2025年秋冬パリファッションウィーク(パリコレ)に合わせて発表された各ブランドの新作メンズコレクションについて
- 山崎行政書士事務所
- 2025年2月13日
- 読了時間: 6分
1. 技術的アプローチの考察
1-1. テーラリングと素材革新
ランバン(LANVIN)
新アーティスティックディレクターのピーター・コッピングによるデビューコレクションでは、ランバンの歴史的アイコンであるエレガントなテーラリングを軸に、肩周りやウエストの曲線を強調したカッティングが特徴的。フォーマルさを保ちつつ、アウターやジャケットにウールやカシミヤなど上質素材を採用し、軽量化と柔軟性を追求しているのが目立ちます。
オーラリー(AURALEE)
岩井良太の独自開発素材が持ち味。繊細なウールやコットンを特殊な紡績方法で仕上げ、生地表面をフラットかつ柔らかく保つ手法が際立ちます。今シーズンはレイヤリングを意識したアイテムが増え、薄手のニットと厚手のアウターとの組み合わせで異なるテクスチャーを見せることで、極端な寒暖差にも対応できる機能性を打ち出しています。
シュタイン(ssstein)
パレ・ド・トーキョーで開催されたショーでは、ロロ・ピアーナやオルメテックスといった海外高品質生地とのコラボレーションに加え、日本製オリジナル生地を活用。ウールカシミヤビーバーをリバー縫製(表裏両面が一枚の生地のように仕立てられる手法)で仕上げたコートやジャケットが注目されました。シームを極力フラットに処理することで、ミニマルかつ繊細な仕上がりを実現。機能面と審美性の両立が特徴です。
1-2. カジュアルとストリートのハイブリッド
NIGO® × ファレル・ウィリアムス(ルイ・ヴィトン)
LVMH傘下でのメンズコレクションは、ハイブランドがストリートとの融合をさらに推し進める重要な場。高級素材や伝統技術をベースとしながら、スニーカーやデニムなどカジュアルアイテムをプレタポルテに落とし込む。22世紀を見据えたような近未来感と、NIGO®やファレルが持ち合わせるストリート・カルチャーの空気感を絶妙にミックスさせています。
キディル(KIDILL)
末安弘明が主宰するキディルは、パンクやグランジの要素を取り込みつつ、和の感性をリミックスするブランドとして台頭中。今シーズンはグラフィティ風パターンやダメージ加工に加え、シャツやパンツのシルエットをややゆったりめに取るなど、アンダーグラウンドなエッジと快適性を両立する工夫が見られます。
1-3. コレクション開催の変化と多様化
ジャックムス(JACQUEMUS)の復帰
5年ぶりに公式スケジュールに戻ってきたジャックムスは、ユーモラスなカッティングや大胆なカラー使いで人気を博してきました。今シーズン、パリの伝統あるランウェイに“南仏の軽やかさ”を再度持ち込み、上質素材ながらリラックスしたシルエットを打ち出すと予想されます。
エス・エス・デイリー(S.S.DALEY)の中止
新進ブランドとして注目されていたロンドン発のS.S.DALEYがショー直前で中止に。原因は様々な憶測があるものの、コレクション発表そのものが流動的になりやすい現在のファッション界の一面を映しています(資金調達の難しさ、スケジュールの過密化、政治的・社会的影響など)。
2. 背景にある哲学的アプローチ
2-1. 伝統と革新のダイナミクス
パリファッションウィークは、伝統的メゾンから新興ブランドまでが集まる大舞台。そこでは、**「伝統をどう再解釈し、未来へ接続するか」**が常に問われています。
ランバンの復帰: 125年以上の歴史を持つフランス最古級のクチュールメゾンが、ピーター・コッピングという新たな舵取りを迎えることで、古典的エレガンスをどう現代の感性に再生するかがテーマ。
シュタインのアプローチ: 高品質かつ伝統的なファブリック(ロロ・ピアーナなど)と日本的ミニマリズムを組み合わせ、伝統と先端技術の交点を探る姿勢は、グローバル化時代における「素材の物語」を再定義しているようにも見えます。
2-2. ファッションとコミュニティ:コレクションの存在意義
今シーズンは、中止や復帰が相次ぐことで、**「ショーという場の存在意義」**にも改めて注目が集まりました。
実物の体験価値
映像やバーチャルでプレゼンテーションが可能な現代においても、実際に会場で「空気」「音」「温度」を含めて服を見る体験は、圧倒的なライブ感とイメージ喚起力をもたらします。
コレクション中止の意味
S.S.DALEYの直前中止は、資金やロジスティック、政治情勢など多くの要因がショーに影響を与えることを象徴。ファッションが単なる“服”の発表ではなく、大きなコミュニティや経済、社会構造と不可分であることを再確認させる出来事です。
2-3. オリジナリティと「場所」のアイデンティティ
パリという“舞台”
世界四大ファッションウィークのひとつであるパリは、歴史や権威と革新性の両輪を求められる場所。日本やイギリスなど世界各地のデザイナーがパリという場を選ぶのは、そこに「新旧を裁定する審判」のような空気感が存在するからともいえます。
グローバル化と地域性
オーラリーやキディル、シュタインといった日本ブランドの躍進が目立つ一方で、ロンドンやミラノ、NYの特徴も交錯し、コレクションスケジュール自体がボーダーレス化しています。デザイナーたちは、地域固有の職人技術や素材(日本産のオリジナル生地、イタリアの高級ウールなど)をグローバルな文脈で披露し、新たな価値づけを試みています。
3. 今シーズンの行方
テーラリング・素材革新・ストリートとの融合各ブランドがこぞって高品質ファブリックを取り入れ、そこへ独自のパターンメイキングを重ねる流れは2025年秋冬も健在。クラス感と快適性を同時に満たす試みが、技術的な観点では大きな趨勢といえます。
復帰・中止に見るファッションの流動性ランバンやジャックムスの復帰は、それぞれのブランドが持つ“DNA”を世界の観客に再確認させるチャンスとなり、同時にその解釈をアップデートする場となります。S.S.DALEYの中止は、逆説的にファッションの儚さや流動性を映し、コレクション開催がいかに多面的なリスクと意義を伴うかを示唆しています。
哲学的意味:コミュニティ・ライブ性・アイデンティティパリコレは、単に新しい服を発表するだけでなく、何を伝え、どのようにコミュニティに対してメッセージを発信するかという場でもあります。そこで提示されるのは、**「服とは何か」「伝統と現代の価値はどう繋ぐのか」「グローバル時代における地域の意味」**といった本質的問いに他なりません。
最終的に、2025年秋冬パリコレでは「素材の進化」「テーラリングの多様化」「ショーの形式(開催/中止)を通じたメッセージ性」が一層際立っています。それぞれのブランドが抱える美学・文化的背景・経済的要素が交差するなかで、ファッションは技術と哲学が同時に進行する複合的現象として機能しているのです。このシーズンの動きは、ファッションが社会やコミュニティとどのように共鳴し、また自らをどのように変容させていくのか――その大きな指標となるでしょう。





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