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火の街

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月18日
  • 読了時間: 5分



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プロローグ:鈴鳴りの空

静岡市庁舎の一室、夕刻。赤い夕日が差し込む窓辺に立つ若き実業家山崎 亮介が、会議資料を手に深く息をつく。「カジノ誘致なんて、狂ってる…」市の財政難を何とかしようという市議会の“奇策”――カジノを呼び込んで税収を得る計画が進められているらしいと聞き、山崎は混乱していた。誰がこの安直な策を推し進める? その背後には何者がいて、何を狙っている?空は茜色に染まり、南国めいた温暖な空気が微かに漂う。何かが燃え立つような予兆を孕みながら、物語は静かに幕を開く。

第一章:誘致計画の衝撃

数日後、静岡市議会が大々的に「カジノ誘致プロジェクト」の発表を行う。テレビカメラが映す壇上で、主導するのは市議会与党のリーダー滝沢。派手な身振りと言葉で「カジノこそが我が市を救う」と高らかに宣言する。市民の間でも賛否が二分。「新しい娯楽施設で雇用が生まれる」「犯罪が増えるのでは」――意見は真っ二つに割れていく。山崎 亮介は、青年実業家として静岡県内で多角経営しており、地元経済の再生には関心があるものの、カジノ導入には嫌悪感を抱く。理由は、かつて家族がギャンブルに苦しめられた過去があるから。 「こんな場所をこの街に作らせるわけにはいかない」と決意を固めるが、彼の胸にはまだ見えない大きな暗雲が迫っていた。

第二章:濁る水面—政治と闇社会の香り

山崎は知人の市議や地元企業を訪ね歩き、「カジノ推進の裏側で誰が得をするのか」を探る。すると複数の人物が口を噤(つぐ)む。「話さないほうがいい」「危険だよ、深入りは」――何かがあるのか?さらに飲みの席で噂を耳にする。「暴力団が利権に絡んでいるらしい」「滝沢の周囲には裏社会がうごめいている」山崎は背筋が震えた。政治家と暴力団の癒着…… 彼らはこのカジノ計画で巨額の利得を狙っているのか。彼が敬愛する地元の老企業家がひそかに呟く、「正々堂々と戦わないとこの街は闇にのまれるぞ」と。その言葉が胸に深く刺さり、山崎の闘志に火をつける。

第三章:賛成派と反対派の火花

市議会ではカジノ誘致の法整備を急ぐ動きが進み、滝沢が「静岡を世界に誇る観光都市にする」と豪語。賛成派議員が拍手喝采する一方、反対派議員は少数で押し切られそうだ。反対派の中心人物岩田議員が山崎に「あなたのような民間の声が欲しい。このままでは押し潰される」と懇願。そこで山崎は反対運動を本格化させ、市民集会を開く。**「税収を増やすことは必要だが、カジノで街の魂を売るのか?」**と熱い言葉で訴え、聴衆の心を揺さぶる。しかし、その帰り道、彼の背後に怪しい影――暴力団関係者が現れ、無言のままナイフをちらつかせる。 「余計なことをするな」と脅す眼光。山崎は鋭く睨み返すが、血の気が凍る。

第四章:暴力の色合い

その夜、山崎の経営するオフィスが放火されかける事件が起こる。 幸いにも大きな被害は出なかったが、脅迫メッセージが残されていた。「口を慎め。さもなくば、この街が火に包まれる」まるで戦場の序曲のようだ。警察に通報しても、何の手掛かりも得られず、背後に暴力団がいるのは明白。山崎は一瞬挫けそうになる。だが、「ここで退いたら街は真っ暗な闇に呑まれる」と自らを奮い立たせる。「多少の危険を冒してでも、俺はこの計画を止める」

第五章:カジノ賛成派の奥底—滝沢の牙

滝沢市議がメディアに積極的に登場し、カジノのメリットばかり語る。「暴力団の介入? 無い無い、誤解だ」と笑い飛ばす。実際には、彼と暴力団系フロント企業が親密なつながりを持ち、シノギとしてカジノ事業に参入する画を描いている。 つまり、大きな資金洗浄の場を作ろうとしているのだ。そんな滝沢が、ある酒席で山崎に直接声をかけてきた。「お前もこの計画に乗らないか? ビジネスチャンスだぞ」と。山崎は即座に拒否。「街を壊す犯罪者たちと手を組む気はない。あなたの本性は分かっている」と言い放ち、相手の怒りを買う。轟々と燃えるような滝沢の視線。「後悔するなよ」と低く呟くその声に、山崎は確かな恐怖を感じる一方、意地でも屈するものかと拳を握る。

第六章:複雑な反対派の私利私欲

しかし一方、反対派の中にも清廉とは言い難い人々がいる。 ある市議は「カジノを潰すことで自分のパチンコ業界の利権を守りたい」という私利私欲を隠しており、これを山崎は偶然知って落胆する。また、住民運動のリーダーが寄付金を集めているが、その資金が正しく使われているか不透明という噂も。**つまり、山崎の敵は暴力団や政治家だけでなく、反対派の“偽善”**とも言える裏事情とも戦わねばならない。街中にはあらゆる欲と利権が絡み合い、混乱が深まる。

第七章:炎の決戦—最後の市議会

カジノ誘致案の最終決定が迫る市議会。 街もメディアも緊迫するなか、山崎は反対派や一部ジャーナリストを巻き込み、暴力団と滝沢議員の癒着証拠を探し当てる。その証拠を手に議会の公聴会で**「これが街を焼き尽くす火だ。カジノは利権の温床にすぎない!」と突きつける計画を立てる。しかし前夜、暴力団が山崎の車を追いかけ銃撃する事件が起きる。かろうじて山崎は逃れ、撃たれた仲間が負傷。“火の街”**と化す一歩手前の緊張が走る。山崎は痛む心を抱えながらも、最終議会の壇上に立ち、カジノ計画の深部にある闇を告発。 記者たちがシャッターを切り、傍聴人が騒然となる。 滝沢は歯ぎしりしながら否定するが、証拠映像がスクリーンで映され一気に劣勢へ。

エピローグ:失墜と希望のかなた

結果、カジノ誘致案は多数決で否決されることに。滝沢は利権疑惑で逮捕され、暴力団も警察の捜査対象となる。街中の過熱は徐々に冷めていく。しかし街の財政問題は解決していない。 むしろカジノを失ったことで、当面の財源策が見えなくなるという不安もある。それでも山崎は「カジノは街の魂を奪うだけ。俺たちにはもっと誇り高い方法でこの静岡を立て直す道があるはずだ」と語り、周囲の仲間たちに微笑む。血塗られた幕の後、薄曇りの空の下、黒い焦げ痕が残る倉庫を見上げながら、山崎は**“決して火に焼かれない街”**を目指す思いを確かめる。ささやかな風が流れ、街の人々はようやく平穏へ一歩踏み出す。だが同時に、新たな戦いがいつ始まるか分からない。物語は、遠く駿河湾を臨む景色に夕陽が沈むシーンで幕を閉じる。街は火を免れ、静かに夜へ向かう——。

(了)

 
 
 

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