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梶原山公園の消えた足跡

  • 山崎行政書士事務所
  • 1月12日
  • 読了時間: 5分
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第一章:消えた足跡

 梶原山公園は、街のはずれにある静かな山。登山道は多くのランナーやハイカーにとって手軽なコースだが、近年はちょっとした心霊スポットの噂も立っている。 ある早朝、ランニング仲間のグループが山を駆けていたとき、奇妙な光景に出くわした。登山道から少し離れた斜面に、人の足跡がはっきり残っていたのに、途中でぷつりと途切れているのだ。まるで、その場から足跡の主が空に消えたかのように……。 知らせを受けた地元警察が調べても、付近に転落や動物の痕跡もなく、人為的な偽装かとも思われたが、結局謎は解けず仕舞い。しばらく町をざわつかせたが、決定的な証拠もないため、人々はじきにその話を忘れかけていた。

第二章:奈央と古い地図の切れ端

 奈央は大学生。週末にはよく梶原山公園に散歩に来て、植物の写真を撮ったりするのが趣味だった。その日もいつも通りカメラを持って山を巡っていたが、ふと足元の草むらに何かが落ちているのを見つける。 それはぼろぼろに黄ばんだ紙切れ。広げてみると、かすれた線や文字が見える。どうやら地図らしいのだが、やたら古風な字体で「昭和二十年」と印刷の痕跡がある。視線を這わせると、**「秘密基地」**を示すらしき矢印が記されていることに気づく。 「秘密基地……?」 奈央は最初、子供の遊び道具かと思ったが、「足跡が突然消えた」と話題になった場所が、この地図の一部と奇妙に重なっていることを直感する。もしかして、この地図には、戦後に作られた隠されたルートが載っているのでは?

第三章:仲間たちとの計画

 奈央はこの発見を頼れる仲間たちに話し、同じ大学の竜斗や、地元の幼なじみ芽衣らと情報交換をする。すると竜斗は、「戦後、梶原山に軍の倉庫か何かがあったという噂を聞いたことがある」と言い出す。 芽衣は半信半疑だが、**「それが本当なら、足跡が途切れた場所には隠された入り口があるかもしれないね」と乗り気になる。 こうして三人は“梶原山中に隠された秘密基地探し”**という、ちょっとワクワクする計画を立て始める。まるで子供の頃の探検ごっこを思い出すようで、スリルと好奇心が混ざり合う。

第四章:足跡の場所へ

 翌週末、三人は装備を整え、足跡が消えたという斜面に向かう。地図の切れ端と山の現代地図を重ね、なんとか位置を割り出す。すると、意外にも足跡が消えた地点と地図の**“秘密基地”**マークがほぼ重なっている。 草が生い茂る斜面を掻き分けながら捜索すると、やや斜めに崩れた地面の下にコンクリートのようなものが埋まっているのがわかった。そっと掘ってみると、錆びついた鉄製の扉らしきものが露出し、かすかに風が出入りしている気配まで感じる。 「ここに、本当に地下の空間があるのか……?」 三人は胸を弾ませると同時に、背筋がぞくりとする恐怖も拭えない。失踪した人物は、ここから地下に落ち込んだのでは? そんな可能性が頭をよぎる。

第五章:謎の地下施設

 勇気を出して扉をこじ開けると、内部には階段が下へ続いていた。懐中電灯の光がタイル貼りの壁を照らす。どうやら廃墟同然の地下施設で、蜘蛛の巣が張り、所々に軍用らしき物資の箱が転がっている。 息を呑みながら進むと、小さな部屋を発見。壁に古い貼り紙があり、「簡易格納庫」「昭和二十〇年〇月設置」などと記されている。戦後の混乱期に軍関係者が使ったのか? さらに奥へ進むと、暗い廊下が続くが、途中で天井が崩れ、通行不能になっている。「失踪者はここで行き止まりか……?」 だが、異様な静けさの中で、三人は汗が噴き出す。 竜斗が囁く。「足跡はどうなった?」 彼らが足跡を追う形跡は、土埃と靴痕が微かにあるが、途中で消えている。**「まるで、ここから先に一方通行で行ける通路があるようだけど、瓦礫が邪魔だな」**と唇を噛む。

第六章:真実の一端

 諦めざるを得ず地上へ戻った三人は、推測を巡らせる。「もしかして失踪者はこの地下を進み、別の出口から抜けたのでは?」 つまり、瞬間移動でもしたかのように“足跡が消えた”のは、秘密の通路に入ったからと考えれば筋が通る。 さらに古い文書を漁ってみると、**「梶原山基地計画」という断片的な記録が戦時中に存在した形跡が浮かび上がる。軍が物資や兵員を潜ませるための隠しトンネル網を設計し、一部は戦後放置されたという説だ。 どうやら今回の失踪者は、ある意図を持ってこの地下トンネルを見つけ、姿を消した可能性がある。「行方不明」というより、「自主的に潜んだ」**のではないか? そう閃いた瞬間、三人は次なるアクションを考えるが、既に警察も絡み出していて、なかなか自由には動けない。

第七章:仲間たちの答え

 最終的に、警察が動き、山の地下構造が一部探索されるが、瓦礫の先まではまだ調査が行き届かない。「そこに抜け穴があり、逃亡も可能だったろう」という推測で捜索が続く。 やがて、失踪した選手が別の町でひょっこり姿を現す。まるで何事もなかったかのように……。彼はそのことに多くを語らず、「自転車を放置してしまった。すまない」とだけ言って、足早に去る。何か背負っていた秘密があるのかもしれない。 一方、奈央や仲間たちは深い安堵を覚えつつも、あの地下施設の謎がすべて解けたわけではないと感じている。「戦後に作られた秘密基地は、本当にただの格納庫だったのか? まだ奥に未知の通路があるのでは?」 そんな疑問が彼らを駆り立てる。 しかし、当分は当局の調査が進まず、中途半端に伏せられたままだ。三人は新たな冒険をすべきかどうか迷いつつ、それぞれの学業や日常に戻っていく。 「いつかまた、梶原山公園で足跡が途切れる事件が起きるかもしれない……」 そんな予感を抱えながら。 そして、ヒルクライム大会では相変わらず多くのサイクリストが頂上を目指す。あの場所を知る者だけが感じる微かなスリルが、いまもこの山に息づいているように思えた。

 
 
 

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