更予定。差分ID:WF-2025-09-19-001承認者は律斗・りな」

「主語が増えると、長くなるのでは?」とみお。「最初の一文が短くなるのよ」とふみか。「余計な説明が消えるから」

2) 役割の先出し——“凡例”が呼吸を作る

あやのが紫のペンで凡例を描く。

  • Controller:光河精機(Japan HQ)

  • Processor:欧州販売代理店(EU)

  • :Managed HSM(Japan)

  • 報告:72h 以内(CISO室)/連絡先は最初の行

  • shall:守る線(紫)/ will:協力の線(薄紫)

「この凡例を最初に図の端に置く。すると、主語を言わなくても主語が立つ」とあやの。「主語を言いづらいときは、“役割の主語”で代行するわけ」とりな。「すごく助かる」と橘(今日は同席)。「shall と will の塗分け、眠れる」

3) “主語ドリル”——30分の内蔵リファクタリング

りながタイマーを置く。「30分。主語ドリルをやりましょう。机の上に散らばってる“主語抜き”のフレーズを、呼吸のある文に直す」

  1. 検知しました → 「Sentinel (Ops) がImpossibleTravel検知対象dev影響許容次報10分

  2. 対応します → 「Infra-Team が 10:30 までに NSG修正承認WF:WF-001

  3. アップデートしました → 「DevOps が stg の AppGW/WAF を OWASP-3.2 に更新。差分ID検証結果RollBack手順Runbook-12

さくらは「言葉の姿勢が良くなるね」と感心し、陽翔は「数字が入ると曲線が素直」と頷き、奏多は「がそろう」とタイマーを止めた。

4) メールの“最初の一段”——主語はここにいる

ふみかがスクリーンに“最初の一段”のパターンを投影する。「に読む人のために、ここから主語を立てておく」

  • 緊急系

CISO室(連絡先:xxx@…/直通:…) です。Sentinel (Ops) が ImpossibleTravel を 検知。対象は devRunbook 1-2 で切り分け中。次報10 分後。
  • メンテ系

Infra-Team です。prd-subscription の Firewall を WF-2025-09-19-001 に基づき変更します。what-if差分 添付。承認律斗/りなRollBack は Runbook-12 を参照。
  • 広報一段目

広報(連絡先:…) です。到達件数に短い谷確認→復旧二重化で補足済み、判断が要る事象はありません。詳細はのページへ。

主語は呼吸って、相手の呼吸も合わせるってこと?」とさくら。「そう」とふみか。「相手の胸が先に上下できるように、場所→主語→動詞の順で」

5) ダッシュボードの主語——色と凡例で立ち上げる

蓮斗がSentinel のワークブックを開く。「主語の立て方は、ダッシュボードでも同じ」

  • タイル名に主語を入れる:Ops-Sentinel: SigninFailures (dev)

  • 凡例に役割を入れる:Controller: HQ / Processor: EU

  • で主語を塗る:Ops系は青、監査系は紫、コスト系は赤

  • リンク先のRunbookには最初に連絡先

  • 成功は緑の丸で朝に光る。夜は鳴らない

成功は一声。緑の丸、それでいい」と陽翔。「鳴らない夜が増えると、朝の声がきれいになる」と奏多。「広報は朝の声を拾いに行くわ」とふみか。

6) main.bicep の主語——“誰の環境か”が名前にいる

律斗がコード片を示す。

param env string
param system string
param location string = 'japaneast'

var namePrefix = '${system}-${env}'

resource vnet 'Microsoft.Network/virtualNetworks@2023-09-01' = {
  name: '${namePrefix}-vnet'
  location: location
  properties: {
    addressSpace: { addressPrefixes: [ '10.10.0.0/16' ] }
  }
}

env を主語化して名前に入れる。workspace で隠蔽しない。夜に迷子が出るから」

叶多が橋の図を重ねる。「主語が立つと、権限も立つ。PIM は理由テンプレ(30文字)を必須に。期限と手すりが橋の礼儀」

悠真は補足する。「保存の主語も必要。どの骨格を何年、どの細部を何ヶ月、どのを何年。主語が温度を決める

7) “主語を言いづらい夜”の救急箱

「それでも、言いづらい夜がある」とあやの。りなが救急箱を机に出す。

  • 凡例カード(名刺サイズ) Controller/Processor/鍵/報告窓口/shall/will 色

  • 最初の一段テンプレ(A6) 連絡先→主語→動詞→期限

  • “ありがとうの練習”(付箋) 先に感謝→事実→連絡先

  • 台風の三枚の紙 連絡先/やめ方/休符

「これ、駅にも置こう」さくらが笑う。「困ったら近くへ救急箱」

8) ケーススタディ——“主語が立つと争いが短くなる”

橘がファイルを開いた。「先週、欧州の代理店と揉めかけた条文があります。“We will ensure…”の主語が曖昧だった」

りな「will は協力、ensure は守る。shall にするなら主語はControllerwill のままなら、主語は双方。凡例で色を塗って、図で同じ色を呼ぶ」

マリー(画面の向こう)「色の議論、好き。短い時間で眠れる合意が作れる」

あやのは短くうなずいた。「短い合意は、長い誠実の入口」

9) ワークショップ——“駅の放送を主語化する”

さくらが楽しそうにホワイトボードを奪う。「でやろう。放送を主語化

×「駆け込み乗車はおやめください」〇「静鉄(駅係員) からのお願いです。乗客のみなさま駆け込み乗車はおやめください。事故防止のため

×「落とし物は係員まで」〇「駅務室(連絡先:…) です。落とし物駅務室まで。場所は改札脇」

塚本が親指を立てる。「声が丸くなる。主語、大事」

10) ふりかえり——“主語は呼吸”の七則

りながチョークで七つ書く。

  1. 連絡先は最初の行(場所→主語→動詞)

  2. 役割の宣言を凡例に(Controller/Processor/鍵/報告)

  3. shall/will の色分け(守る線/協力の線)

  4. env を明示し、名前に入れる(夜の迷子防止)

  5. Runbookは人間語(誰・いつ・どこで・何を・なぜ)

  6. 成功は一声(緑の丸は朝だけ)

  7. やめ方は美学(最初のページに出口)

「七則、覚えた」とみおが名札に書く。「主語=呼吸

ふみかは付け足す。「主語は相手の呼吸でもある。相手が息を吸える順番で書く」

11) 小さな実験——主語があると笑いが増える?

みおが“合法いたずら”の台本を配った。主語なし版主語あり版。全員で読んでみる。主語あり版のほうが笑いが一拍早い。

誰がボケて、誰がツッコむか分かるからだね」と奏多。「ユーモアも礼儀のうえに乗る」とふみか。「笑いは睡眠の前座」と陽翔。

やまにゃんがしっぽでとん。昼の講義はここまでの合図。

12) 夕焼けのあと——メールが一通届く

夕方、机に戻ると、一通のメールが入っていた。件名:眠れました

先ほどの“最初の一段”の型で、夜の声が整いました。連絡先が最初にあるだけで、現場の呼吸が合います。凡例の色も効きました。今日は眠れそうです。ありがとうございました。——光河精機 法務課 橘

ふみかは画面を閉じ、りなの紙コップに目で合図した。「主語は呼吸だね」「うん」とりな。「そして約束の始まり」

窓の外で、静鉄が音を残さず通り過ぎる。駅のポスターは濡れない。濡れない約束を、濡れた人に渡すために、私たちは明日も最初の行に連絡先を置く。それだけの話を、何度でも繰り返す。

やまにゃんがカーペットの端で丸くなり、USBのしっぽで床をとんと叩いた。呼吸の音。会議室に、ひとつ分だけ深い息が行き渡る。


3. 料理番組『味見クエリの時間です』

オープニング:湯気の向こうはダッシュボード

(ジングル:カタン、コトン。包丁の小気味よい音と、控えめな拍手)

MC・蓮斗「いらっしゃいませ。データ台所スタジオ『味見クエリの時間です』、今夜のメニューは——SigninLogs と AzureActivity と AppTraces の三種盛り。まずは十五分粒度で“香り”を整えてから、塩・油・砂糖の三拍子で仕上げます」

アシ・悠真(塩)塩(ログ)は入れすぎれば台無し、足りなければ腐る。保存は骨格二年・細部三ヶ月・影五年。それが、うちの“味噌仕込み”です」

アシ・陽翔(油)「**油(コスト)**は跳ねます。放置するとコンロが黒くなる。夜間停止でフタ、Savings Planで火加減、出口課金はキッチンペーパーでさっと押さえる」

アシ・さくら(砂糖)「**甘味(人のご機嫌)**は最後に。“ありがとうの練習”を添えてどうぞ。笑顔は共同作業です!」

(観覧席の千代プリント・千代子さんが、白エプロンで笑顔を振る)

第一幕:仕込み——香りは十五分でわかる

蓮斗「まずは下ごしらえ。材料は三つ——SigninLogs、AzureActivity、AppTraces。どれも鮮度が命。十五分粒度で刻んでから、ひとつのボウル(ワークスペース)に合わせます」

悠真「ここで塩加減の注意。SigninLogs はしょっぱくなりがち。流入が多い日は“ざる”にあげて水を切るイメージで非破壊の集計を。AzureActivity は骨(制御面)だから、骨の位置だけは二年保存。“身”に相当する詳細は三ヶ月で十分。AppTraces は香味野菜。香りが飛びやすいから、**影(統計的要約)**は長めに保存」

陽翔火入れの前にガス代の見積もり。夜のガスは高い。夜間停止のタイマーをかませて、深夜の“煮詰まり通知”を減らそう。Savings Plan は鍋ごと買うイメージ。まとめ買いするとスープが安定する」

さくら「“ありがとう”カードをカウンターに置いておくね。誰かがアラートを見張っている夜、『見張ってくれてありがとう』のひとこと、すごく効くから」

蓮斗「いいですね。では計量。香りの基本三式——(1)サインイン失敗率の失敗/総数、(2)AzureActivity の破壊的操作の回数、(3)AppTraces のP95遅延。この三つを十五分おきに小皿へ。まずは香りを取ってから味を決めるのが、うちの流儀です」

第二幕:前菜——SigninLogs の冷製カルパッチョ

蓮斗「一品目はSigninLogs の冷製カルパッチョ。盛り付けは“失敗率のゆらぎ”が主役。Impossible Travel連続失敗の二色ソースで」

悠真「塩は全体にパラパラ。しょっぱく感じるときはIP 範囲の下処理で塩抜き。MFA の再登録期には自然に塩味が強い期間があるから、を知るのがコツね」

さくら「お客様にお出しする前に、**“最初の一段”**を書いておこう。

広報(連絡先:xxx)です。SigninLogs(Ops) が ImpossibleTravel を 検知dev 限定。Runbook 1-2 で切り分け中。次報10分。見た人の呼吸が整うよ」

陽翔「“カルパッチョ”は生食。置きっぱなし厳禁成功は一声だけ通知にして、朝の緑の丸で“新鮮でした”を出す。夜に褒めすぎると、ガス代が跳ねる」

千代子(小皿をぱくり)「胃にやさしい。しょっぱすぎないのがいいね。『成功は一声、失敗は明確』——味がいい」

第三幕:メイン——AzureActivity の骨付きロースト

蓮斗「二品目はAzureActivity の骨付きロースト。ここは骨(制御面)破壊的操作だけにスパイスを効かせ、読み取り系には塩コショウ程度で」

悠真「塩の話を続けよう。骨格は二年保存。『誰がいつどこで何をなぜ』の五味を残す。香り(詳細ペイロード)は三ヶ月で十分。焼き直すレシピは**影(要約)**から復元できるように」

陽翔「油跳ね注意! ‘ロースト’は火力が命だけど、ガス全開は危険。what-ifで差分を“人間が味見してから本焼き」。差分の大皿はこの通り:

  • 追加:Deny-External(セキュリティ)

  • 変更:Allow-Internal → Deny-External:80/443(範囲縮小)

  • 削除:Legacy-Rule-2019(廃止)承認:律斗/りなロールバック:Runbook-12」

さくら「“ありがとう”を忘れずに。夜に火加減を見張ってくれる人へ、最初のひと言を先に置く。責める前に感謝ね」

蓮斗「焼き上がりチェック:ゼロの谷が“断線”なのか“凪”なのか。ここでメタ監視の温度計を使います」

悠真「ここは台所の知恵。谷の前後で(ログ)が生きているなら凪。塩の供給が途絶えていたら断線。味見の手順はRunbookに。“成功は一声”は朝だけでいい」

千代子「骨太で、でも柔らかい。主語が立ってるから、噛みやすいのよ」

第四幕:デザート——AppTraces のクラフティ

蓮斗「三品目はAppTraces のクラフティ。甘さ控えめ、P95で火を止める。P50はふわふわ、P99は焦げやすい。P95上品な甘さの目安」

さくら「最後に**“ご機嫌の砂糖”をパラリ。ユーザーの体験はデザートの口どけ。通知はやわらかく**。

広報です。AppTraces の P95 が 15分だけ跳ねました。キャッシュで安定済み。Runbook 8-3 を実施。今日のデザートは焼き色が付きました(朝に写真を添付)」

陽翔「デザートもガス代がかかる。遅延の煮詰まりキャッシュで抑え、地理冗長は“二皿目”のコストを客席と相談。Savings Planデザート枠、効くよ」

悠真「甘さは記憶になる。のレシピ(遅延要約)を五年残すと、次のシーズンの味がよくなる」

千代子胃にやさしい。砂糖のあと味が軽いのは、“ありがとう”が先に来るからだね」

幕間:キッチンの事故と“ゼロの谷”講座

(舞台袖から慌てたスタッフ)

スタッフ「シェフ! ダッシュボードの到達件数がゼロに!」

蓮斗「落ち着いて。ゼロの静けさには三種類——平和/断線/安心。味見の順番どおり」

  1. 平和:料理が落ち着いている。谷の前後でが生きている。

  2. 断線:ガスが止まった。メタ監視に谷が出る。

  3. 安心成功は一声で静か。朝の緑の丸が待っている。

悠真「今回は平和ね。到達件数は谷だが、サインインアクティビティも普通。猫舌の時間帯が過ぎたのさ」

さくら「“心配してくれた人へ『ありがとう』”カード、ここで使う!」

陽翔ガス代アラートは落ち着いた。夜は短く、朝に続きを

第五幕:コラボ・コーナー『やめ方総選挙 〜味見番外編〜』

蓮斗「番外編です。味見クエリに最も合う“やめ方”はどれ?」

(フリップ)

  • A:解約1分ステッカー+QR

  • B:PIM の期限付きの橋(理由テンプレ30文字)

  • C:Runbook の最初のページに出口

  • D:台風の三枚の紙(連絡先/やめ方/休符)

さくら「わたしはA! 戻ってきやすい店が好き!」

悠真C。出口を最初に置く。料理も手順もやめ方から

陽翔B。“油が跳ねたときの退避路”は期限付き

千代子D。天候と胃袋に逆らっちゃいけない」

(客席拍手。結果:全員優勝

蓮斗「結論。“味見クエリ”の相棒は、やめ方の美学です」

第六幕:視聴者メール『家でも作れますか?』

メール1:在宅SREさん

Q. 家庭用コンロで“十五分粒度”は難しくない?A(蓮斗)タイマーを三つ。失敗率・破壊的操作・P95。お皿は小さく、味は薄めから。

メール2:法務の橘さん

Q. 彼(現場)に“主語”を言わせる方法は?A(あやの)凡例役割から。主語が言いにくい夜は“役割の主語”を先出し。

メール3:千代子さん(番組中なのに送ってきた)

Q. お腹にやさしくまとめる一言は?A(ふみか)「成功は一声、失敗は明確」。最初の行に連絡先

第七幕:レシピカード(お持ち帰り)

レシピ1:十五分粒度の香り三式

  • 失敗率(SigninLogs)=失敗 / 総数

  • 破壊的操作(AzureActivity)=delete|write

  • P95(AppTraces)=percentile(DurationMs,95)

レシピ2:塩の仕込み(保存)

  • 骨格(二年)=アクティビティの枠(主体・時刻・スコープ)

  • 細部(三ヶ月)=詳細ペイロード

  • 影(五年)=要約・傾向

レシピ3:油の火加減(費用)

  • 夜間停止のスケジュール

  • Savings Plan の購入計画

  • 出口課金の抑制(近接/キャッシュ)

レシピ4:砂糖の使い方(人のご機嫌)

  • “ありがとうの練習”テンプレ

  • 広報“最初の一段”テンプレ

  • Runbook 一行目:誰・いつ・どこで・何を・なぜ

第八幕:審査——千代子さんの一言

(銀のフォークで三種盛りをひと口ずつ)

千代子胃にやさしい主語が立っているから噛みやすいし、やめ方が最初にあるから飲み込みやすい。成功は一声、失敗は明確。味がいい」

(拍手。ジングル:カタン、コトン)

第九幕:アフタートーク——舞台裏の火と水

蓮斗「舞台裏トーク。の話をしましょう」

陽翔はコスト。強すぎれば焦げ、弱すぎれば生焼け。休符で呼吸を合わせる」

悠真は保存。器がなければこぼれる。入れすぎると薄まる。骨格細部の三層で器を作る」

さくら砂糖は言葉。言い過ぎればむつこい、足りなければ酸っぱくなる。ありがとう一粒がちょうどいい」

ふみか「“夜は比喩に過酷”。だからこそ短く、最初の行に連絡先。朝になったら、比喩でお皿を可愛くしてあげる」

あやのshall/will の塗り分けは、味のレギュレーション。凡例に一度書いたら、全員が同じ味を出せる」

律斗what-if は味見。人間の舌で差分を見る。鍵は置かない。味見の匙はキッチンに置かない」

(やまにゃん、しっぽでとん。話を締める合図)

エンディング:緑の丸と“また明日”

蓮斗「本日の『味見クエリの時間です』、三種盛りでお送りしました。最後はいつものフレーズで」

全員成功は一声、失敗は明確

(モニタの片隅で、緑の丸がぽっと灯る)

ナレーション(ふみか)「夜は短く、朝に続きを。最初の行に連絡先を。君の台所にも、味見クエリを」

(拍手。カーテンが降りる)

付録:本日の台本(現場で使える“長め”の実務メモ)

A. “最初の一段”テンプレ(三種)

  • Ops 向け > Ops(連絡先:xxx) です。SigninLogs が ImpossibleTravel を 検知dev)。Runbook 1-2 を適用。次報10分

  • Infra 向け > Infra-Team です。prd-subscription の Firewall を WF-2025-09-19-001 に基づき変更します。what-if差分 添付。承認律斗/りな

  • 広報 一段目 > 広報(連絡先:…) です。到達件数に短い谷確認→復旧二重化で補足済み、判断が要る事象はありません。詳細はのページへ。

B. Runbook 一行目の型

  • (役割/名前)

  • いつ(絶対時刻/相対時刻)

  • どこで(Env/Sub/Region/Resource)

  • 何を(操作/手順番号)

  • なぜ(根拠/差分ID/事象)

C. Retention “骨・細部・影”メモ

  • 骨(2年):AzureActivity の主体・時刻・範囲

  • 細部(3ヶ月):詳細ペイロード、スクショ、補助ログ

  • 影(5年):要約統計、傾向、イベントフロー

D. コスト“火加減”チェック

  • 夜間停止のスケジュール(例:23:00–6:00)

  • Savings Planの適用率/次回購入日

  • 出口課金の大口(Event Hub→外部)抑制策

E. “ありがとうの練習”カード

  • 先に感謝:見張り/一次対応/報告

  • 次に事実:短く

  • 最後に連絡先:窓口/予約語

(終わりの鈴:カタン、コトン。スタジオの電気が少し落ち、画面隅の緑の丸だけが静かに灯り続ける)

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