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山影の街3

  • 山崎行政書士事務所
  • 10月29日
  • 読了時間: 28分


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第四部 暴走

第19章 雨の出没(視点:獣害対策員・斎藤茜)

午後七時、警戒レベルの内線が鳴りやまない。斎藤茜は、腰の無線機と熊撃退用クラッカーを確認し、合羽のフードを深くかぶった。「西谷、社員寮のゴミ置き場カバー補強。東の学童は帰宅路を第二動線に切替。南の用水は自治会連絡して門扉閉鎖」口に出して言うと、体のなかの迷いが少し減る。

雨は音で地図を書く。屋根、葉、アスファルト、土。どの面に当たるかで音が違い、流れの速さが分かる。谷の筋で低く唸る音──まずい。コンビニの駐車場に差しかかった瞬間、茜は息を止めた。黒い影が三つ。母と子。LEDの白い光が、濡れた毛に細い線を描く。母は横顔だけをこちらに向け、風上へ鼻を上げた。ここに揚げ物の匂いが溜まる時間帯を、もう学んでいる。

茜は後退し、クラッカーを空へ。一発、二発。乾いた破裂音の壁を作る。母が一拍ためらい、最短ではない道を選んで植え込みの奥へ消える。子は遅れ、コンビニのドアセンサーが空しく開閉した。「よし、よし」茜はポケットの石灰袋を取り出し、店の搬入口から駐車場まで白い線を引く。夜の担当が匂いの管理線を見て、翌朝の回収を一時間前倒しするための合図だ。線は雨に薄まるが、行動の約束は濡れても残る。

無線が鳴る。

「仮設排水、谷脇の土のう越え。茶色の筋が二本」工事ヤードの若い作業員の声が震えている。「自警団、南二丁目で“クマを見た”と……」茜は舌打ちを飲み込む。「自警団は待機、視認までは“鳴らすだけ”。工事ヤードはの追加、塩ビ管のジョイント増締め」雨脚がさらに強まり、町の音が一段沈んだ。茜は胸の中で、人の動線匂いの線をもう一度重ね、次の角へ走った。

第20章 間違った銃声(視点:猟友会若手・榛葉航)

午後八時半、裏山の竹林。榛葉航は、湿った土の匂いのなかで息を潜めていた。腕章を巻いた男たちのライトが、ばらばらの高さで揺れる。「撃たない。ここは住宅地の背だ」古参の小野良平が繰り返す。雨を割るように、前方で黒い影が走った。イノシシだ。誰かが叫び、別の誰かが足を踏み出す。そのとき、破裂音。どよめき。ライトが一斉に跳ね、視界が白む。榛葉の左腕に熱いものが走った。痛みが、雨の音を押しのける。「誰が撃った!」良平の声が低い。「違う、暴発だ、落とした拍子に……」若い男が震える声で言い訳をし、手の中の空気銃を見下ろした。銃口は泥で汚れている。「救急!」斎藤茜の無線が割り込み、位置情報が短く伝えられる。榛葉は自分の腕を見た。皮膚が浅く裂け、血が雨に広がる。命に別状はない。運がよかっただけだ。

パトカーのライトが雨に滲み、押収の言葉が聞こえる。銃は資格場所判断を一度に要求する道具だ。それが今夜、全部崩れた。榛葉は担架に乗せられながら、良平の顔を見た。「すみません」「謝るより、やり直すことだ」良平は短く言った。翌朝、SNSは二項対立で燃えた。「銃のせい」「素人のせい」「役所のせい」。誰かのせいは速い。榛葉は包帯の上から腕を押さえ、窓の外の雨脚を見た。雨は、誰のせいでもない。

第21章 供養(視点:市長・田所剛)

翌日午後、祠の移設先。雨は細くなり、湿った空気に線香の匂いが混じる。田所剛は、自治会長の三浦と並んで立った。先日の被害者は、意識が戻らないまま容態が悪化した。家族の意向で、町内で静かな供養を行うことになった。「ひとこと」マイクを渡され、田所は短く息を整える。「この町は、善悪の物語では動かない。手続の物語で動きます。今日ここにいる皆さんと、約束を書き責任の線を描き直す。雨も、クマも、私たちの都合を知らない。だからこそ、私たちの都合を紙にしなくては」言葉は乾いていたが、嘘ではない。

祭壇の脇に、が一本ずつ並べられた。子どもたちが校庭で鳴らす鈴と同じ音が、ゆっくり風に揺れる。自治会の老女が田所の袖を引いた。「“お願い”だけじゃ、続かないよ」「わかっています」田所は頷き、ポケットの中の紙に触れた。事業者・市・自治会・学校の四者で結ぶ協定案通学時間帯出入り制限匂い管理保全帯の暫定拡幅仮設排水の上限雨量。紙は薄い。だが、書かれた約束は、何もないより強い。

献花が終わる頃、空がわずかに明るくなった。田所は祭壇に礼をし、会場を離れる。庁舎では、対策本部の立ち上げが始まっていた。時間は、待ってくれない。

第22章 檻と学習(視点:生態学者・山科玲奈)

捕獲檻の前に、タヌキが座っていた。箱の中のリンゴを見つめ、入ろうとしない。学習したのだ。昨日は入って閉じ込められ、職員に写真を撮られて放された。“檻は嫌な場所”という記憶が、もうできている。山科玲奈は、檻の扉に付いた土の指紋を見た。母グマのものではない。子の高さでもない。「通らない」玲奈は地図を指で辿る。母グマは、風の読みがうまい。檻は風下にある。匂いの線が、扉の前で渦を作っている。斎藤茜が来て、肩で雨を払った。「餌を変えてみたけど、ダメ」「餌の問題じゃない。場所時間の問題」玲奈は、嫌悪刺激のタイミングと位置をメモに書く。クラッカー、熊スプレー、ライト。「“ここは嫌だ”を地図上の帯で教える。点じゃなくて帯で」茜が頷く。「学校と社員寮、給食室とコンビニ、匂いの源の時間帯を整理して、鳴らす順番を合わせよう」

夜、玲奈は島状林の提案に**“仮設回廊”を付け足した。工期中だけでも、水の筋と動物の道**を重ねる。予算はない。だから、ボランティアの手でやれる方法に落とす。枝払い、ロープ、光。メールの受信箱が光る。匿名の差出人から。

「仮設排水、上の“省略可”に合わせて、下でも“省略”が始まっています」添付の写真には、藁を詰めただけの浅い溝と、はずれかけたジョイント。玲奈は写真を三回見直し、プリントして鞄に入れた。明け方、雨が止む前に、斜面へ行く。

第23章 斜面(視点:土木会社社長・三上正義)

午前四時。三上正義は、ヘッドライトで茶色い幕を照らした。法面シートが斜めに裂け、その下から細い水脈が何本も顔を出している。仮設の塩ビ管は勾配が足りず、泥が詰まり、逆流していた。「藁を持て! 土のう、追加! ジョイント、二重バンドに替えろ!」声が雨に溶け、若い作業員の手が震える。谷の底から、濁りが上がってくる。下の畑のビニールハウスが、ぼんやり茶色に染まるのが見えた。「これ以上は持たん」三上は判断した。図面にはない、逃げ溝を切る。古い獣道のラインに合わせ、山のをなぞるように。「法令違反だぞ」若い監督が言う。「今夜だけは、現場の法だ」三上はユンボのアームを下ろし、爪で土を掬った。水が躊躇なく新しい道に流れ、茶色の筋が古い谷へ戻る。電話が震える。元請け。「勝手なことをするな。責任は取れるのか」「取る。名前を書けと言うなら、俺が書く」三上は切り、汗と雨で濡れた顔を拭った。張 雪と陳 浩然が合羽で駆け上がってきた。「島状林の残し、ここだけでも」陳が短く言う。三上はうなずき、杭の位置を三メートル戻した。不可逆は、指一本ぶんだけでも曲げておく。

夜明け、雨脚が緩む。下の道路に薄い泥膜が張り、車のタイヤが滑りそうに鳴く。三上は現場を一周し、最後に若い作業員の肩を叩いた。「写真は今日撮れ。明日じゃない。出来高は遅れても、土は待たない」遠くで犬が一度だけ吠えた。山は何も言わない。言うのは、人と、水と、土だ。

第24章 県境の罠(視点:対策本部長・小泉雅彦)

午前十時、庁舎三階。対策本部のプレートが掛かり、ホワイトボードに時系列が並ぶ。小泉雅彦本部長(危機管理監)は、椅子に座る間もなく各課の視線を受けた。「南谷、道路冠水。北の停電は二千戸。学校は在宅、福祉施設は自家発に切替。発電所工区の仮設排水は“持つか持たないか”。情報は一本化、数字以外の形容詞は出すな」言葉を並べる間にも、県境の上流から連絡が入る。「砂防堰堤、ゲート操作の要請が来ています。相手県の管理」小泉は地図を見た。線が行政区を示す。水はその線を読まない。「相手県の河川事務所とテレビ会議。統一文言で要請。こちらの判断書は岩崎がドラフトしたものをベースに、“極値”の語を入れ替えろ」総務が頷き、回線をつなぐ。

電力会社の担当が言う。「配電線の復旧は、道路通行止の解除待ち」消防が言う。「自警団の暴発事案、再発防止の通達と講習を」教育委員会が言う。「給食室の匂い管理を今週から午前搬出に前倒し」民間の事業者席に座る張 雪が、手を挙げた。「保全帯の一時拡幅、島状林を最小三島、杭位置を変更。工期に影響しますが、合意形成中です」「紙にしてくれ。協定に入れる」小泉は即答した。紙の上でしか動かないスイッチがある。

相手県との回線がつながり、担当者の顔が並ぶ。「そちらのトリガーは何ですか」小泉が問う。「“過去十年の平均”の一・五倍です」「こちらは“観測史上最大の八割”を提案します。平均は水を止めない」沈黙。誰かが頷く。文言がすり合わされ、ゲート操作の条件が紙に落ちる。

会議が終わると、小泉は窓の外を見た。空はまだ鈍い。だが、雨足のリズムが、わずかに変わった。「県境は地図の線で、水とクマは勾配で動く。線の言語勾配の言語を繋ぐのが、今日の仕事だ」独りごとを終え、彼は次の会議へ向かった。

ここまでの要点(物語の芯) 雨は音で地図を書く。匂い・音・人の手順を重ねて、出没リスクを帯で管理する。 暴発は装備の問題ではなく、資格・場所・判断が一度に崩れると起きる。訓練と線引きが不可欠。 供養は“お願い”を協定に変える場。薄い紙でも、ないより強い。 は点の対策。効果を出すには(嫌悪の回廊)と時間の設計がいる。 斜面は“省略可”の累積を暴く。図面外の逃げ溝は法と現場の揺らぎを照らす。 県境の罠を外すには、平均ではなく極値の言葉で連携し、紙の上でスイッチを作る。

第五部 証拠

第25章 情報公開請求(視点:記者・石田晴奈)

市役所の窓口は、湿気の匂いが紙に移るほど蒸していた。晴奈は情報公開請求の受付印を三枚分、目の前で確認した。対象は、①林地開発許可の変更履歴、②排水計画の図面と計算根拠、③住民説明会の議事録と内部メモ。「開示決定に二週間です」担当職員は淡々と言う。晴奈は頷き、隣のブースへ回った。県庁分は岩崎の部署が所管だ。こちらは部分開示の予感が濃い。

四日後、最初の封筒が届いた。黒塗りの連続。その黒の端に、細い灰色の版管理番号が残っている。「b-03→b-04」番号の飛び方が気になった。版b-03の存在は、紙の上では消えている。だが、配布経路の紙片に、鉛筆の走り書きがあった。

「b-03は“平均雨量”バージョン。b-04で“最新データ”に置換」最新、と言い換えられた“平均”。晴奈は赤ペンで極値の文字を入れ、ページの端に小さく書いた。「平均は水を止めない」

さらに、審査記録の余白に青いスタンプ。「軽微な変更」に〇。それを押した時間が、委員会開催の二時間前になっている。決まる前に、決まっている。受付の課長補佐に電話を入れる。「スタンプの押印時刻、システム時計のずれですか」「確認します」定型の返事の奥で、短い沈黙が鳴った。

夕方、住民説明会の議事録が届いた。機械的な言い回しが並ぶ最後に、手書きの追記。

「住民側より“省略可の意味”について再説明の要望あり」再説明は行われた形跡がない。晴奈は資料を束ね、編集長の机に置いた。「今夜、一本出します。黒塗りの向こうに時刻が残っている、という話で」編集長は頷き、言葉を一つだけ返した。「名詞で書け」

第26章 メールの断片(視点:匿名の社員/記者・石田晴奈)

未明、またしても差出人不明のメール。件名は「梅雨前に」。本文は短く、添付が多い。

  • 内部チャットのスクリーンショット: > 「排水“仮設”は長期運用を想定(正式工は秋)→“工程優先”」

  • 写真三枚:塩ビ管のジョイントに結束バンド、を詰めただけの溝、別現場の法面写真

  • Excelの断片:出来高のセルに黄色いハイライト、「写真提出済」とある

晴奈はExIFを確認した。別現場の写真の日付は去年の九月、天気は晴れ。いまの現場は豪雨だ。電話が鳴る。匿名の男の声。「俺は“悪人”じゃない。ただ、間に合わないんだ」「わかっています。あなたの名前は出しません」「“仮設”って言葉が、いつの間にか常設の意味に変わる。それが一番怖い」通話は短く切れた。晴奈は裏取りに動く。工区責任者の陳は外出中。張 雪にメッセージを送る。

「仮設運用の期間管理者の名を、公的文書で」すぐに返事。「“協定”草案に入ります。今夜、対策本部に文言案を出す」に落ちる、という返事だ。

記事は二本立てにした。一本は、写真流用の疑いと出来高の前倒し。もう一本は、「仮設の意味」を手続で問う解説。公開後、匿名の男から二通目。

「ありがとう。俺は現場を売りたいんじゃない。現場を守りたい」晴奈は、返信欄の点滅をしばらく見つめ、たった一行返した。「守るために、紙にしましょう

第27章 海外SPV(視点:金融調査員・朝倉修/記者・石田晴奈)

都内のコワーキングの会議室。ホワイトボードに四角と矢印が並ぶ。金融調査員・朝倉修は、ペン先で矢印を二度叩いた。「ここが合同会社(GK)。その下に匿名組合(TK)投資家のお金はTKで集めて、GKに貸すか出資する。発電所の売電収益は、O&M(運営・保守)費や借入返済を抜いて、残りが分配で上に上がる」晴奈は頷く。「上の箱は?」「信託。受益権がここで束ねられる。で、右側に海外SPV。税務・資金調達・リスク分散──理由はいろいろ。重要なのは、利益が“どの名義”で移動するか。名義が移れば、責任の住所も動く」朝倉はスライドを切り替え、決算公告信託受益権の譲渡公告を並べた。「“朱鷺ソーラー第七”の上にいるのは国内のアセットマネージャー。その背後の一部が、海外のSPVにつながる。違法ではない。ただ、透明性が薄い」

晴奈は、先日の再エネ賦課金のグラフを思い出す。「明細の小さな一行が、ここへ? 全部じゃなくても、一部は」「制度の設計上、買取価格で支えた収益が、配当という形で動く。善悪の話じゃなく、仕組みの話。ただ、仕組みが地元の雨斜面にどう接続されているか、そこを問い直す価値がある」朝倉は再び矢印をなぞった。「たとえば、保全帯の追加コスト。誰が負担するか。ここ(O&M)で吸収できるのか、ここ(AM)で運用報告に載せられるのか。紙にを作らなければ、誰も見ない

晴奈はホワイトボードの端に、赤で小さく書いた。「名義の移動=責任の移動?」ペンのキャップを閉じる音が、会議室に乾いた。

第28章 施工不備(視点:第三者技術者・堀内麻里)

翌朝、第三者技術者の堀内麻里が、現場の法面に立った。雨は上がり、泥はまだ柔らかい。堀内はレベルを据え、越流堤の高さを測る。計画値より40mm低い。「“低い”は安全側じゃないのよね」同行の若手が首を傾げる。「ここは越えさせる場所を決めるための高さ。低いと、早く越えて未設計の筋へ行く」

調整池の実容量を測る。図面上の容量に対し、実測はマイナス18%。堀内は堤体の土質に指を入れ、湿り具合と締まりを確認した。締固めが足りない。「仮設の塩ビ、勾配が甘い。ジョイントは一重バンド逆流の後がある。ここで泥が詰まって、上の法面に張り付きが起きた」若手がメモを急ぐ。堀内は是正案を書き出した。

  • 越流堤の高さ**+40mm**、導流部のライニング追加

  • 調整池の容量増(側方切り下げ暗渠で流域を分ける)

  • 塩ビ管の二重バンド化、点検口の増設

  • 島状林残置の杭再配置コリドーの連結)

「コストと工期は?」張 雪が現場で聞く。「一週間+材料費。でも、“一週間遅れる”の意味を紙で合意しないと、現場にしわ寄せが出る」堀内はそう言って、出来形写真の撮影位置にテープを貼った。「写真はこの角度この距離今日撮る。明日じゃない」

午後、堀内の是正指示書が対策本部に届き、協定案の付属文書に入った。薄い紙が、現場の癖を少しだけ矯める。

第29章 委員会(視点:県議会・特別委員会/県庁職員・岩崎勇人)

県議会の特別委員会。傍聴席は早くから満席。岩崎は首元のマイクを整え、判断書のドラフトを開いた。「まず、“軽微な変更”の累積について」質疑は鋭い。「一つひとつは軽微でも、重なるとが変わる。再評価トリガーを規定し、自動起動させます」スクリーンに条件式が映る。

「保全帯縮小(m)+調整池容量減(%)+法面勾配変更(%)≥閾値 ⇒ 再評価」議員が言う。「“平均”じゃなく“極値”で責任を定義する、と」「はい。観測史上最大の八割を目安に、仮設運用の停止条件を協定に入れます」

別の議員が、報道の写真流用を引き合いに出す。「出来高の前倒し、監督は何を見ている」岩崎は歯切れよく答える。「撮影基準を統一し、位置情報撮影時刻の記録を必須化します。違反の減点再提出を求める」野次と拍手。議会の最後に、市長・田所が発言する。「協定に“保全帯の一時拡幅”と“学区の匂い管理”、そして“仮設排水の停止条件”を盛り込みます。反対・賛成の軸でなく、手続で前に進めます」委員長が槌を打つ。会場の空気は重いが、言葉が具体に近づくと、重さは持てる重さに変わる。

廊下で、岩崎は短く息を吐いた。スマホに朝倉からメッセージ。

運用報告の様式に“保全コスト欄”を新設する提案、AM側が検討に入った」制度のが一つ増えるだけで、現場に落ちる見えない重りの位置が変わる。紙は薄い。だが、は重い。

第30章 記者会見(視点:記者・石田晴奈/通訳・張 雪/現場監督・陳 浩然)

記者会見場。背面に企業ロゴが並ぶ。列の前方に企業側の広報責任者技術担当、そしてアセットマネージャーのオンライン接続。張 雪は通訳席で、イヤモニを調整した。陳 浩然は最後列に座り、帽子の庇を指で触る。

広報:「このたびの豪雨における排水問題につきまして、地域の皆さまにご心配をおかけしたことをお詫びします。現在、第三者技術者による是正指示に基づき──」晴奈:「“仮設の長期運用”を示す内部チャットが出ています。“仮設”の定義は、何日誰の名義で?」技術:「“仮設”とは恒久工の完成までの措置であり、期間は天候工期により──」晴奈:「期日は紙にありますか。停止条件は?」広報:「対策本部の協定に基づき、観測史上最大の八割で停止。にいたします」張が訳し、陳は僅かに顎を引いた。

別の記者:「出来形写真の流用は?」広報:「確認中です。撮影基準の統一を──」晴奈:「版管理b-03からb-04への変更で、“平均”が“最新”に言い換えられています。極値を含まない“最新”は、最新と呼べますか」会場が静まる。オンラインのAM担当が小さく咳払いし、英語で言う。「We will revise the wording and include extreme values in the baseline. Also, we will create a budget line for environmental buffers in our O&M contracts.」張は正確に訳した。「極値を基準に含め、O&M契約に保全費目を設ける、と」陳は顔を上げた。現場の一週間が、紙のに変わる感触。遠いが、接続した。

会見の終盤、広報が言葉を選び損ねた。「“省略可”の運用は、現場判断に委ねられることも──」晴奈:「“省略可”を誰がいつ何を根拠に現場へ降ろしたのか。名詞で答えてください」沈黙。広報:「判断記録を公開します」拍手は起きない。代わりに、たくさんのペン先が一斉に紙を叩いた。

会見後、廊下で張が晴奈に近づく。「島状林の再配置、通りました。を三か所、動かします」「ありがとう。が、やっと少し揃った」陳は窓の外の斜面を見た。朝の泥の色が、午後の光で薄くなる。不可逆はまだそこにある。だが、指一本ぶんだけ、曲がった

ここまでの要点(物語の芯) 黒塗りでも、時刻版管理の残滓が“決まる前に決まっている”構図を照らす。 “仮設”という言葉が常設化する危険。意味を協定停止条件で固定する。 GK/TK・信託・海外SPVの箱を描き、名義の移動と責任の移動を紙ので捕まえる。 第三者技術の是正指示は、今日撮る写真明確な寸法で現場を矯める。 再評価トリガー極値は、平均に流れる責任をに戻すための言語。 記者会見は“人の名”ではなく手続の名を引き出す場。言葉はになり、欄は現場の一週間になる。

第六部 和解の条件

第31章 台風の夜(視点:対策本部/市長・田所剛/現場監督・陳 浩然/記者・石田晴奈)

午後四時、対策本部のホワイトボードには、台風の進路図と流域ごとの降雨実測値が並んだ。観測史上最大の八割を閾値とする仮設停止条件は、午前中の降雨で既に七割五分に達している。「第2トリガー到達で、工区Cの仮設排水を停止。対策本部から文書と同時に無線合図判断書の条項番号は4-2-iii」危機管理監・小泉が読み上げると、各席でペン先が動いた。数字は人の迷いを短くする。

市長・田所はモニターに釘付けだった。地図上で、島状林が三つ、緑の斑点で示されている。杭を三メートル戻した位置に立つタグのIDを、技術班が読み上げた。「ID-18、ID-21、ID-27──残置確認」張 雪からの短いメッセージが端末に届く。

杭、動かしました/是正済/仮設停止準備田所は「了解」の二文字を返し、協定のファイルを開く。付属文書の極値定義、停止条件通学時間帯の出入り制限匂い管理。薄い紙が、人の手順を束ねる唯一の帯だ。

午後六時、雨脚が一段上がる。レーダーエコーの色が、黄から赤へ、赤から紫へ。「停止」小泉の声に重なって、無線が一斉に鳴いた。工区C、工区E、仮設排水の止水弁が閉じられ、越流堤へ水が回る。現場監督・陳 浩然は合羽のフードを片手で押さえ、二重バンドに換えたばかりのジョイントをもう一度目視した。堀内の是正指示に従って高さを上げた越流堤に、最初の薄い水の膜が乗る。「導流部、ライニング問題なし。点検口、開」若い作業員の声が震え、陳は短く返す。「写真今日。角度はテープ位置」雨の夜でも、写真は証拠だ。明日に回せば、**偽りの“出来高”**が紛れ込む余地が生まれる。

午後八時半、対策本部のスクリーンに「停電 3,200戸」。電力会社の担当が、配電線の開閉器操作計画を淡々と読み上げる。相手県とのテレビ会議では、砂防堰堤の操作基準が**“平均”から“極値”へ書き換えられ、画面上で電子署名が打たれた。「これで、上流の放流が数字**で繋がった」小泉の独り言に、田所は短く頷いた。

その頃、晴奈は対策本部の後方席で、判断書4-2-iiiのコピーに赤鉛筆を走らせていた。

「“仮設の停止条件”を紙にした夜」見出しの仮題をメモの端に書き、ふと手を止める。午前に受け取った匿名メールには、別現場の写真流用を謝罪する短い行があった。「現場を売りたいんじゃない。守りたい」守るために必要なものは、名前ではなく手続だ。晴奈は録音機のスイッチを入れ、広報席の声を拾い出す。

午後十時、母グマと子が、社員寮の裏手でカメラに映った。匂い管理線の石灰は、雨で薄れている。斎藤茜は、鳴らす順番をで設計した嫌悪刺激の計画表を開き、無線で合図を送った。「一番、二番、三番──間隔二十秒」金属音、クラッカー、ライト。母グマが一拍ためらい、最短ではない道を選んで斜面の島状林へ消える。子が振り向き、LEDの白に鼻先を向けた。茜は息を吐く。ではなくで教える作法が、今夜はうまく働いた。

日付が替わる頃、田所は一人、会議室の隅で協定書の署名欄を見返した。事業者の列、行政の列、自治会の列、学校の列。が増えるたびに、町の逃げ道が少しずつ減っていく。逃げ道がなくなるのは苦しい。だが、それは責任の地図が濃くなるということだ。外の雨音は、やや柔らいでいた。

第32章 連鎖(視点:自治会長・三浦辰男/土木会社社長・三上正義/教頭・井原泰成/生態学者・山科玲奈)

明け方、雨雲の尾が山を擦り、町は濡れた静けさに包まれた。自治会長の三浦は長靴のゴムを引き上げ、用水路へ向かった。水門のハンドルは硬い。濁りは薄い茶色に留まり、底の石が見える。「昨夜の逃げ溝が効いた」隣で若い衆が言い、三浦は頷いた。古い谷に水を返す、その判断に法の影が重く乗ることは知っている。それでも、今夜だけは現場の法が町を守った、と三浦は思った。

土木会社の三上は、出来形写真の撮影位置テープに靴を合わせ、シャッターを切った。“今日撮る”という堀内の言いつけが、指の骨まで染みている。泥に沈んだ足の感触は、数字では表せない。写真のEXIFには、位置情報時刻が刻まれた。紙の上でしか動かないスイッチが、今度は現場の手の中にある。

小学校では、井原教頭が匂い管理のチェックリストを持ち、給食室のスタッフと短い握手を交わした。「回収、午前へ前倒し。搬出口の水切り補強。は校門の外だけ」子どもたちは昨日の訓練どおりの列を作り、静かな足音で体育館に入る。恐怖は、手順に翻訳されていくほど、目に見えない筋肉になる。掲示板には「柿を早めに採る日」のチラシ。保護者のボランティアが二十人、時間ごとに名前を書いている。手を動かす速度が、少しずつ町に根づく。

山科玲奈は、夜通しのカメラトラップ映像から母グマと子のルートを抽出した。赤い点が島状林から島状林へ跳ぶ。谷の筋とパネルの列の隙間が、かろうじてコリドーに繋がる。「、生きています」玲奈はメールに添付して張に送った。返信はすぐに来た。

杭位置:確定/“島”三か所・“帯”一本、協定に明記玲奈は地図を閉じ、眠気に落ちる前に一行だけ手帳に書いた。「動くもの(雨・獣)を“線”に、動かないもの(杭・紙)を“帯”に」逆ではない。逆にすると、町はすぐに壊れる。

第33章 境界線の書き換え(視点:市長・田所剛/県庁職員・岩崎勇人/金融調査員・朝倉修)

台風一過の会議室は、濡れた紙の匂いがした。協定の原案に赤鉛筆が幾筋も走り、が増える。田所は宣言した。「“仮設”の意味を、日数停止条件で固定する。“省略可”の適用範囲には承認の署名を義務化。“軽微な変更”は累積再評価自動起動」岩崎が条文を読み替え、トリガー式の条件式をスクリーンに表示する。

「保全帯≧30m(島状林含む実効幅)/コリドー連結数≧3/調整池容量≧設計値(極値基準)×1.0」「“平均”→“極値”:O&M運用報告に保全費目緊急是正費写真撮影ログ」朝倉が頷く。「AM側(アセットマネージャー)は、運用報告新設を承諾。投資家便りにも**“保全費の見える化”を載せる。名義が動くお金の行き先**に、一行作れる」

田所は、掲示用の住民説明資料を見た。二項対立の旗を掲げるのではなく、手続の話を、図と数字で描く。わかりにくいが、わかりやすく嘘をつくより、わかりにくい誠実を選ぶべき時がある。「境界線で、責任線で、行動線で──三本の線を町に引く」田所の言葉に、誰も拍手はしない。代わりに、押印の音がぽつぽつと続いた。

第34章 コリドー(視点:生態学者・山科玲奈/獣害対策員・斎藤茜/現場監督・陳 浩然/通訳・張 雪)

翌週、仮設回廊(エコロジカル・コリドー)の実装が始まった。山科玲奈は、水の筋と獣の道が重なる低い鞍部を三本選び、間伐枝払いの手順をボードに貼る。

  • 残す木:実のなる樹(柿は里で対策。山側はミズナラ/ブナ

  • 抜く木:根が浅く法面を崩しやすい外来種

  • 足元で水を刻まずに受け、藁束で土の移動を抑える

  • フェンス基礎下石積み+細目金網くぐりを止める斎藤茜は、コリドーの入口に嫌悪帯の設計図を立てた。鳴らす順番照らす角度風下に置くもの・置かないもの。「匂いの地図を塗り替える作業です。で驚かせず、で“そこは嫌”を学習してもらう」ボランティアに来た高校生たちが、熊鈴を外して黙々と枝を拾う。を小さく、を大きく。学校で習った手順が、山でもそのまま効く。

陳 浩然は、杭再配置の図面を手に、島状林の角でメジャーを押さえた。三メートル戻した杭の位置に、新しい支柱番号を打つ。「不可逆を、指一本ぶんだけでも曲げる」陳が呟くと、張 雪が笑った。「あなた、最近その言い方が多い」「口に出すと、が少し柔らかくなる」張は、工程表の赤い線緑の点(島状林)を加え、コリドーの帯を上からトレーシングペーパーで重ねた。線と点と帯が、やっと同じ紙に乗る。

午後、玲奈はカメラトラップの新しい位置を決めるワークショップを開いた。自治会学校事業者猟友会。四者で地図を囲み、既存の偏見を一度テーブルに出す。「“クマはどこからでも来る”は感情、“どこから来やすい”は地形」玲奈はそう言って、等高線水系だけを残した白地図を広げた。子どもが指で鞍部を辿り、老人が裏道を語る。陳がドローン写真を出し、張が工程の空白時間を示す。最後に、を一つずつ配った。「鳴らす場所鳴らさない場所を自分で決めるための鈴です」小さな音が、山に溶けていった。

第35章 地域基金(視点:金融調査員・朝倉修/県庁職員・岩崎勇人/記者・石田晴奈)

地域基金の立ち上げ会議。テーブルの上には、基金規約案資金フロー図。朝倉がホワイトボードに四角を並べる。

  • 売電収益 → O&M(運営・保守) → 保全費目欄(新設)

  • 保全費目欄の一定比率 → 地域基金山の手当金

  • 基金の使途:保全帯の維持コリドーの更新学校の匂い管理出来形写真監査第三者技術レビュー

  • 理事構成:自治会2、学校1、事業者1、AM1、行政2、第三者1(回転制)「ここ」朝倉は**“透明性”と書いた四角に二重線を引く。「四半期報告を公開。欄は四つ。“費目”“単価”“実施日時”“写真・ログ”。写真主義にやられる危険(体裁の美化)に、“ログ主義”(時刻と位置)を重ねる」岩崎が付け加える。「基金は協定付属文書として位置づけ、再評価トリガーが動いたときは自動的に増額**。平均の季語は使わない」

晴奈は、机の片隅で説明記事の骨子をまとめた。

  • 再エネ賦課金の仕組みと地域還流の新設

  • GK/TK→O&M→欄→基金の一本線

  • 名義住所:お金の責任の住民票を書き換える

  • 監査第三者技術者地域監査人(住民有資格者)の二層記事は名詞で押す。善悪ではなく仕組み。会議の最後、田所が一言だけ言った。「“省略可”を、“省略不可”にする欄を作った、という話にしよう。伝え方の問題だ」

基金は渋い賛成で通過した。拍手は小さい。だが、椅子を引く音に迷いの減少が混じった。

第36章 沈黙の山(視点:記者・石田晴奈/生態学者・山科玲奈/通訳・張 雪/土木会社社長・三上正義)

秋のはじめ、山は乾いた匂いを取り戻した。カメラトラップには、母グマと子高い尾根を歩く姿が映る。里の柿の木は、ボランティアの手で早採りされ、匂いの地図から甘い点が消えた。社員寮のゴミ置き場は密閉型に替わり、コンビニの搬入時間午前へ移った。嫌悪帯は、鳴らしすぎず、鳴らさなさすぎず。で教えたは、の恐怖より長持ちする。

張 雪は、工程表から赤い線が一本消えるのを見た。是正工事が完了し、写真ログに埋まっていく。を晒されたあの夜から幾度も迷い、を守ることとを守ることの境界で泣きそうになった。いま、彼女の指は杭移動ログの行をなぞるだけで、胸の鼓動が落ち着く。陳 浩然は、不可逆という言葉を、あえて口にしない日を選ぶようになった。曲げられる余地を最初から図面に残すことが、現場の法法の現場へ近づけると覚えたからだ。

三上正義は倉庫で、ユンボの爪に手を触れた。逃げ溝を切った夜から、彼は写真今日撮ることをやめていない。**“一式”**で受ける癖は抜けないが、に数字を書き分ける習慣が根づいた。遅い現場は、少しだけ息がしやすい。「全部は経理にない言葉だ」経理の久保田に言われた一言が、今は好きだ。

山科玲奈は、最後のモニタリング報告をまとめていた。保全帯30m+島状林の実効幅、コリドー連結度嫌悪帯奏功率極値基準で設計された調整池は、秋雨を受け止めている。「論文にする?」助手が言い、玲奈は首を傾げた。「手順書にする。論文は山を救わない。手順は救う」助手は笑って頷いた。

晴奈は、町の高台から斜面を見下ろした。パネルの列はを映し、島状林の斑点が、影の布に刺繍のように残っている。彼女は原稿の最後の段落を打った。

「この町は、善悪で動かず、手続で動いた。“省略可”は、住民の欄と杭の位置で“省略不可”に変わった。雨は平均を読まず、クマは境界を読まない。だから私たちは、平均ではなく極値で、境界ではなく勾配で、今日ではなく“今日撮る写真”で、町を守ることにした。」

送信ボタンを押す前に、晴奈は録音機の中の高校生の声をもう一度聞いた。

「地面が震えて……」震えはまだ体に残る。被害者の名前は、いまも供養碑の前に刻まれ、鈴の小さな音が風に触れていた。彼女は取材ノートの最初のページをめくり、小さな二文字に鉛筆で斜線を引いた。省略可斜線の上に、もう一つ書き足す。省略不可紙という薄いものに、線は二度引ける。町という厚いものには、何度でも引き直せる。

夕暮れ。母グマと子が、尾根の向こうに消えた。沈黙は恐怖ではない。学習の合図だ。山は、何も言わない。言うのは、人と、水と、土と、だ。そして、紙に書かれたのひとつひとつが、山の上の小さな沈黙を、町の下の小さな安堵へと繋いでいく。

巻末:人物の“いま”

  • 石田晴奈(地方紙記者)連載「線の言語」で地方記者賞を受賞。名詞で書く姿勢は変えず、を増やす運動(情報公開・協定の公開版)を続ける。

  • 山科玲奈(生態学者)学術論文ではなく自治体向け手順書として、嫌悪帯の帯設計コリドー運用のマニュアルを公開。学校猟友会の共同講習が定番化。

  • 田所剛(市長)協定を条例に格上げ。平均ではなく極値で行政連携する県境協定を広げる。政治の言葉より条文の言葉を好むようになった。

  • 岩崎勇人(県庁職員)再評価トリガー自動起動運用を定着させ、写真・ログ撮影基準を県全体で統一。“軽微な変更”の審査に累積の欄を追加。

  • 張 雪(通訳兼調達)顔を晒された痛みを超え、工程表緑の点(島状林)と(コリドー)を描き込むことを自分の仕事と定める。杭移動ログは彼女の宝物。

  • 陳 浩然(現場監督)口癖の「不可逆」を心に置き、曲げる余地先に残す図面運用へ。“今日撮る写真”の徹底で、出来高と現実のずれを詰める。

  • 三上正義(土木会社社長)全部は経理にない」を社訓に、一式明細へ。遅い現場の価値を若い監督に伝え、逃げ溝の判断を紙に残すようにした。

  • 朝倉修(金融調査員)O&M保全費目欄地域基金の設計で、名義責任住所を揃える作法をまとめる。投資家便りの“山の手当金”は短いが効く。

  • 久保田千春(地元下請の経理)写真の再利用を止めた最初の経理として、撮影ログ監査の民間マニュアルを作成。**“今日撮る”**のステッカーを社内に配った。

物語の芯(最終) (境界・杭)と(行動・匂い)と(手続・責任)を重ねると、町は壊れにくくなる。 平均は雨を止めず、境界は獣を止めない。だから、極値勾配で考える。 仮設時間で定義し、停止条件で固定する。 写真今日撮り、ログで支える。“見える化”は美化になりやすいから、時刻と位置で補強する。 省略可は、住民の欄杭の移動省略不可に変わる。 そして、沈黙は敗北ではない。学習の合図だ。

 
 
 

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