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『連鎖する崩壊の地平 ―破局の大地で繰り広げられる攻防―』

  • 山崎行政書士事務所
  • 4 時間前
  • 読了時間: 16分


序章 波打つ脅威

「南海トラフの切迫度が上昇」「富士山の噴火兆候を示す火山性微動の増加」――。

防災庁危機管理官の佐々木涼(ささき・りょう)は、日々更新される観測データを睨みながら、嫌な胸騒ぎを覚えていた。「ここ数日の群発地震、富士山周辺の急激な傾斜変動……。首都直下の可能性すら絡んできて、いよいよ何かが起きるんじゃないか?」在来のマグニチュード予想図がまるで嘘のように危険値を増しており、専門家の間では「異例の複合災害が起こりうる」という声が出始めていた。しかし、このときの佐々木は、まだ自国の未来に待ち受ける破滅と侵略が、これほど同時多発的に起きるなど想像すらしていなかった――。


第一章 夜半の大地鳴動


1. 南海トラフ巨大地震

五月末の深夜、四国沖を震源とするマグニチュード9クラスの超巨大地震が発生した。防災科学技術研究所のシステムが警報を検知してから、津波警報が出るまでわずか数十秒。近畿・東海・四国太平洋岸には超短時間で“大津波警報”が連続発令される。「観測点で10メートル超を検知……こちらでも6メートル、沿岸部に到達!」高知、和歌山、三重、徳島――。夜の闇を切り裂くサイレンが鳴り響く中、逃げ遅れた車両が次々と海中に呑まれ、堤防を乗り越えた津波が港湾施設を押し流していく。ビルの屋上に駆け上がる人々が携帯電話で助けを求めるも、通信混乱が始まり繋がらない。さらに道路崩壊、鉄道橋の落下、火災の延焼が各所で同時に起こり、被災地は生き地獄と化す。

2. 首都直下の連動

南海トラフの誘発なのか、その直後、東京湾北部を震源とする強烈な地震が首都を襲った。マグニチュード7クラスと推定されるが、都心南部では建物倒壊が続発。地下鉄や高速道路が寸断され、大田区や川崎市は激しい液状化で道路がぼこぼこに変形する。工場地帯からは火の手が上がり、ガスタンク火災が暴発。消防隊は人手不足の上に道路も崩れており、初動すらままならない。ラジオからは「現在、東京23区南部で大規模火災多数発生。消火は困難……」と絶望的なニュースが流れ、帰宅困難者が都心にあふれかえる。

3. 富士山噴火の兆し

更に悪夢は連鎖した。富士山で確認されていた火山性微動が急激に活発化し、地震翌日の明け方、マグマ噴火が開始。山頂火口や側火口から溶岩が流れ出し、さらには大量の火山灰を噴出。「上空の偏西風に乗り、灰が関東甲信一帯へ広がっています。航空機の発着は全面停止、東名高速も厚い灰で通行不能に……」次々と伝えられる報告はまさに“複合災害”の一言。国は大規模災害対策本部を設置するが、首都機能がマヒし、災害対応自体が機能不全に陥る。この頃から、自衛隊は救援・救助へ大動員され、“全国的な防衛能力”に余力を割けない状態となっていく――。

第二章 陰謀の蠢き

1. 北朝鮮の強硬化と韓国侵攻の準備

ここで海外に目を向けると、北朝鮮が不気味な動きを見せ始めていた。「日本が壊滅的ダメージを受け、防衛力が機能しないのであれば、我々は半島統一に乗り出せる」最高首脳がそう豪語し、軍の実力者らも日本近海への弾道ミサイル発射準備を急ぎ、さらに韓国境界線付近に部隊を集結させる。日本と米国が災害対応で混乱している今こそ、韓国を軍事制圧し一気に統一を成し遂げる――壮大な野望を抱いたのだ。

2. 中国の台湾侵攻計画

一方、中国。「台湾統一は時間の問題。日本の防衛力・米軍基地が著しく弱体化する今こそ、台湾へ電撃侵攻を敢行し、米国の干渉を押さえ込むチャンスだ」人民解放軍の海軍・空軍は福建省沿岸へ大々的に艦艇・ミサイルを移動。既に台湾侵攻計画を数年かけて練っており、今まさに開戦の号令をかけようとしている。台湾側が強力に抵抗するだろうが、外援の要である日本・在日米軍がこの大震災で身動き取れまいという読みだ。

3. ロシアによる北海道侵攻を検討

さらにロシア極東軍も動き出す。「千島列島から一挙に南下し、北海道を奪取する。北方領土問題を一気に解決し、極東の戦略的足場を固めるのだ」戦力をウクライナ方面に割いているはずのロシアだが、予想外の大震災によって日本側に迎撃余力がないと判断。一部の精鋭艦隊と空挺部隊を投入すれば“北海道制圧”が可能と踏む。

このように、日本が内憂(大災害)に圧倒されるさなか、三つの大国が同時侵攻の火蓋を切ろうとしていた――。





第三章 北朝鮮の弾道ミサイル“嵐”


1. 現代的ミサイル戦のリアル

災害後、真夜中の日本海沖――。北朝鮮の移動式発射機から複数の弾道ミサイルが同時発射される。海上自衛隊はイージス護衛艦「こんごう」型・「あたご」型の2隻がそれを探知するも、カバーすべき領域が広大なうえ、半数以上の護衛艦が地震被災地への支援活動に回されている。レーダー画面に示される複数の軌跡に、艦橋のオペレーターが焦る。「目標数、6以上。高度・速度ともに高速、もしかすると分離式の多弾頭(MIRV)か……!?」

イージス艦からSM-3迎撃ミサイルが発射される様子は夜空に閃光を描く。しかしその後方支援を行う僚艦が位置取りを変えざるを得ず、データリンクでの追尾が間に合わない。この混乱状態が、北の“飽和攻撃”を許してしまう。特に困難なのは、日本列島に大量の地震被害が出ていて防空指揮が部分的に麻痺していること。PAC-3配備部隊も津波や火災で破損した基地が多く、配備がままならない。「……迎撃できたのは2発のみ。他は上空通過、もしくは太平洋へ落下の模様」通信士が報告するが、東京近郊への落下可能性もぬぐえず、Jアラートが鳴り響く。電源を失った首都圏の避難所ではどうにもならない人々が混乱に陥る。

2. ミサイル警戒下での韓国侵攻

北朝鮮は、この“ミサイル雨”を背景に韓国国境線を突破。中距離砲・ロケット砲の激しい砲撃で非武装地帯を一気に突き抜け、装甲車両が高速道路を進軍。韓国軍はこれまで日米との情報共有を期待していたが、日本は災害対応で通信混線、米軍基地も被災対応に追われて緊急出撃が遅れている。38度線付近の火線は、夜空を裂く砲弾の閃光で照らされ、韓国側の前線基地が次々と破壊される。川口開示作品さながらに、対戦車ミサイルや自走砲の砲弾が飛び交い、韓国装甲車の一部が黒煙を上げて炎上。撤退が間に合わず、兵士たちが塹壕に逃げ込む様が映し出される。臨津江の橋梁を防衛する韓国軍工兵隊は橋を爆破し北の進撃を遅らせようとするが、指示系統の乱れで失敗、敵戦車が続々と南下していく。数日で首都ソウルが砲撃射程に入るのも時間の問題だ。


第四章 中国軍の台湾海峡猛攻


1. 大規模ミサイル先制攻撃

中国人民解放軍は台湾侵攻開始と同時に、東風(DF)シリーズの短・中距離弾道ミサイルを台湾全土の空軍基地・レーダーサイト・港湾に一斉発射。美しい夜の海峡上空が、ミサイルの尾を引く光跡で覆われる。レーダーに示される数十の脅威目標に、台湾防空隊は「防ぎきれない……」と呆然となる。地上配備のパトリオットPAC-3や天弓ミサイルが必死に迎撃するが、あまりに数が多い。「被弾! 台中空軍基地が大きく破壊された……!」「高雄港もクルーズミサイル直撃!」通信が錯綜し、台湾軍幹部が苦悶する。次の瞬間、沿岸部に人民解放軍の揚陸艦隊が近づく報告が入る。戦闘ヘリや無人機が先行して侵入し、防空陣地を叩き続ける。

2. 海上戦:ステルス艦とミサイル戦

台湾海峡上では、中国海軍の052D型駆逐艦や055型大型駆逐艦が、多数の艦対空・艦対地ミサイルを搭載して進撃。台湾海軍のフリゲート艦・コルベット艦が反撃に出るが、電子戦妨害と圧倒的ミサイル飽和攻撃に苦しめられる。「艦橋へ! 敵艦からの対艦ミサイル複数接近!」台湾艦のCIC(戦闘指揮所)では、オペレーターが急ぎ迎撃指示を出すも、次々に飛来する超音速ミサイルが近接防御火器(CIWS)をかいくぐり、一隻のフリゲート艦に命中。爆発と共に艦が大きく傾き、黒煙を上げて沈んでいく。一方で台湾側も雄風III型など新型対艦ミサイルを発射、少数ながら052D型駆逐艦に命中させ火災を起こす場面がある。互いにミサイルを撃ち合う“かわぐちかいじ的リアル海戦”が海峡全域で展開されるのだ。しかし、総じて数的優位を誇る中国軍に押し込まれ、台湾艦隊は後退。制空権・制海権を大きく損なわれることになる。

3. 上陸戦:大陸からの押し寄せ

最終的に、中国の強襲揚陸艦群が複数のビーチに上陸部隊を投下。陸上では台湾陸軍が対戦車ミサイル・地雷で抗戦するが、湾岸の制空権を失った状態で上陸機動を止めきれない。空挺部隊までもが空港付近に落下傘降下を敢行し、着々と要衝を確保していく。台湾のテレビには、市街地に人民解放軍の装甲車両が突入し、住民が逃げ惑う様子が映し出される。ミサイルや砲撃で破壊されたビルの残骸が散乱、まるで終末の光景だ。国際社会は驚愕するが、すでに日本は地震被災で何も対応できず、米国も在日米軍基地の機能が減殺されたため動きが鈍い。世界はただ呆然と見守るしかないのか――。


第五章 ロシア極東軍の北海道侵攻


1. 千島列島からの奇襲

南海トラフ震災により、本州~九州の太平洋側は壊滅し、首都直下も重なり全国的救援が最優先。自衛隊は防衛出動態勢をとる余力が少なく、北海道の北部方面隊も被災地支援に多数が割かれている。そこを狙い、ロシア極東艦隊が千島列島を経由して北海道東部へ侵入する作戦を発動。まず国後・択捉に空挺部隊とミサイル部隊を配備し、“北方領土はロシアの完全支配下である”と誇示。同時に海軍陸戦隊が中小型揚陸艦で根室周辺を奇襲上陸する。

2. 根室沿岸の攻防

夜明け前、根室半島沖。ロシアのステルス型コルベットから放たれた対地巡航ミサイルが港湾施設や陸自駐屯地へ着弾。轟音とともに倉庫や弾薬庫が炎上し、わずかに駐留していた陸自が混乱に陥る。陸自普通科部隊は地震で崩れた道路や建物を片付けている最中であり、迎撃態勢など整っていない。わずかに拠点を守ろうとするが、ロシア軍の小型無人機が上空を飛び回り、陸自隊員の位置をリアルタイムで把握。迫撃砲弾が正確に降り注ぎ、数名の戦死者が出る。そこにロシア海軍陸戦隊の揚陸艇が上陸。根室港を占拠すると、機関銃や対戦車ミサイルを展開して支配地域を急速に拡大する。かわぐちかいじ作品さながらの細密な市街戦が繰り広げられ、漁協や商店街の角を挟んで銃撃が交錯。陸自は限定的な装甲車で応戦するが、既に指揮系統が乱れ撤退を余儀なくされる。

3. 航空支援の欠如

航空自衛隊は千歳基地や函館空港でスクランブルを試みるものの、首都直下や南海トラフの影響で燃料や弾薬補給が滞っているうえ、滑走路の一部に亀裂が生じている。「出撃機数が足りない……!」現場パイロットたちは歯噛みする。稼働可能なF-15JやF-2がわずか数機、海上偵察すら手薄。ロシア艦隊がオホーツク海から出てくるのを阻止できず、結局根室が丸ごと占拠される形になる。

ロシア軍司令部はメディアを通し宣言する。「日本政府が北方領土返還を要求し続けるならば、我々は北海道東部をも軍政下に置く。日本国内が大災害で機能停止状態の今こそ、これは正当なる防衛行動である」





第六章 瓦解する日本防衛


1. 多正面防衛の崩壊

日本は同時発生した天変地異(南海トラフ、首都直下、富士山噴火)による未曾有の被害に加え、北朝鮮・中国・ロシアの三正面侵略に晒される。自衛隊統合幕僚監部の地下指揮所は、断続的な通信障害に悩まされながら次々と入る悲惨な報告を受け止めるだけで精一杯。「九州北部にも北朝鮮ミサイルが飛来し、レーダーサイトを破壊」「沖縄方面では在日米軍基地が地震被害や物資不足でフル稼働できず、中国の台湾侵攻を止めるのが困難」「北海道へは増援を送り込めず、道東が制圧された……」幹部らは、どこに戦力を集中すべきか頭を抱えるが、そもそも救難・避難誘導・物流確保など国内支援だけで手一杯。「ここまでか……」と呟く者まで現れる。

2. 米軍の動向

通常なら日米安保により米軍が積極介入を期待されるが、在日米軍基地自体が地震・火山灰により損傷し、燃料や弾薬も不足。さらに米国内でも「これだけ巨大災害で日本が崩壊しているなら、軍事的には消耗戦になるだけ」と慎重姿勢が強まる。それでも限定的に空母打撃群が南西諸島周辺まで来る動きはあるが、北朝鮮の核恫喝、ロシアとの直接対決への警戒など、すべての戦域に対応する余力はない。台湾救援韓国防衛を優先せざるを得ず、北海道を守る余裕までは回らない。


第七章 戦場化する極東:リアルな戦闘描写


1. 朝鮮半島の砲火

ソウル北方40kmの前線地帯――夜明け。韓国軍のK2戦車小隊が、燃え盛る村の外れで陣地を固めていると、北朝鮮T-62改良型戦車群が道路上に姿を現す。側面に回り込もうとする韓国歩兵の狙撃に対し、北の戦車が砲塔を回転。ドンッ!――鋭い炸裂音とともに建物の壁が吹き飛び、火柱が上がる。「敵戦車、まだ数が多い……!」K2車長が照準手に声を張り上げる。T-62改は旧式でも多数で波状攻撃をかけてくるため、一瞬の油断も許されない。制空権はほぼ北のミサイル封鎖で奪われ、韓国空軍機はなかなか援護に来られない。接近してくる敵戦車の側面を狙い、K2の120mm砲からAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)が火を噴く。命中弾を受けたT-62が煙を吐き停車。だが、別のT-62がK2の位置を特定し反撃、砲弾が近距離で路面を穿ち、破片が車体に叩きつけられる。衝撃で車内が揺れ、隊員が悲鳴を上げる。韓国軍は必死に耐えつつ後退を図るが、ソウル郊外の高速道路を北戦車が次々に突破し、市街への道が開かれようとしていた――。

2. 台湾市街地戦

台北近郊。空挺降下した中国空挺旅団が、市街を縦横に制圧していく。「勇士突撃! 敵のバリケードを破壊せよ!」中国軍分隊がビルの陰からドローンで偵察し、台湾守備隊の機関銃座を確認。瞬時にグレネードランチャーを発射し、コンクリ壁を破壊する。一方、台湾側歩兵も対戦車ミサイルを改良し、市街地に突っ込む中国装甲車を狙撃。狭い路地で車体が身動きできずに炎上し、車内から出てくる兵士たちを狙い撃つ。「我々は祖国を死守する!」台湾兵が血まみれになりながら叫ぶが、圧倒的な火力と数で迫る中国軍。ビル屋上からのスナイパー射撃、地下道から投擲される即席爆弾……。市街地は瓦礫と火炎に包まれる壮絶な地獄絵図だ。

3. 北海道根室市街の戦闘

ロシア海軍陸戦隊が上陸後、わずかな数の陸自と地域警察が抵抗。漁協倉庫を拠点にした陸自普通科小隊は、軽装備ながら市街地戦で粘る。塀の向こうをじわじわ進むロシア兵の靴音が聞こえ、呼吸を殺して待つ。手榴弾を投げ込まれた瞬間、小隊長が「逃げろ!」と叫ぶが1秒遅れ、破片が飛び散り数名が倒れる。「くそっ……ロシア製自動小銃の連射が激しい!」コンクリ壁を突き破る弾丸がホバリングする無人偵察機の映像で陸自の動きを捕捉している。地の利は陸自にあるはずだが、火力と情報戦で上を行くロシア軍の包囲網を突破できない。やむなく後方へ撤退命令。「けが人を抱えろ、早く!」 倉庫を離れた途端、ロシアの装甲兵員輸送車が道路を封鎖。機関砲が唸り、陸自がまた数名倒れ――。夜明け頃には根室市街の大半がロシアの手に落ち、防ぎきれず陸自隊は撤退せざるを得なくなる。

第八章 崩壊と国際情勢の転換

1. 連鎖する攻撃と核の脅威

日本が陸海空の防衛能力をほぼ失ったことを見て、北朝鮮はさらに弾道ミサイル発射を繰り返す。「都市を狙う核攻撃も辞さない」という恫喝により、被災で疲弊しきった日本は途方に暮れる。「どうか核だけは……」日本政府は国連や米国に懇願するが、米軍も南西方面と在韓米軍増援で手一杯。

2. 米軍の遅い介入

やがて世界からも「あまりに悲惨だ」との声が高まり、米軍がようやく本格的介入を模索し始める。空母艦隊が東シナ海へ向けて進出し、中国の台湾制圧を阻む準備を整えるが、それまでの間に台湾は主要都市をほぼ中国に取られ、失陥寸前となる。韓国では米韓連合軍が北の進撃を止めにかかり、激戦で大量の死傷者が出るが、北は核カードをちらつかせて“取り返しのつかない”大戦を回避すべく米軍も慎重に進めざるを得ない。

3. ロシアの道東拠点

北海道東部に進駐したロシア軍は、いきなり札幌や函館方面まで踏み込む余力はなく、根室や釧路近辺を確保し「ここを我々の保護領とする」と世界に宣言。国際社会はロシアの露骨な侵略と非難するが、いま世界が最も注目しているのは台湾と韓国戦線であり、北海道への救援までは回らない。地元住民は避難がままならず、陸自のゲリラ的抵抗が散発化。多数の難民が本州方面へ移動したくとも、災害で交通が崩壊しており身動きが取れない。

第九章 憂国の抵抗

1. 自衛隊・警察の奮闘

壊滅的災害と複数侵攻の前に、国としては崩壊寸前。それでも一部の自衛隊員や警察、消防団員などが意地を見せる。

  • 北海道北部方面隊の陸自がゲリラ戦:山間部の林道に地雷を仕掛け、ロシアの補給車列を待ち伏せ。軽装甲機動車や89式小銃を駆使し、奇襲をかけては即撤退する。ロシア軍は苛立ち、住民への威圧を強化。

  • 九州では海自の護衛艦が北朝鮮潜水艦をソノブイで探知し、対潜ロケットで攻撃。潜水艦に一撃を与え浮上を余儀なくさせる場面も。

  • 首都圏の警察・消防は壊滅的火災や建物崩壊の中、多くの市民を避難させつつ、北のミサイル警報が鳴れば地下へ誘導……。地獄のような環境下でも必死で人命を救う。

2. 世界の人道支援

国連や各国NGOも、日本への緊急支援を派遣するが、空港港湾が壊滅・機能不全で輸送困難。物資も足りず、戦争状況下の北海道や九州沿岸には入れない。海外メディアの特派員は台湾市街地や朝鮮半島でも悲惨な映像を撮影。SNSを通じ世界に訴える。「なぜこんな破局が同時に起きるのか。人類はこれを止められないのか!」

第十章 緩慢な停戦と終わらぬ惨禍

1. 長期化する戦線

数週間が過ぎ、さすがの北朝鮮も韓国軍・米軍の反撃と国際世論圧力で進軍が止まりつつある。首都ソウルこそ砲撃被害を受けたが、最終的に大規模核戦争は回避し、停戦交渉の場に引きずり出される。中国も台湾を完全制圧するにはゲリラ抵抗や国際経済制裁が激しく、いったん“台湾新政権”を樹立する形で停戦を図る。ロシアは北海道の一部を不当に占拠し「ここはロシア管理下」と宣言した状態で戦闘停止に向かい、国際社会はやむなく既成事実化を黙認する空気さえ漂う。

2. 日本の戦後復興――試練の始まり

一方、日本国内では南海トラフ・首都直下・富士山噴火の被害が凄まじく、加えて北朝鮮・ロシアの侵略による死傷者と難民が膨大。首都東京は大火災とインフラ崩壊で機能停止、経済も破綻寸前。政府は新都機能を近畿や東北へ移す議論を本気で始める。北海道東部は事実上ロシア軍の支配が続いており、自衛隊が入れない状態だ。国土の一部喪失に呆然とする国民。多くの人が家や職を失い、「こんな世界になってしまったのか……」と途方に暮れる。

3. それでも生きる

被災地のがれきの山の中で、佐々木涼(防災庁危機管理官)は自衛隊員やボランティアとともに負傷者を救護し続けていた。「こんな壊滅を目にすると、人間とは何なのかと思う。だが、たとえ国がどれだけ傷ついても、人々が生きる意志を捨てない限り、未来はあるはずだ」首都直下で亡くなった同僚の遺品を抱えながら、彼は再生への決意を心中に刻む。“史上最大級の天災”と“多国からの侵略”――その両方を被った日本が、ここからどう立ち上がるのかは分からない。

終幕 廃墟を越えて

複合災害多方面侵略が引き起こした地獄絵図は、国際政治も東アジア秩序も大きく変質させた。

  • 北朝鮮は核威嚇によって韓国の一部を制圧しかけたが、最終的には部分停戦。朝鮮半島は緩やかな冷戦状態に。

  • 中国は台湾を事実上掌握し、しかし世界的制裁やゲリラ抵抗で国内に軋みを抱える。

  • ロシアは北海道の道東を占領しつつも国際的には孤立。

  • 日本は未曾有の被害を受け、国土の一部が分断される形で復興への道を模索する。首都移転、経済崩壊、そして政治体制の変革も迫られる。

廃墟と化した東京から遠くを見渡せば、富士山は今なお煙を上げ、空は灰色の雲に覆われている。大津波で壊れた港、火山灰に埋もれた街、崩れ落ちた高速道路……。それでも、人々は廃墟の中で力を合わせて助け合い、わずかな希望を灯そうとする。瓦礫の下から救出された少女が、一輪の花を手に微笑む光景が、メディアを通じて世界へ流れ、「絶望の中の小さな希望」として語られる。

こうして日本は一度破局の底へと落ち、そしてそこから再び立ち上がろうとする。その道は果てしなく遠い――

(了)

 
 
 

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